大阪・ミナミのラーメン店が、アジアからの観光客でいっぱいだ。訪日観光客を対象にした調査では、おいしかった日本食1位にラーメンが輝くほど。熱を上げる観光客の期待に応えようと、170席を超えるラーメン専門ビルもオープンした。

 4月半ばの金曜の夜。雨の中、大阪・ミナミの幾つものラーメン店に行列ができていた。傘の下で台湾語フィリピン語などアジア各地の言葉が飛び交う。

 「1~2時間お待ちいただくこともあります」

 福岡発祥の「一蘭(いちらん)」道頓堀店(大阪市中央区)には昨年、アジアからの観光客を中心に約40万人が来店し、売り上げは全52店舗でトップクラスだ。「のれんの前で撮影を楽しむ人も多く、店が一種の観光地化しています」と広報・宣伝担当の大松亮一さんは言う。

 16日には千日前商店街の5階建てビルを丸ごと使った一蘭道頓堀店屋台館がオープンした。2~5階に172の座席があり、2、3階は30席ずつの仕切り付きのカウンター、1階の土産物コーナーには大量購入に対応できるよう20セット入りラーメンも用意した。

 麺の硬さなどを指定する注文票や券売機は日本語、英語、中国語、韓国語の4カ国語をそろえた。「濃い味」は英語で「strong」、中国語で「厚重口味」だ。

 「1日の来店者の9割以上がアジア人観光客のこともある」と話すのは、しょうゆラーメン専門の金久右衛門(きんぐえもん)道頓堀店の大西隆次マネジャー(43)。昨年末から台湾や中国、韓国からの客が増え始め、2月以降の売り上げは昨年同月比1・5倍増が続く。「麺一つにしても日本は湯がき方など各店がこだわる。きめ細やかさが受けているのでは」

 2012年の国の調査では、大阪府内のラーメン店は47都道府県で8番目の933店舗。1位の東京都の2786店、2位の北海道の1619店と比べて多くはない。

 ただ、大阪府によると、昨年1年間に大阪府を訪れた外国人客はアジアを中心に過去最多の約376万人。前年より約113万人増えた。アジアからの訪日旅行を多く扱う大阪市北区の旅行会社「フリープラス」によると、現地メディアで日本のラーメン特集が組まれることもあり、注目されているようだ。

 台湾から道頓堀周辺を訪れた謝燕萍(シェイェンピン)さん(42)によると、台湾では日本のラーメンについて書かれたブログが数多くあり、謝さんもブログを見て訪れた。「台湾にもラーメン店はあるけど日本のは味も濃くて麺も硬め。全くの別物」と満足そうだ。2軒をはしごした玲慈(リンツー)さん(18)は「麺の硬さが選べるなどサービスが充実している」と語る。

 「リクルートライフスタイル」(東京)が昨年、アジアの4カ国1地域と米国の訪日外国人600人を対象にインターネットでアンケートしたところ、観光目的の1位は「日本食を楽しむ」で約8割を占めた。約5割の人が訪日中にラーメン店を訪れ、おいしかった料理では天ぷらやすしを抑えてラーメンが1位だった。担当者は「日本の店の海外進出が進んでラーメンが身近になり、本場で食べたいという人が増えたためでは」とみている。(藤田絢子)

■一蘭の注文票の表記例

(日本語) (英語)

濃い味   strong

うす味   weak

超こってり ultra rich

あっさり  light

超かた   extra firm

超やわ   extra soft