岡田克也の2月3日甘利明の金銭疑惑に関わる質疑に見る相手の言葉を見抜く力のなさ 代表の資格はあるのか

2016-02-04 13:12:10 | Weblog

 2月3日衆議院予算委で民主党代表の岡田克也が甘利明の口利き疑惑・金銭受領疑惑に関わる説明記者会見を取り上げて安倍晋三を追及した。質問者がよく陥ることだが、前以て決めて頭に入れておいた追及内容と追及の手順に拘る余り、相手が発した言葉の不適切さを見抜くことができずに自身の追及を続けて、結果的に相手の答弁自体の矛盾を許してしまう過ちを犯してしまうとが間々ある。

 今回の岡田克也もこの手の過ちを犯した。しかも質疑開始早々からそのような過ちを見せてしまった。

 岡田克也「腑に落ちないことが色々とあるんですが、一番違和感を感じたのは甘利大臣が大臣室で50万円を受け取った。直接受け取ったわけではありませんが、後で紙袋を確認したら、中にのし袋に入っていたということですが、この話、ちょっと分からないなあというふうに聞いておりました。

 甘利大臣の話を一般論として聞くのですが、もし総理がご存知のない、全く面識のない人と秘書の紹介でお会いして、もし総理がご存じない、全く面識のない人を秘書の紹介でお会いして、3、40分お話をして、その方が菓子折りを置いていったと。のし袋に入れた50万円が入っていたと。

 そういう場合に総理、これ、政治献金というふうに思われますか」

 安倍晋三「私はそういう経験がございませんし、仮定のお話にお答えすることは差し控えさせて頂きたいと思いますが、大切なことはですね、政治資金規正法に則ってですね、正しく対処していくことではないかと私は思います」

 岡田克也は一般論として聞いた。対して安倍晋三は一般論としてではなく、安倍晋三個人の問題にすり替えて、経験がないから、仮定の話には答えられないと逃げた。

 当然、岡田克也は、「そういうことがあったのか、なかったのかと総理の経験を聞いているのではない。一般的な社会常識として考えた場合、政治献金とすることができるのかどうか、総理自身の社会的な常識を尋ねたのだ」と追及すべきだったろう。

 だが、岡田克也は自分から一般論として聞きながら、安倍晋三の個人的経験へのすり替えの不適切さを見抜く力を持たずに見逃してしまった。
 
 岡田克也「私は当然否定されると思いました。黙っておカネを置いていく。それを政治資金と思う方がおかしい。それが常識だろうと思うですがね。危ないおカネと思う方が普通じゃないですか。

 別にこれ、政治資金だと言ったんじゃなくて、黙って置いていった。しかも祝儀袋に入っていたと言うんですね。これを適正に処理しなさいと甘利さんが言ったということでありますけれども、そういったことあり得るんですか。

 やはり出す方は政治献金、ちゃんとした政治献金として出してないのは明らかじゃないですか。そう思いませんか、総理」

 安倍晋三を一般論に乗せることができないままに岡田克也だけが一般論を展開しているから、それが一般論としては正しい判断だと見られても、対決した状況をつくり出すことができず、否応もなしに同じ質問を単に繰返す気の抜けた追及となっている。

 安倍晋三「私、そういう経験がございませんから。また、そういう方とお会いになるのは今までなかったわけでございます。

 いずれにせよ、大切なことはですね、政治資金規正法に則って正しく対処していくことであるのではないかと思います」

 あっさりとかわされてしまった。一度個人的経験へのすり替えを許してしまったから、二度まで許すことになって、岡田克也がいくら一般論を振り回そうと、有効足り得ないことになる。

 岡田克也「まあ、甘利さんに秘書からおカネが入っていたと言われて、政治資金としてきちんと処理するように指示したと本人が記者会見で言っておられます。勿論、これ週刊誌の報道は全く違うんですが、記者会見のお話をなぞって私は質問しているのですが、後からきちんと処理するように指示すれば、どういう意図で持ってきたか分からないおカネが適正な政治資金になるんですか。

 総理、そういう風に思ってられるんですか、答えてください」

 安倍晋三「繰返しになりますがですね、正しく適法に処理されたのは明らかです。それは問題ないのは当然なことだろうと私は思います。ですから、先程来申し上げておりますように、政治資金については政治資金規正法に則って正しく処理することではないかと、このように思います」

 甘利明の記者会見の説明では渡すとも告げず、当然、何のカネかその用途も告げないままに袋に入れておいたカネを、正規な遣り取りで受け取ったカネであるかのように政治資金規正法に則って適正に処理するように秘書に指示したとしている個人的問題を、安倍晋三はここでは政治資金は政治資金規正法に従って処理するという一般論にすり替える巧妙な答弁を行っている。

 いわば岡田克也の一般論での問いに一般論では答えずに自身の個人問題として答え、岡田克也が一般論上どう見るか、甘利の個人的問題を問い質したのに対して個人的問題としてではなく、法律上の一般論でのみ答えるゴマカシで逃げている。

 岡田克也「総理は正しく処理されているかどうかということですが、では今回の場合は正しく処理されているんですか。つまりおカネを持って面会したのが11月の14日。しかし政治資金の受け取り、その届けがなされたのは翌年の2月4日、この間約3カ月間、このおカネはどうなっていたんでしょうか。つまり領収書も2月4日になっているわけですから、この間、そのおカネは(議員)会館か地元か分かりませんが、事務所に置いてあったということですが、それが果たして政治資金と言えるでしょうか。

 私はそれは当然、意図としては裏ガネだというふうに見ざるを得ないし、3カ月後から領収書を切ったからと言って、正式になるはずはないと思いますが、如何ですか」

 安倍晋三「私が申し上げていることはですね、政治家に於いては支援者からですね、寄付の申し出があったときには、それは間違いなく法律に則って正しく処理していくことであろうと、それに尽きるわけでありまして、それが違法なことであるかどうかについてはですね、当然、私は個々の出来事について、答弁することは適当ではないと、このように思います」

 岡田克也が大臣室と地元事務所でそれぞれ受け取った50万円は一般論(=一般的な社会常識)で考えた場合、正規の政治資金と解釈できるかどうか、一般論としての考えに焦点を当てて追及したなら、安倍晋三の巧妙なすり替えを許すことはなかったはずだ。

 もし自身の個人的な経験で逃げるようなことがあったなら、一国の総理として一般的な社会常識を備えていないのかと批判することができるし、一般的な社会常識を備えていない総理だとのレッテル貼もできる。

 岡田克也は再び黙って置いていったカネだとか、収支報告書への記載が3カ月遅れたとか、同じ質問を繰返した上で、甘利の処置を非常に疑問だと述べてから、次のように問い質した。

 岡田克也「総理は昨日の本会議で安倍内閣の政策が政治献金で影響を受けることはないと断言されました。何を根拠に断言されてるんですか」

 安倍晋三「ないからです」

 岡田克也の方こそが、影響を受けている証拠を握っているのだろうか。握ってもいないのに影響を受けけているのではないかと追及しても、影響を受けていたとしても、それが何らかの証拠と共に表に現れない限り、否定するのは決まりきっている。

 岡田克也「総理、もっと危機感を持たれたら、私はいいと思いますよ。つまり甘利さんのケース、これはですね、相当なグレーですよ。甘利さん自身のカネね。しかも事務所は500万円の内300万円は届けされていない。

 まさしく裏ガネとして処理されているわけでしょ。そういう事務所、そして甘利さん自身も最初に申し上げたグレーなおカネの受け取り方、果たしてそれで、失礼だが、甘利さんは大変大きな権力を持って、安倍内閣の司令塔として、そしてTPP交渉の最終責任者として、様々なことをやっているわけでしょ。

 きちんと検証すべきじゃないですか、総理」

 自身が証拠を握ってもいないのに、一業者に対する便宜供与が疑われていたとしても、他の政策で別の業者に便宜を図っている疑いがないか検証しろと迫ったとしても、ハイ、そうですか、検証してみますとは言わない。

 安倍晋三「その週刊誌、報道されていたようなことがですね、安倍政権の例えばTPP交渉に影響するんですか。経済財政維持に影響するんですか。影響するはずはないじゃありませんか。

 一切ないということははっきりと申し上げておきたいと思います」

 この時点でこの追及を続けても水掛け論となることは見えている。

 岡田克也「私が週刊誌の報道に基づいているのではなくて、こういったおカネにルーズな事務所、あるいはご本人、そういう方が強大な権限を持って、例えばTPP交渉っていうのはそれぞれの業界、あるいはそれぞれの農業に携わる人たちにとって死活問題ですよ。

 関税、殆どの物がゼロになっていますけども、ゼロになっていないものもあるし、ゼロになるタイミングも色々ありますよ。当然、様々な生産者から見ると、責任にかかる話、強大な権限ですよ。そういう権限を持った人がこういう疑いをかけられると言うことについて、私は総理はもっと危機感を持つべきだし、きちんと甘利前大臣にそういうことはないということを確認する責任があるんじゃないですかと言うことを申し上げているんです」

 安倍晋三が甘利明に確認したとしても、甘利は事実そういうことがあったとしても、自身に対する汚名を積み重ねないために自分から明らかにすることはないから、あるなしに関係なしに否定を当然のこととするだろう。

 安倍晋三「TPP交渉、色んな品目が関わっております。岡田委員がですね、影響が出ているんだと言うんならですね、具体的に言ってくださいよ。ないというものについてはですね、ないというものは私はないと言っているんです。

 そこを出さずに一党の、公党の代表として嫌疑をかけるんであれば、具体的にですね、TPP交渉に於けるどういう影響を与えたのか具体的に申し上げなければ無責任なタダの誹謗中傷に過ぎないですよ。

 そのことははっきりと申し上げておきたいと思いますよ。交渉そのものを穢すようなことはやめて頂きたい。このこととそのことは別の問題ですから。そこはハッキリとする必要があると思いますよ。

 甘利大臣は命がけになってTPP交渉、頑張ってきましたよ。そして大筋合意に至ったんです。そんな簡単なことではないんです。甘利さん一人で決めれば、決められるような話ではないんです。内閣の中でしっかりと議論しながら、結論を得て、その中で15品目についてちゃんと守っていくために私たちは昼夜を分かたず交渉して、結果を出してきました。

 結果自体が、交渉行為そのものに影響が、あの(週刊誌の報道の)中に出てくる人物が影響を与えたんですか、そんなはずはないじゃありませんか。具体的な案件でですね、問題があれば、週刊誌の報道に頼らずに具体的な案件で何か言ってくださいよ。

 全くないですね。いきなりそういう言いがかりをされても、私は答えようがないわけであります」

 カメラの方に向かって両手を広げたり、左手を上げたり、ここぞという言葉を発するときに見せる人指し指を一直線に相手に向ける仕草を見せたり、さながら独壇場の感を見せた。

 岡田克也「私が申し上げているのは、総理が本会議場で安倍内閣の政策が政治献金で影響を受けることはないと断言されたから言っているわけですよ。断言された以上、その根拠を必要があるのはあなたの方じゃないですか。

 私は甘利大臣のTPP交渉担当相としての、勿論我々の目指す方向は違うけれども、一定の意見は持ってますよ、具体的な対案と言ってるわけではないですよ。だけど、これだけのことが事務所である、本人も疑いをかけられているわけだから、本人に確認されたらどうですかということを言ってるんです。それはできないと言っているんですか」

 似たような答弁を引き出すだけのムダな議論を費やしているに過ぎない。

 安倍晋三「私はないと言い切りましたよ。ないことはないと証明するのは、あくまでも証明なんです、あるんだということをですね。あるんだと言うんだったら、あるということを主張した方が立証責任があるんです。当たり前じゃないですか。

 私はないと言うことないと言う以外にないじゃないですか。あるんだったら、先程申し上げたように一つでも具体的なことを言ってくださいよ。一つも挙げられていない中でですね、一つも挙げていない、一つも疑いを挙げていないにも関わらず、先程からですね、恰もあるが如くに言っている。

 これはですね、余りにも議論としてですね、バカげた議論であります。しっかりと何か出して頂かなければ、それは我々も答えようがないわけであります。いずれにせよ、甘利大臣については戦犯記者会見をされました。あれは中間的な調査であると述べておられますから、今後しっかりと調査を進めて、それは公表していくとおっしゃっておりますから、私は今後しっかりと責任を果たしていくものと考えております」

 岡田克也「繰返し言っておきますが、ないといったのはあなたなんです。ないといった以上、きちんとないことを説明すべきで、責任があるということを申し上げておきます。

 そしてもう一つ申し上げておきますが、URの問題、あるいは国交省も絡むと。これはこれ安倍内閣の中の問題ですね。ただ本当に問題がないということをきちんと内閣総理大臣として確認して、責任を持って、ないならないと、あなたおっしゃったけど、URの問題も含めてないと、ハッキリとおっしゃる責任があることを申し上げておきたいと思います」

 本日2月4日の衆院予算委員会で民主党の階猛が憲法63条、〈内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかららず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。〉を持ち出して、内閣総理大臣を含めて閣僚は答弁する義務・説明する義務を定めているが、国会議員が内閣に対して説明する義務を負うものではないとして、安倍晋三が2月3日に岡田克也に立証責任を求めたのは憲法違反だと批判したが、これは無理があるように思える。

 岡田克也は甘利明には一業者に対して口利きを行い、カネを受け取った疑惑があるから、TPP交渉やその他甘利明が関わった政策でも同じような便宜供与の疑いがあるのではないかと、その検証を求めた。

 例えば体育の時間で一人の生徒が更衣室で体育着に着替えた際、自身のロッカーに内ポケットに財布入れた学生服をしまっておいたところ、鍵を掛け忘れて財布が盗まれてしまった。同じクラスに以前万引きをした生徒がいるからと、その生徒に盗んでいなことを立証する責任があるだろうか。立証するのは疑った側である。

 もし疑われた生徒が盗んでいなければ、盗んでいないと言う他はない。

 そもそもからして岡田克也が一般論として質問していながら、安倍晋三に一般論ではなく、個人の経験で答弁した不適切な言葉を見抜く力もなく、それを許したところに問題がある。社会的常識に基づいた一般論で答えさせていたなら、甘利明が受け取ったカネはとても正規の政治献金と解釈できることはなかったろう。

 甘利明が「政治とカネ」の疑惑を受けて大臣を辞任した一番の問題点は閣僚の信用・内閣の信用を内外に失ったことである。「政治とカネ」に問題のある大臣がTPP交渉に携わっていた。その信用問題である。

 その結果、TPP署名式に出席できず、副大臣が代わりに出席することになった。署名式に出席する外国の大臣等は今まで顔を合わせていた甘利明の不在を「政治とカネ」と関連付けて頭に思い浮かべることになる。

 「政治とカネ」と関連付けられた人物はカネに関わる信用の度合いがどの程度か、疑いのメガネを通して常に見られることになる。

 岡田克也は甘利明の疑わしいカネの受領によって、それが未だ疑惑の段階であるものの、安倍内閣の政策がそのような政治献金で影響を受けていないか問い質すよりも、疑惑を受けて辞任に迫られた事実を以って日本の政治が大きく信用を失ったことを問い質すべきだったろう。

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