親しくなると死亡フラグが立つヤンデレ。かと言って嫌われた場合も普通に殺されるので非常に厄介。
特技は不意打ちベント。卑怯キャラもここまで貫いてくれればいっそ清々しい。浅倉みたいに一見戦闘狂風なくせに卑怯な奴が私は一番嫌いなので。
悪役としてはかなり好き。みっともなくて、ヘタレで、どことなく哀れさもあって、なのにとても怖いという。もしかしたらそのへんにいるかもしれないリアル感があるのもいい。
やってることはひどいんだけど、妙に人間臭くて憎めない。浅倉と違って同情の余地はある。
浅倉は極悪人でドクズだけど、東條は「悪人」「クズ」っていうのとはちょっと違う感じ。「悪役」なのは間違いないが。本質的には多分悪人じゃなくて、「正しいこと」をしようとする気持ちもあるのに、どこかズレている。人の気持ちを理解する能力が決定的に欠けているんだよね。
あの天才の香川教授が優秀って言ってるくらいだから、お勉強はものすごくできるんだろう。でも、違う意味でバカなんだ。
初登場時の怪しさは手塚以上だった。出番は多くないけど、キャラ立ってたな。自分の子どもにまで敬語だったことも印象深い。神崎士郎の揺さぶりに動揺しつつも「答えは最初から決まっている」と言って拒否したシーンは最高にかっこよかった。いいキャラなのに、DVD特典のインタビューがなかったのが残念。
この人については、結構評価が分かれるようだ。正義の人という見方もあれば、歪んだ狂信者という見方もあるみたいで。
香川教授の選択は絶対的に正しいとは言えないのかもしれないけど、それでも一番マシな選択肢だったんじゃないかな。少なくとも神崎士郎や蓮のような、一人のために大勢を犠牲にすることも厭わない、という考えよりはまともだと私は思う。
香川教授がどういう人に見えるかは、誰の視点で見るかによって全然違ってくるのかもしれない。
真司と蓮にとっては、一緒に暮らしている家族のような女の子を殺そうとする悪い奴。どんな事情があろうと、あの二人にとっては敵。そして、視聴者は主にこの二人の視点から物語を見ている。
あの世界の、ライダー以外の一般の人々にとってはどうか。彼らは劇中ではモブ扱いしかされていないけど、それぞれの意思を持って生きているわけで。自分がその立場だったら、と考えてみる。平和に暮らしていても、ある日突然得体の知れない化け物に食われるかもしれない、という状況。しかもそうして死んだことは誰にも知られず、行方不明扱いになる。悲惨すぎる。
ライダーたちはモンスターに襲われたとしてもそれに対抗できる力を持っているし、優衣はそもそも襲われない。それに対して一般人は無力で、モンスターに目をつけられたらほぼ終わりなんだよな。
本人に悪気はなくても、優衣はモンスターを生み出した張本人で、なんの罪もない女の子なんかじゃない。優衣のせいで、あの世界では日々沢山の人が犠牲になっているわけで。
主人公コンビ以外のほとんどの人にとっては、優衣は面識もない他人だ。しかも全ての元凶。優衣を倒してモンスターに襲われることのない世界にしてくれる人がいたら、一般の人からしたら救世主だろう。
真司は「大きな犠牲も一つの犠牲も出さない」と言っていたが、そんなのはただの綺麗事だ。もちろんそれができれば一番いいけど、現実的には絶対に不可能。実際、あの後も何人もモンスターに襲われて命を落としている。
真司や蓮、あるいは優衣に感情移入しすぎて香川教授や仲村くんを「悪」認定するのはなんか違うよなあ、と私は思う。東條は「悪」でいいけど。
そういうわけで、私は香川教授支持派。
ただ自分の行為を「英雄的」とか言っちゃうのはちょっとどころじゃなくイタい。リヒャルト・シュトラウスが自分をモデルにした曲を作って「英雄の生涯」ってタイトルにしたという話を聞いて呆れ返ったことを思い出しちゃったよ。
すさまじく人気が薄そうだけど、私は仲村くん大好きだ。個人的には一番共感できた人だった。
イケメンじゃない? それがどうした。あの地味ですごく普通っぽいところがいいんじゃないか。
それに、イケメンかどうかは別として、北岡や浅倉よりは仲村くんの顔のほうが私は好きだぞ。
仲村くんは本当に普通の人だと思う。それ故にキャラのインパクトは弱いかもしれないけど、基本変な人しかいないこのドラマの中では貴重な存在。
龍騎ライダーズが真司と手塚以外は友達が一人もいなさそうな奴ばっかりなのに対して、仲村くんには普通に友達もいそうなんだよね。ちょっと気が短いところはあるが、裏表のない真っ直ぐな人って感じ。平気で人を欺くような登場人物が多いので、こういう人を見ると安心できる。
「ミラーワールドに人生を狂わされた一般人」っていう面白い立ち位置だったのに、あっさり死んじゃったよな。「ライダー」が全員死ぬっていうのは知ってたけど、仲村くんの運命についてはネタバレも見てなかったから知らなかった。東條も香川教授も死んでも、仲村くんだけは生き残るんじゃないか、というか生き残って欲しいと思ってた。そしたら三人の中で一番先に死んじゃうんだもんな。切ないよ。
短気でやや粗暴なところが視聴者の印象を悪くしているみたいだけど、仲村くんは決して嫌な奴でも悪い奴でもないと思う。真司や手塚ほどいい奴ではないだろうが、蓮や北岡よりは大分まともなんじゃないかな。蓮は心情が細かく描かれているから視聴者が感情移入しやすいけど、親しくない人間から見たらただの乱暴で嫌味な奴でしかないからな。
ミラーワールドが絡んでいないときの仲村くんはそんなに短気でもないんだよね。他の学生と和やかに会話しているシーンも確かあったし。ストーリーの前半でも、優衣にストーカーばりにしつこく電話をかけられてもキレたりはしなかった。本来の仲村くんはこうなんだと思う。
人は極限状態に置かれると精神が不安定になるものだ。仲村くんは事故で研究室の仲間たちを失ったうえに、自分の手で人を殺すことになった。それが恨んでいる相手で、しかも世のため人のためになることだとしても、やっぱり辛いだろう。
イライラピリピリ状態になったことこそ、仲村くんが普通の人である証拠なんじゃないかな。仲間の二人はちょっと普通じゃないからな。香川教授は強靭なメンタルをお持ちだし、東條はああいう人だから。
真司を激しく拒否したのは、警戒心からだと思う。オルタナティブとして優衣の前に現れたとき、真司が一緒にいるところも見ていたはずだし。そんな奴に「協力します」ってグイグイ来られても、困惑するし苛立ちもするだろう。
そのうえ、仲間は気味の悪い根暗と、いい年して「英雄」なんてワードを使ってる厨二病かつ変人の教授だしな(教授好きだけど、付き合うのはめんどくさそうな人だと思う)。仲村くんの立場に立っていろいろ考えてみると、ストレスが溜まるのも無理はないと分かる。
「自分は神崎士郎の計画さえ潰してやれればそれでいいんだ」って言っていたのも、正直で私は好き。自分を立派に見せようとせず、負の感情と向き合っているところが。東條とは大違い。
こんなことを言いつつも、仲村くんには不特定多数の人たちを助けたいという気持ちもちゃんとあったように見える。復讐が最大の動機だったとしても。そうじゃなかったら「1人だけを救うより10人救ったほうがいいに決まってるだろ」って真司に怒ったりしないんじゃないかな。神崎士郎に関わって、真実を知ってしまった以上放置するわけにはいかない、っていう義務感もあって香川教授に協力したのでは。神崎士郎に対する憎しみを強調するようなあの台詞が出てきたのは、人殺しを「英雄的行為」なんて聞こえのいい言葉で飾ることに対する反発があったからだと思う。
まあ想像だけど。でも想像が多めになるのは仕方ないんだ。キャラを掘り下げる前に殺されてしまったんだから、かなりの部分を想像で補うしかないわけで。
仲村くんの最期の台詞は「お前は間違って……」で、語尾は途切れてしまう。「お前は間違っていない」と言いたかったんだとする説もあるけど、私は「間違っている」の方だと思う。
「間違っていない」だとしたら、仲村くんが最期に考えを改めた、みたいな感じになるじゃない。これは真司のほうが正しいという前提に立った一方的な見方じゃないかな。仲村くんには仲村くんなりの信念がある。それはそう簡単に変わるものじゃないし、変わるべきだとも思わない。
真司と仲村くんは立場が違うだけ。どっちが正しくてどっちが間違っているとは言い切れない。どっちもある面では正しくて、ある面では間違っているのかもしれない。編集長も言っていたように、「正義は一つじゃない」んだから。