塩やアイス、コーヒーなど身近な商品がこの春も値上げされる。原材料の高騰が主な要因だが、人手不足による人件費アップも影響している。家計の負担もじわりと増しそうだ。

 公益財団法人の塩事業センターは、家庭向けの「食卓塩」の価格を4月1日の出荷分から約3割引き上げる。値上げは1992年以来24年ぶり。赤いキャップで知られる食卓塩100グラム入りは、希望小売価格に当たる標準販売価格が税込み73円から98円になる。メキシコから原料として輸入している塩の調達費などが上昇しているためという。

 身近な商品で、原材料高を理由に値上げする動きが広がっている。カゴメは、煮込み料理などに使うトマトソース7品目の出荷価格を、4月から4~9%引き上げる。店頭販売価格に転嫁されれば「基本のトマトソース」(295グラム入り)は10円前後高くなる計算だ。世界の人口増で食品への需要が拡大していることを背景に外国産トマトが高騰。「自社でのコスト吸収は困難」(広報)という。

 ログイン前の続き味の素は「クノール カップスープ」シリーズの29品目の価格を4月1日の納品分から約4~8%引き上げる。円安の影響が大きく、輸入するコーンパウダーや野菜の乾燥具材の調達費が増えた。ミツカンも納豆6品目を3月末の出荷分から4~10%値上げする。対象は「金のつぶ」や「くめ」シリーズの一部。値上げは同社が97年に納豆事業に参入して以来初めて。原料の国産大豆の価格は過去6年で2倍になったという。

 人手不足も響いている。タリーズコーヒージャパンは、「タリーズコーヒー」の店で販売する飲料などの一部を今月25日から値上げした。「本日のコーヒーS」は税込み310円が320円になった。消費増税分を除く値上げは2011年7月以来。原材料費の上昇に加え、スタッフ確保にかかる人件費が上昇していることも原因だ。

 赤城乳業は4月1日出荷分から、アイス「ガリガリ君」の希望小売価格を税抜き60円から70円に上げる。値上げは25年ぶり。井村屋もアイス「あずきバー」を同60円から70円に値上げする。両社とも人手不足で物流コストなどが上がり、棒に使う木材の値上がりも続いているという。井村屋の広報担当者は「自助努力では限界を超えている」と話す。

 戦略的な値上げもある。東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、東京ディズニーランド、東京ディズニーシーの入園料を4月1日から値上げ。いずれかを1日楽しめる「1デーパスポート」は、大人で500円引き上げて税込み7400円にする。14年の消費増税時を含め、値上げは3年連続。同社は「アトラクション整備やパレードの充実」が狙いとする。劇団四季は、4月1日以降に販売を開始するチケットを、一部の公演を除いて8~10%程度値上げする。リーマン・ショック後の08年秋にはチケットを値下げし、14年4月の消費増税後も価格を据え置いたが、大型作品の制作コストや新劇場「名古屋四季劇場」開設費用などを値上げでまかなうという。