安倍晋三はアベノミクスの失敗を隠すために「地方創生回廊」なるキーワードをアベノミクスに付け加えたのか

2016-07-24 10:11:13 | Weblog

 安倍晋三が7月11日(2016年)、7月10日投開票の参議院選挙勝利の結果を受けて自民党総裁として自民党本部で「記者会見」を開いた。

 一種の勝利宣言儀式である。

 安倍晋三「『アベノミクスを一層加速せよ!』と、国民の皆様から、力強い信任を頂いたことに、心から御礼を申し上げます」

 NHKが参院選後の7月16日から3日間行った世論調査を見てみる。

 安倍内閣を「支持する」48%(前回比+2ポイント)
 安倍内閣を「支持しない」36%(前回比±0ポイント)

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」について

 「大いに期待している」9%
 「ある程度期待している」37%
 「あまり期待していない」34%
 「まったく期待していない」14%

 確かに内閣支持率は2ポイント上がっているが、そのことに反して「アベノミクスを一層加速せよ!」と自分が思い込んでいる程の信任とはなっていない。

 「アベノミクス」で一部上層部を除いて中流以下の生活が良くなっているわけではないし、地方が活性化しているわけではない。物価が上がって却って生活が苦しくなっていて、地方の沈滞に変わりがあるわけではない。「アベノミクス」の効果が限りなく疑わしくなっているが、「アベノミクス」以外の経済政策の選択肢がないから、仕方なくアベノミクスへの期待にしがみつくしかないといった事情が内閣支持率+2ポイントにつながったのではないのか。

 記者会見では経済対策について「未来への投資」をキーワードとして挙げ、「主役は、『地方』。目指すは、『世界』」だと相変わらず言うことは勇ましい大風呂敷を広げている。

 安倍晋三「地方が誇る、魅力ある農産物や観光資源を、世界にどんどん売り込んでいく。この選挙戦を通して、私は、各地で、そうお約束してきました。まずは、それを実現させていく。そのための『21世紀型のインフラ』を整備していきます。

 輸出1兆円目標の早期実現に向けて、農林水産物や食料の輸出基地、輸出対応型施設を、全国につくります。外国人観光客4千万人時代に向かって、クルーズ船を受け入れる港湾施設の整備など、地方の観光施設を抜本的に増強しなければなりません。

 各地方の旅館やホテルの改修や建設など、未来の成長を生み出す民間投資も、どんどん喚起してまいります。

 現下のゼロ金利環境を最大限に活かし、財政投融資を積極的に活用します。リニア中央新幹線の全線開業を最大8年間前倒しし、整備新幹線の建設も加速します。

 東京、そして大阪。日本の二大都市を大きなハブとしながら、全国に広がる『地方創生回廊』をつくりあげ、成長の果実が、全国津々浦々にまで、行き渡るようにしてまいります」――

 殆んどがこれからやりますという意味で言っている。将来的実現の約束である。「21世紀型のインフラ」の整備、「リニア中央新幹線の全線開業最大8年間前倒し」、「地方創生回廊」の完成。

 リニア中央新幹線は2027年の開業予定だったから、2019年の開業への前倒しとなる。なかなかどうして気宇壮大な構想の打ち上げである。

 だが、「地方創生回廊」を言い出したのはこの記者会見が初めてではない。

 2015年12月14日開催の《内外情勢調査会2015年12月全国懇談会》でも同じことを言っている。  

 勿論、アベノミクスの成果と今後見込まれる成果についていつもどおりに一通り言及することは忘れていない。

 安倍晋三「先日、二階総務会長のおひざ元、和歌山県の、高野山に出かけたところ、ケーブルカーで流れた案内が、日本語の後、まずフランス語、そして英語と続くのです。実際、ヨーロッパやアメリカ、オーストラリアなどからの観光客が多い、という話でありました。

  初めて日本を訪れる方は、どうしても、東京や京都、大阪といった場所に行きがちです。中国などから来る方は、こういう方が多いかもしれません。

  しかし、二度、三度と、リピーターになって下さる方々は、ミシュランガイドを片手に、高野山など日本を深く感じられる場所に出かけようと思ってくださる。次なる目標は、年間3000万人の高みであります。観光立国をどんどん進めることは、確実に、地方創生につながっていくと思います。

  そのためにも、日本の地方と地方を、新幹線を始めとした交通網で、しっかりとつないでいく。正に『地方創生回廊』を完備する必要があるでしょう。

  外国人の皆さんにとっても、アクセスしやすい、一つの大きな経済圏へと統合していくことが重要であると考えています。この辺の具体化は、また次なる機会にお話させていただきたいと思います」――

 「日本の地方と地方を、新幹線を始めとした交通網で、しっかりとつないでいく」「地方創生回廊」を完備し、日本を「一つの大きな経済圏へと統合」する。

 いわば“日本列島一大統合的経済圏”とも言うべきそういった構想を持っているが、「この辺の具体化は、また次なる機会にお話させていただきたいと思います」と、具体的構想は次の機会に譲っている。

 ここで思い出すのは1972年7月の自民党総裁選で田中角栄は三木武夫、大平正芳、福田赳夫の4人で争い、総裁選前月の6月に政策綱領を発表、その中で「人とカネとモノの流れを巨大都市から地方に逆流させる “地方分散” を推進する」構想を打ちあげ、同年に書物にして出版した『日本列島改造論』である。

 安倍晋三は「内外情勢調査会2015年12月全国懇談会」開催1カ月後の2016年1月22日の通常国会冒頭の「施政方針演説」でも「地方創生回廊」に触れている。   

 安倍晋三「リニア中央新幹線が本格着工しました。東京と大阪を一時間で結ぶ夢の超特急。最先端技術の結晶です。

 3月に北海道新幹線が開業します。札幌へと工事を続けます。九州新幹線も着実に長崎へとつなげてまいります。東京から富山、金沢を貫く北陸新幹線も、敦賀へと延伸することで、大阪へとつながる回廊が生まれます。

 大阪や東京が大きなハブとなって、北から南まで、地方と地方をつないでいく。『地方創生回廊』を創り上げ、全国を一つの経済圏に統合することで、地方に成長のチャンスを生み出してまいります」

 単に北海道新幹線と九州新幹線と北陸新幹線と、東北新幹線線も加えてだろう、東京を起点に東海道新幹線をつなぎ、さらに完成後のリニア中央新幹線を加えて高速鉄道網を全国に張り巡らす、それを以て「地方創生回廊」だと銘打ち、そのような「回廊」が日本列島を“一大統合的経済圏”へと発展させていくとブチ上げているだけのことで、そのような全国的な高速鉄道網が東京一極集中ではない、一極集中を排した満遍のない「地方創生」にどう繋がっていくのか、2015年12月に具体的構想の提示は「次の機会」に譲ると言いながら、一年間の政府の基本方針や政策を提示する重要な施政方針演説で何も示すことができないでいる。

 何も示さないまま、単に全国的に張り巡らす高速鉄道網を、「地方創生回廊」だと単純・機械的にイコールさせるているのみである。

 『日本列島改造論』で構想した「人とカネとモノの流れの“地方分散”」は今以て実現できず、人もカネもモノも地方から東京一極集中への一方通行が依然として続いている。当然、「地方創生回廊」は『日本列島改造論』の失敗を繰返さないためにもより具体的な構想を国民に提示しなければならない。

 単に全国的に張り巡らす高速鉄道網を以って「地方創生回廊」だと意味づけることは許されない。

 アベノミクス3年半で、「アベノミクスの恩恵を全国津々浦々」の公約、さらには「地方創生」の公約にも反して地方の経済は決して良くなっていない。地方人口の縮小も続いている。中低所得層の生活も苦しくなっている。

 今以て具体的な構想を打ち出すことができないということは、「1億総活躍社会」構想がその疑いがあったように、このようなアベノミクスの失敗、公約の未達成を隠すために「地方創生回廊」などという新しいキーワードをアベノミクスに付け加えて、さもアベノミクスの経済政策が有効であるかのように思わせようとしている疑いが濃い。

 安倍晋三がやりかねないことである。

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