浜菊会のブログ

半泣き老狼団。一道民が生き抜く為の記録。

対照3県における甲状腺癌の論文について

2017-03-17 13:31:46 | 原発
以下の論文があると教えてもらった。

>http://www.nature.com/articles/srep09046

『Thyroid ultrasound findings in a follow-up survey of children from three Japanese prefectures: Aomori, Yamanashi, and Nagasaki』


この論文の中身は各自が原文をお読みいただき確認して下さい。以下は、私個人の理解の範囲で書いた、あくまで個人的感想(笑)ということです。


大雑把に言うと、

ア)1回目のエコー検査と2回目エコー検査結果は一致せず、変化していたよ
イ)エコー検査の精度自体に差があって、1回目は福島県の検査と同程度の簡易なポータブル機器だった(福島県検査は機種統一はない)が、2回目エコーは高精度の器械で実施したよ
ウ)1回目エコー検査では、ガン患者がゼロで細胞診実施数もゼロだった
エ)2回目エコーでは2例に悪性腫瘍疑いがあり、穿刺吸引して細胞診を実施したら、1例は悪性ではなく、1例は乳頭ガンだったよ
オ)小児の甲状腺の結節や嚢胞等は年齢と共に変化して一定ではないかも(=だから2回目検査で新たな腫瘤が発見されても不思議ではないよ)
カ)小児における甲状腺エコー検査の実施は慎重に(推奨できない?)


要するに、福島の甲状腺癌が発見されたことに対抗する為の論文、と見ることができよう。私の理解の範囲で書けば、次の3点ではないかと。


・自然例であっても、小児の甲状腺癌は発見される
(→福島県の甲状腺癌はこれを見つけただけ、だよ)

・エコー検査結果はばらつきがあるよ、あまり当てにならないかもよ
(→1回目陰性で2回目で癌が検出、2回目陽性でも細胞診で陰性もあった)

・福島の2巡目検査で甲状腺癌が発見されるのと、今回の2回目検査での検出は同じ意味合いだよ(暗にそう仄めかし?)



以下に、各論点について書いてみたい。


1)小児甲状腺の経年変化について

ア)については同意。
検査結果が変わるというのはないわけではないので、各医師の技量に委ねられよう。例えば病理診断結果の一致度の検討でも、完全一致はかなり困難。専門医同士であると、概ねある水準の一致度は得られよう。その程度は、甲状腺のエコー検査の場合でどのくらいかは知らない。


で、検査結果が異なる理由として、
 イ)の器械の違い(精度水準)  と
 エ)の経年的変化
が挙げられていたわけである。比較的短期間であっても変化を生じ得る、というのは否定しない。
であるなら、結節や嚢胞性病変だけが変化し、悪性腫瘍細胞が「極めて変化に乏しい」と考える(推測する)理由というのが分からない。むしろ、悪性腫瘍であっても「比較的短期間で」の経年的変化があっても不思議でない、という意見を補強するのではないか。


2)細胞診を実施した2例について

2回目のエコー検査で悪性が疑われた2例は、甲状腺専門医の意見に基づき細胞診が実施された。ウ)及びエ)の事項である。


1回目エコー  陰性

2回目エコー  陽性 2例


44例の2次検査を実施、うちB判定20例中の2例で悪性が疑われた、と。細胞診では、1例が悪性ではなかった、と。

1回目エコー (-) 
2回目エコー (+)
細胞診   (-)

エコーで悪性疑いだったが、細胞診で否定されたのはどうしてか?
・エコーが高精度の為、悪性に見えてしまった?
・医師の技術的要因?
・その他のエラー?


もう1例は甲状腺癌が判明した例、と。

1回目エコー (-) 
2回目エコー (+)
細胞診   (+)
外科手術  (+)


2回目エコーで判明したのはどうしてか?本当に手術適用だったのか?

・1回目で見逃したのを2回目は高精度な器械なので検出できた?
・腫瘍細胞の発育速度により、1回目陰性でも、2回目で判明した?
・もし発育速度が緩徐なら初回見逃す程度の腫瘍を、本当に手術する必要性が高かったのか?


本論文について見れば、B判定20例中1例が、エコー陽性にも関わらず細胞診で陰性だったので、結構な確率で偽陽性となろう。検出感度(精度?)が低い1回目の方が良かった、ということであろうか?それは、担当医師の能力的問題があったということなのか?
それとも経年変化は短期間で生じることに不思議はなく、1回目陰性でも2回目で陽性となることは考えられるのかもしれない。


ところで、過剰診断だと主張する人々が、本手術例につき「手術すべきではないものを切ったんだ」と言っているのだろうか?
もし本件手術例が不適切であって、本来手術すべきではないものをやったのだ、ということなら、そういう医療グループが「甲状腺のエコー診断は信頼性に疑問符」とか「小児甲状腺のスクリーニング検査はやるべきではない」といった「結論だけ」は正しいものとして簡単に受け入れているのだろうか?


どうしてこんなに2回目のエコー検査が、たったの20例なのに、偽陽性もあり、未検出の乳頭ガンもあったよ、という、バラツキが大の結果なのか、ということに驚かされますわ。
普通に見れば、医師個人の技量の問題、というような人的要因に対する疑問が出てきそうだよね。


一方、福島県の手術例では、良性結節は1例あったので、形式的に見れば

1回目エコー (+) 
細胞診   (+)
外科手術  (-)

ということでしょうかね。
この割合は本論文の結果と比較すると少ないが、3県検診は母数が小さいので難しい面もある。


もし言うとすれば、福島県の手術例は、本論文に比し、エコー診断のバラツキは目立たない、本論文の2例/20(10%)で初回エコー検査と異なる悪性腫瘍のエコー診断が出された(変更?経時変化?)、というのは、かなりの高率ではないかな、と。





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