私は若いころから音楽座のミュージカルが好きだ。最初に見たのは、「シャボン玉とんだ宇宙(そら)までとんだ」であった。とても感動した。
演劇は、劇を通して現実や社会にある様々な問題、生き方などを考えるためにあると思う。しかしミュージカルは、生きているって素晴らしい!と思わせてくれるものだと、音楽座のミュージカルを見て思った。
それ以降、劇場に足を運んだり、ビデオで見たりして様々な音楽座の出し物を見てきた。それぞれの作品に、それぞれ言いたいことはあるが、しかしすべてを通して、音楽座のミュージカルをみることは、楽しい。
音楽座が、YouTubeチャンネルでオーディションの光景を公表している。
私は今まで何度か宝塚も見に行っている。宝塚は豪華絢爛そのもので、照明といい、衣装といい、お金をかけてどうだ美しいだろう、という見せ方だ。しかし、私から見れば、二部構成の一部の劇は学芸会のようにしか見えなかった。
宝塚は、ひとりの自死によって、その内部が明らかになった。舞台で活躍している人びとは、しかし奴隷的境遇のなかで演技していたことが明らかになった。おそらく、ひとりひとりの演技も、演出家らの上意下達的な厳しい指導のなかでつくられたものなのだろう。
宝塚を見ても、生きているって素晴らしい、楽しい、というような感動は得られなかったことを思い出す。
音楽座のオーディションを見ていて、ひとりひとりの創造性がぶつかり合い、そしてその結果ひとつになって舞台がつくりだされていることを知った。ひとりひとりの創造性を大切にしながら舞台づくりをしていると思った。
だから音楽座のミュージカルは、楽しいのだ。
宝塚のような人間の個性や創造性を押し殺すことによってつくられる舞台を見ることはないだろう。