永原慶二といえば、日本中世史の代表的な研究者であった。学生時代、永原先生の娘さんが理工学部にいたので、サークル協議会の機関紙に寄稿していただいたことがある。
今日、学生時代のノートを見ていたら、その原稿がでてきた。ボクは、本川根町史でご一緒したことがあるが、学者然としたすばらしい人であった。また『20世紀の歴史学』(吉川弘文館)など、中世史だけではなく、歴史学そのものの検討もされ、戦後歴史学を牽引してきた方である。そういう歴史学者の多くが高齢となり、次々と鬼籍に入られていく。残念というしかない。
今、その文書を紹介する。
日本歴史を学ぶために
今日の社会に主体的に生き、歴史の創造と変革に参加してゆこうとする人々が、まず歴史を学ぼうとすることは当然でしょう。鋭い歴史意識と歴史感覚を練磨することなしに、その課題を果たすことはできないからです。
その意味でまずすすめたいのは、石母田正氏の『歴史と民族の発見』(正・続、東京大学出版会)です。これはもうずいぶん以前の、1950年代に書かれたものですが、歴史とは何か、民族とは何か、それをふまえいかに生きるか、という実践的な問題が、情熱的な文章で綴られています。まずこの書物で歴史に開眼されることを期待します。
それから、今日もっとも切実に学ぶ必要のあるのは、日本の近・現代史における先人たちの、平和と民主主義を守り発展させるために闘った、その足跡であり、他面、日本帝国主義の犯してきたさまざまの侵略、それによって今日われわれが確認してゆかねばならない戦争責任の問題でありましょう。そのような問題のためには、さしずめ遠山茂樹氏の『明治維新と現代』(岩波新書)や『昭和史』(仝上)から入ってください。さらに詳しくという人は、歴史学研究会編『太平洋戦争史』(6冊、青木書店)などにすすんでください。
しかしもう少し本格的に歴史の勉強にとりくみ、自らの思想を大いに鍛えようと思うなら、日本のマルクス主義歴史学が、天皇制ファシズムと闘いつつ最初の自己形成を行った時期の記念碑的労作、野呂栄太郎、服部之総、羽仁五郎氏などの一連の業績から読みだすのがよいでしょう。服部、羽仁氏のものはともに著作集が理論社、青木書店から出されています。
以上、身近でとりつきやすいところからあげてみましたが、歴史とは本来、原始・古代から現代までが一貫しているものであり、その有機的・統一的理解というものが重要だと思います。日本人の意識や社会の特質といった問題を考えようとすれば、必ず近代以前にまでさかのぼらなければなりません。それらについては、1、2冊の書物だけというわけにはゆきません。さいわい岩波講座『日本歴史』、歴史学研究会・日本史研究会編『講座日本史』(東大出版会)がありま す。それらを手掛かりにして、自らの興味をもてるところから読みだしてみてはどうでしょう。
今日、学生時代のノートを見ていたら、その原稿がでてきた。ボクは、本川根町史でご一緒したことがあるが、学者然としたすばらしい人であった。また『20世紀の歴史学』(吉川弘文館)など、中世史だけではなく、歴史学そのものの検討もされ、戦後歴史学を牽引してきた方である。そういう歴史学者の多くが高齢となり、次々と鬼籍に入られていく。残念というしかない。
今、その文書を紹介する。
日本歴史を学ぶために
今日の社会に主体的に生き、歴史の創造と変革に参加してゆこうとする人々が、まず歴史を学ぼうとすることは当然でしょう。鋭い歴史意識と歴史感覚を練磨することなしに、その課題を果たすことはできないからです。
その意味でまずすすめたいのは、石母田正氏の『歴史と民族の発見』(正・続、東京大学出版会)です。これはもうずいぶん以前の、1950年代に書かれたものですが、歴史とは何か、民族とは何か、それをふまえいかに生きるか、という実践的な問題が、情熱的な文章で綴られています。まずこの書物で歴史に開眼されることを期待します。
それから、今日もっとも切実に学ぶ必要のあるのは、日本の近・現代史における先人たちの、平和と民主主義を守り発展させるために闘った、その足跡であり、他面、日本帝国主義の犯してきたさまざまの侵略、それによって今日われわれが確認してゆかねばならない戦争責任の問題でありましょう。そのような問題のためには、さしずめ遠山茂樹氏の『明治維新と現代』(岩波新書)や『昭和史』(仝上)から入ってください。さらに詳しくという人は、歴史学研究会編『太平洋戦争史』(6冊、青木書店)などにすすんでください。
しかしもう少し本格的に歴史の勉強にとりくみ、自らの思想を大いに鍛えようと思うなら、日本のマルクス主義歴史学が、天皇制ファシズムと闘いつつ最初の自己形成を行った時期の記念碑的労作、野呂栄太郎、服部之総、羽仁五郎氏などの一連の業績から読みだすのがよいでしょう。服部、羽仁氏のものはともに著作集が理論社、青木書店から出されています。
以上、身近でとりつきやすいところからあげてみましたが、歴史とは本来、原始・古代から現代までが一貫しているものであり、その有機的・統一的理解というものが重要だと思います。日本人の意識や社会の特質といった問題を考えようとすれば、必ず近代以前にまでさかのぼらなければなりません。それらについては、1、2冊の書物だけというわけにはゆきません。さいわい岩波講座『日本歴史』、歴史学研究会・日本史研究会編『講座日本史』(東大出版会)がありま す。それらを手掛かりにして、自らの興味をもてるところから読みだしてみてはどうでしょう。