安倍晋三の戦略性・思想性なきアベノミクス、その公共事業政策論を見る

2013-02-22 11:40:07 | Weblog

 今朝(2013年2月22日)の報道で、民主党の川崎稔(佐賀選挙区)と植松恵美子(香川選挙区)の両参院議員が21日、離党する意向を固め、22日に離党届を提出すると伝えていた。男の方はどうでもいいが、女性の動向は気になる。

 二人とも安倍政権の12年度補正予算案に賛成する意向だそうだ。

 植松恵美子女史「地方のために党議拘束を離れて自由に行動したい」(毎日jp

 植松議員は2月18日の参院予算委で安倍政権の経済政策――公共事業や金融政策を批判していた。

 植松議員「(中低所得者の)生活の負担無くしてこのインフレターゲット2%はなかなか達成できないのではないか」

 要するに安倍首相以下の政権側の答弁に納得して、地方の利益となると補正予算案に賛成するということなのだろう。但し私自身は安倍政権が目指す公共事業についての安倍首相や麻生財務相、太田国交相の答弁から、戦略性の無さを逆に感じた。

 成長戦略の策定はこれからだが、公共事業に対する戦略性を欠いた姿勢から判断して、同じく戦略性を欠いた成長戦略となる可能性は高い。

 では、デフレ脱却や公共事業を含めた日本の成長戦略にはどのような戦略性が必要なのだろうか。

 基本的には日本の全体的な国力を弱めている中央と地方の格差、そのことによる地方の衰退、社会的上層と下層との間の所得の格差や正規社員と非正規社員との間の収入格差、そういったことによる下層生活者の貧困と疲弊等々を可能な限り是正して格差を受けている側の底上げを図ることで日本全体の国力強固を展望した戦略性に立った各政策の策定でなければならないはずだ。

 上だけが富み、下が取り残されたままでは真に強い国家とは言えない。

 逆説するなら、円安株高のもとアベノミクスが成功して、大企業が戦後最高益を得た、日本の経済力を高めることができた、その一方で中央と地方の格差とその格差を受けた地方の衰退は相変わらずで、社会的上層と下層との間の所得の格差もさして変わらないまま、下層生活者の貧困と疲弊も以前通りと言うことなら、経済的頭でっかちの日本を再現させたというだけのことで、日本全体の国力は偏ったものとなり、真の強い日本を実現させたとは言えず、成長戦略の意味を半ば、あるいは半ば以上失うことになる。

 となると、経済政策の核心的な戦略的テーマは、中央と地方の格差の是正と地方の衰退からの回復、社会的各階層に於ける各種経済格差・収入格差の是正等による社会的下層の生活の底上げ等を包括的に視野に収めた日本国力の全体的な発展でなければならないはずだ。

 またこうした上下の離間・格差を縮小することによって、生活に良好な環境が獲得可能となり、自殺者の減少や少子高齢化解決の糸口となっていくと思う。

 だが、残念ながら、安倍首相とそれ以下の閣僚の国会質疑に於いて上記テーマに添った答弁とはなっていなかった。

 勿論、これは私自身のみの見解であるかも知れない。植松恵美子議員が安倍政権の補正予算案に賛成する以上、日本再生の戦略性を十分に備えた経済政策が予算案に込められていると見ただろうからで、私自身の見解とは正反対であることからも分かるように彼女の方が正しい見解なのかもしれない。 



 2013年2月18日午後参議院予算委員会

 植松恵美子「私はですね、与党を経験した野党で、また、そちらは野党を経験した与党でございます。今後日本の政治はですね、発展するためであったら、お互いに非難して足を引っ張り合っていても、(思わず苦笑いをこぼしながら)しようがないと思ってるんですよ。

 国が私たち、政治家ですから、国の発展のためになるならば、例え前政権であろうtが、前々政権であろうが、いいものは引き継いで頂きたい。この思いがありますから、私も、それだったら協力してもいいと思っておりますので、あの、そういう気持で今日は質問に立たせて頂いております。

 で、引き続いて財政政策について伺いたいと思っております。今回の補正予算の10・3兆円のうち、約半分の5兆円が公共事業に予算措置をされています。

 確かにこの公共事業というのは地方に於いて、いわゆる景気刺激策としては即効性が認められると思っておりますし、かつて造ってきたトンネルとか橋梁とか、あるいは建築物の補修工事や耐震化といったものは必要不可欠であると私は受け止めております。

 しかし一方にですね、今後の新しい公共事業を起こしていくのであれば、国家としての戦略性を是非持たせて頂きたいと思っております。と言うのは、やはり借金をつくって国債を発行して、それでやる公共事業でありますから、かつて2009年、政権交代を成し遂げたとき、国土交通大臣だった前原さんがおっしゃったことが非常に象徴的でありました。

 この国には98もの空港が造られた続けてきたけれども、アジアの拠点となるようなハブ空港がなかったんだとおっしゃった。これはかつての公共事業のあり方について象徴的なご発言であったと思っております。

 今人口が減少しておりまして、いわゆる生産労働人口が減っている中で、もし早くからアジアの拠点となる空港を造っていてくだされば、いわゆる国家戦略として造っていれば、ヒト・モノ・カネがこの日本に放っておいても集まってくるシステムができたと思うと私は非常に悔しい思いでございます。

 で、そういった意味に於きましては今後公共事業の在り方の考え方について自民党も変わったと思いますので、在り方について教えて頂きたいと思います」

 麻生財務相「誠にあの、与党の質問として、伺うべきところなんじゃないかと思うぐらい今の質問はいい質問です。ハイ、これは物凄く大事なところです。1900・・・(首を傾げる。正確な年を思い出せなかったのか)、ゴールデンゲートっていう、サンフランシスコのところに橋があります。これは1930年代にいわゆる、例のデフレ対策としてゴールデン・ゲートは造られました。また、フーヴァーダムっていう、巨大なダムができておりますけれこも、今日のラスベガスはあのときのフーヴァーダムなかりせば、今日のラスベガスの繁栄はありません。

 そういったものは巨大な公共事業として当時の共和党政権からボロクソに叩かれた公共事業でありました。いずれも。

 そういった他にも一杯あります。フリーウエーとか色々あるんですけれども、そういったものに対して我々としては、今目先、間違いなく色んな物をやっていかなければければならないのは、先程甘利大臣やら、みなさんが、太田大臣からも、お答えになったとおりなんですけども、基本的に我々としてはきちんとしたインフラというものがなければ国内の内需がさらに伸びていくことはありません。

 我々は先程ご指摘がありましたように日本のGDP、約5兆ドルのうちその10%から、10、1、2%が輸出ですから、残りの88%は国内の需要で賄っているわけですから、その国内の需要が円滑化していく。さらに効率が上がっていく。そういうときのための防災のための港湾の施設等々は勿論ですけども、港に着いてから、そのコンテナが高速道路に上がるまでの道路っていうのは、極めて道路としては、何、ミ、未成熟っていうか、きちんとしたものではありませんが、スッと上がっていくようになりさえすれば、これは効率がいいということに変りますので、色んな意味で、こういったことは日本が今後公共事業の主たるもんとしてきちんとしたインフラというものを備えていくということは、国家の経済的発展、引いては国全体の発展に繋がりますが、そういった意味に於いて大変大事な観点だと思って、只今のご指摘は正しいと思います」

 大田国交相「自由民主党という話でありまして、質問がありましたから、私の方からも簡単にお答えしたいと思います。

 ハブ空港、ハブ港、そうしたメリハリをつける。しかも日本は人口減少社会になっている。こうした中にも公共事業というよりも日本の戦略的な、あー、経済発展の在り方、それをどうするかという国土のグランドデザインというものをもう一度考え直して行かなくちゃならないということは一つございます。

 それは一つは今福総理からお話があったとおりだと思います。もう一点、えー、実は日本の公共事業は昭和30年頃は産業基盤整備ってことを中心にした公共事業だったと思います。

 それから昭和50年前後、生活インフラ、下水道とか住宅っていうものを重点的に整備をすると。こういう公共事業が行われたと思います。

 3・11、あるいは笹子トンネル、こうしたことの中で本当に今、防災・減災、老朽化ということに対する公共事業というものを、もう一遍、頭を切り替えて、新しい公共事業というものを展開しなければならない時期というものが来ているといふように見ております。

 地震が大変心配される。活動期に入ってきている。高度成長時代から40年50年となって、経年劣化を構造物がしているというようなことも含めて、日本の経済発展というとこの、また国際間の都市競争ということと同時に人口減少社会の中でもう一つは防災・減災・老朽化対策というものに初めて日本の公共事業というものが踏み出したのが、今の政権だろうと、私はこのように思っております」

 植松恵美子「防災・減災のための公共事業は大切だと思っておりますが、私は本当にそれは大切です。一方で国債を発行して行なう公共事業だから、元は取れるぐらいの公共事業を考えていただきたい。借金だけ膨らんで、後々無用の産物をつくって、メンテナンス費用が掛かって、足を引っ張られるような公共事業、もうやめようと、お互いにそう思っている。

 投資した分ぐらいは元が取れる、あるいは次の世代が食べていけるようなものをつくっていく。そういった公共事業に方向転換をして頂けると麻生副総理もおっしゃっていましたので、是非期待をしたいと思います。

 成長戦略について伺ってまいりたい。三本の矢で一本だけ折れるとすれば、それが成長戦略の無さだと思っております。成長戦略に本気で取り組んで行かなければ、また時間が遅れてしまって、あのときと振返らなければならないのは今の局面だと思っています。

 人口が減り始めて、超高齢化社会になったこの日本に必要なのは成長戦略です。これまでも前政権も前々政権も、前々々政権もですけども、この成長戦略についてずっと予算委員会で質問させていただいてきたが、この予算措置の方法は日本では全て総花的になっています。

 あれにもこれにもそれにも、少額ずつ予算をつけて、これといって変わり映えもせずに、結果として成長が見られなかったということ。何回も繰り返しているのを私は目の前で見て来ました。

 必要なのはここは政治決断なんですけども、国を上げて研究や事業に予算を集中させていくことが今後問われていると思っておりますけれども、総理にこの成長戦略に対して、国のリーダーとしての覚悟を持っていただきたいと思うんですけども、決断と実行力、責任を取る、この三つ、覚悟して頂けるでしょうか」

 安倍晋三「成長戦略、民主党時代にもありました。我が党にしまして、その分野に国家的な支援を投入していく。あるいは規制に問題があるのか、そしてまた、核心的なコアの技術、還元する技術、それに対するおカネをつけていくということを含めて、一気通貫でやっていきたいと思います。

 日本経済再生本部をつくって、産業競争力会議をつくりました。すべて私が責任者でありますから、当然私がすべて責任を取り、しっかりと政治を出していきたいと思います」(以下略) 


 植松女史は「今回の補正予算の10・3兆円のうち、約半分の5兆円が公共事業に予算措置をされています」と言って、それだけ多額のカネをかける以上、「今後の新しい公共事業を起こしていくのであれば、国家としての戦略性を是非持たせて頂きたいと思っております」と要求している。

 そして「国家としての戦略性」のなさの典型的な例として、「アジアの拠点となるようなハブ空港」を計画しないまま日本全国に98もの空港を建設したことを、口先番長の前原の指摘として挙げている。

 尤も前原の指摘を待つまでもなく、広く言われてきたことである。

 国土交通省2009年7月31日公表の06年度の調査報告で国管理全国26空港のうち、税金投入を除いた営業損益では約8割の22空港が赤字、黒字は4空港のみとしていると「asahi.com」記事が伝えていた。

 しかも国交省がすべての空港別の収支を集計したのは初めてだと書いているところから窺うことができる杜撰な空港管理は空港建設の無計画性・無戦略性と両輪を成す空港管理に関わる無計画性・無戦略性と言えるはずだ。

 計画もなく戦略もなく空港を建設し始めて、建設した空港の地域経済性や国益を計算せずに新たな空港建設に取り掛かって、それを延々と繰返してきた自民党政権の無計画性・無戦略性の成果が約8割の22空港が赤字、アジアのハブ空港の地位を韓国の仁川空港に奪られたということなのだろう。

 植松女史の公共事業を含めた安倍経済政策の「国家としての戦略性」の問いに対して、今年1月の社会保障制度改革国民会議で終末期医療患者を「チューブの人間」と発言、人間の尊厳を踏みにじっった麻生太郎は与党の質問みたいだ、「今の質問はいい質問です」と持ち上げて、アメリカのゴールデン・ゲートブリッジと、ラスベガスの繁栄をもたらしたと言っているフーヴァーダムを例に挙げて、「そういったものは巨大な公共事業として当時の共和党政権からボロクソに叩かれた公共事業でありました」と言っているが、どちらも着工自体はハーバート・フーヴァー共和党大統領(任期1929年3月4日- 1933年3月4日)時代の末期であり、完成はルーズベルト民主党大統領の時代あるが、「当時の共和党政権からボロクソに叩かれた公共事業」と言うのはちょっと合点がいかないが、両公共事業がどういった国益の観点のもと、どういった戦略で企画され、その戦略が見事実現して、どういった経済効果を上げて国益にどう適っているかの説明とはなっていない。

 確かに両公共事業とも絶大な経済効果を上げているだろうが、あくまでも単体として見た場合の経済効果であって、日本でも黒部ダムとか佐久間ダムなどは単体として見た場合の経済効果は絶大なものがある。

 知りたいのはどういった戦略のもと、公共工事を進めて日本の国力の全体的な発展を期していくかのかという思想である。それを、「今目先、間違いなく色んな物をやっていかなければければならない」とか、「基本的に我々としてはきちんとしたインフラというものがなければ国内の内需がさらに伸びていくことはありません」とか、日本の国力の全体的な発展を俯瞰した核心的な戦略性の説明とは無縁となっている。

 だから、「港に着いてから、そのコンテナが高速道路に上がるまでの道路っていうのは、極めて道路としては」必要だという発想となる。

 必要不可欠の連絡道だとするなら、大体が今更ながらに気づいて言うことなのだろうか。そもそもから一定の戦略に基づいて計画されていたなら、必要不可欠を順次満たしていたはずだ。

 それが今後の課題だとしていること自体に却って安倍政権の公共事業政策の無計画性・無戦略性を浮かび上がらせることになる。

 麻生は続けて、「色んな意味で、こういったことは日本が今後公共事業の主たるもんとしてきちんとしたインフラというものを備えていくということは、国家の経済的発展、引いては国全体の発展に繋がります」と、さも国全体の発展をもたらす公共事業政策だとしているが、問い質された「国家としての戦略性」の筋道立てた説明ができていないのだから、以前の自民党政権の公共事業の無計画性・無戦略性を引き継いでいるだけのことで、「国全体の発展をもたらす」は公共事業を正当化させるための口実に見えてくる。

 続いて答弁に立った大田国交相は「昭和30年頃は産業基盤整備ってことを中心にした公共事業」、「昭和50年前後、生活インフラ」の公共事業、今後は「防災・減災・老朽化対策の公共事業」だと言っているが、昭和30年頃の「産業基盤整備」の公共事業にしても、昭和50年前後の「生活インフラ」の公共事業にしても、防災・減災・老朽化対策を相矛盾させる公共事業であることに気づいていない。
 
 なぜなら、地震国日本では防災・減災、そして建設年数に応じた老朽化対策は建設と同時併行で前以て戦略に組み込んで計画していなければならなかったはずだからだ。

 にも関わらず、今になって防災だ、何だ、予算をつけなければならないと騒いでいる。

 1月31日放送のNHKクローズアップ現代『問われる“維持管理”~笹子トンネル事故の波紋~』で、ゲストの根本祐二東洋大学教授が次のように指摘している。

 根本祐二教授「今あるもの(現存公共建造物)を、単純に更新していくという費用が一番分かりやすいんですけれども、数年前に私が計算したところでは、現状あるものを現状の規模で更新をするだけでも、年間8.1兆円。これ50年間続けないといけない。

 安倍政権で景気対策、新年度予算で5兆円、10兆円という公共事業費が追加されていますけれども、このこと自体はいいことなんですけれども、1、2年、数兆円追加して解決できる問題では全くないということですね。構造的な問題として捉えて、いろんな形でこれを解決していかなければならないということが言えます」

 「現状あるものを現状の規模で更新」とは同じ物に新しく建て替えるという意味なのだろう。いわば年間8.1兆円を50年間も必要に迫られることになる。

 新しく建て替えるまでいかなくても、建設した公共建築物はいつか老朽化して改築や補修が必要となると考えて、予算を確保しておくこともせず、考える思想もなかったから、改築時、補修時に必要となる設計図さえ多くの役所が廃棄してしまっているという。この無計画生・無戦略性は如何ともし難い。

 「昭和30年頃」の「産業基盤整備」は日本全体や各地方全体、各都市全体をそれぞれに一つの面と把えて各施設同士を機能的なアクセスを持たせた上で、各一段上の面へのアクセスを可能とするような基盤整備ではなかった。

 だから、麻生が言うように、「港に着いてから、そのコンテナが高速道路に上がるまでの道路」を今頃になって言い出すことになる。

 あるいは、それぞれを単体として捉えた場合は立派に出来上がっていて、交通の便を良くしているが、高速道、国道、バイパス以下の道路との連絡となると、その多くは不便そのものとなっている。

 また、「昭和50年前後」の「生活インフラ」等の公共事業は確かに国民の生活を便利にしたが、その反面、水道管埋設工事とガス管埋設工事、電話線埋設工事は別々で、掘っては埋め、掘っては埋め、土木会社は利益は得ても、カネばかりかかる、戦略性も何もない、頻繁な交通制限をもたらすだけの非計画的・非効率なインフラ整備だった。

 だからこそ、新しい公共工事は日本の国力の全体的な発展・底上げを俯瞰した戦略性を求められているのだが、麻生にしても大田にしても、全体を把えた計画性からのそれぞれの必要性ではなく、それなしの個々の必要性のみを話している。

 防災・減災・老朽化対策にしても、例えそれが新規建設であっても、その場所は既に一定の経済効果が固定化していて、新しい経済効果が生まれる余地は少ない。

 一つの例を2月3日(2013年)、フジテレビ「新報道2001」から挙げてみる。

 北海道の土地改良事業予算が民主党政権の約2100億円から安倍政権の約5900億円へと補正予算を含んで倍増以上したと関係者は喜んでいたが、解説の「減反政策が続けられている中で、土地改良事業は必要なのか」という疑問に対して、北海道土地改良区眞野弘理事長が次のように話している。

 眞野弘理事長「用水路などが50年経過、耐用年数を迎えている。修復していかなければならない」

 用水路を新しく建造し直したとしても、建造時の雇用その他の経済効果は一時的には生じるが、新しく出来上がった用水路が出来上がって以降つくり出す経済効果は従来の経済効果と変わらないはずだ。

 要するに公共工事が下手をすると一時的経済効果しか生まないと言われる所以である。

 勿論、日本経済が現状よりも景気が良くなれば、新しく架け替え直した橋や新しく建設した道路は交通量を増やし、それなりの経済効果を見込むことができるが、それが日本という国の弱点となっている諸々の格差の改善にどうつながるのか見えてこないばかりか、公共事業政策に見る無計画性・無戦略性から類推するに、成長戦略自体の計画的な戦略性は望むべくもなく、かけたカネだけ財政を悪化させる懸念だけが生じる。

 円安にしても、確かに安倍晋三が自身の経済政策を述べるだけで円高から円安に向かうロケットスタートを見せたが、為替は一国の政策や経済のみで決まるのではなく、他国経済との関係の中で決まっていく。日本の円安に相対して高くなった韓国ウオンが自国経済の国際競争力確保に何ら手を打たないということはないはずで、その政策との兼ね合いで、円の調整も余儀なくされる。

 そういった中で必要とするのは財政悪化をこれ以上招かない各政策の効果的且つ実効的な戦略性であろう。

 安倍晋三は自身の経済政策に対する植松恵美子の「国家としての戦略性」の問いに対して、「核心的なコアの技術、還元する技術、それに対するおカネをつけていくということを含めて、一気通貫でやっていきたいと思います」と言い、「日本経済再生本部をつくって、産業競争力会議をつくりました」とトンチンカンな客観的判断能力を全く欠いたことを言っている。

 どのような本部を立ち上げようと、どのような会議を用意しようと、あるいはどこにどうカネをつけようと、ただ単にああします。こうしますと言っているだけで、日本国家全体に巣食って国や国民の活力を殺いでいる各種格差をどういった戦略を持たせた政策で改善して活力を取り戻していくか、どのようにして人口減少社会を跳ね返すかといった具体性ある話とはなっていない。

 安倍晋三にしても閣僚にしても戦略性もない、当然計画性もない。ただ単に周囲の要求とブレーンの政策を受け売りして喋っているだけだから、言っていることの勇ましさに反して具体的に突き詰めてみると中味のない答弁となって現れることになるのだろう。

 こういった見方に反して、植松恵美子女史は麻生や大田や安倍晋三の答弁から「国家としての戦略性」の存在を見たのだろう。民主党を離党して、安倍政権の補正予算案に賛成することとなった。


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