安倍晋三「任命責任は首相の私にあり、国民に謝罪する」はこの呪文で任命責任のカタをつける一種の通過儀礼

2016-02-12 10:22:51 | 政治

 ――閣僚の「政治とカネ」の問題に関わる首相の任命責任は二度とそのような閣僚を出さないこととすべき――

 安倍晋三は第1次安倍内閣から今日まで7人の閣僚を「政治とカネ」の問題で辞任させている。内4人が今回口利き疑惑・金銭受領疑惑を受けて辞任した経済再生担当相甘利明を含めて第2次安倍内閣以降である。第2次以降が1人上回ることになる。

 これ程の数は安倍内閣だけだと言うことだが、なかなかの見事な成績である。

 安倍晋三は辞任の度に「任命責任は首相の私にあり、国民に謝罪する」とほぼ同じことを繰返し言っている。いわばこのような言葉で任命責任を済ませている。安倍晋三本人からすると、このような言葉を任命責任を果たす言葉としていることになる。

 似たような言葉を繰返し言うと、呪文の性格を帯びることになる。辞任の度に似たような呪文で済ませているということは、このような呪文を以って任命責任のカタをつける一種の通過儀礼としているということであろう。

 犯罪人が犯罪を犯すたびに「犯罪を犯した責任は私にあり、迷惑をかけた方々に謝罪します」と言って、その発言で自分の犯罪のカタをつけ続けたとしたら、やはり同じ言葉を呪文にカタを付ける通過儀礼としていることになる。

 もし後任の閣僚がしっかりと役目を果たすよう監督・指示するのが任命責任だとするなら、辞任した前任者に対して同じように監督・指示できなかった任命責任は依然として残る。
 
 2014年当時経済産業相だった小渕優子の2005年~2007年の後援会会員明治座観劇会で参加費収入は合計1199万円、政治資金収支報告書に明治座支出金として記載した同時期の金額は合計約6529万円。この差額約5330万円は小渕優子後援会側が立て替えなければ収支合わないことになる。この立て替えが有権者への利益供与を禁じた公職選挙法に違反する可能性があると国会で疑惑追及を受け、他にも選挙区有権者に自身の写真入りカレンダーやワインを贈ったことがマスコミに報じられて、2014年10月20日に辞任。

 同じ2014年10月20日に地元有権者にうちわ配布の疑惑が報道されていた法務大臣に任命されたばかりの松島みどりが辞任、安倍内閣が「女性活躍」の目玉とした女性閣僚のダブル辞任となった。

 ダブル辞任後の10月30日の衆議院予算委員会。小渕優子の松島みどりの辞任について以下のように発言している。

 安倍晋三「国民の皆様に大変、申し訳ない思いで、任命責任者である私の責任であると痛感している。山積する課題にしっかりと立ち向かい、問題を解決していくために全力を尽くしていく。政治に遅滞があってはならない」(NHK NEWS WEB

 国民に謝罪し、首相である自身に任命責任があることを認めている。

 次は農水省だった西川公也の辞任である。政治資金規正法が補助金の交付決定を受けた会社が1年間献金することを禁じているにも関わらず、西川が代表を務める政治団体が農水省の補助金交付が決まっていた砂糖業界の関係団体から100万円の献金を受けたていたことが判明。

 この経緯がかなりややこしい。

 農林水産省の「さとうきび等安定生産体制緊急確立事業」で13億円の補助金交付が決まっていたのは砂糖メーカー11社と1団体(日本製糖協会)が加盟する会員団体「精糖工業会」。

 西川公也が100万円の政治献金を受けたのは「精糖工業会」が運営するビル管理会社「精糖工業会館」。社長は同じで、両者の役員は重なり、事務所も同じビルのフロアにある。

 当然、農水省の「精糖工業会」への13億円の補助金決定に西川公也が関わり、その謝礼に「精糖工業会」が直接西川公也への献金はまずいからと「精糖工業会館」を迂回させて100万円を献金したのではないのかという疑惑が生じる。

 西川公也はまた、自身の政党支部が国の補助金を支給された栃木県の木材加工会社から300万円の献金を受けていたことでも国会で追及を受けている。

 西川公也は国会での追及に満足に答弁することができずに「説明をしても、分からない人には分からない」と名ゼリフを吐いて2015年年2月23日に辞任。

 何ら疚しくなければ辞任することはない。

 安倍晋三(総理大臣官邸で記者団に)「任命責任は私にあり、国民の皆様におわび申し上げたい。(後任の)林新大臣の下、与党と協力してしっかりとした新しい農政を進め、若い皆さんが農業に魅力を感じる農政、そして農山漁村の所得倍増を目指して頑張っていきたい。政策を力強く推進していくことによって責任を果たしていきたい」(NHK NEWS WEB

 ここでも同じ呪文を唱えている。「任命責任は首相である自分にあることと国民への謝罪」である。

 呪文となっているこの手の発言で任命責任を遣り過ごしているのだから、まさしくこのように発言すること自体が通過儀礼そのものとなっていることを意味する。

 次いで2016年月28日の甘利明の辞任と相なるのだが、その間に自ら受けていた政治献金に対して税控除を受けていた当時防衛大臣だった江渡聡徳(あきのり)の件がある。第3次安倍内閣の組閣に際しての閣僚全員留任の意向に反して野党の激しい追及に屈して留任を辞退した。

 辞任という形を取らせないための内閣改造だったのかもしれない。そうではなくても、内閣改造がなければ、留任辞退という形式を取ることができないから、辞任に追い込まれていた可能性は高い。

 言ってみれば隠れ辞任と言うこともできる。これを入れれば、第2次安倍内閣では5人の閣僚が「政治とカネ」の問題で辞任ということになったかもしれない。

 2016年2月2日衆議院本会議で甘利明の任命責任を問われて。

 安倍晋三「閣僚の任命責任は内閣総理大臣たる私にあり、私の任命した閣僚が交代する事態を招いたことは、国民に対して大変申し訳なく感じている」(NHK NEWS WEB

 例の如くの呪文、「任命責任は自分にあることと国民への謝罪」を言い、この呪文を以って任命責任のカタをつける一種の通過儀礼としている。

 安倍晋三にとってこの呪文が単なる通過儀礼でしかないから、何人の閣僚が「政治とカネ」の問題で辞任しようが、辞任の度にこの呪文を唱えて任命責任のカタをつけ続けることになる。

 今後同じような閣僚の辞任が起きても、同じ通過儀礼を繰返すことになるだろう。

 閣僚の方も任命責任者たる首相がその程度で任命責任のカタをつけることができると学習することになって、あるいは既に学習しているに違いない、自らの「政治とカネ」の問題にさしたる危機感を持たないことになる。

 閣僚の「政治とカネ」の問題に関わる首相任命責任はこの手の呪文でカタをつけることができる通過儀礼とせずに、「政治とカネ」の問題で辞任する閣僚を二度と出さないことに基準を置くべきではないだろうか。二度目を出したらアウトだと。

 このような規準を設けたなら、閣僚を狙う国会議員は任命責任者の首相の辞任を誘うことになるから、「政治とカネ」の問題に緊張感を持つことになるし、首相自身も、二度目はアウトだとなったら、閣僚の任命に緊張感を持って臨むことになる。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする