北朝鮮の核とミサイル開発抑止への中国の影響力行使に韓国へのTHAAD配備がカードとならないだろうか

2016-02-14 10:53:02 | 政治

 北朝鮮の国連安保理決議違反となる核実験やミサイル発射に対する新たな制裁決議の採択は主として中国が同調するかどうかがカギを握っていることは殊更言うまでもなく、誰の目にも明らかである。 

 北朝鮮が国連安保理決議違反を犯して今年2016年1月6日、初めての水爆実験を行った。日米韓は強力な新たな制裁決議の採択に向けた協議を開始した。ケリー米国務長官が決議採択に向けて中国の同意を得るべく1月26、27日中国を訪問、1月27日、王毅外相と北京で会談した。

 ケリー長官「我々は、強力な国連安保理決議に向けて共通認識に達する必要があるということで同意した」

 だが、同意の中身たるや、以下のとおりである。

 王毅中国外相「新たな決議は情勢を緊迫化させたり、半島情勢を混乱させるものであってはならず、北朝鮮の核問題を話し合いによる解決という正しい軌道に戻すものでなければならない」〈NHK NEWS WEB

 これまでも中国の姿勢にかかってきた。国連安保理で中国の賛成を得て制裁決議が採択されても、北朝鮮が制裁で受ける経済的マイナスを国境を接している利点を活かして中国が裏で補ってきた。

 1月6日の核実験から1カ月の間、制裁決議のどのような採択にももたついている間に、そのもたつきを嘲笑うかのように北朝鮮は2月7日午前9時30分前後、これも国連決議違反となるミサイルを発射した。

 安倍晋三は北朝鮮が「断じて容認できない」ことを立て続けに行っているにも関わらず、例の如くに「断じて容認できない」と非難、国連安保理での制裁決議採択に向けて国際社会と連携していくことを表明、さらに日本独自の制裁措置を科すため準備を進める考えを示した。

 そしてオバマ米大統領及びパク・クネ韓国大統領とそれぞれ電話会談、国連安全保障理事会での迅速な制裁決議の採択に向けて緊密に連携することを確認、積極的に行動した。

 こういったこともいつもどおりである。

 衆参両院も2月9日のそれぞれの本会議で北朝鮮ミサイル発射に対する抗議決議を可決。

 このような抗議決議を踏まえて政府は2月10日、 対北朝鮮独自制裁措置を決定した。

 ▽北朝鮮国籍者の入国を原則禁止
 ▽北朝鮮籍船舶の乗員らの上陸を原則禁止
 ▽在日外国人のうち、核やミサイルに関連する技術者の北朝鮮渡航後の再入国禁止等、人の往来に関する規制措置の実施
 ▽日本から北朝鮮への現金持ち出し国届け出限度額100万円以上から10万円以上への引き下げ
 ▽北朝鮮向け送金は人道目的10万円以下を除外して原則禁止
 ▽人道目的の船舶を含むすべての北朝鮮籍の船舶に加え、北朝鮮に寄港した第三国籍の船舶の入港を禁止
 ▽資産凍結の対象となる関連団体や個人を拡大(NHK NEWS WEB

 以上の規制がどれ程の効果があるのだろうか。特に北朝鮮向け送金は第三国経由でいくらでも送金できるように思えるが、どうだろうか。 

 韓国も独自制裁に動いた。北朝鮮にある南北共同運営、北朝鮮にとって貴重な外貨獲得手段となっているケソン工業団地の操業全面中断を決定、2月11日から韓国人関係者の撤収作業が開始された。

 工業団地では韓国の中小企業124社の工場が操業、5万4000人を超える北朝鮮の労働者の雇用を担っていた(NHK NEWS WEB)というから金正恩の経済政策にとってかなりの打撃になるに違いない。

 特にこの団地では北朝鮮労働者にドルで支給された賃金が金正恩第1書記の資金管理組織労働党39号室と一体の工業団地管理の中央特区開発指導総局が一括して集金、賃金の30~40%程度の物品交換券を労働者に支給する雇用形式となっていると「時事ドットコム」が伝えているが、記事が〈核・ミサイル開発の費用は39号室から調達されているもようだ。〉と解説していることからして、金正恩に直接的にマイナスの影響を与えて、却って韓国と北朝鮮間の軍事的緊張感を高める要因となる可能性もある。 

 韓国の中小企業業界、韓国経済にとってもかなりの打撃を覚悟しなければならない。尤もこの覚悟は北朝鮮の核開発・ミサイル開発を自国安全保障の観点から断固阻止するという決意の表れでもあるのだろう。

 どの程度の効果があるのか分からないが、日本の独自制裁、かなり効果があると予想される韓国のケソン工業団地の操業全面中断の制裁措置、アメリカも独自制裁を科すようだが、残るは国連安保理の制裁決議の採択だが、依然中国は朝鮮半島の軍事的・経済的不安定化とその悪影響の中国への波及を恐れて表向きは制裁に同意しても、厳しい制裁には慎重な姿勢を取っている。

 この慎重な姿勢を取り払わないことには北朝鮮に対するどのような経済制裁・金融制裁も中国が北朝鮮半島の安定化を口実に補うことになる。

 2015年1年間の中朝貿易額は約55億ドルで、2011年からは5年連続で50億ドルを上回っていると「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。既にリンクが切れているから、ここに全文を参考引用しておく。 


 《中朝貿易50億ドル台続く 北朝鮮経済の支えに》(2016年1月30日 20時14分)

 2015年1年間の中朝貿易額は約55億ドルと、5年連続で50億ドルを上回って高く推移し、北朝鮮に対する国際的な制裁措置が続くなか、中国との貿易が北朝鮮経済を支えている構図が鮮明になっています。

 中国の税関当局が発表した貿易統計によりますと、去年1年間に中国が北朝鮮と行った貿易額は輸出入を合わせた総額で55億1053万ドルで、前の年よりも13.7%下がりました。貿易額が前の年を下回ったのは2年連続で、北朝鮮から中国への主要な輸出品である石炭や鉄鉱石といった鉱物資源の価格の下落や、中国経済の減速が影響したとみられます。

 一方で、中朝の貿易額は、過去北朝鮮が核実験や長距離弾道ミサイルの発射を行ったあとも顕著な減少は見られず、2011年からは5年連続で50億ドルを上回っています。

 北朝鮮を巡っては、今月6日に4回目の核実験を行ったことから、国連の安全保障理事会で新たな制裁決議の採択に向けた水面下の協議が続けられていますが、中朝貿易の統計では、北朝鮮への国際的な制裁措置が続くなかでも、中国との貿易が北朝鮮経済を支えている構図が鮮明になっています。

 また、中国から北朝鮮への原油輸出は統計上は2年続けてゼロでしたが、北朝鮮国内でそれ以前と目立った変化が確認されていないことなどから、中国から北朝鮮への原油供給は続いているという見方が出ています。

 アメリカは北朝鮮の核実験といつかは米本土に届く能力を身に付けるかもしれないミサイル開発と今回の発射事件を受けて移動式の迎撃システム、終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備に向けて韓国と協議に入る方針を表明、2月9日、数日中に米韓の公式協議が始まる見通しを示した。

 対して中国は「自国の安全追求に当たり、他国の安全(保障上の)利益を傷つけてはならない。朝鮮半島情勢をエスカレートさせる」(産経ニュース)と韓国へのTHAAD配備に反対する意思を米国に通告、韓国にも同様の反対の意を伝えている。

 米中は軍事的に緊張関係にあるから、THAADの照準が中国本土に向けられる可能性を否定できないからだろう。

 であるなら、なぜTHAAD配備を安保理決議採択への同意ではなく、北朝鮮の現在以上の核開発・ミサイル開発の抑止への中国の影響力行使の条件としないのだろうか。

 北朝鮮が核開発・ミサイル開発を中止して、中止の保証を得ることができれば、THAADの韓国配備は必要ないのだと。北朝鮮がこれ以上軍事的に危険な存在と化すことを想定した韓国防衛と米本土防衛のための止むを得ないTHAAD配備だと。

 北朝鮮が核開発とミサイル開発を進めていく状況は朝鮮半島に巨大な地雷原を埋め込む作業に他ならず。そのような状況下で朝鮮半島の安定化を言うのは自己矛盾そのもの、二律背反に過ぎないと。

 北朝鮮がこのまま軍事的に先鋭化していけば、中国でさえも制御できなくなる危険性すらあると。

 米国と韓国は先ずは韓国へのHAAD配備をカードに北朝鮮の現在以上の核開発・ミサイル開発抑止への中国の影響力行使を求め、それがダメだったなら、ケソン工業団地の操業全面停止に入るべきだったろう。

 そして好きなだけ韓国内へのHAAD配備を進めていくべきだったろう。

 中国が何ら影響力を行使する意思がなければ、安保理は例え決議採択に成功しても、その実効性は今まで同様に中国やロシアによって減殺されて、北朝鮮は再び核実験やミサイル発射を行うことになるはずだ。

 米国も日本も韓国も、今までさしたる効果がなかったにも関わらず、最初から安保理制裁決議採択ありきで行動している。

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