ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『警視庁・捜査一課長』6ー#08

2022-06-05 19:19:03 | 刑事ドラマ2000年~

今、どの番組よりも毎週楽しみにしてる刑事ドラマがコレ。ここまで好きになるとは思ってませんでした。

毎回面白いんだけど、特にこないだ放映されたシーズン6第8話は面白く、ちょうど前回のブログ記事「サバサバしてるフリすな!」とリンクする内容だったもんでレビューすることにしました。

物語は、2人の若い女性を中心に展開していきます。まず1人目は、立川中央署の地域課に勤める交番巡査=尾山田すずめ(藤野涼子)。



内気で人と接するのが苦手な「陰キャ」で、そんな自分を変えたくて警察官になったものの、壁にぶち当たるばかりで目下、辞職を検討中。そんな彼女が殺人事件の第一発見者になってしまい、本庁捜査一課のベテランたちと一緒に捜査することに。

そしてもう1人は、その尾山田すずめと高校で同級生だった「陽キャ」の女性=陽木渚(長見玲亜)。



ちなみに私が若かった頃は陰キャ=ネクラ、陽キャ=ネアカと言われてました。呼び方は変われど、いつの時代も人をカテゴリー分けしたがるのが日本人です。



で、聞き込み先で2人は再会するワケだけど、すずめは気づいてしまう。事件当夜、現場近くで目撃した地味な服装の女が、渚だったことに。

渚は一晩中クラブで踊ってたと言うんだけど、ちょうど犯行時間にクラブを抜け出してたことも判明。わざわざ地味な服装に着替えてる=変装したとも解釈できるから実に怪しい!

もちろんセオリー通り、真犯人は他にいるワケだけど、そんなことはどーでもいい。注目すべきは「陽キャの中の陽キャ」でいつも派手に振る舞う渚が、なぜあの時、地味な服装に着替えてクラブを抜け出したのか?という点。

犯人でないなら、なぜそんなことする必要があったのか? その謎を解く鍵は、高校時代のすずめとの関係にありました。



高校時代の2人は、クラスメートではあっても住む世界が明らかに違ってました。いつもクラスの中心で目立ってる渚とは対照的に、すずめは折り紙クラブでひたすら折り紙ばかり折る、本人いわく「陰キャの中の陰キャ」でした。

なのに、彼女には「フェニックス」という一見不相応なあだ名がつけられ、それも悩みのタネだった。そのあだ名をつけたのが誰あろう、渚なんです。

きっかけは、学園祭で出品しようとしてた力作=フェニックスの折り紙を誰かに壊されたすずめが、一晩でみごとに修復させたのを見た渚が「フェニックスじゃん!」って言ったこと。

それを陽キャ連中はからかいのネタにしちゃうワケだけど、皆さんお察しのとおり、実は渚自身にそんな意図はなく、ただ素直に感動して口から出た言葉がフェニックスだった。

取調室で再びすずめと対面した渚は、いきなり「陽キャなのはフェニックスだよ」と言いだして彼女を困惑させます。

ずっと日陰の存在で、人と接するのが苦手で、そんな自分を変えたくて警察官になったけど、やっぱり挫折して辞めようとしてる自分が、フェニックス? 陽キャ?



そんなすずめに、大岩捜査一課長(内藤剛志)が言います。

「誰にだって苦手なことはある。だが、それを克服しようとする勇気は、誰にだってあるもんじゃない。キミは壊されたフェニックスを一晩で直した。くじけても、何度でも立ち上がる。まさに不死鳥だ」

そして小山田管理官(金田明夫)と平井主任(斉藤由貴)も。

「フェニックス……俺は立派なあだ名だと思うぞ」

「そうだよ、私なんか大福だよ?」



さて、この辺りで笹川刑事部長(本田博太郎)が奇抜なコスプレで登場し、事件解決の糸口となる訓示を垂れるのが恒例なんだけど、なぜか今回は久々に、ふつうの格好で現れました。そんなに毎回毎回、お金をかけて趣向を凝らし、パフォーマンス出来るワケが無いとおっしゃるw



「私にだってオフは必要だ。いつもいつも全力投球できる者などいないのだ!」



もちろん今回も、それが事件解決のヒントになっているのだ! すずめは気づきます。

「一課長! 陽キャに疲れた陽木さんは、どこかで息抜きしてたのかも知れません!」



そう。実のところ渚は、根っから明るい性格じゃなかった。いつも無理をして「陽キャ」を演じてた。事件当夜もクラブを抜け出し、実は折り紙教室に逃げ込んで本来の自分に戻ってた。けど、それは誰にも言いたくない秘密なのでした。

そして渚にはもう1つ、ずっと抱えてきた秘密がありました。高校時代、学園祭前夜にすずめの折り紙=フェニックスを壊したのは、実は渚だった!

なぜなら、すずめに対してコンプレックスを抱いてたから。無理して「陽キャ」を演じてる渚とは対照的に、いつもありのままの自分を見せてるすずめに、彼女はずっと嫉妬してたのでした。だから本当の意味での「陽キャ」はすずめってワケです。



「ごめんなさい、尾山田さん」

「……フェニックスでいい」

「え?」

「フェニックスがいい!」



前回の記事で、やたらサバサバした態度で人と接する女性に覚える違和感、不快感について書きました。今回の渚と同じです。どこか無理をして「演じてる」のが透けて見えちゃうから気持ち悪いんです。

ヤクザが凄んで見せるのと同じで「滑稽だ」とも書きました。他者から見下されるのが怖い、嘲笑されるのが怖いっていうハートの弱さまで感じるからです。

やれ陽キャだ陰キャだとカテゴリー分けしたがること自体が弱さですよね。何とかして自分が優位に立ちたい、笑われないグループに属してたいっていう必死さ。ほんと滑稽です。

昔のドラマだと、陰キャだった子が陽キャの仲間入りを果たしてハッピーエンドだったのが、ようやく変わって来ましたよね。人間、そんな簡単に変われるもんじゃないし、異物を受け入れる寛容さも持ち合わせてない。世間はそんなに甘くない。

群れたいヤツらは勝手に群れてりゃいいし、少数派は少数派で堂々と振る舞えばいい。独りぼっちでも全然構わない。やっと、そういう自然な価値観が根づきつつあるのかも知れません。良いエピソードでした。

ストーリーも良かったけど、今回のエピソードが頭抜けて面白かったのは、尾山田すずめ巡査を演じられたゲスト=藤野涼子さんの演技力&吸引力の賜物でもありましょう。最高でした!



映画『ソロモンの偽証』でいきなり主演デビューされ、NHKドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』等でも注目された演技派の、とってもシリアスな女優さんってイメージを勝手に抱いてたもんで、そんな藤野さんがこんなユルい番組に出てくれるとは!ってw、もうそれだけで私は嬉しかったです。



他にも、鑑識課員役で元オリンピアの増田明美さん、折り紙教室の先生役でお笑い芸人の吉住さんが登場されたりして、本作のゲスト陣はいつも多彩です。(劇団EXILEのメンバーも出てたみたいだけど知った事じゃありませんw)

というワケで、ポートレートは藤野涼子さんと、渚を演じられた長見玲亜さんです。


 


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4 コメント

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Unknown (gonbe5515)
2022-06-06 05:49:54
陰ながら藤野涼子さんを応援しているgonbeです。
今朝の新聞で、今夜藤野さんが出演されるドラマ(NHK・BSプレミアム『あの胸が岬のように遠かった~河野裕子と生きた青春~』)があるのを知りました。
ここ最近、彼女をお見かけすることがなくなったなあと残念に思っていたので、お名前を見つけて大喜びしておりました。そのあとパソコンの前に座ってハリソン君のブログを開いたら、そこにも藤野さんの名前があったという・・・。しかも画像つき!

いやあ、今日はいいことありそうだ。
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Unknown (harrison2018)
2022-06-06 09:03:32
たしかgonbeさんが推しておられたなあ…と思いながら記事を書いてました。

最初からハイレベルな世界におられる女優さんで、このブログとは縁が無さそうと思ってたのに、ユルい世界へようこそ!って感じで嬉しいですw

もしかしたら我々オヤジ世代だけかも知れないけど、観る者を一瞬で味方にしちゃう吸引力があり、多部未華子さんと通ずるものも感じます。BSプレミアムのドラマも観なくちゃですね。
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Unknown (ムーミン)
2022-06-06 18:51:05
最近やり過ぎで変な方向ばかりに行っていたので気持ちが離れていました。今回久しぶりに見ましたが、面白かったです。こんなに見応えがあったのは久しぶりではないでしょうか。藤野さんの演技が光りました。正直ブランク主役の回とかいらないです。今回くらいのクオリティーで毎回お願いしたいです。
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Unknown (harrison2018)
2022-06-06 20:52:20
好みは人それぞれ違って当たり前。無理してまで観る必要は無いと思います。私は脱線も大歓迎でハマる一方なので、共感してくれる人が誰もいなくても観続けます!
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