環境と体にやさしい生き方

環境の悪化は生物系全体に大きな影響を与えています。環境と体にやさしい健康的な生活を考えるための新鮮な情報を紹介します。

食糧危機・食品値上げの一方で増える廃棄物

2008年06月24日 | 食生活等
世界的な食糧価格の高騰やますます深刻化する発展途上国の飢餓問題の一方で、日本では毎日大量の食品廃棄物が出ています。

2007年11月20日に農林水産省が公表した「平成19年度食品循環資源の再生利用等実態調査結果の概要」によると、平成18年度の食品産業における食品廃棄物等の年間発生量は1135.2万トンで、前年度とほとんど変わっていません。(前年度のわずか1万トンの減)
食品産業の食品廃棄物等を業種別にみると、食品製造業44%、外食産業27%、食品小売業23%、食品卸売業7%となっています。
また、年間に発生する食品廃棄物等のうちで、売れ残り(賞味期限切れ)や返品が原因で廃棄されたものの割合は、11%(外食産業を除く)となっています。

一方、家庭での食品ロス率は、農林水産省の平成18年度食品ロス統計調査によると、3.7%となっています。1人1日当たりの食品使用量1,122gのうち41.6gが食品ロス量です。
注:食品ロスとは、食品使用量(食料品・調理品)のうち、「過剰除去、直接廃棄、食べ残し」に当たるものです。なお、食品使用量には不可食部分(魚の骨や果物の皮など)は含まれません。

 食品ロス率(%)=(食品ロス量÷食品使用量)×100

平成18年度の人口から計算すると、家庭から年間で約200万トンの食品ロスが出ていることになります。食品ロス量のうち、食べ残し(27%)と直接廃棄(19%)の合計が半分近くを占め、残りが過剰除去(54%)となっています。食品の種類別では、野菜類が最も多く43.9%、次いで調理加工食品15.6%、果実類14.9%、魚介類7.4%、その他の生鮮食品(肉類含む)6.1%などとなっています。

なお、石川県立大学生物資源工学研究所の高月紘教授のグループが、2007年秋に京都市内の住宅地で約50世帯・約100袋分の家庭ごみを調査した結果では、「食べ残し」が42%、全く手をつけていない食品(直接廃棄)が28%となっています。これらの調査結果から、高月教授は全国の家庭から廃棄される食べ残しは農水省データから計算した量よりもはるかに多く、年間で456万トンに達すると推計しています。

視点を変えて農水省のデータから熱量について見てみると、平成15年度の1人1日当たりの供給熱量は2,588kcalで、摂取熱量1,863kcalとの差は約700kcalにもなります。これから計算すると、食品産業と家庭から毎日約4分の1の食品が捨てられていることとなります。


このように大量の食品が廃棄物として排出される主な原因としては、次のようなものがあげられます。

・消費者や販売店の鮮度意識が過剰なため、製造業者の食品の期限表示が短期化している。
・消費者が食品期限表示に頼りすぎている。期限表示の意味をよく理解していない。(安易に捨てすぎる。)
・消費者の購入した食品の管理等が不十分。
・偏食、飽食など、健全な食生活に無関心な層が増えてきている。
・小売店では、人気の無い(回転率の悪い)食品は返品される傾向にある。
・魚介類や野菜などで供給量が安定しないものは、流通ルートに乗りにくく、廃棄されるものもある。
・企業も消費者も食の安全・安心に過剰反応し、健康への影響がない食品トラブルでも安易な回収・廃棄が増大している。(三菱総合研究所の07年の調査では、新聞による回収告知の約4割が健康への影響のないもの)


このように、食品産業、消費者ともに原因があることがわかります。

上記原因のうち期限表示の短期化について、期限表示のある食品が「実際にいつまで食べられるのか」という研究に取り組んでいる甲南女子大の奥田和子名誉教授は、表示の短期化は販売店にとって商品の回転率が高まるメリットがあると言います。また、製造業者も賞味期限が長いと防腐剤などの添加物が多いと疑われるため、より短い期限表示にする傾向があるとも言っています。

消費者も、消費期限(食べても健康に影響がない安全性の限度)と賞味期限(おいしく食べられる目安を示す期限)の表示に頼りすぎる傾向が強く、中にはこれら2種類の表示を混同し、賞味期限が過ぎたら捨ててしまう人も少なからずいるようです。(過去ブログ「賞味期限、消費期限、もったいない」で詳しく書いています。)


大量に廃棄される食品廃棄物等を平成18年度に、肥料・飼料などの食品循環資源として利用または利用するために譲渡されたのは、食品産業全体で約59%(再生利用率)と前年度並みにとどまっています。また、家庭の生ごみの場合、飼料などに再利用されるのはわずか3%です。

ただ、個人的にはいたずらに食品廃棄物の再利用率を高めることには問題があると考えています。食品廃棄物の飼料等への利用については、特に加工品や生ごみの場合、油や塩分、添加物の問題があります。家畜への給餌を考えると、油や塩分を除去することが必要で、これには多くのエネルギーが必要となります。

また、現在ほとんど議論されていませんが、食品添加物の多く入った食品を飼料として再利用することは、巡り巡って人体への蓄積という問題もでてきます。以前、人里に下りてきた野生のキツネが生ごみを食べてアトピーになった写真を見て、あらためて食品添加物の害を痛感したことがあります。

これらのことを考えると、家庭・食品業界ともに、食品廃棄物大量発生の問題点と原因を掘り下げて分析し、それぞれの原因に対応した具体的対策を立て、食品廃棄物の発生を減らすことが最も優先されるべきです。




【参考文献】
農林水産省 平成19年食品循環資源の再生利用等実態調査結果の概要
・農林水産省 統計をみる 家庭での食品ロス、食品産業のリサイクル資源の実態
・日経ビジネス 貴重な食料がゴミと化す(2008.6.16号)
・読売新聞 食ショック第3部 飽食のコスト(2008.6.19~6.21)
YOMIURI ONLINE ニュース 「賞味期限」五感で判断(2006.9.14)


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