小沢前幹事長は9月1日の民主党中央代表選挙管理委員会主催の民主党代表選、菅、小沢共同記者会見で、普天間問題に関して、「沖縄もアメリカ政府も、両者共、納得できる案をつくる知恵を出せば必ずできるというふうに私は確信しております。今、それをするためには、今後、沖縄県民のみなさん、それから外交関係として、アメリカ政府と話をしなければなりませんので、今、自分の頭にあることをこういう席で申し上げるわけにはいきません」と、沖縄県民の国外移設に応えることができる案があるかのような発言をしたから、これはと期待したが、翌9月2日の二人の日本記者クラブ主催討論会では、「日米合意を尊重することに変わりはない」と変化、菅候補者から、「知恵があるのなら一部でも披瀝してもらいたい」と言われると、「三人集まれば文殊の知恵ということがあります。今、具体的にこうするとかという案を持っているわけではありません」と、普天間国外の期待を萎ませるかのような後退を見せた。
いや、ここで披瀝したら、菅側からいいように利用される、当選するまで腹の中にしまっておくのだろうと思い直したが、根拠のない希望的観測で終わるかもしれない。沖縄県民の徹底抗戦あるのみだろうか。
9月1日の民主党中央代表選挙管理委員会主催共同記者と9月2日の日本記者クラブ主催民主党代表選討論会の両候補者の立候補理由を述べる冒頭発言で、菅候補が「政治とカネ」の言葉を持ち出して間接的に攻撃を仕掛けてくるのに対して小沢候補がまともに立候補理由を
述べているのを聞いて、ちょっと正直過ぎるのではないかと思った。
「プレスクラブ - ビデオニュース・ドットコム インターネット放送局」から、記者会見と討論会の両候補の各冒頭発言を、それぞれの両内容に殆んど違いがないことが分かるが、殆んど違いがないことが分かるように比較のために候補者ごとに並べてみる。共に最初の発言者は小沢候補となっている。
小沢候補、9月1日記者会見――
小沢候補「このたびの代表選挙に立候補することになりました小沢一郎でございます。今回の代表選挙は野党のときの代表選挙とは違いまして、民主党の代表、そしてそれは国政を預かる責任者となるわけでございますので、私としましても、自分自身、そのような重要な職責に自らが耐えるかどうか、色々と熟慮したわけでございますけれども、多くの仲間のみなさん、そして全国のみな様の激励をいただきまして、敢えて立候補する決意をいたしました。
その理由は、今日の日本の社会を見てみますと、戦後の民主主義というものは、必ずしも十分に正確に理解されないままに今日に至ったということが一つの大きな日本社会の構造の一因を成すものだとは思いますけれども、特に今日の政治・経済の不透明化、危機的な状況の中で、日本の社会は卒業しても就職できない若者たちやら、あるいは自殺者も絶えません。
また親殺し・子殺し連続、連日のニュースもございます。そういう日本の社会が崩壊しつつあるのではないかという強い認識の中で、それを立て直し、あらゆる意味で特に経済を再生させていくためには国民主導の、政治主導の政治を実現しなくてはいけない、いうのが我々の主張であり、昨年の総選挙に於いて国民のみなさんにお約束をし、政権を委ねられたのだと思います。
私共はその意味に於いて個々の約束した政策の実行は勿論、大事でございますが、その前提として政治主導、国民主導の政治、官僚任せではない、政治家が自ら責任を持って決断し、自らの力で実行する、そういう行政、国会も同様でございますが、そういうものに変えていくということが我々の主張であり、理想であったはずであります。
今日は菅総理の元で一生懸命頑張っておられることは十分承知いたしておりますけれども、来年度の予算編成の、例えば例を挙げてみますと、結局財源がないということで、歳出の1割削減、これは一律1割削減いう形で方針が決められたようであります。私共の主張しているところは色々な予算の中でムダを省き、我々の主張する政策を実行するために、その中から政治家が予算を作っていくということであったと思いますし、そうしなければ今日の困難を解決できないと思います。
私はそういう意味に於いてもっと政治家が自らの責任で政策決定を、予算の決定をすることのできるような、そういう態勢をつくらなければならない、そのことを強く感じまして今日の代表選挙に立候補し、自ら国民との約束を果たしていきたいということで、みなさんの審判を仰ぐことになった次第であります。どうぞよろしくお願いいたします」
小沢候補、9月2日討論会――
小沢候補「このたびの代表選に立候補することになりました小沢一郎でございます。先程お話ありましたように民主党の代表は今日では政権運営の最高責任者を選ぶということになります。従いまして、私自身、今日のような大変厳しい困難な時期にトップリーダーとして、その責任を果たすことができるのかどうか、今回の代表選に出馬すべきかどうか思い悩みました。
しかし一方で今日の日本社会を見るときに毎日毎日人殺しの話し、子殺しに始まりまして、そういう本当に信じられないような報道がされております。また自ら命を絶つ自殺者が減る気配が一向にありませんし、高齢者の行方が分からないという問題も出てまいりました。
こういう状況はまさに日本社会、日本の精神的な崩壊が始まりつつあるということのシンボリックな状況ではないかというふうに考えております。かてて加えて、今日の経済の停滞が学校卒業しても就職できないという若者たち、それがたくさん増えております。そして最近、この経済がさらに一層不透明感を増し、景気の崩壊が進むのではないかと言われております。
私共はそういう中にあって、昨年の総選挙でこういう経済を始めとする政治、経済、そして社会全体の停滞を打破するためにマニフェストを掲げ、官僚任せの政治、行政ではなくて、国民主導、即ち国民の選んだ代表が政治家を主導する政治をするんだということを訴えて政権を委ねられたと思います。
この今日困難を乗り越えて、そして本当に私たちが掲げた『国人の生活第一』と、国民の生活を守ると、そういう政策を実行していく、そのためには国民の代表である政治家が自分自身で決断し、そして自分自身の責任を持って実行していく、そういう政治をつくり上げることが色々な施策を実行する上に於いて、先ず最大の前提だと思っております。
私はそのことを最大の主眼としつつ、経済再生、国民生活の再生、そして地域の再生、そういった問題を主眼として取り組んでまいりたいと、そのように考えております」
菅候補、9月1日記者会見――
菅候補「菅直人でございます。大変厳しい経済、社会情勢の中で代表選挙を行うということで、国民のみなさんから政治運営しっかりやれという声をいただいております。私は現職の総理大臣という立場でありますので、総理大臣の職務は完璧を果して頑張っていきたい、こう考えております。本日も朝から防災訓練、静岡に出かけまして、小・中・高生と共に土嚢や、あるいは簡易担架の製作など一緒にやってまいりました。
また、今日、この後はスペインの、サト、サパーテ首相とも会談をして、今スペインは大変な財政の立て直しを図っておりますが、こういった議論もさせていただこうと総理の職分だけは全力で実行していきたいと、先ずそのことをご理解いただきたいと思っております。
私の政権が誕生して3カ月足らずが経過をいたしました。この間に参議院選挙などがありましたので、いよいよこれからが菅政権としての本格稼動の時期に入ったわけであります。8月後半から全国各地を視察をしてまいりました。本当にですね、地方の状況、特に雇用の状況が大変厳しいということを、それぞれの地域でお聞きいたしました。
私は先ずやるべきことは一に雇用、二に雇用、三に雇用だと考えております。つまり仕事がないということは人間の尊厳に関わることでありまして、仕事があることによって尊厳が保たれ、そして安心な生活になってまいります。
先日は犯罪を犯した方が社会復帰する、それを支えられている保護司のみなさんとお話をしましたが、仕事のない人は3分の1近く再犯になるけれども、仕事のある人は再犯率が極めて低いということもお聞きしまして、そうなんだと改めて思ったところであります。
少し具体的に申し上げますと、この雇用を生み出せば、経済の成長につながります。また働く人は税金を払っていただいて、財政の再建にもつがなります。介護や保育の分野で働けば、社会保障の充実にもつながるわけであります。
京都のジョブパークでは、新卒者の支援の取組みがしっかり行われている。私たちの内閣の中でも新卒者支援の特命チームをスタートさせました。また九州では低炭素型雇用創出立地、つまり中国や外国に企業を出そうかと思っていたけれども、私たちの出した補助金によって国内に立地をしたというLED、あるいはリチウム電池の会社をお訪ねをいたしました。さらに芦屋では介護と言っても、家庭で支えられるお年寄りの介護ということから、単独で生活をしておられる高齢者に対して24時間ブザーを押してくれれば、すぐに駆けつけてくれるという、そういう介護をやっている大きな集合住宅を見てまいりました。
私は介護保険制度を導入するときの厚生大臣を務めましたが、これからは第二段目の、つまりは単身高齢者が安心して暮らしていける介護に進んでいきたいと考えております。そういったことをやるために、政権をこれからも是非担当させていただきたいと思います。
その中でクリーンな、オープンな民主党をつくっていきたいと思います。私の初出馬は1976年、ロッキード事件と言われたあの選挙でありまして、もう政治におカネのことがまつわるような古い政治からは是非脱却しなければならない、そのように改めて感じておるところであります。
そして今回の選挙は党代表を選ぶだけではなくて、いずれの候補者が総理大臣としてふさわしいのかという選択を国民のみなさんに選択していただく選挙だと私は理解しております。是非国民のみなさんには直接投票権がないまでも、それぞれ地域に民主党の党員、サポーター、国会議員、地方議員がおられますので、みなさんの意見をそうしたみなさんに伝えて、国民のみなさんの声が新しい総理大臣をお選びしていただきたい。私もそれに向けて頑張りたいと思っております。どうか宜しくお願い申し上げます」
菅候補、9月2日討論会――
菅候補「菅直人でございます。総理大臣に就任して3カ月を達しようとしております。こういう経済の厳しい中でございますので、この代表選挙の間も、総理大臣としての仕事は一切手を抜かないで、併せて選挙戦を戦いたいと思っております。
今日は午前中にも規制改革について、これはまさに政治主導でやらなければならない分野でありますが、副大臣会議の中で、大胆にやってくれとの指示をいたしておりまして、私は大きな点で二つの変革を行わなければならないと思っております。
一つは行政、役所の文化であります。つまりは今までお役人はお役所のためには働くけれども、国民のためにちゃんと働いていない。私が取り組んだ薬害エイズでも患者さんや国民よりも、自分の天下り先のために行動したために大変被害が拡大した。それを根本から変えなければならないと思っております。
そしてもう一つはおカネにまみれた政治、政治文化を変えなければならない。この二つの文化を変えられえるかどうか、私はこの選挙を通して国民のみなさんに訴えていきたい。クリーンでオープンな政治を目指していきたいと思っております。
特に難しい時代であるからこそ、多くのみなさんが政治に参加をする。政党とは国民が政治に参加をする、いわば土俵だ、公共財だ、そういう意味で多くの皆さんの声を政党が受け止めて、政策に変えていく、全員参加の政治、熟議の民主主義が必要だと。そういった新しい政治文化を創って参りたいと思っております。
その上でやるべき政策課題、私は一に雇用、二に雇用、三に雇用と、このように申し上げております。雇用こそが今の経済の低迷、あるいは社会の不安感、ある意味では社会保障の問題点を変えていくキーになる、カギになると考えるからであります。
つまりは雇用というのは仕事ですから、仕事が増えれば経済が大きくなり、あるいは税収が増えていく。介護や医療、あるいは保育といった分野の雇用は社会保障の充実にもつながってくる。そして雇用こそが人間の尊厳、将来の不安に対して最も必要最小限の必要なものでありまして、そういう意味で不安の解消にもつながっていくると思います。そういった観点から、この日本を元気な日本に建て直し、そしてまさに『生活第一』の日本にしていくために頑張っていくところであります」
両者ともほぼ同じパターンの内容を両場面で繰返している。小沢候補者は、政権運営の最高責任者の総理大臣を選ぶ選挙だから出馬に思い悩んだが、今日の社会の停滞、経済の停滞等を見るにつけ、政治主導、国民主導の政治が必要と感じて立候補するに至ったをパターンとしている。
菅候補者の場合は、経済政策としては「一に雇用、二に雇用、三に雇用」、「仕事(=雇用)が増えれば経済が大きくなる」の、経済が拡大していく中で雇用が増大していく関係を逆転させた不可能の主張と、「政治とカネ」から決別したクリーンでオープンな政治を目指すを、さらに現職の総理大臣であることを有効活用して、結果を見ないうちから自画自賛の成果とする活動報告をパターンとして両場面共に訴えている。
「私の初出馬は1976年、ロッキード事件と言われたあの選挙でありまして、もう政治におカネのことがまつわるような古い政治からは是非脱却しなければならない」の共同記者会見での訴えにしても、「おカネにまみれた政治、政治文化を変えなければならない」の討論会での訴えにしても、小沢候補の「政治とカネ」の問題を狙い撃ちした間接攻撃、簡単に言うと、当てつけ、ボクシングで言えば、後からじわじわと効いて、最終的には相当なダメージとなるブロー攻撃の類と言える攻撃に当たる。
相手のこのような攻撃に対して小沢候補が出馬に思い悩んだが日本を建て直すべく立候補に踏み切ったのパターンでは正直過ぎる。菅候補の「政治とカネ」を狙い撃ちする間接攻撃にしても、視察や閣僚への指示を例示して自らの成果とする自画自賛にしても、すべて無効とする攻撃方法を以って対抗することが必要ではないだろうか。
例えば、「菅内閣は発足から3カ月しか経過していないものの、国民世論の続投支持は70%近く、あるいは70%を超える調査もあるが、内閣支持率自体は私に対するアレルギーの反動として不支持率を上回って上昇傾向にあるものの、最大の支持理由が、『首相が短期間に代わるのは良くない』といった消極的理由一辺倒からで、政策や指導力に対する期待が一ケタ台の後半に過ぎない。逆に不支持の理由が政策や指導力に期待できないという理由が相当部分を占めている。このような支持理由・不支持理由から見て取ることができることは、菅首相には指導力、政策をキーワードとした場合、そのキーワードに関しての政治的資質は何ら備えていないと国民は判断していると言うことである。
いくら国民世論が次の首相は誰がふさわしいかで圧倒的支持を与えているとしても、その理由の『首相が短期間に代わるのは良くない』が首相自身の政治的資質の評価となるならまだしも、指導力がない、政策に期待が持てないと国民がその資質を判断している総理大臣をこのまま続投させることは日本経済の建て直しに期待が持てないばかりではなく、日本の政治に今以上のダメージを与える最悪の結果を招きかねず、国際社会に対しても日本の政治の評判を落とす悪材料を提供することになり、見て見ぬ振りをすることができず、敢えて自らの実行力、リーダーシップを以って日本の政治を建て直し、併せて日本の経済の立て直しを図るべく立候補を思い立った」と菅候補に対してもっと攻撃的な姿勢を見せるべきではないだろうか。
この攻撃は菅候補の政治的資質がゼロだと訴えることだから、視察や閣僚への指示を例示して自らの成果とする自画自賛をも無効とするばかりか、菅首相が口にする「政治主導」も、その他の発言すべてを無効とすることが可能となる。