中国からの訪日客急増で、日本政府発行の観光ビザが不足する恐れがあるとして、現地の日本国大使館や総領事館が、中国人の団体客向けに初めて臨時ビザを出していることがわかった。花見シーズンを迎え、東京や大阪、京都ではホテルの満室が相次いでいる。

 1日、東京都千代田区の千鳥ケ淵公園。上海から家族で訪れた中国人女性の孟申英さん(60)は「上海の桜は公園など一部だけ。街中にあふれる桜は、雨が降ってもすてき」と話した。

 訪日観光に必要なビザの発給数は昨年から「未曽有(みぞう)の増加傾向」(外務省領事局)が続く。同省の統計によると、今年3月に観光ビザで来日した中国人は昨年3月の2・5倍にあたる約26万8千人。昨年1年間の約152万人に対し、今年1~3月だけで約69万人が観光ビザで訪れている。

 ビザは通常、桜や富士山をあしらった色刷りだが、用紙不足の恐れがあり、中国の日本国大使館と総領事館は、3月11日から図案のない臨時ビザを用意した。これまで少なくとも5万人以上がこのビザで訪日したとみられる。在上海日本国総領事館では、担当部門が連日の残業や人員増で対応にあたっているという。

 楽天トラベル広報によると3月15日~4月15日は中国、台湾、香港からの観光客で、東京や関西の立地の良いホテルはほぼ満室に。予約は3月31日からさらに増え、4月3日をピークに同月中旬まで混み合う。

 エリア別の宿泊数は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)人気もあって1位が大阪(心斎橋付近)、2位が京都(京都駅周辺)、3位が東京(上野・浅草エリア)という。

 中国では4月4~6日に、家族で墓参りをする「清明節」の連休があり、花見シーズンの訪日に拍車をかけているようだ。

 中国人の観光を7年間手がけている旅行会社「トラベル東海」(大阪市中央区)の永谷幸子社長によると、2月の「春節」以降、中国人観光客の数は増え続け、1カ月で約200団体を受け入れている。広東、福建、上海からが多く、「反日デモなどで双方の感情が衝突した3年ほど前は、韓国や東南アジアに行く客が多かったが、ここ1年ほどで人気が戻った」と指摘。「円安で日本製品を買うメリットが大きくなった。桜と、USJにできたハリー・ポッターの新エリア効果も大きい」と分析する。(今村優莉)