菅首相、自らを“オオカミ中年”と決定づける、「小沢氏、得意分野で活躍を」の発言

2010-09-08 08:45:55 | Weblog

 9月6日夜、日本テレビの番組収録。《「小沢氏、得意分野で活躍を」 首相、起用問われ発言》asahi.com/2010年9月6日23時49分)

 菅首相「(小沢氏とは)選挙が終われば協力しあうことを約束している。・・・・大きな政治家で、これだけの経験と見識を持った政治家はいないのではないか。決断力があり、特に選挙の指導は非常に的確だ」

 司会者から内閣の要職に起用するのかを問われる。

 菅首相「すべての(党所属)議員が自分の得意な分野で働ける態勢を作ることが挙党態勢だ。小沢氏にも得意な分野で活躍していただければありがたい」

 番組収録後に記者からの番組での発言についての問いに対して。

 菅首相「小沢氏の議員としての資質について一般論を述べただけで、代表選後の人事には言及するつもりはなかった。要職起用と受け止められたら、本意ではない」――

 多分、記者から、代表に選ばれたら場合の小沢氏を要職で起用する意図からの発言だったのかと問われたのだろう。「特に選挙の指導は非常に的確だ」と小沢氏の得意中の得意分野を挙げて、「小沢氏にも得意な分野で活躍していただければありがたい」と言ったのだから、幹事長起用かと受け止めたとしても、早トチリと非難はできまい。
  
 菅首相はその種の記者の質問を否定、「小沢氏の議員としての資質について一般論を述べただけ」とした。

 だが、テレビで何と言われ、新聞で何と書き立てられるか、発言の波紋が心配になって、仙谷官房長官に連絡を入れた。

 《菅首相は小沢氏処遇を「言ってない」》スポーツ報知/2010年9月7日13時41分)

 7日午前の記者会見。仙谷官房長官が菅首相から、「代表選後の体制を話したと報道される可能性があるが、そういうつもりではなかった」と釈明を受けたことを明らかにする。

 仙谷官房長官「選挙後の体制は今からとやかく言う話ではない。新代表がじっくり考えて行えばいい」――

 だが、「選挙後の体制は今からとやかく言う話ではない」にも関わらず、そのぐらいのことも合理的に判断して分別をつけることもできず、「とやかく言」った。 

 この手の合理的判断もできない、分別もつかない政治家が一国の総理大臣でございますと総理大臣の椅子に座っている。

 菅首相は、「小沢氏の議員としての資質について一般論を述べただけ」と言った。これは挙党態勢のあり方や人事の取り扱いについての一般論についての言及とは明らかに異なる。

 確かに、「すべての(党所属)議員が自分の得意な分野で働ける態勢を作ることが挙党態勢だ」までは一般論を述べたに過ぎない。「すべての(党所属)議員」と言った場合、匿名の不特定多数を対象とした発言であって、特定の議員を誰と名指ししたわけではないからだ。

 「小沢氏も含めてすべての議員」ということなら、例え「小沢」という特定の人物を名指しして付け加えていたとしても、主体的位置を占めるのは匿名の不特定多数の「すべての議員」であって、小沢氏を「すべての議員」に準ずる位置に置くことになるから、一般論とすることはできる。

 だが、「小沢氏にも得意な分野で活躍していただければありがたい」は特定の議員に対する名指しの要請、と言って悪ければ、名指しの願望であって、「小沢氏の議員としての資質について」の「一般論」でないばかりか、挙党態勢や人事についての一般論とも違う。それを「小沢氏の議員としての資質について一般論を述べただけ」で片付けるのはマヤカシ以外の何ものでもない。

 さらに言うなら、菅首相続投の場合、人事決定権者である菅首相自身が小沢氏が「得意な分野で活躍」できる要職を提供しないことには小沢氏は「得意な分野で活躍」できようがない。

 まさかペイペイの仕事の起用は考えることはできまい。いわば、「小沢氏の議員としての資質について一般論を述べた」は自身の発言を誤魔化すマヤカシそのもので、代表選後の人事そのものについて「得意な分野で活躍していただければありがたい」と述べた発言であろう。

 合理的判断に欠ける、分別がつかない。その上に自身の不適切な発言を、その不適切さを隠蔽するためにマヤカスことまでする。

 何人かの閣僚が「小沢氏の議員としての資質について」の「一般論」を、挙党態勢のあり方や人事の扱い方にすり替えて味方している。

 《菅首相、「小沢氏起用」で釈明=閣僚からも発言相次ぐ》時事ドットコム/2010年9月7日 14:03)

 荒井聡国家戦略担当相「党の有為な人材が政府・与党でそれぞれ活躍していただく、と発言したと理解している」

 小沢氏という特定人物の名指しから、「党の有為な人材」へと匿名の不特定多数化することで挙党態勢、あるいは人事についての一般論としている。

 野田佳彦財務相「特定のポジションをイメージして話したとは思わない」

 人物に於ける匿名の不特定多数化ではなく、ポジションの不特定多数化で一般論化を謀っている。

 蓮舫行政刷新担当相「首相は一貫して適材適所でチーム民主党という言い方をしている。特段、踏み込んだ発言とは思っていない」

 これは人物に於ける匿名の不特定多数化であると同時にポジションの不特定多数化による挙党態勢、あるいは人事についての一般論化であろう。

 北沢俊美防衛相「一般論で言ったのだろう。方向性とすれば当然のことだ」

 担ぎ上げている当の相手が不適切な発言をすると、担ぎ上げている手前、担ぎ上げているそれぞれが結果的にグルになる形を取ることになってその不適切さを誤魔化さなければならなくなる。誤魔化して、適切な発言だと見せかけなければならない。 

 誤魔化しを働く点に於いて菅首相も閣僚も共犯関係に位置していることになる。勿論、主犯は菅首相である。自分で言っている先から誤魔化し、その誤魔化しに各閣僚が協力して誤魔化しにかかったのだから。

 《【民主党代表選】補佐官が首相の小沢氏要職起用発言を「真意でない」と否定》MSN産経/2010.9.7 13:00)

 寺田学首相補佐官「首相に確認したが、真意ではないとのことだった。小沢先生のすごいところはどこかと聞かれて、『選挙(での指導)が得意』だったと答えた。その後に『挙党態勢はどう築くか』と問われ、1人1人が小沢さんも含めてがんばっていけるような態勢が一番いいという一般論を述べたということだ」

 寺田は菅首相が「一般論」だと言っているから、「一般論」が正しいとイエスマンを演じているに過ぎない。自分の判断を何ら差し挟まずにイエスマンを演じたのは、差し挟んだら都合が悪くなるからか、自分で判断するだけの能力がないからかどちらかだろう。

 前者、後者どちらであっても、菅首相にとって好都合なだけのイエスマンとして有り難い存在とされるだろうが、逆に首相補佐官としての資質が問われることになる。あるいは問うだけの能力が菅首相にはないのかもしれない。

 「大きな政治家で、これだけの経験と見識を持った政治家はいないのではないか。決断力があり、特に選挙の指導は非常に的確だ」の発言、さらに「すべての(党所属)議員が自分の得意な分野で働ける態勢を作ることが挙党態勢だ。小沢氏にも得意な分野で活躍していただければありがたい」の発言を番組収録後に記者からのインタビューに答えて、「小沢氏の議員としての資質について一般論を述べただけ」とした発言の整合性も問わなければならない。

 菅首相は代表選を通じて小沢氏を古い政治手法の政治家の範疇に入れ、「カネがまつわる古い政治から脱却しなければならない」、あるいは20年間の日本の停滞を「カネと数合わせの政治」が原因だとし、「おカネにまみれた政治文化を変えなければならない」と小沢氏の存在否定を暗に策してきた数々の発言との整合性である。

 「カネと数合わせ」を得意とする古い政治手法の政治家の範疇に入れて否定的存在と看做しながら、「大きな政治家で、これだけの経験と見識を持った政治家はいないのではないか。決断力があり、特に選挙の指導は非常に的確だ」と一転して肯定的存在と看做して褒め上げる。その褒め上げを「小沢氏の議員としての資質について」の「一般論」だとする。

 発言のどこにも整合性を見い出すことはできない。

 ここに見ることができる菅首相の資質は、ここだけのことではなく、前々から言ってきたことだが、自身の言葉に対する責任意識の希薄さである。責任意識が希薄だから、言葉が軽くなる。あるいは発言に一貫性を欠くことになる。

 このことは合理的判断能力や分別の問題と重なる。これらの能力を欠いているから、自身の発言を瞬時に吟味することもできずに思いついたままを言うから、不適切な発言ということだけではなく、言葉に一貫性を欠くことになって、後になって誤魔化しの訂正に追われることになる。

 テレビ収録番組の翌日の7日に民主党本部での新聞・通信各社のインタビューで菅首相は改めて発言を訂正している。

 《菅首相、小沢氏の処遇「白紙」強調 発言を軌道修正菅首相、小沢氏の処遇「白紙」強調 発言を軌道修正》asahi.com/2010年9月7日21時34分)

 菅首相「テレビ収録の中で人事は適材適所と申し上げた中から話がはずんだが、新代表に選ばれた方が、方向を出される」――

 「小沢氏の議員としての資質について」の「一般論」としていたはずが、人事に於ける適材適所論に自らすり替えるマヤカシをやらかしている。

 また、「話がはずんだ」ではすまないことを「話がはずんだ」で片付けてしまうなお一層の言葉の軽さも如何ともし難い。

 消費税発言でもトロイカ体制による挙党態勢問題でも一貫性のない態度・発言を見せて、自分から自分の言葉を軽くしてきた。いや、元々言葉が軽いから、態度・発言に一貫性を失うことになる。言葉の軽さと態度・発言の一貫性の欠如は相互性を持った資質であろう。

 また合理的判断能力とも相互反映し合う資質であるはずである。合理的判断能力を欠くから、言葉が軽い、言葉に責任を持たない。当然、指導力、リーダシップを発揮しようがない。

 そういった首相が「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と自分を売り込む。介護分野での雇用創出を言う。

 9月7日の『朝日』社説には、〈介護を産業としてみると、現在7兆9千億円の市場規模が2025年には約20兆円になると厚生労働省は見込んでいる。介護従事者は現在140万人を数え、年6万3千人のペースで増えている。 〉と書いているが、介護、その他の社会保障分野には国費投入が常に伴い、国民の負担が常に伴う。

 雇用が〈年6万3千人のペースで増えている〉にしても、不景気が多分に恩恵した労働力増加であろう。2009年4月からの介護報酬3%上げでも、すべてが人件費に反映したわけではなく、介護労働者の〈平均賃金は月21万円程度で全産業平均より10万円以上低〉いと書いてあることからすると、景気が回復すればより高賃金の産業に流れていきかねない雇用創出と言わざるを得ない。

 少子高齢化が現在以上に加速したなら、国民負担も加速度的に増加する。消費税増税で賄うとしても、消費税という形の負担が肩代わりするだけの話となる。

 菅首相の言葉の軽さ、一貫性のなさ、合理的判断能力の欠如、指導力、リーダーシップのなさ等を考えると、菅首相の言っている雇用が経済成長を加速させ、税収を増加させるといったいいこと尽くめが“オオカミ中年”の大騒ぎに見えて仕方がなかったが、今回の「小沢氏、得意分野で活躍を」を濡れた舌のまま「小沢氏の議員としての資質について一般論を述べただけ」の資質一般論に、あるいは「テレビ収録の中で人事は適材適所と申し上げた中から話がはずんだ」の適材適所論にすり替えるマヤカシは“オオカミ中年”と決定づける言葉の軽さ、言葉の無責任さを示していないだろうか。

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