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MATTのひとりごと

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マレーシア国歌はハワイアンを盗作?

2006年01月12日 | ハワイアン音楽

おがわさんの掲示板< 直 >さんから書き込みがありました。
いわく、マレーシアでは国歌がハワイアンの曲「マムラ・ムーン」からの盗作ではないかと大騒ぎになっている、という記事を読んだがその両者の違いを知りたい、という内容。
記事内容は概略つぎのようなものでした。 マレーシアのFMパーソナリティーが自分の番組のなかで「ハワイの音楽」である「マムラ・ムーン」を紹介し、「わが国の国歌であるナゲラ・クと言う曲にそっくりである。この録音は国歌制定よりはるか前にされているので、国歌のルーツはハワイアン音楽にあったのだろう。大変悲しいことだ。」とコメントしたことがリスナーの間で大きな反響を呼び、遂には国会までも巻き込む大事件となった。
結局大臣が「この曲は国歌とは無関係である。」と表明して騒ぎが収まったが、可哀そうにこの「ハワイアン・ソング」であるマムラ・ムーンはそれ以来マレーシアでは演奏禁止となった。
というものです 早速回答を書きましたが、掲示板にふさわしくない長文になってしまったので、こちらに移動いたしました。(2006.1.12.追記:その時は限られた資料をもとに検証をしたため想像を交えておりました。その後、問題のアルバムを入手して検討した結果、かなり明確になりましたので、ここに修正のうえ再掲示いたします。)
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この曲は1940年代に活躍したイギリスのハワイアン・バンド「フェリックス・メンデルスゾーンと彼のハワイアン・セレネーダ-ス」が演奏しています。(このアルバムの14曲めにはいっています)。
http://unagiz.blogspot.com/2006/12/mamula-moon-hawaiian-song.html 彼はエキゾティックな音楽をスチールギターの入ったバンドで演奏しますので、ちょっと聴くとすべての曲がハワイアン音楽にきこえますがこの曲自体もハワイで生まれた音楽ではありません。
今論争になっているマレーシア国歌はもともと1930年以前から歌われていたマレーの民謡「トラン・ブーラン」をベースに1965年に制定されたそうです。(その後2000年に手直しされていますが・・・)。
でもフェリックス・メンデルスゾーンの演奏するマムラ・ムーンは、アルバムのライナーノーツのフェリックス自身が書いた文章によると、「この曲はインドネシアの曲トラン・ブーランに英語の歌詞をつけたものです。」と原曲を明示し、「1947.1.14録音、スチール奏者はサミー・ミッチェル、歌手はアーチー・コーテス」というクレジットまで入っています。
曲を詳しく調べると「トラン・ブーラン」に英語の歌詞をつけたものを「コーラス」すなわちメインのメロディーとして扱い、このメロディーの前にポピュラー曲では数多く存在する「ヴァース」すなわち「コーラス部の内容を予感させるような導入のメロディー部」をあらたに作って結合させています。
この「ヴァース」(上記「マムラ・ムーン」リンク参照)は「コーラス」と似たコード進行をもったメロディーで、「或る月の輝く夜に、ひとりで島の岸を歩いていると、今まで聴いたことの無い歌が聞こえてきた・・・・」という歌詞がついてスムーズに「コーラス」へとつながっていく構成になっています。
従来あるメロディーにあとからメロディーを追加して別なタイトルにする、という手法はごくあたりまえにおこなわれていて、ハワイアン音楽の場合ですと、「プープー・アオ・エヴァ」を「パーリィ・シェルズ」にしたり、「プアマナ」が「シー・ブリーズ」になったり、と数多く存在し、場合によってはオリジナル曲を誰も知らない、という場合があるほどです。
このマレーシアのFM局は「ハワイの音楽(実はヨーロッパの演奏家がインドネシアまたはマレーの民謡をアダプトした音楽)」を「国歌のルーツ」と提起し、よく分かっていないリスナーや国会まで巻き込んでしまったのだと思います。
しかしながら、アルバムのライナーノーツには背景がしっかりと書いてあるのですから、FMのパーソナリティーがこれを読まなかったのでしたら怠慢ですし、もし読んだ上で問題提起したのでしたらほとんど犯罪に近い行為ではないでしょうか。
おそらく日本のサイト関係者もこのふたつの曲を聴き比べていないでしょう。
記事の信憑性を確認するためにはまず自ら検証してから発表するべきです。
アマチュアのブログ情報ではなく立派な大新聞の名前で記事を書いているのですから。
まぁ、新聞社の使命は「話題を提供する」ところにあって、いちいち細かい検証などやっていられないでしょうが、この「自虐的な記事」を紹介した新聞社の担当者には記事に共感するところがあったのでしょうね。
その後のおがわさんのご質問に対する調査結果で、どうやらモンテネグロ(1940年当時はユーゴだったのか別の国名だったかは不明ですが)にあるマムラ島にかかる月をうたったのではないかと想像しました。(もちろん根拠はありません)。
でも歌詞の中に「島の岸を歩いていると・・・」とありますので正解に近いとは思います。 念のためハワイに「マムラ」という単語があるかどうかを調べて見ました。「なんとかの月」というタイトルですから地名である、と推定して「Place Names of Hawaii」を調べましたが載っていません。
似通った名称で「マーマラ」というのがあります。これはホノルル港から真珠湾にかけての一帯を指す古い地名で、「ナ・カ・プエオ(ノ・カ・プエオとかノー・プエオ・カヒというタイトルの場合もあります)」の2番の歌詞「Kowelo ko hae Hawai`i ma ka `ilikai a`o Mamala」に登場します。この名前が訛ったとしても1940年代にはまったく使われていないはずですから該当しないでしょう。
もちろん地名ではない単語だとしても「Hawaiian Dictionary」に載っていません。唯一可能性の有るのは人名です。すなわちおがわさんのいわれる「間村」というような日系人の姓のローマ字表記かも知れません。
もっとも家系を調べるサイトによると、「間村」ではなく純粋な?西欧のファミリー・ネーム(サー・ネーム)としての「Mamula」は記録にあるだけでも60万人も数えられているポピュラーな「姓」とのことですので、このうちの誰かの名前をとった島として「マムラ島」が存在するのでしょう。 (2006.1.14.追記)その後マレージアのウェッブをさがしたところ(なんとまぁ執念深いことで!)、この「盗作疑惑事件」の背景が見えてきました。 
マレーシアの古レコードコレクターのMohd Zain Sahadan氏が10年以上前にまとめて購入したSPレコードを、最近息子が掛けているのを聴いてあまりにもマレーシア国歌にそっくりなのでビックリしてブログに音とともに掲載して大反響を呼び、それにFMパーソナリティーが乗った、ようなのです。
たしかにこのSPには曲のいわれが書いてなかったと思われますのでSahadan氏自身には悪意が(!)無かったのでしょうが、それを受けた多数のブログの中にはCDを紹介しているものもありますので、意識的に騒ぎを起こし、それに乗っかる人物がたくさんあらわれることを楽しんでいる人たちが居たように思われます。
そして、それを紹介したFMパーソナリティーは< 直 >さんの言われるように「確信犯」でしょうね。 この問題を提起してくださった< 直 >さんのおかげで「マレーシア国歌」と「マムラ・ムーン」の関係について、検証できたことを感謝いたします。

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14 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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間村まで引き合いに (おがわ)
2005-11-03 21:38:50
出してもらって申し訳ありません。



更にバージョンアップされた内容に驚き、桃の木、山椒の木(って今頃言う人いませんねぇ)です。

でも、凄く勉強になりました。

感謝、感謝です。
返信する
ブリキに狸に蓄音機(笑) (MATT)
2005-11-03 22:59:17
いまどき蓄音機は骨董屋さんでもなかなか見かけないシロモノですが・・・・



とにかくあれほど違う曲をなぜ「似ている」と紹介したのかがナゾです。



もしかしてほかのメロディーもあるのでしょうか、ハテ???
返信する
イチローより広い守備範囲 (< 直 >)
2005-11-04 10:07:37


お手数掛けちゃって申し訳ないです>ご両人様

いやーーー、素人の私が聞くと

まーーー似てないわけでもないけど、これで盗作なら、

大概のものは引っかかっちゃうって感じでしょうか・・・

で、フェリックス・メンデルスゾーン って、本名なんですかねーーー(笑)、こちの方が流用か??



で、ついでにこの文章はいかがでしょうか?

Wikipedia内、ウクレレの説明

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%AC

>ブラジルでは、ウクレレは "cavaquinho" と呼ばれ、サンバにおいて頻繁に使用されるが、通常、この場合には D-G-B-D とチューニングされる。



カバキーニョとウクレレは違うと思うのですが・・。

(又いらんネタを。。。コッチは忙しいチューーねん!byMATTさん・・・カナ)

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ウクレレは専門外なので・・・ (MATT)
2005-11-04 22:15:57
よくわかりません。この件は< 直 >さんにお任せしますね。



判明したらここに書き込んでください。楽しみに待っていますので・・・
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再度ご苦労様です (< 直 >)
2006-01-13 17:48:54
ライナーノーツに書いてあるんですか・・。

ソリャ確信犯だ(笑)

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お陰さまで・・・ (MATT)
2006-01-13 20:59:46
「盗作検証」の勉強をさせていただきました。すでに次の「盗作疑惑事件」が控えていますので、いずれご紹介しますね。今度はもっと大物です。オレンジレンジやアベナツミの比ではありません!
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Felix Mendelssohn (manna)
2006-02-06 09:23:11
このCD持ってます!そしてあらためてこの曲、聴いてみました。

いい曲ですね。

この歌声、もしかして、「A song of old Hawaii」も歌っているのでは?と思いましたが

曲をテープでしか持ってなくて、歌っている人を探しだせませんでした。この声、アルフレッドアパカにも似てますし…
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このCDを持っているかたは (MATT)
2006-02-07 07:58:50
珍しいですよ。いかにも「ビンテージ」というイメージのジャケットですし、おまけに「ハワイの人ではなさそうな(笑)」名前ですから・・・・
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実はこれ系が好きなんです (manna)
2006-02-13 19:34:14
メンデルスゾーンですもんね。(^^;;)

初めてジャケット見たときは、

なんか、日本のフォークグループ、「靴紐達」でシューベルツ、みたいな感じがしました(爆!!)

初めて聴いた、本場ハワイアンがアルフレッドアパカだったので、こういう、LPに針落として、溝のノイズがシャアアアア~~ーーとするようなモノラル復刻音源のハワイアン、大好きなんです。レナマシャードとか…それでライアテアも好きと言ったら、「なんだ、コンテンポラリーもちゃんと聴いてるのね」と、とある名古屋のハワイアンバンドさんに言われてまいました…(^^;;)



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え、ライアテアがコンテンポラリー? (MATT)
2006-02-14 09:24:02
たしかに「現代の歌手」ですが、彼女のお手本はジェノア・ケアヴェであり、そのジェノアがお手本にしたレナ・マシャードなのでしっかりと「昔のハワイアン音楽の歌手}です。

エイミイとかテレサが「コンテンポラリー」というのだったらわかるのですが・・・・
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