採点競技って難しいと思う。
陰謀がどうのこうのと言いたい人間や、とにかくどこかの国を叩きたい人間の格好の餌食になるから。
純粋にタイムを競うような競技だとそういうことは起こりにくいんだけど、採点競技は素人には基準がわかりにくいから言いがかりがつけられやすい。
フィギュアスケートが結構すごいことになっていて、陰謀論や韓国選手に対するヘイトが蔓延していた。このスポーツにそれほど高い関心を持っているわけでもない人の耳にも入るほどに。
まあこれは、韓国に審判を支配下に置くほどの国力はないよね、の一言で済む話だけど。
国士様たちって韓国を高く評価しているのか低く評価しているのかわからなくなる。
よく自己矛盾を起こしているような。
韓国人は馬鹿で無能で、だけど日本のマスコミを牛耳るほどの力を持っている、みたいな。
もしかして、日本人がそれに輪をかけて無能ってことかな? 実は自虐だったのね。
と、話が逸れてしまったので元に戻すとして。
私も昔は、よく知りもしないくせに採点がおかしいとすぐに思い込むような人間だったから余計に気になってしまうのかも。
例えば北京オリンピックのとき。中国選手の一見地味な鉄棒演技のすごさが私は全くわかっていなかった。コールマンを演技に組み込むことがレベルの高さの証拠と単純に考えていた。中国選手は地元だから贔屓されているんだ、おかしいと思った。鉄棒には離れ技だけじゃなくてひねり技というものもあるんだということすらよく理解していなかった。今考えると大変恥ずかしい。
自分の応援している選手が、ルールを全く理解していない人間に叩かれているのを見るのは結構辛い。鄒凱の鉄棒は一見地味で、それなのに金メダルをとるから昔はよく批判されていたんだよね。
自分の感覚がすべて正しいと思ってしまう傲慢さが恐ろしい。審判はプロだよ。それよりド素人の自分の方が正しいって、どうしてああも自信満々に言えるんだろう。スポーツだけじゃなくてM1やキングオブコントなんかでもあるけどね。自分が一番面白いと思ったコンビが優勝しなかったら審査員を叩きまくるようなこと。
これは国家間のイザコザとは無関係だけど。
フィギュアスケートに比べれば、体操はまだ平和だった。昔は。
強い国が韓国じゃなくて中国だったことも大きかったのかな。(国士様たちは中国も嫌っているが、韓国はそれ以上に特別に嫌いらしい)
ロンドンオリンピックのとき、種目別床ですばらしい演技をした内村選手を上回って中国の鄒凱が金メダルをとった。でも鄒凱の演技にケチをつけるような意見は少数派で、大概の人は金メダルにふさわしい演技だと認めていた。
でも、ついに体操も同じになってしまった。この間の世界選手権で中国が団体優勝したことに対するバッシングはすさまじかった。
このとき審判を批判した人の中には本当に体操が好きな人たちもいただろうけど、それ以上に、競技をなにもわかっていない、ただ中国を叩きたいだけの人間を大勢引き寄せてしまった。
惜しくも金メダルを逃した日本選手たちも可哀想だけど、一番可哀想だったのはチェンロンだと思う。
すばらしい演技をして、それにふさわしい点数を出して、それなのに体操のことなんか何一つわかっていない連中に不当にバッシングされて。
鉄棒決勝ではプロテクターが切れるハプニングもあったし。あれで喜んだ人間は本当に最低だと思うし、ゾッとした。
団体戦のとき、チェンロンの鉄棒の得点が飛び抜けて高かったのは難度の高さが群を抜いていたから。D得点の概念すら知らない人間が不正だ、不正だと騒ぐのはみっともないよ。
中国の選手たちも、金メダルとりすぎと言われてルールが不利に改正されてもそれに対応して頑張ってきたのに、「中国の体操はそもそもフェアじゃない」みたいな言い方までされて気の毒だ。