ハナママゴンの雑記帳

ひとり上手で面倒臭がりで出不精だけれど旅行は好きな兼業主婦が、書きたいことを気ままに書かせていただいております。

イアン・ハントリーの娘

2016-08-04 23:33:03 | ひと

先月私の関心を惹いたニュース。


イアン・ハントリーの生物学上の娘が、自分の実の父親の正体を知ったときのことを公に語ったそうだ。

30歳以上のイギリス在住者なら、多くが忘れられないであろうその名・・・ 悪名。

 

鏡をのぞき込み、指で頬をなぞりながら、「私、あの男に似てる? どこか似ているところはある?」

 14歳のサマンサは、母親のケイティーに訊いた。・・・・・
 

サマンサ・ブライアン(下左)は現在18歳。 イアン・ハントリー(下右)の娘である。

            

 

同棲していたハントリーの暴力にさらされ続けたケイティーは、サマンサを身ごもっていたとき、意を決してハントリーと別れた。

どん底の状態にあったとき、子供時代から知っていた誠実で愛情深いマーティン・ブライアンと再会。

二人はのちに結婚し、サマンサには優しい父親と、3人の妹ができた。

マーティンはサマンサを我が子として愛し、2009年に正式に養女にした。

 

ハントリーが事件を起こしたとき、サマンサは4歳だった。 彼女が11歳のとき、ケイティーは彼女に話した。

マーティンは実の父親ではないこと。

彼女を赤ちゃんのときから愛し慈しんで育ててくれたのはマーティンなのだから、彼が彼女の父親であること。

彼女の実の父親は、“二人の女の子にひどい事をした、とても悪い男” だということ。

サマンサは生来好奇心旺盛だったが、実の父親に関してはそれ以上知ることを望まなかった。

 

驚くべき事実を知ったのは、14歳のときだった。 学校の課題で社会事件について調べていた。

ある凶悪事件に関連した画像をサーチしていたら、モザイクでぼかしてはあったものの、

見間違えようのない自分の母親と子供時代の自分自身の画像が出てきた。

理由を悟った彼女に衝撃が走った。

「胸を踏みつけられたようなショックだったわ。 体が震え、涙が止まらなくて・・・」

教室から逃げ出し、トイレに篭って気分を落ち着かせようとしたができず、そのまま帰宅した。

 

誰にも言えないまま、2週間が過ぎた。 食欲を失くし、事件のことばかりを考え続けた。

とうとう沈黙に耐えられなくなったサマンサは、母親に告白した。

ケイティーは娘を抱き締め、慰め、それからまっすぐに娘の瞳を見つめてこう言った。

「あなたは彼に似たところはどこにもない。 外面にも内面にも。 これまでだって、これからだって、ずっとそうよ。」

 

ケイティーとイアン・ハントリー(下左)と、二人が同棲したフラットがあった家(下右)。

 

 

その後の長い間、サマンサは悪夢にうなされた。

イアン・ハントリーが窓から彼女の寝室に侵入し、彼女までをも殺そうとする夢だった。


今年6月21日の、サマンサの18歳の誕生日の数日前。

ケイティーは彼女に、「本当に真実を知りたいか」 を確認したあと、新聞記事の切り抜きを集めた箱を渡した。

そこにあったのは、ハントリーが起こした事件の詳細だけではなかった。

 

「読み進めるうちに、母が耐え凌いだ恐怖を初めて知ったの。 ハントリーは母を殴り、レイプし、私を身ごもっていた母を

階段から突き落とした。 私を殺そうとしたのよ。 気分が悪くなって、何度も読むのをやめて泣いたわ。

あんなひどい状況におかれた誰かを想像することすら難しい。 ましてやそれが、自分の母親だなんて。

読み終えたあと、母と私は私の涙が止まるまで抱き合ったわ。 母は言ったの。

『実のところ、私を救ってくれたのはあなただったのよ。 あなたを身ごもっていなかったら、彼から逃げられなかっただろうから。』

母の言葉で、ずっと感じ続けていた暗い影が払い除けられた気がした。 大丈夫、私の中には彼の悪は存在していないと。」

 

ケイティーは15歳のとき、当時24歳だったハントリーと出会った。 ハントリーの甘言に乗ってケイティーが家を出ると、

心配したケイティーの両親は警察に届け出た。 ハントリーは警官に嘘を並べ立てた。 ケイティーは親と言い争った結果

家出してきた。 ケイティーと自分の関係はプラトニックなものだ。・・・

15ヶ月続いた二人の関係中、ハントリーは何度も彼女を殴り、レイプした。 彼女が妊娠してからも容赦しなかった。

1998年2月に、ケイティーはハントリーから最後の、そして最悪の暴行を受けた。

彼女を暴力的にレイプしたハントリーは、さらに腹部を殴り、階段から突き落とした。

予定日より3ヶ月も早く生まれたサマンサの心臓には穴があり、彼女は病院にいる間に二度死にかけたが、

それはハントリーの暴行に起因するとケイティーは信じている。

 

サマンサにとって、ハントリーは何の意味も持たない赤の他人だ。

「彼の名前を口にすらしたくないわ。 そうするとその存在を認めてしまうことになりそうだから。 彼は私の父親だったことは

一度もない。 精子提供者でしかないわ。 彼と遺伝的な繋がりがあるなんて、考えることすらおぞましい。

私の父親はマーティンよ。 私が生まれた時からそばにいてくれた。 私のおむつを取り替え、自転車に乗れるように

なるのを手伝ってくれた。 病気のときは慰めてくれ、私を愛してくれた。 こういったことで、父親は父親になるの。

生物学なんて何の意味もないわ。」


ボーイフレンドができると、サマンサは自分とハントリーの関係を告白してきた。 過去のボーイフレンドのうち一人は、

サマンサにハントリーの“悪” が存在していると信じて彼女と別れた。 別の一人は “将来ハントリーが釈放されたら

自分を殺しに来るかもしれない” ことを怖れて彼女から去った。 しかし彼女は、落胆していない。

  「私が名乗り出ることを決めたのは、自分が存在することを恥と思いたくはないからよ。 恥じてしまったら、私は彼の

もうひとりの犠牲者になってしまう。 彼が多くの人にもたらした悲嘆や苦悩については、もちろん申し訳なく思うけれど。

被害者たちのご両親には特に。

 彼が命を奪ったのなら、私は命を救うわ。 救急救命士になりたいと思っているの。」

 

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14歳という多感な時期に、実の父親が凶悪犯だったという衝撃の事実を突きつけられたサマンサさん。

なのに立派に成長されて、本当に良かった。

このニュースのコメントには 「なぜわざわざ公にして出てくるの?」 というものもあったけれど、

今やネットに情報が氾濫する時代。 悪意ある誰かに嗅ぎつけられて面白おかしく暴露されるよりは、

自ら名乗り出てやれ! と考えても全然おかしくないと私は思います。

彼女の将来の幸福と成功を祈ります。


イアン・ハントリーが事件を起こしたのは、2002年――14年前――の今日(8月4日)でした。

つまり今日は、幼い二人の被害者の命日でもあるわけです。


その事件そのものについては、また次回に。

 

 

《 ソーアムの殺人 ① につづく 》

 

 

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