・札幌出張。根室本線の電車の中で久保さんから送っていただいたトドマツ母子モデルの原稿を広げる。先日の久保さんからの詳しい説明で,ある程度は理解していたはずだったのだが,昨日の練さんとの電話打ち合わせでは当方の圧倒的な理解不足が露呈している。何はともあれ,モデルをしっかり理解しないことには(他人に説明できるようにならないと・・・)どうにもならん。てなわけで,改めてじっくり読むと今回のモデルのポイントと図表の意味がようやく理解できる。
・本モデルでは,母親jが倒木kに残した子供の数をポアソン分布で表現している。パラメータの名前と意味がなかなか結びつかなかったのだが,原稿をじっくり読んでようやく頭に入る。不思議なもので,式や図表に日本語の注釈を書いていくと理解できる。このモデルでは,母樹の種子生産力,倒木の定着しやすさ,倒木の生存確率,母樹ごとのカーネルのパラメータにそれぞれランダム効果が入っているのだが,種子生産力はともかくとして,倒木の定着しやすさ,生存確率,母樹ごとのカーネルのパラメータに“とんでもない”くらい個体差がある,という結果が得られている。
・“倒木の質”に測定しきれない個体差があることは観察でも感じていたのだが,今回の解析における一番のトピックは“散布カーネル”なるものは,母樹ごとに相当違うらしいということだ。これまでのモデルでは散布カーネルは全母樹共通という暗黙の仮定がおかれているのだが,この結果を見ると個体差を無視することは難しいかもよってことが言えそうだ。
・生物学的に考えてみたとき,この個体差を生む要因とはなんだろう??考えられる要因を列挙してみるか・・・・。
1番目:樹高の個体差。樹高が高いほど種子は遠くに飛ぶだろう。今回,DBHはオフセット項になっているが,樹高のデータはない。つまり,DBHは大きくても寸詰まりな個体がいる?
2番目:種子のついている場所の高低さ:Nathanら(2002)Natureによると樹冠近くから舞い上げられた種子が長距離散布されるとされている。したがって,個体によって樹冠の上部にしか着かない個体と,下枝の方まで着ける個体がいる,すなわち種子の放出高に個体差がある?
3番目:風通しの違い:風通しがいい個体はより遠くに飛ばせるが,周囲の個体が密接している個体はなかなか遠くに飛ばない?
4番目:種子の面積,重さ,形:ヤチダモの種子散布実験(Goto et al. 2005)で示したように,種子の面積,重さ,形によってその飛翔能力は異なり,しかもそれらは母樹間で違う?
などといったところか・・・。こうして考えてみると,個体差を生じる要因も結構ある。
・いつもの寄り道の後,10時半すぎに久保さんの研究室着。まずは当方のパソコンでのWinShellの実装具合をチェック。やはりPDF化で問題発覚。この後は久保さんによる環境改善作業をほとんど呆然としながら見守る。うむ,よく分からないが,飯島くんのご尽力によりLaTexがそれなりに(?)うまく導入されていたために,あまり大きな問題にならなかったらしい。途中,図のみがコンバートされないなど,エクスプローラ特有(サーバー特有?)の問題が発生していたようだが,この辺りの研究は(この辺りの研究も・・・)お任せする。文献参照環境のBibTex周りも整備していただき,いつもながら実に頼りっぱなしである。
・WinShellテクニックはおいおい身に着けるとして,肝心の中身に関する打ち合わせ。まずは論文の方向性だが,遺伝構造を最初に出して,そのテンプレートとなる散布,定着,生存のプロセスを実生と稚樹の母親解析と階層ベイズモデルで行うという流れにしたいという練さんの要望を伝える。遺伝構造解析の部分は本質的には色々な問題を含んでいそうだが,遺伝構造から類推できるコトには限界がある,だから親子関係から詳細にプロセスを追う必要があるって流れでいきますか・・・ということで了解を頂く。以前,自分で作成したレビューコメントに対する回答案を元に再構築することになりそうだが,論文の展開としては遺伝構造パートを前に持ってくる前のパターンに逆戻り。
・こうして,大きな流れをあっさり変更することになったのだが,全体として論文がよくなるためならば,こうした改訂作業は全然苦にならない。むしろ,どうやって具体的な作業を進めるかだが,現段階の当方の原稿とモデリングパートの統合+LaTex化は久保さんに引き受けていただけることに・・・。こちらとしては,必要な図表のデータ,文献のbibファイルをアップロードさせていただくことにする。このままでいくと図7枚,表4枚くらいになりそう・・・。というところまで詰めていくと,なんだか急に進んだような気がする。先は遠いが,ようやくイメージができつつある。
・北大構内のハルニレは有名である。当方としては,当然,開花が気になってしまうのですが,おや今年も花が着いている?むむっ,というよりもむしろ豊作年では・・・(札幌のニレはいつも花が多いのは確かだが・・・)。そういえば,岩魚沢と4林班の2プロットで行っているニレ類の遺伝研究は完全に置き忘れ去られているな。個体位置図,開花データ,成木DNA抽出,母樹別種子のDNA抽出,一部の遺伝子型決定,までは終わっているのだが,その先が全く進んでおらん。取り掛かれるのは今年の冬(?)くらいであろうか・・・。
・午後より“北海道の林木育種”の編集委員会。50周年記念誌(本)の執筆内容や体裁について議論。編集担当者は,自分の身に降りかかってくる“モンダイ”だけに,いつになく熱い(?)討議が交わされる。当方からは先日作成したウダイカンバ原稿をたたき台として用意していたのだが,用意したものは作成するべきものとは方向性がまるで違うらしい,ということだけは分かった。5月25日の総会+記念集会では,当方も話題提供者の一人に祭り上げられており,エゾマツの資源保続に関する話題提供をすることになる。話題提供をすると,もれなく雑誌の原稿依頼も付いてくる。うーむ頭がくらくらと・・・。
・本モデルでは,母親jが倒木kに残した子供の数をポアソン分布で表現している。パラメータの名前と意味がなかなか結びつかなかったのだが,原稿をじっくり読んでようやく頭に入る。不思議なもので,式や図表に日本語の注釈を書いていくと理解できる。このモデルでは,母樹の種子生産力,倒木の定着しやすさ,倒木の生存確率,母樹ごとのカーネルのパラメータにそれぞれランダム効果が入っているのだが,種子生産力はともかくとして,倒木の定着しやすさ,生存確率,母樹ごとのカーネルのパラメータに“とんでもない”くらい個体差がある,という結果が得られている。
・“倒木の質”に測定しきれない個体差があることは観察でも感じていたのだが,今回の解析における一番のトピックは“散布カーネル”なるものは,母樹ごとに相当違うらしいということだ。これまでのモデルでは散布カーネルは全母樹共通という暗黙の仮定がおかれているのだが,この結果を見ると個体差を無視することは難しいかもよってことが言えそうだ。
・生物学的に考えてみたとき,この個体差を生む要因とはなんだろう??考えられる要因を列挙してみるか・・・・。
1番目:樹高の個体差。樹高が高いほど種子は遠くに飛ぶだろう。今回,DBHはオフセット項になっているが,樹高のデータはない。つまり,DBHは大きくても寸詰まりな個体がいる?
2番目:種子のついている場所の高低さ:Nathanら(2002)Natureによると樹冠近くから舞い上げられた種子が長距離散布されるとされている。したがって,個体によって樹冠の上部にしか着かない個体と,下枝の方まで着ける個体がいる,すなわち種子の放出高に個体差がある?
3番目:風通しの違い:風通しがいい個体はより遠くに飛ばせるが,周囲の個体が密接している個体はなかなか遠くに飛ばない?
4番目:種子の面積,重さ,形:ヤチダモの種子散布実験(Goto et al. 2005)で示したように,種子の面積,重さ,形によってその飛翔能力は異なり,しかもそれらは母樹間で違う?
などといったところか・・・。こうして考えてみると,個体差を生じる要因も結構ある。
・いつもの寄り道の後,10時半すぎに久保さんの研究室着。まずは当方のパソコンでのWinShellの実装具合をチェック。やはりPDF化で問題発覚。この後は久保さんによる環境改善作業をほとんど呆然としながら見守る。うむ,よく分からないが,飯島くんのご尽力によりLaTexがそれなりに(?)うまく導入されていたために,あまり大きな問題にならなかったらしい。途中,図のみがコンバートされないなど,エクスプローラ特有(サーバー特有?)の問題が発生していたようだが,この辺りの研究は(この辺りの研究も・・・)お任せする。文献参照環境のBibTex周りも整備していただき,いつもながら実に頼りっぱなしである。
・WinShellテクニックはおいおい身に着けるとして,肝心の中身に関する打ち合わせ。まずは論文の方向性だが,遺伝構造を最初に出して,そのテンプレートとなる散布,定着,生存のプロセスを実生と稚樹の母親解析と階層ベイズモデルで行うという流れにしたいという練さんの要望を伝える。遺伝構造解析の部分は本質的には色々な問題を含んでいそうだが,遺伝構造から類推できるコトには限界がある,だから親子関係から詳細にプロセスを追う必要があるって流れでいきますか・・・ということで了解を頂く。以前,自分で作成したレビューコメントに対する回答案を元に再構築することになりそうだが,論文の展開としては遺伝構造パートを前に持ってくる前のパターンに逆戻り。
・こうして,大きな流れをあっさり変更することになったのだが,全体として論文がよくなるためならば,こうした改訂作業は全然苦にならない。むしろ,どうやって具体的な作業を進めるかだが,現段階の当方の原稿とモデリングパートの統合+LaTex化は久保さんに引き受けていただけることに・・・。こちらとしては,必要な図表のデータ,文献のbibファイルをアップロードさせていただくことにする。このままでいくと図7枚,表4枚くらいになりそう・・・。というところまで詰めていくと,なんだか急に進んだような気がする。先は遠いが,ようやくイメージができつつある。
・北大構内のハルニレは有名である。当方としては,当然,開花が気になってしまうのですが,おや今年も花が着いている?むむっ,というよりもむしろ豊作年では・・・(札幌のニレはいつも花が多いのは確かだが・・・)。そういえば,岩魚沢と4林班の2プロットで行っているニレ類の遺伝研究は完全に置き忘れ去られているな。個体位置図,開花データ,成木DNA抽出,母樹別種子のDNA抽出,一部の遺伝子型決定,までは終わっているのだが,その先が全く進んでおらん。取り掛かれるのは今年の冬(?)くらいであろうか・・・。
・午後より“北海道の林木育種”の編集委員会。50周年記念誌(本)の執筆内容や体裁について議論。編集担当者は,自分の身に降りかかってくる“モンダイ”だけに,いつになく熱い(?)討議が交わされる。当方からは先日作成したウダイカンバ原稿をたたき台として用意していたのだが,用意したものは作成するべきものとは方向性がまるで違うらしい,ということだけは分かった。5月25日の総会+記念集会では,当方も話題提供者の一人に祭り上げられており,エゾマツの資源保続に関する話題提供をすることになる。話題提供をすると,もれなく雑誌の原稿依頼も付いてくる。うーむ頭がくらくらと・・・。