浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

腐敗を放置すると・・・

2022-04-22 10:00:50 | 

 わが国も政界、経済界、官界など、腐敗は至るところにころがっている。腐敗する輩をつないでいるのは、利権である。要するにカネ。カネは人間を堕落させる。一定の地位以上の者は、際限なくカネを求める。庶民が、そんなにカネを稼がなくても・・・と思っていても、彼らは際限ない欲望の亡者である。カネ、カネ・・・・・そしてカネと一緒に地位も名誉も流れてくる。彼らはそれを掬うだけだ。

 カネを得るためには、他人がどうなろうと無関心だ。とりわけ庶民などは、金もうけの手段としてしか存在価値はない。庶民の生活なんかには関心はない。

 さて、ロシアはその腐敗の極にある。おそらくプーチンによって殺されたロシアのジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤの『ロシアン・ダイアリー』(NHK出版)を読んでいるが、その腐敗は凄まじい。すでにロシアは法治国家ではなく、プーチン独裁国家といえるほどだ。行政はもちろん、司法も立法も、すべてプーチンの意向に逆らわない。

 プーチンは大統領として、最高権力者としての地位を確保するために、敵対者を殺すだけではなく、民衆を殺しても平気である。現在のウクライナ侵攻は、今までプーチンが行ってきたことをそのまま実行していると言っても過言ではないだろう。

 経済についても同様だ。こういう記述がある。

 クレムリンのイデオロギーは、表向きには人民に代わって国家が経営権を握る「国家経済」の形成を必要とする。しかし一皮剥けば国家経済は、主たる政府役人が新興財閥である官僚経済なのだ。役人は地位が上がれば上がるほど有力な新興財閥となる。

 "国家"新興財閥という考えは、プーチン自身と彼を取り巻くごく狭い範囲のグループものだ。背景にあるのは、ロシアの主要な歳入は原材料の輸出から得られるのだから、国が天然資源を支配しなければならない。つまり、「朕は国家なり」の精神だ。彼らは自分たちが国中でいちばん切れ者だから、残りの人びとにとって何が良いか、これらの歳入をどう使うかをいちばんよく知っていると考えている。・・・・

 これらの超独占企業は、今や新興財閥となった元秘密警察の連中に支配されている。プーチンはこれらの元秘密警察上がりの新興財閥しか信用しておらず、互いに諜報機関出身であるから、人びとにとって何が一番有益かを自分たちがいちばんよく知っていると考えている。何であれ彼らの手を通さねばならないのだ。プーチンとの取り巻きもおそらく彼自身も、天然資源を制するものが政治権力を制すると信じている。ビジネスがうまくいく限り、権力の座もついてくるというわけだ。

 これは新興財閥に関する記事であるが、ロシア軍の、かつての日本軍を彷彿とさせるような新兵イジメなども記されている。また年金支給を打ち切ったり、でたらめの政治をしているさまも描かれる。

 ロシア国家は、ロシアの民衆をだまし、利用し、暴虐の限りを尽くしている。それが本書には描かれている。カネのために、官僚も、司法機関の者たちも、メディア関係者も、みなプーチン政権のご機嫌を伺っている。プーチンのご機嫌を損なわなければ、カネが入る。上意下達の世界は、また贈収賄の世界だ。腐敗が進むと、取り返しのつかない地点にまで、国を、民衆をもっていく。それがロシアだ。

 ロシアを理解するための最良の本だと思う。

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 許せないロシア軍 | トップ | 国家的差別 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

」カテゴリの最新記事