
ちょうど3か月前の2021年8月に「Standard Hawaiian Songs」という曲集を出版いたしました。
これは基本的には32小節で構成されている「ハパ・ハオレ・ソング(ハワイ語交じりの英語歌詞の歌)」が中心となっています。
今回出版いたしましたこの「Hula Song Favorites」は本のタイトルからお分かりのように8小節程度で構成される「フラ・ソング」が中心となっています。
両方の曲集とも「PD : Public Domain誰でも使える領域」すなわち著作権の保持期間が終了した曲や、もともと著作権が存在しない「トラディショナル曲」を集めています。著作権の有無はわが国の著作権管理団体「日本音楽著作権協会JASRAC」のサイトで調査しましたが、海外の著作権管理団体までは調査しておりません。
6年間ハワイに暮らして感じたことなのですが、現地のアマチュア歌手たちの多くは譜面に基づいて歌っているのではなくほかの演奏家が歌う歌をコピーして歌っているように見えます。そしてこのコピーが進むにつれてオリジナルからはどんどん離れていくのではないかという心配を持ちました。
特に「トラディショナル曲」はもともと正式に出版された譜面があるわけでもないのでそれぞれの歌手がそれぞれの解釈で歌うのはかまわないのですが、それといえども誕生当時に近い歌い方が見つかればそれを保存するのも良いかと思いますので、今回可能な範囲で古い資料を探し、それに基づいた譜面を集めて出版することといたしました。
参考資料としてはまずリリウオカラニ女王の作品を中心にハワイ大学のバーバラ・スミス教授が編纂した「The Queen's Song Book」
ハワイの大作曲家チャールス・エドワード・キングが編集した「King's Book of Hawaiian Melodies(通称ブルー・ブック)」と「King's Songs of Hawaii(通称グリーン・ブック)」
そしてふたりの女性歌手で作曲家の曲集「Lena Machado_Songbird of Hawaii」および「Songs of Helen Desha Beamer」
それらの「参考資料」に加えておおいに参考となった資料はインターネット・サイトの「Huapala」
およびわが国ハワイアン音楽界のレジェンドである白石信さんが編纂した全10巻のハワイアン音楽曲集「フラ・ソング名曲の世界Do the Hula Hula I~X」(2002~2015_パイン・プロデュース発行、アキオ楽器販売)で、この10巻シリーズはハワイ音楽のバイブルとも言える貴重な資料ではないでしょうか。
それではこの曲集の収録曲をご紹介いたしましょう。それぞれの譜面にあるQRコードを読むと参考音源(メロディーと伴奏のみで歌詞はありません)に飛べます。
例えばこれが1曲目のQRコードです。お手持ちの「QRコードリーダー」でお試しください。
なお、このブログでは各曲のページ数字をクリックすると同様に参考音源に飛びます。
フラ・ソングは短い曲が多いのでそれぞれのバース(番)を2度ずつ繰り返すことが多いのですが参考音源ではKāne`ohe以外の曲は1度だけ演奏するように構成しています。
(P03)`A `Oia John Kameaaloha Almeidaア・オイア(それなんだ)!素敵な貴女を手に入れたいんだ!盲目のマンドリン奏者で作曲家のジョニー・カメアアロハ・アルメイダの作品です。彼は有名な歌手でスチール・ギタ-奏者であったプア・アルメイダの父親でもあります。
(P04) E Ku`u Baby Hot Cha-cha Lena Machado作者のレナ・マシャードはザビア・クガー達の新しいラテン・リズムに魅せられてこの曲を作りました。
(P05)He Aloha Nō O Honolulu Lot Kaue作者の乗った船がホノルルから故郷のコナに戻る歌。裏の意味もあります。ここではカハウアヌ・レイク・トリオの演奏を「参考資料」といたしました。
(P06) God Bless My Daddy/ Mom traditionalフイ・オハナのデニス・パヴァオの歌で有名で、ハワイでは盛んに歌われていることを知りました。デニスのアルバムのクレジットでは「レナ・マシャード作」とあるのですが、上記参考資料の「レナ・作品集」には載っていないのでとりあえず「トラディショナル」としておきます。
(P08)He Mana`o Ko`u `Ia `Oe traditionalハワイ諸島の8つの島の女性の美しさを歌っています。
(P09) Henehene Kou `Aka traditionalホノルルに市街電車の走っていた当時の歌。「クウ・ホア」の作者ポノ・ビーマーの若かりし頃の作とも言われています。IZの歌う「Our eyes」バースは採用していません。
(P10)Hilo Hula traditionalハワイ島ヒロの自然現象、住民の行動、風景などを歌っています。
(P11)_Ho`onanea Lena Machado月明かりの下でくつろいで、と歌う愛の唄です。
(P12)Hole Waimea traditional曲の途中で早いテンポになる歌い方が多い。「Standard Hawaiian Songs」に収録した「Waika」はこの曲の2番の歌詞から派生したといわれています。
(P13)Hula `O Makee William S. Ellisジェームス・マキー船長の船「マキー号」の遭難の唄。裏の意味もあります。
(P14)Hōlei (with Steel Guitar Solo) traditional この曲集唯一のC6th調弦(1弦からE-C-A-G-E-C)のスチール・ギター用にアレンジした譜面です。
(P16) Hula O Ka Hui Ka`awai (Duet) Matilda Kaue「消防士のフラ」として知られています。
(P17)I Kona traditional参考資料のレッドワード・カアパナはこの曲名をグループ名「イコナ」および「ニュー・イコナ」として使いました。
(P18) Iesū Meke Kanaka Waiwai John K. Almeida 一般には「カナカ・ヴァイヴァイ」とも呼ばれている歌です。永遠の命を求めた金持ちの男に対して神(キリスト)はその男の持っている全財産の放棄を勧めたという歌。
(P19)Ka Loke Mary Heanu & Johnny Noble愛する女性をバラに例えて讃えた歌です。
(P20)Kaimana Hila (original) Charles Edward King現在歌われている「カイマナ・ヒラ」とは歌詞やメロディーが全く異なっています。現在の歌は名歌手でバンド・リーダーのアンディー・カミングスがオリジナルから改変したと言われています。
それぞれのバース(番)に登場する地名の位置関係を示します。
3.のキャッスル邸は歌詞では単に「私たちはワイキキへ行き、苦労して建てた大きな建物を見た。」とあるだけでどの建物かは不明なのですが、その当時ワイキキで目立った建物がこのキャッスル邸でしたので、単なる想像ですがこれを目的の建物といたしました。
これがワイキキ海岸に建つキャッスル邸です。
1番で歌われるカアラーヴァイ浜の遠望です。ワイキキから見るとダイアモンド・ヘッドの反対側にあります。
(P22) Kalama`ula Emma Kala Dudoit作者一家が移り住んだモロカイ島カラマウラの素晴らしさを歌っています。
「カラマウラ」や「アリカ」で長~く音を伸ばす歌い方で喝采を博したジェノア・ケアヴェです。
(P23) Kalena Kai Charles Edward King参考資料のクウイポ・クムカヒの歌い方を採譜して記載しました。
(P24)Kamalani O Keaukaha Lena Machado 作者がしばしば訪問したハワイ島ケアウカハの首長の子供 (kamalani) を歌った歌です。
(P25) Kāne`ohe Abbie Kong & Johnny Nobleこの曲は一般的に1-1,1-2のように同じバース(番)を繰り返す際にはバンプをつけないので参考音源を含めてそれに従った進行にしました。
(P26)Kaula `Ili Eliza Haaheo無実なのにマウナ・ケアの丘で首吊りの刑を受けた男を悲しんでつくられた歌です。
(P27) Kaulana Kawaihae (Duet) Kailihue Alama Naai歌詞にある「プア・カイリマ」はカワイハエ湾内にあった「イリマの花」に似た島の名前なのですが、1946年の津波で消滅してしまいました。
参考資料のアルバムはリーダー以外のメンバーがカジメロ兄弟と代わる前のサンデイ・マノアとパラニ・ヴォーンの演奏です。
(P28) Kawohikūkapulani (Duet) Helen Desha Beamer作者の末娘カヴォヒクーカプラニの結婚に際して作り、贈った名前歌です。
(P29)_Ke Ali`i Hulu Mamo Helen Desha Beamer作者がプリンス・クヒオの妻プリンセス・カハヌに贈った歌です。
(P30)Kimo Hula (Duet) Helen Desha Beamer作者の親友ジェイムス(=キモ)ヘンダースンに捧げられた歌です。
(P31)Kō Ma`i Hō`eu`eu traditional参考資料のマディー・ラムのアレンジが面白いので採譜しました。この「メレ・フラvol.1、vol.2にはほかにも凝ったアレンジの曲が収められています。
(P32)Ku`u Ipo I Ka He`e Pu`e One (Duet) Princess Miriam Likelikeリリウオカラニの妹リケリケ王女の作です。
(P33) Lei Nani Charles Namahoe恋人の女性を美しいレイ(Lei Nani)に例えて歌う愛の歌です。
(P34)Mahina `O Hoku Lilian Awa & Maddy Lam「hoku」とあるので「mahina(月)とhōkū(星)」と誤解されるのですがカハコー(長音記号)のつかない「hoku」は「満月の夜」をあらわします。
( P35)Makee `Ailana James Keaoulilani I`i現在のホノルル動物園の駐車場付近に存在した島の歌ですが、アラ・ワイ運河の掘削した時期にここは埋め立てられました。作者のジェームス・イイはハワイ・コールズ初期の女性歌手ヴィッキー・イイ・ロドリゲスの父親で、ハワイ・コールズ後期の人気女性歌手ニナ・ケアリイワハマナの祖父ということになります。
上記(P25) Kāne`oheの参考資料にある「Party Hulas」ジャケット中央で小形のギターを弾いているのがヴィッキー・イイです。
(P36)Me Ka Nani A`o Kaupō John Pi`ilani Watkinsマウイ島ハナの先にあるカウポの自然の美しさを歌っています。作者のジョン・ピイラニ・ワトキンスは作曲家でフラやタヒチアン・ダンスのクムで振付師でした。
(P37)My Rose Of Waikiki L. Herscher & A. Iona (P19) のKa Loke同様、愛する女性をバラに例えた恋歌です。
(P38)My Yellow Ginger Lei John Keawehawai`i女性歌手カレン・ケアヴェハワイの父親ジョンの作品です。
(P39)Nā Ka Pueo Samuel Kalani Kaeoマウイ島の地名に因み名づけられた船「Pueo(梟)Kahi」の歌です。
(P40)Nani Kaua`i Lizzie Alohikeaカウアイ島各地を辿ってそれぞれの土地の美しさを歌っています。
(P41)On The Beach At Waikiki G.H.Stover & Henry Kailimai浜辺で会った女性から教わったハワイ語は「早くキスして!」と言う意味だったという歌です。
(P42)Pālolo Charles Edward Kingホノルルの裏山にあるパーロロ谷出身のトリオ「Pālolo」のテーマ曲でもあり、軽快な演奏と特徴的なコード進行が強い印象を与えます。
この写真はこのグループが1995年の第25回ウクレレ・フェスティバルに出演した時の写真で、左からネイザン・ナヒヌ(現在は「カ・ヘヘナ」のリーダー)、トロイ・フェルナンデス(現在は米本土に移住して活躍中)そして亡くなったチノ・モンテロです。
(P43)Pāpālina Lahilahi traditionalかわいらしい頬(Pāpālina Lahilahi)を持った女性に対する愛の歌です。
(P44)Pōhai Ke Aloha Lena Machado作者が所属したロイヤル・ハワイアン・バンドのリーダー:メキア・ケアラカイに捧げた歌です。
(P45)_Pu`uanahulu David Alapa`iハワイ島北西にあるプウアナフル地域の美しさを歌っています。
参考資料のギャビー・パヒヌイ・ハワイアン・バンドのアルバムです。
(P46)Pua `Iliahi Bill Ali`iloa Lincoln往時のハワイ最大の輸出品であった`iliahi:白檀sandal woodを歌った歌です。
作者のビル・アリイロア・リンカーンです。
この曲が収められたアルバムです。
(P47)Pua Carnation (Duet) Charles Edward King別れた女性をカーネーションに例え、再会を求める歌です。
(P48)Pua Tubarose Kimo Kamana上記と同じく別れた女性をtuberose (月下香)に例え、再会を願う歌です。
これが月下香の花です。
(P49)The Queen's Jubilee (4-part Chorus) Lili`uokalani現在歌われている曲とはメロディーや音符の長さが異なっていますが、貴重な資料なのでそのまま採用いたしました。
(P50)Royal Hawaiian Hotel Mary Pula`a Robins1927年にオープンした「ピンク・パレス」のCMソングだったのですが、今ではすっかりポピュラーなフラ・ソングになりました。
(P51) A Song Of Old Hawaii Johnny Noble & Gordon Beecherハワイの虹・風・月・香りの歌を私に歌って欲しい、と歌う歌です。
(P52) Sand (with Steel Guitar Solo) Andy Iona & Billy Abrams本来でしたらスチール・ギターの調弦をB11thにすべきですが、ここではC6thから1音変更するだけで実現できるD9th調弦(1弦からE-C-A-F#-E-C)でアレンジいたしました。
(P54) Twilight In Hawaii A.R.Archer & A.Palmerハワイの自然を盛り込んだ「ハワイの黄昏」を歌います。ハワイ・コールズ・ショウの定番曲のひとつでした。
(P55)_Waikaloa John Pi`ilani Watkinsハワイ島ワイコロアとしばしば混同されますがワイカロアはマウイ島の地名です。
(P56)Waikiki Chikadee (with Ukulele Solo) Melvin Paoaウクレレのコード奏法によるソロを紹介しています。使用ウクレレはハイG調弦、ローG調弦いずれでも大丈夫です。
椰子の木が遂に6本になりました。
以前アップしました「椰子の木物語(2020年12月7日)」では5本の椰子の木までご紹介いたしましたが、その後「Standard Hawaiian Songs (2021年8月14日)」と「Hula Song Favorites(2021年11月14日)」の2冊を出版いたしました。
上の表にあるように前者は椰子の木4本の「V S C U ハワイアン曲集」から「V」だけを選んでまとめたものなので椰子の木は4本のままなのですが、後者は全く新しい素材のみを収録していますので新規ということで椰子の木は6本になりました。
以上、今回までに出版した16冊の表紙を並べました。
さすがにネタ切れ(笑)なので多分これで打ち止めとなると思いますが、いつも表紙のデザインをお願いしています五十嵐さんは信じておられない模様です(汗)。
なお、ご希望の方はこのブログのコメント欄かフェイスブックのメッセンジャーアカウント「マット・コバヤシ」またはEメールアドレスuke@japan.email.ne.jpまでご連絡ください。よろしく!
ますますのご活躍、すごいです!
Hula Song Favorites、注文させていただきます。
ここ最近、コロナ禍以降、バンド活動も停止中で、ウクレレもそういえば触れていない私ですが、この曲集を手に入れて復活のスタートにしたいです。
よろしくお願いします(^^)
ご出版おめでとうございます㊗️
すごく濃い内容の楽譜で、ぜひ購入させてください。
メールにメッセージをお送りいたしました。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
お手数でもフェイスブックのメッセンジャーまたは私のメルアドuke@japan.email.ne.jp
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早速お送りいたしますので到着をお待ちくださいね!
さっそくお送りいたしますのでお待ちくださいね。
是非とも購入希望です。殆ど使ってないけど一応FBのアカウントがあるので、後ほどそちらに連絡致します!よろしくお願いします。
FBも拝見しましたのでご住所をいただき次第お送りいたしますね。