日本がお得意のカネで解決する方法――。
在沖縄米海兵隊のグアム移転をめぐる日米両国の協定締結承認案件が4月14日(09年)午後、衆院本会議で採決、与党側自公の賛成多数で可決、与野党逆転下の参院に送付、5月13日午前参院本会議で民主党等野党の反対で否決、それを受けて開催された両院協議会でも意見が一致せず、河野洋平衆院議長が憲法の規定に基づき、衆院の議決通り締結承認を宣言、成立の運びとなった。
在沖縄米海兵隊のグアム移転にかかる日本側経費負担について2006(平成18)年5月1日に締結した『外務省:再編実施のための日米のロードマップ(仮訳)』には次のように記されている。
〈第3海兵機動展開部隊のグアムへの移転のための施設及びインフラの整備費算定額102.7億ドルのうち、日本は、これらの兵力の移転が早期に実現されることへの沖縄住民の強い希望を認識しつつ、これらの兵力の移転が可能となるよう、グアムにおける施設及びインフラ整備のため、 28億ドルの直接的な財政支援を含め、60.9億ドル(2008米会計年度の価格)を提供する。米国は、グアムへの移転のための施設及びインフラ整備費の残りを負担する。これは、2008米会計年度の価格で算定して、財政支出31.8億ドルと道路のための約10億ドルから成る。〉――
就任後初めて来日したクリントン米国務長官と当時の中曽根外相が2009年2月17日にグアム移転と在沖米軍の普天間飛行場の代替施設建設を14年までに完了するとした在沖縄米軍再編をブッシュ前政権下の日米合意通りに進めることを確認する協定に署名している。
そして、〈米議会は10月8日(09年)、2010会計年度の国防予算で、在日米軍再編計画に伴う沖縄の海兵隊のグアム移転費用について、オバマ政権の要求をほぼ認める形で、約3億ドル(約264億円)を計上することで合意した。法案は18日までに上下両院で可決され、成立する見通しだ。 〉と「asahi.com」記事――《米議会、グアム移転費を可決へ 3億ドル、ほぼ要求通り》が伝えている。
「ほぼ要求通り」と言うのは、〈オバマ政権は約3億7800万ドル(約332億円)を要求。下院はこのうち約3億1300万ドル(約275億円)を認めたが、上院は長期計画の不備などを理由に約1億4200万ドル(約125億円)しか計上しなかった。
上院の判断に対し、ホワイトハウスは「日米合意に悪影響を与える」として反対を表明。上下両院協議会で法案のとりまとめが進められ、最終的に上院が下院に歩み寄る結果となった。 〉とその“要求通りではない”事情を解説している。
グアムへの移転のための施設及びインフラの整備費算定額102.7億ドルから日本側負担60.9億ドル(2008米会計年度の価格)を差引いた米側負担41.8億ドル(財政支出31.8億ドルと道路のための約10億ドル)のうち、3.78億ドルが初年度予算として動き出したということなのだろう。
金額的に何だか気の遠くなるような話である。
では、辺野古への移設にはどのくらいかかるのか。 国民新党下地幹郎議員の2009年11月12日ブログエントリー、体格から言ってもどんなときでも「小声」で済ますとはとても信じられない『ミキオの小声』には次のように書いている。
〈防衛省が10月初旬に策定した概算要求では、普天間飛行場の返還を進めるための予算として、890億円を要求していました。しかし、仮にアメリカが主張しているように自公政権時代からの辺野古移設案を実現したならば、建設総額は7000億円と試算されております。〉――
グアム移転日本側負担が60.9億ドル、これは保有しているドルでの支払いとなるだろうが、仮に円が1ドル100円前後に戻るとして日本円に直すと、6090億円となる。下地議員が言う辺野古建設総額7000億円を足すと、1兆3090億円。
だが、日本が辺野古への移設を中止してグアム全面移転を望んで実現させるとしたら、辺野古にかかる7000億円は不要となり、この7000億円を以ってして辺野古への移動を予定していた普天間のグアム移転にかかる経費を全面負担したらどうだろうか。
7000億円は100円換算で70億ドルとなり、既定のグアム移転日本側負担の60.9億ドルにほぼ10億ドル上回るが、この金額が普天間のグアム移転に過不足いずれとなるのかは分からないが、例え不足しても日米合意を破棄して普天間の辺野古への移設にかかる国の金額的負担と沖縄県民の精神的負担を解消する代償に払う以外に方法はないのではないだろうか。
例え余剰が出たとしても、辺野古へ移設した場合は建設費以外に思いやり予算で移設後の様々な経費を負担しなければならないだろうから、その分の負担までグアム移転後も継続して負担する経費に代えたらいい。
普天間のグアム全面移転の経費を日本側がその多くを負担し、尚且つグアム基地運営に関わる一部経費を思いやり予算で負担する代償として、基地建設に日本の建設会社等の企業が建設を請負うことを条件とさせて、負担の回収を少しでも図ることはできないだろうか。但しバランスを取る意味から、下請は米国企業でも可とすべきだろう。
例え財政的に厳しくても、このことに限った建設国債等の発行で賄うべきだと思う。
日本は在日米軍駐留経費全体の74.5%を負担、直接経費負担が約32億2800万ドル、間接経費負担が約11億8300万ドル、米軍駐留経費負担額の比率でも他同盟国の中で最も高い割合となっている、日本は世界の米軍の他国駐留費用の約4分の1を負担している(琉球新報/2005年12月8日)といった報道を引用して、こんな国はないという主張もあるが、日本の安全保障を米国に肩代わりさせて手に入れた経済発展に特化させた国家経営によって世界から、特にアメリカから経済的恩恵を多大に受け、世界第2位の経済大国の勲章をモノにすることができたのである。
その恩恵を国民も受けてきている。“在日米軍駐留経費全体の74.5%を負担”はそういったことのツケでもあるはずである。
8日開催の日米関係をテーマとするシンポジウムで長島昭久防衛政務官「日米は対等の関係だと言うが、有事のリスクはアメリカが負い、平時のコストは日本が負うことでバランスが成り立っている。沖縄の皆さんの負担も含めて平時のコストを下げたいんなら、日本側は有事のリスクを少しずつ肩代わりしていかなければバランスが成り立たないのではないか」と言っていたが、道楽息子が四十、五十になってもツケで飲み歩いていて、親がそのツケを支払い続けているようにアメリカの安全保障におんぶするツケが現在も行われていて、そのことに応じてツケの支払いが現在も続いているということであろう。
アメリカとの間に真に対等な関係を築くためには経済構造を可能な限り内需型に持っていって経済的に自立し、安全保障の面でも自立した行動が取れるようにすることが不可欠条件となるのではないだろうか。
その方向に進むことによってアメリカとの間の“ツケの関係”が徐々に解消され、対等な関係に近づいていくはずである。 |