環境と体にやさしい生き方

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資源循環の裏で進む環境汚染と健康被害

2007年10月07日 | 環境問題
中国をはじめとした新興国の経済発展で、資源の高騰が続いています。このため、再生資源の循環が活発になってきていますが、その一方で環境汚染と健康被害も拡大しています。

現在、国内のリサイクルシステムは、次のように全体的な法律と個別物品の特性に応じた法律によって整備されています。

【全般的な法律】
循環型社会基本法(循環型社会形成推進基本法、2001年1月施行)
廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律、2001年4月改正施行)
資源有効利用促進法(資源の有効な利用の促進に関する法律、2001年4月施行)
  
①で循環型社会を構築するための基本的な事項を定め、この下に②と③の法律があると考えるとわかりやすいと思います。

【個別の物品特性に応じた法律】
容器包装リサイクル法(容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律、2000年4月施行)
家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法、2001年4月施行)
食品リサイクル法(食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律、2001年5月施行)
建設リサイクル法(建設工事に係る資源の再資源化等に関する法律、2002年5月施行)
自動車リサイクル法(使用済自動車の再資源化等に関する法律、2005年1月施行)

これらの法律の整備によって、市場に供給される循環資源の量が増加している一方で、アジア地域の経済発展によって、資源の需要も増加しています。この二つの要因が相まって、現在、日本からの再生資源や中古品の輸出は、総輸出額の10%を占めるまでになっており、なかでも中国への輸出量が増えています。

貿易統計によると、2006年に日本から中国に輸出された主な再生可能資源は、鉄(275万トン、1423億円)、銅(37万トン、701億円)、アルミ(8万トン、105億円)、プラスチック(23万トン、116億円)、古紙(319万トン、438億円)となっています。また、韓国へは、鉄(337万トン、1255億円)、香港へは、プラスチック(96万トン、444億円)が輸出されています。

中国は、汚れの付着や生活ゴミの混入した廃プラスチックの輸入を禁止していますが、これらは香港を経由して再輸出されており、結果として日本は、中国に約120万トンの廃プラスチックを輸出しています。中国の2006年の再生可能プラスチックの輸入実績は587万トンですから、日本からの輸入は約2割を占めていることになります。


この日本と中国の需給関係は、「中国の急激な発展に伴う資源の確保」「日本における廃棄物の処理にかかる費用の低減」というお互いの短期的な利害の一致によるところが大きく、長期的な資源循環の視点に立ったものではありません。
有害な廃棄物の国家間の移動に関しては、国際的な条約である「バーゼル条約」で規制され、日本ではこれに基づいた国内法も整備されていますが、これらの規制等を潜り抜けて密輸や違法な貿易等の悪事を働く業者も少なからずいるようです。。


【バーゼル条約】
有害廃棄物の越境移動に関しては、1989年に「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」が採択され、約170ヵ国が批准し日本もこれに加入しています。この条約の目的は、先進国内で発生した有害な廃棄物が開発途上国に輸出されて、深刻な環境汚染につながることを防止するために、ルールを定めたものです。


【特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律】
日本では、バーゼル条約に基づいて「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」を制定しています。この法律の目的は次のようなものです。

「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」の目的(同法律の第一条抜粋)
この法律は、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(以下「条約」という。)等の的確かつ円滑な実施を確保するため、特定有害廃棄物等の輸出、輸入、運搬及び処分の規制に関する措置を講じ、もって人の健康の保護及び生活環境の保全に資することを目的とする。


他の国でも、それぞれ国内産業の保護や有害物質の流入防止などを目的として輸入禁止品目を定めています。
因みに、中国の輸入禁止品目は、日中商品検査株式会社の次のサイトなどから確認できます。

http://www.spvjcic.com/china_5.html(当該サイト内の「輸入禁止品目リスト」

これによると、2002年8月以降、エアコン、冷蔵庫、コンピューター等設備などを含む廃機電製品21品目(部品、ばらばらになった部品、かけらになった部品、砕いた部品を含む、国家の別規定を除外)が輸入禁止貨物となっています。


しかしながら、前述したようにこれらの廃棄物資源の需要は旺盛で、違反は後を絶ちません。中国へは、輸入が禁止されている中古家電や廃家電が香港やベトナムなどの様々なルートで密輸されています。また、さまざまな金属やプラスチックなどが入り混じったスクラップ(雑品)の中に、輸入禁止品を混合させることも少なくなく、混入した鉛バッテリーのショートや残留油が原因と思われる船舶火災が頻発しています。


また、日本から中国をはじめとしたアジア地域に中古品やゴミの類が大量に輸出されることで、輸出先の環境汚染が深刻になっています。たとえば、中国広東省北東部の貴嶼(グイユ)は、世界中の中古家電や廃家電をリサイクルしていることで有名ですが、作業所は零細・劣悪で、処理方法も極めて稚拙です。

たとえば、家電の電子基板からICチップを取り出すには、空き缶の中に石炭を入れて、その上に敷いた鉄板を熱して鉛はんだを溶かしています。また、金は、強酸の溶液に漬けて分離しています。このような作業はほとんど防護もない状態で行われ、排気や廃液は垂れ流し状態なのが現状です。さらに、資源として取り出された後の残物の不法投棄も環境悪化の一因です。環境対策に必要な設備のための投資が不要なので、コスト競争力は極めて強く、環境対策を整えた業者は太刀打ちできません。

貴嶼では住民の健康状態も悪化しており、2005年の中国・汕頭大学医学部による1~6歳児165人を対象とした血液検査で、80%以上が鉛中毒になっていたことが分かったとのことです。
このような事態に対して、中国政府もリサイクル団地の建設なども進めていますが、金銭的な豊かさを求める人々の危険で稚拙なリサイクルはなかなか減らないようです。


このような問題を引き起こす原因のひとつとして、日本のリサイクル制度が廃棄物の不正取引を助長しているとの指摘もあります。たとえば、現状の家電リサイクル法では、その対象となるのはエアコン、ブラウン管テレビ、冷蔵庫、洗濯機の4品目の廃家電に限られています。中古家電はこの対象とならないため、廃品回収業者が、リサイクル料金を徴収せずに回収して輸出していているのです。経済産業省と環境省によるリサイクル対象4品目の不用家電の調査では、2005年に不用となった2287万台のうち約3割の771万台が海外へ流れています。

また、容器包装リサイクル法では、ペットボトルは飲料メーカーなどがリサイクル業者に処理費用を支払うことを前提としていますが、現状は、処理業者が購入しており、その多くが中国へ輸出されています。その結果、国内の廃ペットボトルのリサイクル工場は稼働率が極めて低くなっています。


このような輸出側と輸入側の短期的な利害の一致による資源ごみの循環は、国際的な経済の歪みと環境悪化を加速させます。政府は、もっと国際的にグローバルな見地からリサイクルに係る施策について検討するべきでしょう。また、多くの資源を輸入に頼って生活している私たち国民も、もっと身近にあるモノを限りある資源としてとらえ、資源の循環について関心を持つべきだと思います。


主な参考資料
・日経ビジネス 2007.9.17号 アジア静脈経済圏 ゴミから開ける巨大産業
・WEB版 読売新聞『「雑品」エアコン、中国へ』(2006.10.17)
・WEB版 読売新聞『海外流出、ごみ循環に影』(2007.6.9)


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