勝又壽良 mag2 0001684526
韓国文政権、無謀政策で市民生活破綻、生活困窮者へ2度目の徳政令
生産性は1人当たりGDP
困窮者増やした最賃引上げ
文政権は2回の徳政令実施
韓国経済は確実に破綻の道
韓国の文在寅政権は、在任21ヶ月で大きな節目を迎えました。
経済政策の目玉である「最低賃金の大幅引上げ」が、完全に裏目に出て失業者を増やし、生活困窮者を激増させたからです。
この結果、韓国の金融委員会は生活が苦しい基礎生活受給者(生活保護受給者に相当)、高齢者、長期の債務延滞者について、債務の元金を減免する対策の徳政令を発表したのです。
文政権になって2度目です。
詳細は後で取り上げます。
文政権が、最低賃金の大幅引上げを実施したのは昨年1月からです。
大統領に就任してから約7ヶ月後ですが、国内外で大きな反対論が出ました。
それでも、文大統領は日本並みの最低賃金にするというのが目的で強行しました。
ここら当たりから、日本を強く意識した政策であったことは間違いありません。反日政策の原点でした。
皮肉にも、それが墓穴を掘りました。
生産性は1人当たりGDP
文政権は、日本と韓国の最賃制度に大きな違いのあることを見落としていました。
日本の最賃は、文字通りの「時給」です。
韓国は、単なる「時給」でなく、実際の支給時に週休を含んだ「時給」へと膨らむのです。
この結果、昨年の韓国の最賃は、日本を上回ったのです。
時給の基準となる、生産性を表す1人当たり名目GDPは、次のようになっています。
1人当たり名目GDP
日本 3万8449ドル(2017年)
韓国 2万9938ドル(2017年)
韓国の1人当たり名目GDPは、日本の78%に当ります。
このことから日韓の生産性格差を考えれば、韓国の最賃を日本並みに引上げるのは、大きな歪みが発生します。
韓国が、日本並みの最賃を得るには、韓国の1人当たり名目GDPが、日本の水準まで引上げられることが前提でした。
文政権は、この重要な前提を無視して、日本へ「最賃競争」を挑んだと言えます。それが、韓国経済に決定的な打撃になったのです。
以上のような前提で、韓国の最賃問題を考えると「無謀」の一言です。
それにも関わらず、今年も10.9%も引上げました。
昨年が16.4%の引上げでした。
今年は、抑制されたとはいえ、2年連続の大幅引上げです。
これに耐えられる小規模・零細業者は限られます。ここに「最賃引き上げ失業」という、他国に例を見ない事態を迎えました。
ここで、韓国特有の事情に触れておきます。
韓国の自営業者の数は、家族を含めると総人口の25%も占めます。
きわめて高い比率であり、なぜこういう事態になったのか。
韓国の40歳を過ぎたサラリーマンは、このまま会社に残るか、退職するかという岐路に立つそうです。
会社に残っても課長、部長になれる見込みがなければ、退職して自営業を始めるケースが多いというのです。
日本では、ちょっと考えられないケースです。定年退職後も、嘱託で会社に残り「サラリーマン人生」を全うすることに違和感がないのです。
韓国は、その点で「メンツ」が邪魔をして心ならずも自主退職し、自営業を始める人が多いというのです。
これは、経済的にリスキーな選択になります。
成功する確率が低く、破産する確率が高いのです。
こういう経営基盤の脆弱な自営業者が、今回の大幅最賃引上の影響を強く受けました。
最賃法通りの賃金を支払えないので従業員解雇に踏み切る。これでは、自営業が続けられないので、やむなく店を閉めるというケースです。
韓国の大学進学率は70%を上回ります。高学歴社会です。
就職しても、全員が課長、部長になれるはずがありません。
でも、「メンツ」と「見栄」の社会です。
最後まで出世コースに乗れなければ、意地を張って中途退社する。
ここを改めないと、「自営業エレジー」は止まりません。
余談ですが、文大統領の娘家族はタイへ移住して話題になっています。
娘婿の勤める会社が倒産して、移住の道を選んだそうです。
文大統領は、身近なところで厳しい就業状況を知っているはずです。それでも、最賃の大幅引上げという政治的魔力に勝てず、失敗したのです。
政治的な魔力というのは、最低賃金の大幅引上げが、社会的弱者に味方する「善政」というイメージが持つ誘惑です。
しかし、生産性を無視した最賃の引上は、結果として失業者を増やし「悪政」に転落します。
文在寅氏は、「善政」を目指しながら実態を無視したばかりに、「悪政」を敷いた大統領という烙印を押されました。
困窮者増やした最賃引上げ
文大統領の就任21ヶ月の政治過程は、次のようなものになりました。
最低賃金の大幅引上げ→雇用減→生活困窮者増加→生活破綻→債務免除→財政負担増加
このように、大幅な最賃引上げ政策を行なう前にシミュレーションもせず、一気呵成に踏み込み失敗したケースはほかにもあります。
フランスです。
フランスは、韓国と同様に大幅な引上げを行い雇用情勢が急激に悪化。慌てて修正して経済は回復しました。
韓国でも実施する前に、IMF(国際通貨基金)やOECD(経済協力開発機構)から、失敗するから再考するように、と強い勧告を受けていたのです。
それをことごとく否定し、招いたのが今回の事態です。
韓国は、最賃引上の修正もせず、今も財政支出で糊塗しようとしています。文大統領の政治責任は重大で、「辞職」に値する事態です。
冒頭で取り上げました債務の減免は、次のような内容です。
韓国金融委員会(政府直属の委員会)は、生活が苦しい基礎生活受給者(生活保護受給者に相当)、高齢者、長期の債務延滞者について、債務の元金を減免する対策を発表しました。
金融機関への債務の元金を最大で95%も減免するという内容です。大掛かりな徳政令です。
長期の債務延滞者について、最大で1人当たり1500万ウォン(約147万円)まで元金を免除するというのです。
文政権は2017年に一度、この徳政令を行なっています。今回は2度目です。
韓国は、これまでたびたび徳政令が行なわれています。
朴槿惠(パク・クネ)政権時代も行ないました。
ただ、文政権が一昨年に続き矢継ぎ早に95%の借金元本の減免に乗り出したのは、国民生活の崩壊が深刻であることを物語っています。
文政権は、2年間に最低賃金を約30%も引き上げたことで、庶民層の雇用先である臨時職、日雇いの働き口が、19万5000人分も消えました。
貯蓄銀行などノンバンクから借金をして、年20%以上の高金利に苦しむ債務者が2200万人を超えたのです。
国民のうち、2人から3人に1人の割合で「危険な債務者」がいるという異常事態に落込んでいます。
うち、貸金業者にまで手を伸ばした人は、412万人に達しています。
昨年廃業した零細自営業者は100万人に達し、自営業者の金融債務は文在寅政権発足以降に14%増えた計算です。
以上は、『朝鮮日報』(2月19日付)社説「静かに崩壊する韓国の市民経済」から引用したものです。
文政権は2回の徳政令実施
朴槿惠政権時に創設された、「国民幸福基金」に申請した人は2013年10月末までに24万人。
このうち21万人が減免の対象となりました。
国民幸福基金のほかにも似たような制度が7つあり、合わせて66万人の債務返済額が減額されました。
66万人が、「債務返済額を最大半額に減額するとともに、低利で融資し最長10年かけて返済できるようにする」という恩恵を受けたのです。
文政権になると、この徳政令はさらに「過激」になります。
2017年は、次のような内容でした。
1.民間部門で(債権消却対象が)40万人以上
2.従来の「国民幸福基金」保有債権のうち消却対象の長期少額延滞者は40万人。
以上の80万人以上が「文徳政令」の救済対象になりました。
今回は、「文徳政令2期」に当ります。
前述の通り、長期の債務延滞者について、最大で1人当たり1500万ウォン(約147万円)まで元金を免除する大掛かりなものです。
この恩恵を受ける人数はまだ不明ですが、100万人を超えることは確実です。
ただ、個人には「利益」でも、国家財政で見れば「支出増」で財政を圧迫します。低所得層の個人債務肩代わりですから、個人消費増は期待できません。
ここで、注意していただきたい点は、「徳政令」実施時期の間隔が次第に、短くなっていることです。
2013年 朴政権
2017年 文政権
2019年 文政権
文政権は、2022年5月まで続きます。
経済政策に見るべき有効策ありませんから、景気回復は望めないでしょう。
一方、最賃の引上幅は圧縮されることはあっても、引上げは続くと見られます。
今後の経済成長率は、これによって2%スレスレに向かって低空飛行を余儀なくされます。
雇用状態は悪化状態が続く公算が強く、家計債務は再び増加基調を辿る恐れが強いのです。
文政権は、2021年の次期大統領選挙で与党候補の勝利を目指し、文政権3度目の「徳政令」に踏み切る可能性は否定できません。
この「徳政令」は、長い目で見れば「善政」でなく「悪政」に陥る危険性が強いのです。
いわゆる「モラルハザード」(倫理喪失)をもたらし、所得の限度を超える借金に対して鈍感になるリスクを生みます。
日本の室町幕府8代将軍足利義政が、徳政令を13回もやって失敗しているのです。
庶民が借金棒引きを前提にして過大な借入を行なう。
こういう典型的な「モラルハザード」に陥る危険性が高くなるのです。
文政権の「善政」気取りの安直さが、経済の規律を失わせるモラルハザードを招きます。
この危険性から脱出するには、経済政策を「正道」に戻して、奇をてらうことを止めることです。
最低賃金の引上げ幅は、生産性上昇範囲内に収めるのです。
すでに、実質的に日本の最賃を上回っている以上、経済全体との整合性を重視しバランスを取ることです。
労組や市民団体がいかなる要求を出しても応じてはいけません。韓国経済を破滅させるだけです。
韓国経済は確実に破綻の道
韓国経済の近未来展望を試みたいと思います。
第一は、徳政令実施の間隔が狭ばまっている点です。
家計が、収入を無視した消費行動を取っている問題のほかに、所得の伸び自体が落込んでいるのです。
これは、GDP成長率の低下が、何よりの証拠となっています。
この伝で言えば、日本もバブル崩壊後に「失われた20年」と言われるほど、底を這うような苦しい生活を送りました。
ただ、韓国と違い「徳政令」という考えは、思い浮かぶことがなかったのです。
要するに、韓国でも「入るを量りて出を為す」という家計のバランス感覚を持たせることが欠かせません。合理的精神の涵養です。
韓国社会では、これがもっとも欠如しているのです。
第二は、イノベーション能力の低下です。
韓国経済は財閥企業による寡占状態です。
これが、「コーポレートガバナンス」(企業統治)の未成熟さも手伝い、イノベーション能力に問題を投げかけています。
ここに足場を持つ労働組合も、圧倒的に悪い影響力を及ぼしています。
「労働貴族」と言われるゆえんで、政治を動かしてもいます。文政権成立では、影の功労者と言えます。
労組には、イノベーション能力はありません。
逆に、これを阻止する側に回っています。
労組にとって最大の関心事は雇用の確保であり、新技術の採用には警戒的姿勢を取っています。
雇用を減らすリスクがあるからです。その点で、きわめて保守的な存在です。
英国の産業革命時に、労働者の機械打ち壊しは有名です。
機械の高生産性が、労働者の職場を奪うという近視眼的な発想によるものです。
ここから抜け出すには、労働市場の流動化を行い、転職の自由を確保することが必要です。
そうすれば、技術進歩=雇用増加という認識に変ります。
韓国では、労組が労働市場の流動化が阻止しています。
文政権もこれを支持せざるを得ない羽目に陥っています。労働市場流動化の展望は、きわめて暗いのです。
財閥企業の「コーポレートガバナンス」は、多くの問題を抱えています。
出資者=経営者であり、個人商店と同じスタイルです。
近代経営は、出資と経営の分離が大前提になります。
韓国財閥家族は、企業でなく「家業」意識です。
これが、新規分野への進出でブレーキになっています。
最近の韓国経済では、新規産業が見当たりません。
第4次産業革命といわれる現代において、全く出遅れています。
「コーポレートガバナンス」は、どうやって発展させるか。
これが課題です。
現状では、企業における最大の関係者は労組だけです。
この歪な関係を改め、株主・地方自自体・消費者という多角的な利害関係者(ステークホルダー)により、企業が構成されるという認識が必要です。
そうなれば、労組が「一人舞台」で企業と対峙して、我が儘な要求を突付ける弊害が是正されるのです。
第三は、「反日」が韓国経済の発展に大きなブレーキになることです。
韓国では、そういう認識が100%欠如しています。
文政権は、「86世代」といわれる強い民族意識の集団によって動かされています。
「親中朝・反日米」である結果、現在の「反日路線」は当然の結果です。
「86世代」は、外交基軸を現在の「日米」から離れて、「米中」に置く準備を始めています。狙いは「反日」にあります。
日本に冷や水を浴びせろという、単なる感情論です。
韓国は、日米と絆を持っているから、中国がそれなりの対応をしています。
だが、日本との関係を希薄にした韓国は、単なる「はぐれカラス」に過ぎません。
中国の「属国」であった時代に戻るだけです。
「86世代」には、こういう国際関係の綾(あや)が読めないのです。
「86世代」は、もともと、学生運動家上がりの集団です。
外交の専門家は一人もいない「勝手連」に過ぎません。
外交の素人集団が、「国家百年の計」に関わろうとしています。この上なく危険です。
韓国の「反日」が、韓国経済にいかなる弊害をもたらすか。それが問題です。
韓国は、日本から離れれば、国際企業の情報を得にくくなるでしょう。
現在ですら、第4次産業革命関連の企業が少ない段階で、この傾向は一層強まるはずです。
日本経済は、韓国が中国へ接近して親しくなろうと、何の関わりもありません。
日本企業の経営戦略は当面、欧米市場にしっかり軸足を置き、資本進出すればこと足りるのです。
中国企業は、安全保障の観点で欧米市場から忌避されています。
韓国は、その中国へ接近して、何を得るのでしょうか。
むしろ、韓国の技術を吸い取られるだけです。
中国はGDPこそ世界2位ですが、質的には脆弱な経済です。
今後の急速な劣化を考えれば、韓国がこの中国にあえて接近するメリットは少ないでしょう。
韓国文政権、無謀政策で市民生活破綻、生活困窮者へ2度目の徳政令
生産性は1人当たりGDP
困窮者増やした最賃引上げ
文政権は2回の徳政令実施
韓国経済は確実に破綻の道
韓国の文在寅政権は、在任21ヶ月で大きな節目を迎えました。
経済政策の目玉である「最低賃金の大幅引上げ」が、完全に裏目に出て失業者を増やし、生活困窮者を激増させたからです。
この結果、韓国の金融委員会は生活が苦しい基礎生活受給者(生活保護受給者に相当)、高齢者、長期の債務延滞者について、債務の元金を減免する対策の徳政令を発表したのです。
文政権になって2度目です。
詳細は後で取り上げます。
文政権が、最低賃金の大幅引上げを実施したのは昨年1月からです。
大統領に就任してから約7ヶ月後ですが、国内外で大きな反対論が出ました。
それでも、文大統領は日本並みの最低賃金にするというのが目的で強行しました。
ここら当たりから、日本を強く意識した政策であったことは間違いありません。反日政策の原点でした。
皮肉にも、それが墓穴を掘りました。
生産性は1人当たりGDP
文政権は、日本と韓国の最賃制度に大きな違いのあることを見落としていました。
日本の最賃は、文字通りの「時給」です。
韓国は、単なる「時給」でなく、実際の支給時に週休を含んだ「時給」へと膨らむのです。
この結果、昨年の韓国の最賃は、日本を上回ったのです。
時給の基準となる、生産性を表す1人当たり名目GDPは、次のようになっています。
1人当たり名目GDP
日本 3万8449ドル(2017年)
韓国 2万9938ドル(2017年)
韓国の1人当たり名目GDPは、日本の78%に当ります。
このことから日韓の生産性格差を考えれば、韓国の最賃を日本並みに引上げるのは、大きな歪みが発生します。
韓国が、日本並みの最賃を得るには、韓国の1人当たり名目GDPが、日本の水準まで引上げられることが前提でした。
文政権は、この重要な前提を無視して、日本へ「最賃競争」を挑んだと言えます。それが、韓国経済に決定的な打撃になったのです。
以上のような前提で、韓国の最賃問題を考えると「無謀」の一言です。
それにも関わらず、今年も10.9%も引上げました。
昨年が16.4%の引上げでした。
今年は、抑制されたとはいえ、2年連続の大幅引上げです。
これに耐えられる小規模・零細業者は限られます。ここに「最賃引き上げ失業」という、他国に例を見ない事態を迎えました。
ここで、韓国特有の事情に触れておきます。
韓国の自営業者の数は、家族を含めると総人口の25%も占めます。
きわめて高い比率であり、なぜこういう事態になったのか。
韓国の40歳を過ぎたサラリーマンは、このまま会社に残るか、退職するかという岐路に立つそうです。
会社に残っても課長、部長になれる見込みがなければ、退職して自営業を始めるケースが多いというのです。
日本では、ちょっと考えられないケースです。定年退職後も、嘱託で会社に残り「サラリーマン人生」を全うすることに違和感がないのです。
韓国は、その点で「メンツ」が邪魔をして心ならずも自主退職し、自営業を始める人が多いというのです。
これは、経済的にリスキーな選択になります。
成功する確率が低く、破産する確率が高いのです。
こういう経営基盤の脆弱な自営業者が、今回の大幅最賃引上の影響を強く受けました。
最賃法通りの賃金を支払えないので従業員解雇に踏み切る。これでは、自営業が続けられないので、やむなく店を閉めるというケースです。
韓国の大学進学率は70%を上回ります。高学歴社会です。
就職しても、全員が課長、部長になれるはずがありません。
でも、「メンツ」と「見栄」の社会です。
最後まで出世コースに乗れなければ、意地を張って中途退社する。
ここを改めないと、「自営業エレジー」は止まりません。
余談ですが、文大統領の娘家族はタイへ移住して話題になっています。
娘婿の勤める会社が倒産して、移住の道を選んだそうです。
文大統領は、身近なところで厳しい就業状況を知っているはずです。それでも、最賃の大幅引上げという政治的魔力に勝てず、失敗したのです。
政治的な魔力というのは、最低賃金の大幅引上げが、社会的弱者に味方する「善政」というイメージが持つ誘惑です。
しかし、生産性を無視した最賃の引上は、結果として失業者を増やし「悪政」に転落します。
文在寅氏は、「善政」を目指しながら実態を無視したばかりに、「悪政」を敷いた大統領という烙印を押されました。
困窮者増やした最賃引上げ
文大統領の就任21ヶ月の政治過程は、次のようなものになりました。
最低賃金の大幅引上げ→雇用減→生活困窮者増加→生活破綻→債務免除→財政負担増加
このように、大幅な最賃引上げ政策を行なう前にシミュレーションもせず、一気呵成に踏み込み失敗したケースはほかにもあります。
フランスです。
フランスは、韓国と同様に大幅な引上げを行い雇用情勢が急激に悪化。慌てて修正して経済は回復しました。
韓国でも実施する前に、IMF(国際通貨基金)やOECD(経済協力開発機構)から、失敗するから再考するように、と強い勧告を受けていたのです。
それをことごとく否定し、招いたのが今回の事態です。
韓国は、最賃引上の修正もせず、今も財政支出で糊塗しようとしています。文大統領の政治責任は重大で、「辞職」に値する事態です。
冒頭で取り上げました債務の減免は、次のような内容です。
韓国金融委員会(政府直属の委員会)は、生活が苦しい基礎生活受給者(生活保護受給者に相当)、高齢者、長期の債務延滞者について、債務の元金を減免する対策を発表しました。
金融機関への債務の元金を最大で95%も減免するという内容です。大掛かりな徳政令です。
長期の債務延滞者について、最大で1人当たり1500万ウォン(約147万円)まで元金を免除するというのです。
文政権は2017年に一度、この徳政令を行なっています。今回は2度目です。
韓国は、これまでたびたび徳政令が行なわれています。
朴槿惠(パク・クネ)政権時代も行ないました。
ただ、文政権が一昨年に続き矢継ぎ早に95%の借金元本の減免に乗り出したのは、国民生活の崩壊が深刻であることを物語っています。
文政権は、2年間に最低賃金を約30%も引き上げたことで、庶民層の雇用先である臨時職、日雇いの働き口が、19万5000人分も消えました。
貯蓄銀行などノンバンクから借金をして、年20%以上の高金利に苦しむ債務者が2200万人を超えたのです。
国民のうち、2人から3人に1人の割合で「危険な債務者」がいるという異常事態に落込んでいます。
うち、貸金業者にまで手を伸ばした人は、412万人に達しています。
昨年廃業した零細自営業者は100万人に達し、自営業者の金融債務は文在寅政権発足以降に14%増えた計算です。
以上は、『朝鮮日報』(2月19日付)社説「静かに崩壊する韓国の市民経済」から引用したものです。
文政権は2回の徳政令実施
朴槿惠政権時に創設された、「国民幸福基金」に申請した人は2013年10月末までに24万人。
このうち21万人が減免の対象となりました。
国民幸福基金のほかにも似たような制度が7つあり、合わせて66万人の債務返済額が減額されました。
66万人が、「債務返済額を最大半額に減額するとともに、低利で融資し最長10年かけて返済できるようにする」という恩恵を受けたのです。
文政権になると、この徳政令はさらに「過激」になります。
2017年は、次のような内容でした。
1.民間部門で(債権消却対象が)40万人以上
2.従来の「国民幸福基金」保有債権のうち消却対象の長期少額延滞者は40万人。
以上の80万人以上が「文徳政令」の救済対象になりました。
今回は、「文徳政令2期」に当ります。
前述の通り、長期の債務延滞者について、最大で1人当たり1500万ウォン(約147万円)まで元金を免除する大掛かりなものです。
この恩恵を受ける人数はまだ不明ですが、100万人を超えることは確実です。
ただ、個人には「利益」でも、国家財政で見れば「支出増」で財政を圧迫します。低所得層の個人債務肩代わりですから、個人消費増は期待できません。
ここで、注意していただきたい点は、「徳政令」実施時期の間隔が次第に、短くなっていることです。
2013年 朴政権
2017年 文政権
2019年 文政権
文政権は、2022年5月まで続きます。
経済政策に見るべき有効策ありませんから、景気回復は望めないでしょう。
一方、最賃の引上幅は圧縮されることはあっても、引上げは続くと見られます。
今後の経済成長率は、これによって2%スレスレに向かって低空飛行を余儀なくされます。
雇用状態は悪化状態が続く公算が強く、家計債務は再び増加基調を辿る恐れが強いのです。
文政権は、2021年の次期大統領選挙で与党候補の勝利を目指し、文政権3度目の「徳政令」に踏み切る可能性は否定できません。
この「徳政令」は、長い目で見れば「善政」でなく「悪政」に陥る危険性が強いのです。
いわゆる「モラルハザード」(倫理喪失)をもたらし、所得の限度を超える借金に対して鈍感になるリスクを生みます。
日本の室町幕府8代将軍足利義政が、徳政令を13回もやって失敗しているのです。
庶民が借金棒引きを前提にして過大な借入を行なう。
こういう典型的な「モラルハザード」に陥る危険性が高くなるのです。
文政権の「善政」気取りの安直さが、経済の規律を失わせるモラルハザードを招きます。
この危険性から脱出するには、経済政策を「正道」に戻して、奇をてらうことを止めることです。
最低賃金の引上げ幅は、生産性上昇範囲内に収めるのです。
すでに、実質的に日本の最賃を上回っている以上、経済全体との整合性を重視しバランスを取ることです。
労組や市民団体がいかなる要求を出しても応じてはいけません。韓国経済を破滅させるだけです。
韓国経済は確実に破綻の道
韓国経済の近未来展望を試みたいと思います。
第一は、徳政令実施の間隔が狭ばまっている点です。
家計が、収入を無視した消費行動を取っている問題のほかに、所得の伸び自体が落込んでいるのです。
これは、GDP成長率の低下が、何よりの証拠となっています。
この伝で言えば、日本もバブル崩壊後に「失われた20年」と言われるほど、底を這うような苦しい生活を送りました。
ただ、韓国と違い「徳政令」という考えは、思い浮かぶことがなかったのです。
要するに、韓国でも「入るを量りて出を為す」という家計のバランス感覚を持たせることが欠かせません。合理的精神の涵養です。
韓国社会では、これがもっとも欠如しているのです。
第二は、イノベーション能力の低下です。
韓国経済は財閥企業による寡占状態です。
これが、「コーポレートガバナンス」(企業統治)の未成熟さも手伝い、イノベーション能力に問題を投げかけています。
ここに足場を持つ労働組合も、圧倒的に悪い影響力を及ぼしています。
「労働貴族」と言われるゆえんで、政治を動かしてもいます。文政権成立では、影の功労者と言えます。
労組には、イノベーション能力はありません。
逆に、これを阻止する側に回っています。
労組にとって最大の関心事は雇用の確保であり、新技術の採用には警戒的姿勢を取っています。
雇用を減らすリスクがあるからです。その点で、きわめて保守的な存在です。
英国の産業革命時に、労働者の機械打ち壊しは有名です。
機械の高生産性が、労働者の職場を奪うという近視眼的な発想によるものです。
ここから抜け出すには、労働市場の流動化を行い、転職の自由を確保することが必要です。
そうすれば、技術進歩=雇用増加という認識に変ります。
韓国では、労組が労働市場の流動化が阻止しています。
文政権もこれを支持せざるを得ない羽目に陥っています。労働市場流動化の展望は、きわめて暗いのです。
財閥企業の「コーポレートガバナンス」は、多くの問題を抱えています。
出資者=経営者であり、個人商店と同じスタイルです。
近代経営は、出資と経営の分離が大前提になります。
韓国財閥家族は、企業でなく「家業」意識です。
これが、新規分野への進出でブレーキになっています。
最近の韓国経済では、新規産業が見当たりません。
第4次産業革命といわれる現代において、全く出遅れています。
「コーポレートガバナンス」は、どうやって発展させるか。
これが課題です。
現状では、企業における最大の関係者は労組だけです。
この歪な関係を改め、株主・地方自自体・消費者という多角的な利害関係者(ステークホルダー)により、企業が構成されるという認識が必要です。
そうなれば、労組が「一人舞台」で企業と対峙して、我が儘な要求を突付ける弊害が是正されるのです。
第三は、「反日」が韓国経済の発展に大きなブレーキになることです。
韓国では、そういう認識が100%欠如しています。
文政権は、「86世代」といわれる強い民族意識の集団によって動かされています。
「親中朝・反日米」である結果、現在の「反日路線」は当然の結果です。
「86世代」は、外交基軸を現在の「日米」から離れて、「米中」に置く準備を始めています。狙いは「反日」にあります。
日本に冷や水を浴びせろという、単なる感情論です。
韓国は、日米と絆を持っているから、中国がそれなりの対応をしています。
だが、日本との関係を希薄にした韓国は、単なる「はぐれカラス」に過ぎません。
中国の「属国」であった時代に戻るだけです。
「86世代」には、こういう国際関係の綾(あや)が読めないのです。
「86世代」は、もともと、学生運動家上がりの集団です。
外交の専門家は一人もいない「勝手連」に過ぎません。
外交の素人集団が、「国家百年の計」に関わろうとしています。この上なく危険です。
韓国の「反日」が、韓国経済にいかなる弊害をもたらすか。それが問題です。
韓国は、日本から離れれば、国際企業の情報を得にくくなるでしょう。
現在ですら、第4次産業革命関連の企業が少ない段階で、この傾向は一層強まるはずです。
日本経済は、韓国が中国へ接近して親しくなろうと、何の関わりもありません。
日本企業の経営戦略は当面、欧米市場にしっかり軸足を置き、資本進出すればこと足りるのです。
中国企業は、安全保障の観点で欧米市場から忌避されています。
韓国は、その中国へ接近して、何を得るのでしょうか。
むしろ、韓国の技術を吸い取られるだけです。
中国はGDPこそ世界2位ですが、質的には脆弱な経済です。
今後の急速な劣化を考えれば、韓国がこの中国にあえて接近するメリットは少ないでしょう。