勝又壽良
Sent: Thursday, March 21, 2019 5:00 AM
破綻した南北交流事業計画、IMFが早くも韓国経済テコ入れ策伝授
経済政策の名にも値しない
IMFが指南する韓国経済
中国経済と一蓮托生の運命
韓国の文政権は、国内経済不振の突破口として南北交流事業計画に大きな期待をかけて来ました。
昨年9月、南北首脳による「平壌共同宣言」の一項目に、開城工業団地と金剛山観光の開発を入れたほどです。
しかし、先の米朝首脳会談は物別れに終わりました。米国の核全面放棄要求と北朝鮮の段階的核放棄が噛み合わなかったのです。
その後、北朝鮮は米朝交渉放棄のスタンスを見せて米国を揺さぶっています。
この結末によって、韓国経済は影響を受けることが分ってきました。
韓国は、米朝首脳会談が成功するという前提で、国内経済立て直しを図っていたのです。これは、韓国大統領府の特別補佐官が、米国の外交専門誌に寄稿して判明しました。
韓国政府が、北朝鮮側に沿った核放棄案に賛成してきた裏には、南北交流事業をテコにした国内経済打開策があったのです。
だが、南北交流事業と言ってもシンボル的な意味合いしかありません。
開城工業団地と金剛山観光の再開が軌道に乗ったとしても、利益は北朝鮮を潤すだけで、韓国にはほとんどメリットはありません。
ただ、前記の事業を足場に他の事業を拡張するとしても、北朝鮮は外貨が乏しいという事情があります。
ビジネスは、投下資金を回収してこそ利益が確定するものです。その回収メドが立たないビジネスは、慈善事業と変わりありません。
ここで、北朝鮮の経済状況を見ておきます。
2017年の輸出は、前年比で40%減少しました。
その結果、GDPはマイナス3.5%と推測されています。
18年の輸出は同88%減少した結果、GDPはマイナス5%を記録したという分析が出ています。
外貨準備高の正確な金額は分かりません。
これまでは、年間の貿易規模が60~70億ドルと推定されているので、外貨準備高は70億ドルを超えることはないと見られます。
50億ドル前後ではないかとの推定が多数のようです。
北朝鮮は、すでに前述のように経済制裁強化で17~18年の貿易赤字によって30億ドルを使い果たしたとすれば、
残りはわずか20億ドル程度に過ぎず、「通貨危機」が起るという予想もあるほどです。
こういう北朝鮮の外貨事情から見て、南北交流事業が軌道に乗っても「慈善事業」の域を出ることはなかったでしょう。
要するに、文政権が期待を賭けるような効果は、投下資金の回収という意味まで含めれば、最初からなかったと言えます。
経済政策の名にも値しない
このように、文政権の経済政策には確実性という点で、きわめて怪しいものが紛れ込んでいるのです。
その中でも最大の失策は、最低賃金の大幅引上げです。
毎回、この話が出てきますので読者は、「またあの話か」と食傷気味と思います。
この最賃引き上げによって、韓国経済は破綻の淵に追い込まれているのです。まさに、「政策不況」の到来です。
経済政策は、合理的ものでなければ所期の成果が上がりません。
文政権は、最賃の大幅引上げが合理的なものと錯覚したのですが、この背景に、儒教との深い関わりがあると見ています。
ぜひ、この点の文化的背景を理解していただきたいのです。
私は、数年かけてまとめた『中国の経済的発展と社会的限界』(2016年)を私家版として出しました。
中国経済について、その背後にある社会思想や社会構造という視点で分析したものです。
結論を言えば、儒教思想とそれに基づく社会の支配構造が、中国経済の発展を阻止するだろうという内容です。
私の考える「中国経済論」は、韓国にもそのまま当てはまります。
韓国は李朝(1392~1910)によって統治されました。
国教は、儒教の朱子学です。
道徳主義に基づいて他を非難攻撃するという過激な思想です。
現在の韓国は、国内での争いや対外的な排外行動に、この朱子学の特色がよく現れています。
「反日」「排日」は朱子学の教えですからどうにもなりません。
日本は諦めるしか道がないのです。
しかし、韓国に「やられっぱなし」では愉快でないのも事実。
やはり、日本が教育的意味で「お灸」を据える時期が来ていると思います。
韓国が儒教であることから、経済活動に対して論理的な関心を持たないという特色があります。
儒教は「寡欲」と「無欲」を教えるだけで、正統な経済活動に伴う経済倫理が存在しないのです。
支配者にとって、これほど都合のいい教えはありません。
「欲望を持つな」ということは、経済的な不満を禁じます。
利益の概念を否定する儒教には、経済倫理が成立する余地がないのです。
文在寅氏は、典型的な朱子学の立場を踏襲していると見られます。以下にその理由をあげます。
1.
朱子学特有の道徳主義に立脚しており、国内では保守党を排斥する。国外では、日本を非道徳な国家として排除する。米国も排除対象に入っています。
2.
朱子学では、利益概念がないので北朝鮮や中国を受入れます。
文氏の最低賃金の大幅引上げは、企業の利益を無視しており、文氏の道徳主義に合致しているのです。
3.
朱子学は論理的な一貫性を前提としません。文氏の経済政策には、「所得主導成長論」という合理性のない突飛な政策が登場します。
以下、文氏の考える朱子学的な構造を推測すると、次のような結論が浮かび上がります。
「社会の底辺で、苦しんでいる人たちの賃金を大幅に引き上げることは、道徳主義に合致する。
それが、企業利益を圧迫しようと問題ではない。利益概念は、朱子学に存在しない。
仮に、最賃引上で失業率が高まれば、財政支出でカバーすれば済むこと。歳入は、企業の利益を国家へ納付させたものゆえ、失業者救済に使って当然である」
文氏が、最低賃金の大幅引上げを修正しないで継続している理由は多分、上に上げたような理屈づけであろうと見られます。
李朝は、国教として朱子学を取り入れたので、文氏の頭脳構造は李朝のそれと一致するように思えます。
韓国の進歩派とされる文政権は、近代合理主義から見れば、進歩派ではありません。
保守派も保守派、頑迷固陋な保守派と言わざるを得ません。
なぜなら、専制主義に基づく李朝の考えそのものであるからです。
韓国経済が、急速に落込むのは当然の話でしょう。文政権が続く限り、韓国経済が回復する可能性はゼロと見ます。
IMFが指南する韓国経済
IMF(国際通貨基金)は最近、韓国政府との「年次協議結果」を発表しました。
今年は、まだ2ヶ月余しか経過していない段階で、早くも財政支出拡大と金利引き下げを提案したのです。
文政権による経済の舵取りが、余りにも「下手」という判定と見られます。
「素人衆」の経済運営であると見抜かれたのでしょうか。
IMFは、韓国の1~3月期のGDP統計が出ない段階で、GDPの0.5%を超過する水準の財政支出を勧告しました。
ここまで具体的に財政支出の規模まで示したことは、異例のこととされています。
IMFから見た今年の韓国経済は、相当の落込みを予想したのでしょう。
私ごときの者まで、今年のGDP成長率が2%スレスレまで低下するだろう予想するのです。
IMFが、相当の危機感を持っているのは間違いないでしょう。
韓国経済は、最低賃金の大幅引上げという内部的要因だけで減速すると見て、IMFを慌てさせています。
さらに、外部要因である中国経済が急減速することで、対中国輸出の落込みが加わって来ます。
中国経済の急減速は、金融システムの崩壊懸念があることに留意すべきです。
先ほど触れたように、中国経済の体質は文政権の非合理的な政策決定過程と瓜二つなのです。
儒教文化圏は、資本主義経済システムと本質的に相容れない面があります。
つまり、脆弱性です。この点についての認識が重要と思われます。
中国経済の弱点は、市場機能を無視していることです。
過剰債務=過剰設備=過剰生産という三つの「過剰」に中国経済は直面しています。
中国の抱える総債務残高は、GDPの300%を超えました。
ここまで過剰債務を放置しできたのは、市場機構という調節弁を外していたからです。
人間の健康は、定期診断によって患部を早めに発見すれば治療可能です。
手遅れにはなりません。
中国は、この定期診断=市場機構というスクリーンを通さないで、逃げ回っていたのと同じ理屈です。
その間、走りに走って大きな成果(GDP成長率)を上げましたが、心臓に大きな障害(過剰債務)を持っていたのです。
現在は、自覚症状が出るに及んで、ついに入院を迫られている。こういう状況と言えます。
中国人民銀行(中央銀行)金融安定局の王景武局長は18日、国内金融セクターが「灰色のサイ」のリスク(顕著であるにもかかわらず看過されているリスク)が高まっているという警告を発しました。
中央銀行の金融安定局長が、「灰色のサイ」という言葉を使ったのです。
この「灰色のサイ」は、習近平氏が使って注目され「時の言葉」になりました。
当事者が、この言葉を使うのは相当の危機感に襲われているはずです。
韓国も「灰色のサイ」かも知れません。
最賃の大幅引上げをやって、その弊害が顕著になっているにもかかわらず、修正せずに放置している。これは、「灰色のサイ」のリスクを無視している証拠と言えるでしょう。
中国経済と一蓮托生の運命
中国で、信用機構の障害が起こった場合、韓国経済は輸出面で大きな影響が出てきます。
半導体輸出は、中国向けが全体の20%にも達していることから、すでに米中貿易戦争の影響で落込みが始まっています。
これに、中国の内需減が加われば、一段の落込みは避けられません。
前記の中国人民銀行の王景武局長は、中国の抱える信用リスクとして、具体的に次の三つのリスクを上げました。
1.地方政府の隠れ債務リスク
2.債券デフォルトのリスク
3.不動産市場のリスク
日本の平成バブルでは、不動産市場リスクだけでした。
他の二つのリスクはなかったのです。それでも「失われた20年」と言われたのです。
日本では、地方政府(地方自治体)に隠れ債務はありません。
政府によって地方自治体の財政計画がチェックされていたからです。
隠れ債務はなかったのですが、過計画で地方財政が疲弊した例はあります。北海道の夕張市がそうでした。
債券デフォルトリスクもありませんでした。
厳密に言えば、数銘柄はありましたが、「有担保主義」であったので、デフォルト=債券無価値という事態は避けられました。
このように見てくると、日本のバブルと中国のバブルは「次元」が異なるのです。中国は、野放図な債務の累積で築き上げたものが、GDP世界2位という結果でした。
中国の地方政府の抱える債務についての試算を紹介します。
米格付大手S&Pグローバル・レーティングスは、昨年10月、中国地方政府の「隠れ債務」規模が40兆元(約648兆円)に達したとの調査報告を発表しました。
これによると2017年、中国の公的債務総規模はGDPの60%に相当したのです。
S&Pは、中国の債務問題について「巨大な信用リスクを伴っている」と警鐘を鳴らしています。
前記のように、公的債務総規模はGDPの60%以外に、企業と個人の債務残高を加えると、GDPの300%にも達すると試算されています。
中国が、自ら「灰色のサイ」と言う理由なのです。
韓国政府の振る舞いも、きわめて危険と言うほかありません。
儒教文化圏の韓国と中国は、同じような非論理的な経済行動に走っているのです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます