ハナママゴンの雑記帳

ひとり上手で面倒臭がりで出不精だけれど旅行は好きな兼業主婦が、書きたいことを気ままに書かせていただいております。

イアン・ハントリーの家族 (後編)

2016-08-24 22:03:48 | 事件

《 イアン・ハントリーの家族 (前編) からのつづき 》

 

 ハントリーと離婚後彼の弟ウェインと2000年7月に結婚したクレア・エヴァンズは、警察がハントリーを逮捕にきたとき、

彼を含む家族と一緒にいた。 ハントリー逮捕時の彼女の回想。

 

「尋問から解放されたイアンを、ケヴィン(父親)とウェインが迎えに行ってケヴィンの家に連れてきたの。 リンダ(母親)は

居間に来るのを拒否し、ウェインは落ち着かなげに歩き回るだけ。 それで私がイアンの隣に座り、彼に訊いたの。

『本当のことを言って。 何があったの?』

彼の返事は 『何でもない。 全部マキシーンだ。』 だったわ。

そこで言ったの。 『イアン、答えて。 そんな風に言わずに。』

私は段々イライラしてきた。 真実を話すまで、彼を殴りつけてやりたかった。 イアンは警察が彼に濡れ衣を着せようとしていると

ぶつぶつ言っていたわ。 相変わらず尊大で高慢な態度で微笑みながらね。」

しばらくして警察が、玄関ドアから突入してきた。

「修羅場だったわ。 2人がイアンに近づいて言ったの。

『イアン・ハントリー、ジェシカ・チャップマンとホリー・ウェルズの殺害容疑で逮捕する』。

私は叫び声を上げた。 耳に入った言葉が理解できなかった。

警官たちがイアンに手錠をかけると、尊大で高慢だった彼は急にしょぼくれた老人のようになって、両腕と両脚を

ぶるぶる震わせて・・・ 私は彼に向かって叫んでいたわ。 『人でなし! この人でなし!』 ってね。」

 

下右: ハントリー、弟ウェインとクレア

   

           下左: ウェイン・ハントリーとクレア            下右: イアン・ハントリー、彼の母親とマキシーン・カー

            

 

 間もなく質問のため警察に呼ばれた家族は、ハントリーが精神病棟に移されたことを聞いた。

「イアンは震えが止まらない、精神に異常をきたした人のふりをしていたの。 でもウェインにはわかっていた。

あれは刑を軽くしてもらうための演技だってね。 ウェインと私は彼にどこもおかしなところがないことを証明する

決心をして、次に彼に面会に行ったとき、彼を騙したの。 まるで何事もなかったかのように、普段と同じように

彼に話しかけて。 彼はすぐに演技を忘れ、震えるのをやめて普通に話をしたわ。

その様子は防犯カメラに録画されていたから、すべての看護師がイアンは正常なことに気がついたの。」

数日後ハントリーは警察に戻され、裁判にかけられることを教えられた。

 

ソーアムの事件後、ウェインとクレアの結婚も破綻に向かい、2人は2005年に離婚した。

その後再婚した彼女は、新しい夫との間に2人の子供をもうけて現在に至る。

 

ハントリーの弟ウェインによると、ハントリーは小学校在学中に徐々に、常軌を逸した暴力性を見せるようになった。

いじめっ子だったハントリーには、弟も格好の標的だった。 ウェインはハントリーに目の下に傷跡が残るほど殴られた。

母親の制止にもかかわらず集中的に頭を執拗に蹴られたときは、恐怖のあまり14km離れた父親が働く工場まで歩いたほどだった。

ハントリーが隣家の庭から自宅の庭にいたウェインに向かって投げたレンガがウェインの頭に当たって血だらけになったときは、

救急車が呼ばれた。 境の塀が高くて誰が投げたのか見えなかったのをいいことに、ハントリーはそれを隣家の

年下の女の子のせいにし、数年してから笑いながら自分だったと告白した。

成長したウェインがハントリーに向かって 「今度同じことをやったら、まっすぐ警察に行くからな」 と警告してはじめて、

ハントリーの弟いじめは止まった。

 

ハントリーの弟ウェインによる逮捕時の状況は以下の通り。

(ネット・ニュースで紹介されていた、ウェイン・ハントリーの著書からの抜粋。 のシロウト意訳。)

 

2002年8月16日の午後11時に電話が鳴った。 リンダがキッチンで電話をとった。 ハントリーからだった。

彼は警察によって入れられたケンブリッジ郊外のホテルの部屋にいた。

彼女をサポートするため家族が周囲に立つ中、リンダは息子に、その答を絶望的に怖れながら、訊いた。

「おまえがやったの?」

短い間のあと、ハントリーは言った。

「愛してるよ、母さん。」

その瞬間、母親は息子がやったのだと悟った。

ウェインは父親ケヴィンとともにハントリーを迎えに行き、クレアとともにあとに残ったリンダはつぶやいていた。

「あの子がやったのよ。 私にはわかってる。」

 

8月17日、午前0時半。 裏口のドアが開いた。 リンダはそろそろと寝室から出てきた。

憔悴しきった息子の顔を見て、リンダは泣き出した。 息子の体に腕をまわしたが、息子は母親を抱き返そうとはしなかった。

「僕が母さんを愛してること、知ってるよね?」

「わかってる、私も愛してるわ。」

「マキシーンの面倒をみてくれるよね?」

息子は母親を少しばかり押し戻し、二人はお互いを正面から見つめあった。

数滴の涙が息子の頬を伝い落ちた。 息子は何か言いたそうにしていたが、言えなかった。

神経質な生徒のように体重を片脚からもう一方の脚へと交互に移しつつ、床を見つめるだけだった。

 

誰かがハントリーにお茶をいれた。 リンダは彼に風呂に入りたいか訊いたが、彼は入りたくないと答えた。

クレアはタオルで彼の顔を拭いてやった。 クレアがリンダに、イアンの隣に座るよう言ったが、リンダにはできなかった。

息子を拒みたくはなかったが、二人の母親の世界を自分の息子が破壊したという事実は、重すぎた。

ハントリーは低い声でつぶやき続けた。 「もうすぐ逮捕される・・・」

父親と弟にも、ハントリーに訊きたいことは山ほどあった。 「やっていないというのなら、濡れ衣を着せられるというのは

どういうことだ? 自分に注意が向けられるような、どんなことをしたんだ?!」

突然ハントリーが切れた。

「警察に何時間も尋問されて、ようやく解放されたんだぞ! 同じことをされるためにここに来たんじゃない!」

 

その頃ソーアムでは、刑事たちが中学校の倉庫に押し入ろうとしていた。 そこでは2枚の鮮やかな赤色のマン‐Uシャツが、

ホリーとジェシカの他の衣類とともに発見された。 ハントリーのベッド脇のキャビネットからは、彼が預かっていないと

申し立てていた倉庫の鍵が発見された。

午前4時15分、4台の車がハントリーの父親の家の外に到着し、平服の刑事たちが玄関ドアから突入してきた。

刑事の一人がウェインに突進して襟首をつかみ、右腕を背にねじ上げて叫んだ。 「こいつか?」

ウェインは落ち着いた声で応えた。

「僕は弟だ。 イアンを探しているのなら、彼は居間にいるよ。」

 

2人の刑事がハントリーに近づいた。 ハントリーは立とうともしなかったので、座ったまま手錠をかけられた。

彼の膝はがくがく震えていた。 状況が理解できないように見えた。 ぐったりと前のめりになって、手錠をかけられた

両手を見つめていた。 ウェインは兄の、先ほどの喧嘩越しの態度からの豹変ぶりに驚いた。 まるで撮影開始の

合図を受けた俳優のようだった。 ハントリーは煙草を吸わせて欲しいと頼み、その願いは叶えられた。 次に彼は、

テーブル上にあった財布にゆっくりと手を伸ばした。 「マキシーン・・・」 とつぶやき、赤毛の恋人の写真を一緒に

持っていきたいと頼んだが、その願いは叶えられず、動かないよう指示された。

刑事の一人が 「さぁ、行く時間だ!」 と言い、刑事たちはハントリーをゆっくりと立ち上がらせた。

午前5時05分に、ハントリーは去った――すすり泣く母親を後に残して。

母親は刑事たちに向かって叫んだ。 「さよならも言わせずに連れて行ってしまうのね!」

それを聞いたウェインは、 (ホリーとジェシカの両親にだって、さよならを言うチャンスなどなかった) と思わずにはいられなかった。

 

ハントリーの父親の家は、犯罪現場の可能性があるため徹底的に捜査されねばならず、ケヴィンは家族とともに、

できるだけ早く家を出るよう告げられた。 家を離れる車中でリンダは声を上げた。

「何てこと・・・ まさかあの子、ガレージに入れたりはしなかったわよね?」

数晩前に引っ掻くような金属的な音や、ドスンという何かを落としたような音を聞いていたからだった。

ケヴィンにはリンダの言葉がほのめかしていることはすぐにわかった。

まさか息子は、殺害した2人の少女の遺体を父親の家に隠したりはしなかったわよね?

考えられないことだった。 しかしハントリー家の人間には、考えられないことが日常になりつつあった。 ・・・・・

 

弟のウェイン・ハントリー    /    母親リンダ     /     説明書きがなかったけれど、おそらくイアン・ハントリーの両親?

    

 

 2004年7月23日、マキシーン・カーの母親シャーリー・キャップは、裁判中に目撃者を脅迫したかどで6ヶ月の刑を受けた。

キャップの隣人のマリオン・ウエスターマンはホリーとジェシカが行方不明になったすぐ後に 「キャップの家の前で車の後部を

見つめながら泣くカーとハントリーを見た」 ことを警察に話していた。 キャップの脅迫により、ウエスターマンは証言を翻して

法廷での証言も拒否するところだったという。

(カーと母親の姓が違うのは、カーだけが母親の結婚前の姓に変えたため。 カーは、自分が2歳のときに

母親と自分を捨てて出て行った父親を嫌悪するあまり改姓した。)

 2005年9月14日、ハントリーは別の囚人に襲われ熱湯で火傷を負わされた。

2006年9月5日薬剤を大量服用し監房の床に意識不明で倒れていたハントリーは病院に救急搬送されたが、

翌日には刑務所に戻された。

2007年にハントリーは、1997年に起きた11歳の少女の性的暴行を告白した。

2010年3月、囚人のダミアン・フォークスに襲われ、咽喉を切られた。

 

 服役を始めたハントリーは、その後面会に来た父親に対して、裁判中に嘘の証言をしたことを告白している。 彼によると

ジェシカを窒息させたのは叫ぶのをやめさせるためではなく、彼女が携帯電話で助けを呼ぶのを止めるためだった。

 

ハントリーが過去の告発歴にも関わらず中学校に職を得ていたことを重くみた当時のブランケット内相は、警察やソーシャル・サービスを含む

関係機関への調査を開始。 離れた地域同士の横の連絡や情報交換の不備が明らかになり、犯罪者リストの全国ネットワーク作りや

社会的弱者(高齢者・子供・障害者など)に接する職に就いている人間の犯罪歴チェックが義務化された。

またハンバーサイド警察のトップは、停職処分を経て早期退職に追い込まれた。

 

精神疾患患者を演じていた頃のハントリー

 

*       *       *       *       *       *       *       *       *       *


これまでに二度、囚人仲間に襲われたハントリー。

同情できるかって? もちろん、・・・・・ぜぇ~んぜんっ!

同じ凶悪犯の中でも子供殺しやレイプ殺人の犯人は、ことさらに囚人仲間に蔑まれ嫌悪されるそうです。

彼の咽喉を切りつけたフォークスという囚人は、その後7歳の子供を殺して服役していた囚人の殺害に成功(?)し、

二度目の終身刑を受けました。 ハントリーは自分が標的であることを重々承知していて、毎日刑務所内のジムで

筋トレに励んでいるそうです。

 

弟ウェインの言葉:

「イアンは老齢に達するまでは生きないような気がする。 きっとまた自殺を試みるだろう。

でもそれは許されるべきではないと思う。 安易すぎるからだ。

イアンは死の直前の数分間に、自分が2人の少女に味わわせた苦痛と恐怖を感じるべきだ。

自分が襲われたことによって、自分の命のために闘うということがどういうことなのか、身をもって知ったはずだ。

僕自身はイアンに死んでもらいたい。 でも両親や僕がどう思うかなど、ここでは問題じゃない。

問題なのは、あの子たちの遺族だ。 遺族が投げ込まれた状況に比べたら、僕らの気持ちなど比較にすらならない。

だから彼が死ぬのなら、自分の手で死ぬべきじゃない。 それは卑怯者の選択だ。

イアンは毎日自分のしたことと向き合い、殺されるかもしれないという可能性に怯えながら生きるべきだ。

事件後謝罪の一言すら漏らさず、改悛の情の片鱗すら見せず、あの日なぜ、どのように2人の少女が

死に至ったのかを、未だに語ろうとしないのだから。」

 

同じ両親の元に生まれ、同じ家庭環境で育った二人。 一人は至極真っ当に成長したのに、一人は悪の化身へと変貌。

イアン・ハントリーの悪は、生まれたときすでに遺伝子として組み込まれていたのだろうか。

でももしそうだとしたら、犯罪を犯したのは遺伝子のせいで、本人には罪はない?

それゆえ (イギリスにも死刑があって、とっとと縛り首になっちゃえばいいのに!) というような私の考えは間違ってる!?

科学/化学に弱い頭で、いろいろと考えさせられます・・・・・

 

 

《 ホリーの家族 につづく 》

 

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1 コメント

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Unknown (梨佳)
2018-07-23 20:52:34
強姦の段階でしっかりムショにぶち込んでおけば少女が殺されずに済んだのに...
あと、囚人に襲われてそのまま地獄に堕ちてほしかったですね!
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