ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#095

2019-04-07 12:00:05 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第95話『愛のシルクロード』

(1974.5.10.OA/脚本=長野 洋/監督=木下 亮)

チンピラの刺殺死体が発見され、すぐに大学生の伊藤(山西道広)が容疑者として浮かびます。

ジーパン(松田優作)とシンコ(関根恵子)は、伊藤のガールフレンド=弥生(杉田景子)に話を聞きに行くんだけど、彼とは1年前に別れたから何も知らない、と素っ気ない塩対応。

そんな弥生を見て、伊藤が殺人を犯したことを既に彼女は知ってると直感するシンコ。女のカンは侮れないと見たボス(石原裕次郎)は、弥生の張り込みをゴリさん(竜 雷太)とジーパンに(爪切りしながらw)指示します。

かくして弥生の日常生活を見守ることになったジーパンは、清楚で誠実な彼女の人柄に惹かれて行きます。ところが、密かに伊藤と連絡を交わしてた弥生に、あろうことか拳銃を盗まれてしまう!

……容疑者の恋人、あるいは自身が容疑者である女性に新米刑事が惚れちゃう話と、拳銃を奪われちゃう話という、定番メニュー2つを合体させたようなストーリー。

タイトルにある「シルクロード」は、犯人の伊藤がいつか行きたいと夢見てた場所で、その為に貯めた資金をチンピラ2人に奪われたもんで逆上し、1人を刺殺し、残るもう1人を射殺すべく、弥生にジーパンの拳銃を盗ませたワケです。

弥生を演じたのは、優作さんと同じ文学座出身の杉田景子さん。TBSの昼ドラ『愛子』で主演デビューを果たし、その次の仕事が『太陽』本エピソードへのゲスト出演。’81年に早くも引退されてるので、数少ない出演作の1つです。

個人的な感想を言えば、優作さんの相手役としては物足りなさを感じます。ジーパンがああいう地味な女性に惹かれちゃうのは、ドラマ上のキャラクターとしては有りだけど、松田優作の相手役となると、やっぱり桃井かおりさんレベルの存在感が無いと釣り合いません。

その点、決して派手じゃないシンコ=関根恵子(現・高橋惠子)さんがジーパンとお似合いのカップルに見えるのは、いま思えば凄い事かも知れません。やっぱりスターのオーラってやつがあるんでしょうね。

今回、一週間も張り込みを続けるジーパンの食生活を気遣うシンコや、弥生に惹かれてる彼の様子に嫉妬するシンコの姿も描かれ、いよいよ「恋愛フラグ」なるものが立ち始めてます。話数は既に95話。ジーパンの殉職が第111話ですから、この辺りから最終章がスタートしたワケです。

優作さんもデビューから1年近く経って余裕が出て来たのか、例えば今回も「ああ、知ってる知ってる。シルク道路ね」みたいなw、優作さんらしいアドリブがちょこちょこ見られるようになってます。

山さん、長さん、ゴリさん、殿下らのキャラクターや、BGMの使い方にも違和感が無く、みんなが知ってる『太陽にほえろ!』の形が、いよいよ完成した時期とも言えましょう。
 
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『太陽にほえろ!』#094

2019-04-07 00:00:07 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第94話『裏切り』(1974.5.3.OA/脚本=鎌田敏夫/監督=木下 亮)

中光産業の売上金=二億五千万を横領し、往生際悪く逃げ回った挙げ句に神奈川県で逮捕された女=高村八重(横山リエ)を、ゴリさん(竜 雷太)と殿下(小野寺 昭)が引き取り、東京へと護送します。

「女なんてのはな、殿下。可愛い顔してても、なに考えてるか分かりゃしないよ」

お人好しなゴリさんらしくない台詞ですが、実はゴリさん、交際してた見合い相手に二股をかけられてた事実を知り、極度の女性不信に陥ってるのでした。

一生を左右する結婚相手を選ぶんだから天秤にかけるのは当たり前、とはお茶汲み久美ちゃん(青木英美)の弁。言われてみれば一理あるものの、純情一直線の若きゴリさんには通用しません。

そして護送される八重がまた、自由奔放かつしたたかな女で、ゴリさんをからかい、殿下に甘え、あの手この手で逃走を図る厄介者。ゴリさんの女性不信に拍車をかけます。

そんな彼らに、若い新婚カップルが声をかけて来ます。周囲の反対を押し切って結婚した2人で、誰にも祝ってもらえないから、せめて見知らぬゴリさん達に祝福して欲しい、一緒に弁当を食べて欲しいと懇願する。

殿下は冷静に固辞するんだけど、同情したゴリさんと八重は弁当を口にし、新宿駅に着いた直後に倒れちゃう。弁当にサルモネラ菌が盛られてたのでした。

ニセ新婚カップルを送り込んだのは、八重の恋人で恐喝の常習犯=下田(山口嘉三)。八重に売上金を横領させた挙げ句に暗殺しようとしたワケです。

なんとか一命を取り留めたゴリさんと八重。迂闊に他人を信じた自分を激しく責めるゴリさんとは対照的に、下田が自分を殺そうとするなんて有り得ないと言い張る八重。

「どこまで馬鹿なんだ、お前は」

「馬鹿だっていいじゃないか。惚れた男ぐらい信じなきゃ、生きてたってしょうがないよ」

結局、病院から脱走して下田に会いに行った八重は、他殺死体となって発見されます。下田を逮捕に向かう道中、ゴリさんは殿下にこう呟きました。

「あの女は、下田に殺されるのを覚悟で会いに行ったんだ。惚れた男を信じたかったんだよ」

八重とゴリさんは、実は似た者どうしだったのかも知れません。別のエピソードで「騙されるのがそんなに悔しい事なのか? そんなに恥ずかしい事なのか?」なんて言ってたのは誰あろう、ゴリさん自身なのです。

もちろん、下田は怒りのゴリパンチを100発ほど浴び、めでたく廃人となりますw

「ゴリ。少しは女の見方、変わったか?」

ボス(石原裕次郎)の言葉に頷くでもなく、なんだか切ない笑顔を見せるゴリさんなのでした。

本エピソードは『太陽にほえろ!』が初めて視聴率30%台を記録した作品として、ファンにはよく知られてます。これと言ったトピックは無いんだけど、ゴリさんのキャラクターや番組の基本スピリットがよく分かる『太陽』らしいエピソードではあります。

また、八重を演じる横山リエさん(当時27歳)が奔放なキャラにピッタリで、とても魅力的でした。

1969年、大島 渚監督の映画『新宿泥棒日記』で主演デビューし、『銭ゲバ』や『天使の恍惚』『女囚701号 さそり』など多数の映画、刑事物や時代劇を中心にテレビドラマでもご活躍された女優さんです。
 
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『太陽にほえろ!』#079

2019-04-06 12:00:08 | 刑事ドラマ'70年代









 
『太陽にほえろ!』屈指の名作と言われ、殿下(小野寺 昭)の代表作とも位置づけされるこのエピソードが、匿名の一般ピープルによる投稿プロットを原作にしてるってのは、ちょっと皮肉な話かも知れません。

「こんなエピソードが観たい!」っていうファンならではの発想は、創り手側にはなかなか出来ないものかも知れません。第452話『山さんがボスを撃つ!?』も然り。

また、本作は第70話『さよならはいわないで』で初登場した殿下の恋人=悠木麻江(有吉ひとみ)2度目の登場エピソードでもあります。

プロットを書かれた投稿者さんは、殿下に恋人がいることを執筆時はまだ知らなかった筈で、ゆえに麻江は全く本筋には絡んでません。でも、だからこそ強く印象に残るんですよね。

今回、殿下はとんでもなく酷い目に遭うんだけど、一般人の麻江には全く何も出来ないワケです。ただひたすら気を揉むだけで、そばにいてあげる事すら出来ない。恋人として、それ以上にツラいことは無いでしょう。

また、同僚の立場から殿下の身を案じるシンコ(関根恵子)もいて、さらに小学生時代から殿下を慕う女性まで登場しちゃうという、殿下のハーレム人生を描いたエピソードでもありますw


☆第79話『鶴が飛んだ日』

(1974.1.18.OA/脚本=長野 洋/監督=竹林 進)

殿下が行きつけの喫茶店で目眩を起こし、店のママ=紀子(北島マヤ)に介抱され、紹介された医者(中井啓輔)の手当てを受けます。

そして勧められるまま通院するも体調は改善せず、ついに幻覚症状が出て来て、殿下は戦慄します。そう、医者から毎日打たれてた注射は麻薬だった!

七曲署がGメンと合同捜査でマークしてた麻薬組織が、刑事を密告者にして捜査情報を聞き出すべく、中毒者の紀子を使って殿下を罠にハメたワケです。

監禁され、さらに麻薬を打たれ続ける殿下を、藤堂チームが必死の捜査で居場所をつかみ、救出します。が、時すでに遅し……

禁断症状に襲われ、注射器に手を伸ばす殿下に、山さん(露口 茂)が例によって背後から、クールに言い放ちます。

「苦しいか? 打てばラクになる。だが、その後はまた地獄だぞ」

「……分かってます! しかし……しかし僕はもう駄目なんです! この体はもう、クスリ無しでは生きて行けないんです!」

殿下を罠にハメた紀子は、実は小学生時代の同級生だった。遠足の時に殿下から貰った小石を、今も大事に持ってる紀子。

たぶん紀子は、殿下がすぐ仲間になってくれるものと思ってた。だけど必死に抵抗する殿下を見て、過ちに気づいた紀子は彼を逃がそうとし、組織に殺されてしまう。

「土壇場で彼女は命を張って、お前を救おうとしたんだ。その気持ちを無駄にしてもいいのか!?」

山さんの言葉で我に返った殿下は、禁断症状が治まるまで自分を監禁して欲しいと志願します。それを聞いた山さんは手錠を取り出し、殿下と自分を鎖で繋ぐのでした。

「俺も付き合ってやる。長い夜になるだろうからな」

あのソフト&クールな貴公子=殿下が、絶叫し、髪を振り乱し、眼を剥いてヨダレを垂らしながら大暴れする姿には、ファンならずとも衝撃を受けずにいられません。

本当に物凄い迫力で、このエピソードで麻薬の恐ろしさを思い知った視聴者も少なくないでしょう。

そして手首から血を流し、痛みに耐えながら必死に殿下を押さえる山さん。その血はメイクではなく、本当に撮影で流した血なんだそうです。

「殿下! 苦しいのはお前だけじゃないんだぞ! ボスも、みんなも、そして麻江さんも! 同じように苦しんでるんだ!! 殿下、頑張れ! 頑張るんだっ!!」

2人の壮絶な姿を見てるだけで涙が出るんだけど、殿下の絶叫を部屋の外でじっと聴いてる、麻江の表情を見たらもう、涙腺爆発ですw

たぶんプロットには存在しない、本来なら必要なかった筈の麻江の存在が、このエピソードにより深い感動をもたらしてる。

その代わり、本来ヒロインだった筈の幼なじみ=紀子の印象が薄くなっちゃったのも事実。恐らく女性であろう投稿者さんは、殿下と紀子のメロドラマをメインに想定されてたんじゃないでしょうか?(紀子に自分自身を投影されてたのかも?)

それが番組側の事情で、麻江にウェイトが置かれちゃった。普通なら話のバランスが崩れちゃうところが結果オーライで、より素晴らしいエピソードに仕上がった……てないきさつがあったんじゃないかと推察します。

麻江は3度目の登場エピソード(第87話)で惜しくも事故死しちゃいますが、演じた有吉ひとみさん(当時26歳)は第488話へのゲスト出演を経て、第521話『ボギー刑事登場!』からボギー(世良公則)の姉=春日部正子として、再びセミレギュラー入りされる事になります。

日テレの青春シリーズ『でっかい青春』の生徒役でデビュー後、主に’70年代のドラマで幅広くご活躍された有吉さん。清楚かつ明朗なキャラクターは、実に『太陽』向きの女優さんだと思います。
 
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『太陽にほえろ!』#073

2019-04-06 00:05:09 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第73話『真夜中に愛の歌を』

(1973.12.7.OA/脚本=小川 英&中野顕彰/監督=竹林 進)

深夜ラジオの人気DJ=M.M.こと牧恵美子(森みつる)の番組に、リスナーからの脅迫めいたリクエスト電話が入り、たまたま放送を聴いてたゴリさん(竜 雷太)が捜査を始めます。

やがて、電話の主はミュージシャン志望の若者=植村(堀内正美)である事が判明。M.M.が作詞し、大物作曲家=マイケル中江(渥美国泰)が作曲したとされる大ヒット曲は、実は植村が創った曲だった!

メジャーデビューという餌に釣られ、植村はマイケルのゴーストライターとして利用されていた。それを告発しようにも証拠が無く、せめてもの抵抗がラジオの生放送への脅迫電話だったワケです。

そして翌日、マイケル中江が鈍器で殴られ、重傷を負います。犯人は、M.M.の付き人=洋子(中田喜子)。植村に想いを寄せる洋子は、盗作の証拠となる楽譜を盗もうとしてマイケルに発見され、揉み合った末に弾みで殴ってしまったのでした。

洋子に罪を犯させてしまった自責の念から、いよいよ自暴自棄になった植村は、マイケルの共犯者であるM.M.の生命を狙うのですが……

「騙される事がどうして恥ずかしいんだ? どうして人を殺さなきゃいけないほど悔しい事なんだ!?」

植村に同情しながらも……いや、だからこそ、ゴリさんは必死の想いで犯行を阻止します。

「人を信じる事は若者の特権だ。俺はそう思ってる。俺は……俺みたいなお人好しは、そう信じなきゃ生きて来れなかったんだ!」

人を騙すくらいなら、騙される方がずっといい……『太陽にほえろ!』が一貫して説いて来た人生訓だけど、卑劣な詐欺事件が後を絶たない現在では、綺麗事にしか聞こえないかも知れません。

それでも、『太陽』はじめ昭和のドラマを観て育った私は、騙すよりも騙される側の人間でありたいと今も思ってます。金はビタ一文やらないけどw

当時流行りつつあった深夜ラジオ放送に盗作問題を絡ませ、芸能界の泥沼に嵌まった若い男女の悲恋を描いた本エピソードは、主役のゴリさんが傍観者に過ぎない点から見ても異色作と言えましょう。

洋子を演じた中田喜子さん(当時20歳)がとにかく可愛くて、萌えますw NHK『連想ゲーム』の紅組キャプテンや朝ドラ『春よ、来い』の主役、長寿ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』の文子役などで知られる女優さんです。

『太陽』では後に殿下(小野寺昭)の妹=島 京子としてセミレギュラー出演、第194話『兄妹』では再び堀内正美さんと共演される事になります。

その『兄妹』における堀内さんの役どころは、京子に片想いした挙げ句にバスジャックまでやらかしちゃうストーカー。第417話『ボスの誕生日』ではスニーカー(山下真司)を恨んで直子(友 直子)を拉致するストーカー、第690話『私が七曲署の藤堂だ』ではボス(石原裕次郎)に付きまとうストーカーとw、屈折した逆ギレ男の役がやたら多い堀内さん。ナイスミドルになられた現在でも、朝ドラ『純と愛』等で屈折した逆ギレお父さんを見事に演じておられますw
 
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『太陽にほえろ!』#072

2019-04-05 12:00:25 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第72話『海を撃て!! ジーパン』

(1973.11.30.OA/脚本=鎌田敏夫/監督=竹林 進)

地方から修学旅行で上京した女子高生が殺害され、被害者の文通相手だった若者=加納(山西道広)に容疑がかかります。

加納は、行きつけのバーのママ(夏川 圭)が隠し持ってた拳銃を奪って逃走、ジーパン(松田優作)とシンコ(関根恵子=高橋惠子)がその行方を追いますが、ジーパンの目の前でシンコが撃たれ、重傷を負っちゃう。

加納は自分の眉間を撃ち抜いて自殺、これで事件は収束したかと思いきや、実は加納はシロで、被害者の仇をとる為に拳銃を奪ったことが判明。真犯人はシンコを撃った後、全ての罪をなすりつけるべく加納の眉間を撃ち抜いたワケです。

自分が拳銃さえ持っていれば、シンコは撃たれずに済んだかも知れない……

これまで頑なに拳銃所持を拒んで来たジーパンが、ついに拳銃を手にし、ボス(石原裕次郎)から射撃特訓を受け、真犯人に銃口を向けます。

そう、ジーパン=松田優作さんが初めてGUNアクションを披露した、これは日本のTVドラマ史上でも記念すべきエピソード。ボス=石原裕次郎さんと優作さんが並んでハイパトを撃ちまくる映像なんて、ちょっと余所では見られないスペシャル感があります。

さらに、モーターボートで逃走を謀る真犯人を追って、ジーパンが拳銃片手に突堤を全力疾走するシーンは『太陽にほえろ!』史上でも……いや、日本のアクション映画史上でも屈指の名場面と言えましょう。

シンコの負傷にうろたえ、怒りに燃えるジーパン。そして見舞いに来たジーパンからバラの花束を贈られ、本当に嬉しそうに頬を染める、パジャマ姿のシンコ。

やがて2人が婚約に至る展開への、最初の伏線になった重要作とも言えます。(ただし実際は、この時点じゃ2人をくっつけるプランはまだ無かった模様)

ついでに言えば、優作さんの盟友で後に『探偵物語』等でも共演する、山西道広さんのゲスト作でもあり、やたらと見どころが多い!

番組自体が上昇気流に乗りまくってた、当時の『太陽にほえろ!』の勢いや熱さを象徴する必見エピソードです。
 
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