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からみ・鍰の由来(13)尾去沢銅山「銅山記」(1797以降)に「からミ」「鍰」あり

2021-05-02 08:47:22 | 趣味歴史推論
 「銅山記」は、尾去沢銅山の経営、作業行程、仕様、定目など銅山に関わる文書を集めた和書で、岩手県立図書館蔵(新渡戸文庫)のものである。1)2)3) 解題によれば、寛政9年における「釜燃込春木」「木炭渡方」の記載があり、これが最も新たな年次であるので、この書の成立は、寛政9年(1797)以降となるとある。筆者が見た解読文の活字本は、「からみ」「鍰」については、原本和書の通りに写されていると見なした。以下に「からみ」「鍰」が出てくる節を示した。

「銅山記」(1797以降)
鉑に紛らわしきもの附付の善悪 →図1,2
・赤沢にあわ(粟)と言うは、きんすかり(銀ずかり)の事。これもむかし金工ども、下げ鉑へわざ仕掛け候由、よく糀鉑に紛らわしきもの也。山下げ鉑羽色に多し、相下げ候てば、鉑と粟とは相分り申さず候。燃込焼合悪しく床屋吹方からミねばり床の内ともにとかく床の内に滞りあり候てば、出し先へ鈹銅気のもの相捨り候もの也。鉑拵方は気を付け、床屋鉑吹真吹ともに心得あるべし。
・色という道具名は、黒鉑からす鉄鉑の中へ入り申し候てば、鉑と殊の外紛らわしきもの也。燃込には余り障り無い様なれども、床屋吹方にてはからミねばるもの也。
・さびとく白てり、これは床屋吹方殊の外重く昼夜難渋致し候節、右燃込の砌、鉑生に寄り1~2升相加え吹方致し候えば、こわり申さず、さらさらと熔け申し候。何の山にてもこれあり候事に候。但し毒無しの時は床屋のからミ入れ候ても熔ける也。吹方こわりものは、床大工巧者入れるもの也。不巧者にては鳴子を引臼を抜くもの也。鳴子を引けば、鉑生ばかりに寄らずもの也。床大工銘々伝法ありの事に候えども、前後風の取り様、土居の突き様にて風悪しく相廻しあて申さず候えば焼熔けかね候もの也。

真吹床入吹上げの次第附土居水盛りの事 →図3,4
・土居の突様、風取様次第御座候間、羽口竹の上へ水盛り、前フイゴ後フイゴ風不同無し様に、土居突申し候大工口伝あるよし、床入り候には第一炭灰吟味致すべき事。炭灰入口歟又は炭灰あらぐ御座候てば、床たもちかたぐやけくつる、尤もとき埏吟味申すべき事。これも濃いと薄いと甚だ違いあり、とき埏悪しく又は加減悪しければ床の内炭灰やけ流しみ銅余計相出る、したがって尻銅面悪しく流の銅に相成り大きく不益也。床入候て風の位を見、それより女釜床半分ぬりかけてらし炭を入れ床焼申し候。床焼かげん見候には床の底てらしを除けて見色也。右色にては生焼け也。床の底赤く成りたる節、大釜を塗り仕掛け申し候。段々吹方いたし焼をかけ口炭を打ち吹申し候。さて又あかまり候節、大工は前に代わり卸し切殊の外念入れ、前の方へ返し粉救い(こすくい)を遣わし卸し切口明け候時、相残り候卸し切取除け、しかみ掻き出しは、右取り跡口へかけ吹方する也。鍰ミかき候て、それより盛取り、鈹上げ申し候。吹きに尻銅上げ候。床焼きかね候か、亦はこわり物なれば床の内へいかり付け、鈹へ尻銅吸い上げ候て、銅面悪しぐ在りのもの也。出しへ捨てり候ものは、しかけ如く温み背負あぶみ、高いかり釜かしら床大工ほうきに気を付け申す事第一也。尤も真吹床入炭灰吟味の事頓して同様也。
・卸し切の仕様前々大工相代り、あかまりよく相くたぎ懸返し、粉救い遣い、前肩へ粉救いへ入れ何べんもよく卸し切り、の白くなる程にいたし候を良しとす。右卸し切りそまつあり候えば、あかまり床の内へ入るばかりにてになる流るゝ也。よくよく念入れ申すべき事。

「銅山記」全体では、「からミ」3ヶ所、「鍰」3ヶ所、「鍰ミ」1ヶ所あり。

考察
1. 筆者は、「銅山記」の原本和書で字を確認することはできなかった。また原本和書が成った年は、1797年以降であるが、はっきりした年月日や編者が書かれていない。筆写されたものとすると、その筆写者、年も不明である。
2.「鍰」3ヶ所のほかに、「鍰ミ」が1ヶ所ある。「ミ」を付けたのは、はずみなのであろうか。いずれにせよ、1800年頃には、「鍰」を使っていたことが、この「銅山記」が示している。

まとめ
 「銅山記」には、「からミ」3ヶ所、「鍰」3ヶ所、「鍰ミ」1ヶ所あり。

注 引用文献
1. web. 国立国会図書館デジタルコレクション「鹿角市史史料編第26集」11,15コマ
2. 「銅山記」鹿角市史資料編第26集p1~55(鹿角市役所 市史編さん室 平成6年1994) 解題 安村二郎 p12→図1 p13→図2 p20→図3 p21→図4
3. 新渡戸文庫は、盛岡の教育者、郷土史家の新渡戸仙岳(にとべせんがく)(1858~1949)が、収集した史料蔵書5000冊を昭和24年に岩手県立図書館に寄贈したものである。
Web. 岩手県立図書館>いわての歴史シリーズ>新渡戸仙岳、 web.盛岡市>新渡戸仙岳、
Wikipedia「新渡戸仙岳」より。

図1. 「銅山記」の一部分-1


図2. 「銅山記」の一部分-2


図3. 「銅山記」の一部分-3


図4. 「銅山記」の一部分-4



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