ハリソン君の素晴らしいブログZ

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『太陽にほえろ!2001』2001

2019-05-05 00:00:11 | 刑事ドラマ HISTORY









 
『太陽にほえろ!』終了から約10年後、日本テレビ系列の金曜ロードショー枠で「放送開始25周年記念スペシャル」として『七曲署捜査一係』が3作、’97年、’98年、’99年に放映されました。

番組の生みの親である岡田晋吉さんが、中京テレビの重役に出世してドラマ制作からしばらく遠ざかっておられたのが、ようやくゆとりが持てる立場になられたんですね。

で、岡田さんは「単発でいいからドラマを創らせて!」って日テレに掛け合って、じゃあ数字が稼げそうな『太陽』の続編ならば、って条件でOKを貰ったんだそうです。

愛があるんだか無いんだかよく分かんない制作動機だけどw、とにかくTVドラマを創ることが好きで好きで仕方がないお人なんですよね。根っからのクリエーターなんです。

で、第1弾は20%、第2弾は22%という高視聴率を稼ぐ事になります。やっぱり『太陽』人気は根強く、舘ひろしさんが新ボスを演じる話題性もあって、視聴者に「どんなもんかな?」っていう興味を抱かせたんでしょう。

ところが、押尾 学をキャスティングした第3弾はいきなり16%にまで下がっちゃった。それには色んな要因があるでしょうけど、要するに「継続して観るほどの面白さじゃなかった」って事なんだろうと思います。

視聴率で失敗した『太陽』チームは翌年、舘さん主演による新しい単発ドラマ『刑事』を送り出すもまたもや失敗。(なぜ、そんなにしてまで、しつこく舘さんに刑事役をやらせるのか?)

いよいよ崖っぷちに追い詰められた岡田さんは、それまであえて避けて来た『太陽にほえろ!』というタイトルを、いよいよ番組名に冠して起死回生を図られました。それがこの『太陽にほえろ!2001』です。

新人刑事=ジュンこと松浦 淳に金子 賢というキャスティングは悪くないと思ったものの、ジーパン(松田優作)に憧れて刑事になったという設定には、さすがに失笑せざるを得ませんでした。

視聴者にとっては確かにジーパン刑事はカリスマ的存在だけど、ドラマ世界の中じゃ無名の(しかも30年も前の)一巡査に過ぎなかった人です。なのに、それを崇めて部屋にポスターまで貼ってる(しかも拳銃を構えたジーパンの勇姿。一体、誰が何の為に撮った写真なのか?w)って、まるでストーカーじゃないですか。

ファンサービスしてくれるなら、そんな無理やりな設定よりも、ドックやブルース、マイコン(笑)らの現在を見せてくれた方が、よっぽどファンは嬉しいですよホントに。

まぁ、そういったジーパン絡みの設定は、ゲストにシンコ=高橋惠子さんを迎えることから後付けされたのかも知れません。

だけど、ジーパン殉職を機に刑事を辞めた筈のシンコが、なぜか七曲署に鑑識課員として勤めてる(しかも舘ボスに惚れている!)っていう設定がまた、かえってオールドファンの神経を逆撫でしたように思います。

創り手に『太陽』への愛が無いワケじゃないでしょう。けれど、こんな無理やりな形で過去のキャラクターが引っ張り出される事を、ファンは誰も望んでない筈です。まして新しいファンはジーパンにもシンコにも思い入れは無いでしょうし。

せっかく馴染んで来た新一係メンバー達も、舘ボスを除いてなぜか総入れ替えされちゃいました。新キャストは大路恵美、宮下裕治、浪花勇二、工藤俊作、黒鉄ヒロシという面々。知名度が一番高いのが漫画家の黒鉄さんというw、何なんですか、この地味にも程がある人選は!

いや、地味なのが悪いワケじゃない。『七曲署捜査一係』三部作のメンバー達は、地味ながらも『太陽』らしい精悍さと熱さを感じさせてくれました。今回のメンバーにはそれが無い。

そうやって『太陽』らしさを捨てて、全く新しいドラマがやりたいんだったら、最初から他の番組として創ればええやろ!って思いました。ただ数字を稼ぐ目的だけで『太陽にほえろ!』の名を語らないでよ!って。

岡田さんとしては起死回生で、数字が良ければ連ドラ化も視野に入れてたという『太陽にほえろ!2001』ですが、残念ながら……いや、当然と言うべきでしょう、視聴率は11%という、昔の『太陽』なら絶対に有り得ない大惨敗を喫し、七曲署の歴史はほろ苦い結末をもって、幕を下ろしたのでした。

まぁ視聴率はどうでもいいとしても、やっぱりリメイクなんか最初からやるべきじゃなかったんです。オールドファンは「こんなの『太陽にほえろ!』じゃない!」って思うだけだし、新しい視聴者は「なんじゃ、この古臭い作劇は」って失笑するだけで、けっきょく誰も喜ばない。

唯一嬉しかったのは、大野克夫さんによる新しい『太陽』のスコアがたくさん聴けた事だけです。それとて昔の楽曲の方が遥かに良いんだけど。

ホントに、返す返すもこれが七曲署の終着駅だなんて、私としては残念で仕方ありません。せっかく裕次郎ボスの復帰をもって飾った有終の美が台無しになりかねません。

だけど所詮、リメイクなんて一過性のイベント、余興に過ぎないんですよね。誰も憶えちゃいないでしょうし、これが『太陽』の歴史に泥を塗ったワケでもない。だから腹も立ちません。

これで七曲署ヒストリーを締めくくるのもあんまりなんで、最後に良い話を書きますと、シンコ役の高橋惠子さんが一係室に入って「ボス」って台詞を言う場面の撮影で、高橋さんは涙が止まらなくなって、しばらく芝居が出来なくなっちゃったそうです。

それで1時間近く待たされた舘さんは、高橋さんを責めるどころか「そこまで気持ちが入ってるのは素晴らしいし、(『太陽にほえろ!』が) そんな番組だった事が羨ましい。OKベイビー」とか言って、すっかり高橋さんのファンになられたんだとか。

出演期間が長かったせいもあるでしょうけど(高橋さんは2年)、役者さんがそんなにまで出演作に対して愛着が持てるのって、現在じゃなかなか有り得ない事でしょう。

『太陽にほえろ!』って、そういう番組だったんです。だからこそ、我々ファンの心にも深く刻まれて、決して消えることが無いんですよね。
 

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