風刺のない笑い
2017年12月25日(月)(愛媛新聞)
「ヒトラーという男は、笑いものにしてやらなければならない」。80年前、チャプリンは笑いで戦争を止めようと新たな映画づくりを決断した▲
ヒトラーを風刺した映画「独裁者」。ドイツがポーランドに侵攻してから2週間後に撮影が始まると、米国政府はドイツを刺激するのを嫌い、圧力をかけてきた。屈しなかったのはコメディアンとしての誇り。笑いやユーモアは権力に対して大衆が持ち得る武器であり、自らが手放してはならないとの信念が伝わる▲
今も米国では毎夜、その日の政治家の言動をコントにして笑い飛ばすテレビ番組が人気。日本もかつてそうだったが、最近は風刺を取り込んだ笑いをあまり見かけない▲
それだけに今月の特別番組で、お笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」が披露した漫才には引きつけられた。一人は原発が立地する福井県おおい町出身で「夜7時になると町は真っ暗。電気はどこへゆく」。沖縄の米軍基地問題と東京五輪を比べ「楽しいことは日本全体のことにして、面倒くさいことは見て見ぬふりをする」▲
スピード感あふれる語り口で、被災地復興などの社会問題を次々にバッサリ。批判一辺倒ではなく「皆で問題を一緒に考えよう」とのメッセージがこめられているとも感じた▲
チャプリンは日本の芸能を好み、訪れる度に劇場に足を運んだ。「風刺のない笑い」が席巻する今の日本を見たら、きっと苦笑いを浮かべるだろう。
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