源氏物語と共に

源氏物語関連

召人(めしうど)

2009-01-30 11:30:09 | 登場人物
源氏物語には召人(めしうど)という人達が出てくる。
つまりお手つきの女房の事であるが、
この人達は身分差から、あまりに大事にされない。
一人の女性としては扱われないようである。



(小宰相)
あはれ知る心は人におくれねど
    数ならぬ身に消えつつぞふる (蜻蛉)




浮舟が失踪して悲しむ薫に小宰相がこの和歌を送った。


この「数ならぬ身」を単に数にも入らない人間の存在として考えるか
数にも入らない女性として考えるか両方考えられるが、
後者と考えるのは私の勝手な解釈。


紫式部も、道長の妾という話もある。
実際にパトロンだから、
あの戸をあけなかったという有名な歌の後は、
そういう事になったのかもしれないという説もあるようだ。


道長も、定子にぞっこんの一条天皇を彰子の所へこさせるために、
源氏物語を書く紫式部を手に入れておこうという考えもあったのかもしれない。


源氏物語の様々な女性の話は、
道長がそういう関係の時に話をしてそれを書いたのではという説もある。


ともあれ、源氏物語には召人という存在が出てくる。
最初に出てくるは葵付きの女房。
葵の態度があまりにもつれなくて、
光源氏は葵つきの女房・中納言の君に向かった様子が「あさき夢みし」にもあった。


須磨で謹慎するお別れに、葵の父左大臣家を訪れた時も、
中納言の君と語っている。
角川文庫で玉上先生は、「君」とあるのは、
お手つきの上臈という頭注をつけられている。
他にも色々ありそうだ。


その後、紫の上が亡くなった後も、
唯一小さい頃から使えていた若い女房・中将の君を
慰めにしていたとあった。


胡蝶でも蛍兵部卿に召人が沢山いるとあり、
髭黒大将にも木工の君他があった。


宇治十帖でも驚くことは、
匂宮が浮舟を女一の宮の侍女にとしか考えていなかった事。
つまり召人ぐらいにしか思っていなかったという事であろうか。


本来なら八の宮という親王の血筋なのに、そんな存在になるという事なのか。


流石に中の君は、正妻扱いだったが、
薫も大君とはグズグズしていた関係だったのに、
浮舟とはあっさり契り、宇治に浮舟を抱いて連れていく牛車の中で
大君の事ばかり思って泣いていた。


また明石中宮つきの女房・小宰相とも親しいようで、
先ほどの和歌はこの人であり、折にもあって薫はさっそく訪れている。
また浮舟らしき人が現れた事を僧都から聞いた明石中宮は、
小宰相から薫にこの話を伝えさせている。


こういう身分差の話は、この時代によくある事なのだろう。


こういう人達の存在をはっきり描いている所などは
物語としては珍しいのではないか。他の物語にあるのかは知らないけれど。


「蛍」の物語論なども見ても、物語はうそではなく後の世に言い伝えたい節々を
心にこめがたくて言いはじめたといっている。


浮舟の母も、八の宮の妻の姪であったようだが、
浮舟の認知もされず、彼女が多情だったにせよ、
ずいぶん召人のようなひどい扱いのように思う。


定子の兄伊周(これちか)も、亡くなった後に女房になるなと娘に遺言しているが、
実際にはすぐに女房になってしまったようである。


宇治十帖にも亡くなった式部卿の娘が継母であったせいか可愛そうな境遇になったのを
明石中宮がひきとり女一の宮の女房となり、裳をつけているとある。


薫はその事に対して、この間までは式部卿が東宮にさしあげようか、
私にまでと、ほのめかしておられた境遇だったのにと言っている。


平安時代は身分差が激しい。


桐壺更衣も身分でいじめられたし、
明石の上も、身分差のために紫の上に子供を預けた。


何だか女性にとって、大変な世界だとあらためて思う。


現代に生まれてきて良かったです。




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