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崖っぷちに立たされた韓国経済

2017-02-28 16:47:10 | 日記
崖っぷちに立たされた韓国経済

韓国経済ウォッチ



日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 韓国は1996年に、OECD(経済開発協力機構)に加盟している。

OECD加盟当時の韓国経済の成長率は7.6%で、OECD加盟国の平均成長率である2.9%の2.6倍に達していた。

 韓国は97年にアジア通貨危機に見舞われ、成長率は一時期マイナス5.5%まで落ち込んだが、その後すぐ立ち直り、90年代の平均成長率は7%台をキープした。

2000年代に入ると、韓国経済の成長率は01年に4.5%まで下落し、その後も経済成長率はあまり回復せず、2000年代の平均成長率は4~5%台に下がった。

2010年以降の韓国の経済成長は、この水準も維持できなくなり、かろうじて3%台の成長にとどまることになった。

 韓国は輸出依存度の高い国で、輸出で外需を取り込むことで経済成長をしてきた。ところが、2008年のリーマン・ショック以降、世界経済はなかなか回復できず、韓国経済にとって外部環境は厳しいままだ。

 それに、韓国輸出の4分の1を占めている中国経済が失速しており、韓国経済はもろにその影響をも受けている。

先月の輸出は、前年対比で5.9%の減少で、中国向けの輸出は、10%ほど減少している。

韓国の主要輸出品目の1つであるテレビは、中国企業にとっくにキャッチアップされているし、スマホでも中国企業の追い上げは激しく、中国での市場シェアを侵食されている。

輸出が振るわないなかで、韓国では最近、接待文化を変えるという目的で「金英蘭法」が制定され、内需の低迷も懸念されている。

 そのような状況で、韓国経済が今年の第4四半期にマイナス成長に陥る可能性もあることを、経済研究所は指摘している。

韓国経済は15年第2四半期の1.2%の成長を除き、14年第2四半期からずっと1%以下の成長率を記録している。

 それでは、なぜ韓国経済はここ数年、成長が鈍化するようになったのか――。

 まず、韓国の成長を牽引してきた主要産業が競争力を失い、衰退している。

資源の乏しい韓国は、原料を輸入し、それを加工して輸出することで成長してきた。

しかし、世界の工場と言われる中国が台頭したことで、多くの分野で競争力を失いつつある。


 中国の低価格攻勢にシェアを奪われ、造船、鉄鋼、建設、海運など、あらゆる分野で危機を迎えている。

景気が良かったときに戦略を立て、将来に備えてもっと技術開発にしておくべきであったが、中国の追い上げを受けているなかで、次の成長産業がまだ育たず、苦戦を強いられている。

 2番目に、韓国の大手企業はアジア通貨危機の経験から、以前のようなチャレンジをしなくなった。

大手企業は国内への投資を抑制しているし、アジア通貨危機で、韓国社会は中産階級が没落していて、内需を支えるような基盤もなくなっている。

 3番目に、韓国の生産性は低く、取引コストは高すぎて、競争力がなくなっている。

 中国は人件費が安く、取引コストも韓国に比べると格段に安い。

それに、設備は韓国より新しい。韓国は技術革新をしない限り、シェアを失うのは当然の結果かもしれない。

従来の組み立て方式で競争していては、韓国はもう中国にはかなわない。

新しい技術開発で差別化を図らないと、韓国は人件費の安い中国、東南アジアの国とはまともな競争ができない。


 4番目に、今後、複合産業が有望視されるが、それを実現するには、韓国には規制が多すぎて、なかなか実行できない状況のようだ。

 こうした問題を解決しない限り、韓国経済に未来はないと、専門家は口をそろえている。

韓国経済はこのような構造的な問題以外に、短期的な悪材料も抱えている。

 韓国GDPの約2割を占めているサムスンの、ギャラクシーノート7のリコールは、その1つである。

国内外で発火が報告され、サムスンはバッテリーの交換で応じようとしたが、その後も発火が相次ぎ、結局、リコールを決定することになった。

韓国のマスコミの報道によると、機会損失まで含めると、サムソンの損失は7兆ウォンに膨らむと言われている。

 問題は、まだ発火の原因が明確に突き止められていないことだ。サムスンは今回の失態でも、幸い半導体の業績が良く、グループ自体は大きな痛手を受けることはなさそうだ。

しかし、サムスンと取引している中小企業の場合には、深刻なダメージがあるとのことだ。

 これだけでも、韓国経済に与える影響は大きいが、韓国を代表するもう1つの企業である現代自動車も、ストとリコールで揺れている。

 賃上げ交渉が決裂したことで、現代自動車の労組は9月26日、全面ストに入った。

現代自動車が全面ストに入ったのは、2004年以来12年ぶりである。現代自動車の労組は、今年だけでも19回の時限ストを実施している。

このようなストで発生した損失額は、2兆ウォンに上るとされている。

 それだけでなく、現代自動車ではエンジンの不良が見つかり、訴訟費用が発生しそうだ。

対象の台数は88万5,000台で、最悪の場合にはリコールになりかねない状況のようだ。

現代自動車では、今のところ部品の交換などで対応できると判断しているが、事態がどのように拡大するかは予断できない。

交換・修理で済むにしても、費用は3兆ウォンくらいになるだろうと一部では推計している。

 韓国経済は構造的な問題を含め、直近ではこのような問題が浮上し、対応を迫られている。

 韓国経済が直面している問題は、世界経済の不況より競争力低下のほうがもっと深刻であるという。

韓国経済は今まで、組み立てを中心とした加工貿易がメインであったが、部品素材産業に軸足を移し、それを重点的に育成する必要があると専門家は指摘する。
 
それだけでなく、観光、医療などの高付加価値産業を育成する一方で、既存の成長エンジンを代替できるバイオ、環境、エネルギー、ナノなどの分野で新産業を起こす努力を続ける必要がある。

たとえば、韓国の医療技術の水準は世界的であるが、タイのような医療観光では遅れている。

韓国の国土の7割は山地であるが、アルプスのような山岳列車も韓国にはない。

韓国のドラマが流行したことによって、韓国の化粧品産業が飛躍的に発展しているように、時代の変化に合わせて、韓国経済は変身を遂げる時期にさしかかっているようだ。

(了)


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