浜菊会のブログ

半泣き老狼団。一道民が生き抜く為の記録。

韓国の甲状腺癌に関する”The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE”掲載記事について

2017-04-11 13:15:05 | 原発
先月の話題だが、権威ある学術誌に掲載されたんだ、という「お説」ね。


・菊池誠阪大教授の「3県検診は過剰診断」説の謎
>http://blog.goo.ne.jp/hamagikukai/e/c65d368248a9ec4429dd6c672e427d92


・3月20日(月)のつぶやき その1
>http://blog.goo.ne.jp/hamagikukai/e/0daef60dd715b6c23ac0286967592860


過剰診断説を唱える人たちが盛んに喧伝するのが、
Ahn HS et al., Korea's thyroid-cancer "epidemic"--screening and verdiagnosis., N Engl J Med. 2014 Nov 6;371(19):1765-7

>http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMp1409841

であるが、その後日談については語られないようである。偶然発見したw
最近では手術件数が減少してきた、ということのようである。


South Korea’s Thyroid-Cancer “Epidemic” — Turning the Tide
N Engl J Med 2015; 373:2389-2390

>http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc1507622#t=article


簡単に言えば、韓国で甲状腺癌が増加した背景というのは、いわゆる商業主義的側面があったもので、スクリーニングで「対象者を掘り起こし」手術をどんどんやることが経済的利益に繋がっていたから、ということがあるだろう。
しかし、福島県の小児甲状腺癌については、そのような背景はあるものではないので、同列に語るのは無理があるものと思われる。福島県の小児甲状腺癌の手術をすることが、特別の利益を意図したものではないことは明らかだろう。


また、最初の掲載論文は原著ではなくperspectiveの取扱らしく、価値はあるだろうし意義がないわけではないが、そんなに鬼の首を獲ったかのように言うのもどうかと思うが(後日談はcorrespondenceなので、更にグレードが下がるとは思う)。


検査を実施しているのが、同一人物について複数回実施(数年毎?)というわけではないなら、福島県の小児甲状腺癌の2巡目以降における診断例とは意味合いが異なるように思われる。


日本の甲状腺癌の治療指針に基づく標準的な医療であると予想されるので、福島県の小児甲状腺癌を韓国の成人スクリーニング例と対比するのはかなり困難であると思う。


ああ、それと、スクリーニングと過剰診断ってことだとして、韓国の成人例でさえ「93年の15倍」ということのようで、スクリーニング開始の99年比だと何倍なのか、知りたいところだが、あのグラフからは皆目見当もつかないなw

罹患率が10倍くらいにしかなってないなら、スクリーニングと過剰診断があっても、その程度しか説明できないのかもしれませんよね?他の部分は、どう説明できるんだ?

「50倍」になっても不思議ではない、という越智医師のお説は、謎に満ちているなwww
増加部分の20%しか説明できないなら、残り80%部分はどうやって説明できると?


不思議だなー


電気料金の値上がりは再生可能エネルギーの普及・買取制度が原因か

2017-04-05 08:52:02 | 原発
電気料金の値上がりに関して、不満が出るのは分からないではない。ただ、太陽光発電に代表される再生可能エネルギーだけが悪者のように言われるのは、果たしてどうなのかというのも気になる。

そこで、少々調べてみた。


・月額電気料金:総務省家計調査 2人以上世帯 年平均1か月の金額
・水道光熱費: 同上 
・電力販売量:電事連10社合計、単位 億kWh
・売上高:電事連10社合計、単位 億円
・設備投資: 同上


年  月額電気料金 水道光熱費   電力販売量  売上高    設備投資

06   9462     22278     8894.2     150865
07   9251     21758      9195.4     156669
08   9784     22762      8889.3     165699   21242
09   9646     21685      8585.2     146881   20344
10   9850     21951      9064.2     154789   21231
11   9591     21954      8598.1     158992   21232
12   10198     22815      8515.9     166486   20867
13   10674     23240      8485.4     185826   19605
14   11203     23799      8230.0     194489   20162
15   11060     23197      7970.6     180906   22604
16   10100     21177



部分的にデータが分からない部分は空欄としている。


FITの買取額が正確には分からない(調べてないので、各電力会社毎に単位電力量当たりの賦課金が異なる)が、おおよその傾向はつかめる記事がこちら。

>http://pps-net.org/column/33473


賦課金は、12年度から順に、1300億円、3300、6500、13200、16年度18000億円、ということで、電気料金の値上がりの大部分を説明できるとは思われないわけである。売上高推移からすると、微々たる変動部分でしかないので。また、14年度と15年度の大幅ダウンと逆行しているので、再生可能エネルギーのせい、と断ずるのは困難である。


まず、特徴的なのが、電力販売量の落ち込み、である。
これは、節電の定着とか、製造業の衰退で大口需要が低下したとか、他社競合の出現とか、再生可能エネルギーの効果とか、様々なことが考えられよう。ただ、過去15年来最低くらいに、販売量が落ち込んでいる、=売上高の大幅減少要因である、ということだ。


すると、売上高維持の為には、販売単価を上げざるを得ない。それは、賦課金では説明できない水準ではないか、という疑問が出てこよう。


他には、電力料金の値上がり要因としては、アベノミクスのせい、原油とLNG価格要因、消費税増税、などが挙げられよう。


言わずと知れたアベノミクスのせい、というのは、為替が意図的に円安誘導されてしまう=輸入価格上昇、という面と、インフレ惹起=一般物価上昇による電力会社経費増加(=原価上昇)という面が挙げられる。


再生エネ関連の賦課金や原発停止による燃料費増加の影響と言った点からは、料金の値上がりの大部分を説明することは難しいと思う。かえって、ピーク時需要量の抑制効果や節電で家庭の消費量が抑制されていることの方が、長期的に見れば有利な点はあると思われる。


設備投資額の推移を見れば、震災前後で、大差ないことが分かる。これは、原発関連の対策費が数兆円規模でかかったという電力会社の説明があれども、事実上経営的には大きな影響をもたらしてはいない、ということである。勿論、以前から計画していた設備投資計画を凍結して、原発対策に資金を回さざるを得なかった、という側面はあるだろうけれども、電力会社の費用構造面で見れば、原発の対策費の大幅増加で料金値上げ、といった主張は説明できない、ということである。


ならば、後は何が残っているのか?

当然ながら、東電の事故処理にかかる費用が、実際にいくら全国の電力会社が負担したか、という具体的な数字である。
もしこれが、再生エネの買取費用よりも大きい場合には、原発推進派連中は何と説明してくれるのか、ということだな。経済合理性って?ww



なので、電力料金の値上がりは、実体をよく分析するべきである。
影響度は、要因分析とか、統計関係の方々が得意なのでは?



低線量被曝に関する研究~じわじわ被曝の発ガンについて

2017-03-23 21:27:36 | 原発
非常に興味深い研究があったようだ。

>http://www.qst.go.jp/information/itemid034-001353.html


中身は、よくお読みください。
割と分かり易く書かれていますので。


内容を大雑把に書くと、

1)

・高線量率被ばく群:線量率:540 mGy3))/分、総線量:500 mGy
・低線量率被ばく①群:線量率:5.4 mGy/時間、総線量:500 mGy
・低線量率被ばく②群:線量率:1.1 mGy/時間、総線量:100 mGy

の3条件でγ線を照射したら、発ガンが多かったのは


2)

・高線量率被ばく群:放射線由来のガン34% + 放射線以外のガン32%
・低線量率被ばく①群:放射線由来のガン16% + 放射線以外のガン39%
・低線量率被ばく②群:放射線由来のガン1% + 放射線以外のガン45%


で、
・①群はガンのリスクは増加してるが、全体では対照群と大差ない(合計55%発生で同水準)よ
・②群だと対照群と同じだよ


ということだったと。


放射線由来のガンを遺伝的要因のガンと区別できる研究、ということで、素晴らしいのかもしれません。

含意としては、

 割と短時間内に高線量被曝、これが最もリスクが高いよ、
 じわじわ被曝も、線量によってはガンのリスクを高めるよ、
 0.1Gy/h程度だと、ほぼ影響は無視できそう、

ということかな、と。
以前に紹介した(>http://blog.goo.ne.jp/hamagikukai/e/4242a9efb9c379a631c1627468f605e3)が、0.006Gy/hだったので、本研究の5.4mGy/hとほぼ同じくらいだ。


高線量群が30Gy/hみたいな水準ではないから、比較は難しい面もある。
因みに、脚注の論文タイトル、
『Sensitive Detection of Radiation-Induced Modulloblastomas after Acute or Protracted Gamma-Ray Exposures in Ptch1 Heterozygous Mice Using a Radiation-Specific Molecular Signature』

とあるが、間違ってるのでは?

Modulloblastomas は、Medulloblastomas が正しいのでは?ま、どうでもいい話だけどw



本研究での不明点としては、そもそもが髄芽細胞腫の腫瘍系細胞を使っている、ということで、ガン化リスクが遺伝的に高いということである。追加発生のガンというのが、正常細胞だとかなり低いので、マスクされてしまったりしないのか?

対照群が元々ガン化の率が低い場合、放射線由来の発ガンが目立つわけで、遺伝由来でも放射線由来でもガン化する、というものだと放射線被曝がなくてもガン化なので、それにマスクされてしまうのでは、と。この辺は、全然知りませんです、すみません。


他には、

>https://academic.oup.com/carcin/article/31/9/1694/2477438/Genomic-and-gene-expression-signatures-of

この論文だと、

0.1Gy以上のマウス寿命は有意に低下しているので、線量100mGy前後の線量については、不明点がまだあるかもしれない、ということと、使う細胞の種類によって、異なる反応というのもあるのかどうか(?、これ、全然知りません)、とか、疑問点はないではない。


研究途上、というのは、まあ、理解できるので、簡単には結論を言うのは難しいだろうな、とは思います。




菊池誠阪大教授の「3県検診は過剰診断」説の謎

2017-03-21 07:44:40 | 原発
過去数日間に菊池誠と少々のやり取りがあったのだが、その中で彼の主張で滑稽なものがあったのでメモがてら、紹介しておきたい。


菊池誠曰く、甲状腺癌について『大人の事例では死亡率が改善しないというエビデンス』がある、ということで、次の2つを根拠として挙げている。


Ahn HS et al., Korea's thyroid-cancer "epidemic"--screening and verdiagnosis., N Engl J Med. 2014 Nov 6;371(19):1765-7

>http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMp1409841


この死亡率変化につき尋ねた所、

メインのグラフは
http://www.gepr.org/ja/contents/20151109-03/ …
に解説されています



>http://www.gepr.org/ja/contents/20151109-03/

ということで、越智医師の解説文を提示してきた(リンク先抜けてた、追加しました)。


さて、これら2つは、最初に紹介した同一論文を根拠としているものである。中身は一つ、ということだ。

この論文をもって、菊池誠の言う『大人の事例では死亡率が改善しないというエビデンス』の根拠として採用することはできない。

えっ?なに?
元論文をオレが読んで確かめたのか、って?
論文を読んでないのに採用できないと断定できるのか、って?


ええ、まあ、できますね。読む価値すらない。
オレは具体的数字を挙げてみろ、と求めたからですよ。
だって、もし菊池誠が元論文を読んでおり、変化の中身を具体的に分かっていたなら、次のような記述をもってオレに反論してくることは、極めて簡単だから、です。


<例>
韓国の甲状腺癌検診の開始以前の○○年までは、死亡率はAだったが、開始以後には死亡率はB(平均推移?5ないし10年毎の比較?)で、有意差がない(変化がほとんどない)。


一般的に、採用できるエビデンスというのは、この程度は求められるでしょう、ということだ。菊池誠は大学教授らしいので、これくらいのことを考える知能は有しておるであろう(あくまで希望的観測だが)。そもそもオレの質問に対し、追加で越智医師の論説文を提示してきた時点で、彼の説明力が極めて乏しいということは容易に想像がつく。


なので、読むまでもなく、採用できない、と言っているわけです。反論があるなら、きっと簡単にできるはずですよね?
<例>に示した言い分など、そう難しいものではないから、だ。元論文に書いてある通り、短く表現すればいいだけでしょう?(笑)



一応、オレが反論として示した論文も挙げておくね。

①Changes in the Clinicopathological Characteristics and Outcomes of Thyroid Cancer in Korea over the Past Four Decades
 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3704118/

②Standardized Thyroid Cancer Mortality in Korea between 1985 and 2010
 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4285027/

③Thyroid cancer mortality and incidence: A global overview
  C.L.Vecchia et al. i.j.cancer136(2015)


それから、ダメな例として挙げたランセット記事も。
④Overdiagnosis and screening for thyroid cancer in Korea
 http://thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(14)62242-X/fulltext

この論文中では①を引用文献としているが、「殆ど変化がない」と安易に記述してしまっているので、採用できない。元論文の主旨とは違っているからである。



参考までに、下らない人間ほど、ツイッター程度の短文でもって、つまらん印象操作?みたいな真似をするわけだが、例に漏れずアレですな(笑)。長く書くと穴がバレるからですかねえ?
Mケンみたいな連中と瓜二つだな。ツイッター脳、大勝利と。


前置きが長くなりましたが、菊池誠の示した「3県検診」に関する論文がこれ。


Thyroid ultrasound findings in a follow-up survey of children from three Japanese prefectures: Aomori, Yamanashi, and Nagasaki
>http://www.nature.com/articles/srep09046


これについての記事は、数日前に既に書いた。
>http://blog.goo.ne.jp/hamagikukai/e/e0c1af62b701dfdfdc0190d6ad215862


で、謎というのは、菊池誠の言い分が次のようなものだから、である。


過剰診断である可能性が高いです。理由は既知の罹患率よりも発見率が遥かに高いからです。ただし、個別例ですのであくまでも「可能性が高い」以上のことは言えません』

3県検診結果について尋ねた所、彼は過剰診断の可能性が高い、と主張したわけです。先のネイチャー掲載論文を読んで、過剰診断ということをどのように推定するに至ったのだろうか?
彼の思考過程が全くの謎なわけです。


一応、彼の「過剰診断」についての主張は、次のようなものです。

過剰診断とは、生涯にわたって症状を顕さない癌を発見してしまうことですよ。発見された個々の癌を見ても、それが過剰診断かどうかは分かりません。ただ、検診によって発見数が異常に増えた場合に過剰診断があったことがわかるだけです。個々の癌について、それが過剰診断かどうかは判定できません

甲状腺癌に過剰診断が多いというのは別に僕の独自説ではなく、近年の韓国の例でも過剰診断が多く発生したという論文が出ています。発見してしまった癌が過剰診断かどうかは分からないので、検診による発見数の増加分から「将来症状を顕すと考えられる数」を引いた分が過剰診断です

つまり、彼の言う「過剰診断」というものは、

・生涯にわたって症状を顕さない癌を発見してしまうこと
・個々の癌について判定できない
・検診による発見数の増加分から「将来症状を顕すと考えられる数」を引いた分

だそうですぜ。


過剰診断、すなわち「将来症状を顕さない癌の数」
  =「検診で発見した増加分」-「将来症状を顕すと考えられる数」


これを3県検診結果で見れば、検診で甲状腺癌が見つかった数は1例のみ。これを過剰診断である可能性が高いと言うわけだから、

式に当てはめると、
  過剰診断 =1-0

ですよね?(発見された1例は過剰診断だろう、ということなので)
けれども、菊池誠は、過剰診断というものは、統計でしか分からず、個々の癌は判定できない、と言うわけだ。


ならば、いかようにして、菊池誠は、発見例の1例が、「将来症状を顕さない癌」である、と見抜けたのだろうか
しかもこれを判別できたのは、統計で、だそうだ。
「将来症状を顕さない癌」がどうやって分かったのだろうか?謎すぎる。


例えば、骨肉腫の10代の患者が1名いるとしよう。菊池誠のお説によれば、これが統計で「将来症状を顕さない癌」かどうか、というのが判別できるらしい。(菊池は、その統計を知ってるのかな?)

普通に考えれば、骨肉腫の場合、早期に治療しないという選択肢は稀であり、過剰診断が発生することも少ないであろう。
どうしてそのように考えるのか、というと、腫瘍の性質なり経過の特徴なりに基づく判断をするから、だろう。まさか「甲状腺癌はあまり死なないから、骨肉腫だって過剰診断を避け、治療すべきでない」みたいなことを言い出すことはできないだろう?


現実には、既に末期的で全身転移が進んでいると、手術しても手遅れ、というような場合には、外科手術を選択しないということもあるかもしれない。それは、患者の年齢、病状、疾患の性質、進展速度、患者や家族の希望、等々により、判断が求められるからだろう。平たく言えば、甲状腺癌と骨肉腫は、「進行速度が違う」ということが、基礎的情報として知られているということだ。進行速度は、過去の臨床例の蓄積で、ある範囲内の水準が分かっている、という意味である。


骨肉腫を手術しない、という選択は、例えば推定される残された寿命から見て、手術をしても延命できる効果が得られないか、僅かな延長ができるかもしれないが手術に伴う苦痛や自由時間喪失等の不利益が大きいと判断されるようなら、敢えて手術しないこともある、ということだろう。
そのような判断を支える基礎になるのは、やはり「骨肉腫という病気の性質」を知っていること、であるはずだ。


翻って、小児の甲状腺癌はどうなのか?
菊池誠は、「小児甲状腺癌という病気の性質」について熟知しているらしい(笑)。医学界でさえ、定説はないはずなのだが、どういうわけか菊池誠は「将来症状を顕さない癌」の鑑別基準を有しているらしいのだ。それを開示してみよ、と尋ねたが、何も言えないらしい。
そりゃ当たり前だろうね。


10代の骨肉腫が無症状でスポーツ外傷から偶然発見された、といった場合に、将来症状を顕すまで手術せずに待つべきである、ということは、まず言わないのでは?たとえ戦争に数か月内に従軍することが決まっている軍人であろうとも、だ。
それはどうしてか?
「骨肉腫」という病気の基礎的情報から、では?


菊池誠が「小児の甲状腺癌」という病気の基礎的情報を、そんなに知っているとは到底思われない。にも関わらず、3県検診結果の甲状腺癌について、「過剰診断の可能性が高い」と言えるんだそうだ。どこに、そんな根拠が?


あれか、

  発見された癌 =将来症状を顕す癌(X) + 将来症状を顕さない癌(Y)

という単純な式から、(X)は「菊池の統計」から分かるので、「目の前の癌は手術すべきでない、過剰診断だ」と決定できるとでも?


「個々には分からないが統計で分かる」論でもって、ある患者の癌を治療すべきかどうかが判定できる?

やれるもんならやってみなw


事後的にしか分からないなら、「手術すべきでない」とか安易に主張して、責任取れるのかというのも気がかりなところだ。常識がある人間ならば、そう思うんじゃないかねえ。



対照3県における甲状腺癌の論文について

2017-03-17 13:31:46 | 原発
以下の論文があると教えてもらった。

>http://www.nature.com/articles/srep09046

『Thyroid ultrasound findings in a follow-up survey of children from three Japanese prefectures: Aomori, Yamanashi, and Nagasaki』


この論文の中身は各自が原文をお読みいただき確認して下さい。以下は、私個人の理解の範囲で書いた、あくまで個人的感想(笑)ということです。


大雑把に言うと、

ア)1回目のエコー検査と2回目エコー検査結果は一致せず、変化していたよ
イ)エコー検査の精度自体に差があって、1回目は福島県の検査と同程度の簡易なポータブル機器だった(福島県検査は機種統一はない)が、2回目エコーは高精度の器械で実施したよ
ウ)1回目エコー検査では、ガン患者がゼロで細胞診実施数もゼロだった
エ)2回目エコーでは2例に悪性腫瘍疑いがあり、穿刺吸引して細胞診を実施したら、1例は悪性ではなく、1例は乳頭ガンだったよ
オ)小児の甲状腺の結節や嚢胞等は年齢と共に変化して一定ではないかも(=だから2回目検査で新たな腫瘤が発見されても不思議ではないよ)
カ)小児における甲状腺エコー検査の実施は慎重に(推奨できない?)


要するに、福島の甲状腺癌が発見されたことに対抗する為の論文、と見ることができよう。私の理解の範囲で書けば、次の3点ではないかと。


・自然例であっても、小児の甲状腺癌は発見される
(→福島県の甲状腺癌はこれを見つけただけ、だよ)

・エコー検査結果はばらつきがあるよ、あまり当てにならないかもよ
(→1回目陰性で2回目で癌が検出、2回目陽性でも細胞診で陰性もあった)

・福島の2巡目検査で甲状腺癌が発見されるのと、今回の2回目検査での検出は同じ意味合いだよ(暗にそう仄めかし?)



以下に、各論点について書いてみたい。


1)小児甲状腺の経年変化について

ア)については同意。
検査結果が変わるというのはないわけではないので、各医師の技量に委ねられよう。例えば病理診断結果の一致度の検討でも、完全一致はかなり困難。専門医同士であると、概ねある水準の一致度は得られよう。その程度は、甲状腺のエコー検査の場合でどのくらいかは知らない。


で、検査結果が異なる理由として、
 イ)の器械の違い(精度水準)  と
 エ)の経年的変化
が挙げられていたわけである。比較的短期間であっても変化を生じ得る、というのは否定しない。
であるなら、結節や嚢胞性病変だけが変化し、悪性腫瘍細胞が「極めて変化に乏しい」と考える(推測する)理由というのが分からない。むしろ、悪性腫瘍であっても「比較的短期間で」の経年的変化があっても不思議でない、という意見を補強するのではないか。


2)細胞診を実施した2例について

2回目のエコー検査で悪性が疑われた2例は、甲状腺専門医の意見に基づき細胞診が実施された。ウ)及びエ)の事項である。


1回目エコー  陰性

2回目エコー  陽性 2例


44例の2次検査を実施、うちB判定20例中の2例で悪性が疑われた、と。細胞診では、1例が悪性ではなかった、と。

1回目エコー (-) 
2回目エコー (+)
細胞診   (-)

エコーで悪性疑いだったが、細胞診で否定されたのはどうしてか?
・エコーが高精度の為、悪性に見えてしまった?
・医師の技術的要因?
・その他のエラー?


もう1例は甲状腺癌が判明した例、と。

1回目エコー (-) 
2回目エコー (+)
細胞診   (+)
外科手術  (+)


2回目エコーで判明したのはどうしてか?本当に手術適用だったのか?

・1回目で見逃したのを2回目は高精度な器械なので検出できた?
・腫瘍細胞の発育速度により、1回目陰性でも、2回目で判明した?
・もし発育速度が緩徐なら初回見逃す程度の腫瘍を、本当に手術する必要性が高かったのか?


本論文について見れば、B判定20例中1例が、エコー陽性にも関わらず細胞診で陰性だったので、結構な確率で偽陽性となろう。検出感度(精度?)が低い1回目の方が良かった、ということであろうか?それは、担当医師の能力的問題があったということなのか?
それとも経年変化は短期間で生じることに不思議はなく、1回目陰性でも2回目で陽性となることは考えられるのかもしれない。


ところで、過剰診断だと主張する人々が、本手術例につき「手術すべきではないものを切ったんだ」と言っているのだろうか?
もし本件手術例が不適切であって、本来手術すべきではないものをやったのだ、ということなら、そういう医療グループが「甲状腺のエコー診断は信頼性に疑問符」とか「小児甲状腺のスクリーニング検査はやるべきではない」といった「結論だけ」は正しいものとして簡単に受け入れているのだろうか?


どうしてこんなに2回目のエコー検査が、たったの20例なのに、偽陽性もあり、未検出の乳頭ガンもあったよ、という、バラツキが大の結果なのか、ということに驚かされますわ。
普通に見れば、医師個人の技量の問題、というような人的要因に対する疑問が出てきそうだよね。


一方、福島県の手術例では、良性結節は1例あったので、形式的に見れば

1回目エコー (+) 
細胞診   (+)
外科手術  (-)

ということでしょうかね。
この割合は本論文の結果と比較すると少ないが、3県検診は母数が小さいので難しい面もある。


もし言うとすれば、福島県の手術例は、本論文に比し、エコー診断のバラツキは目立たない、本論文の2例/20(10%)で初回エコー検査と異なる悪性腫瘍のエコー診断が出された(変更?経時変化?)、というのは、かなりの高率ではないかな、と。