昨9月1日の民主党代表選菅、小沢共同記者会見。普天間問題に限って《プレスクラブ - ビデオニュース・ドットコム インターネット放送局》の動画から取り上げることにした。
記者「朝日新聞の倉前(蔵前?)と言います。普天間問題についてお伺いします。小沢さん、今回、政権の中で沖縄もアメリカも納得できる解決のために改めて話し合うとされていますが、この1年間の普天間問題をどのように見てきたかということと、辺野古に移設する日米合意を一旦白紙にするお考えがあるのかということを願いいたします。
菅さんにはですね、日米合意を踏まえ、沖縄の負担の軽減に努力するとしていますが、沖縄の反対が強い中、具体的にどのように進めていくのかということをお願いします」
小沢「過去のことをどうのこうのということを言っても仕方のないことだと思っております。私自身は普天間・辺野古の問題につきましては、政策メモにも載せております。けれども、沖縄もアメリカ政府も、両者共、納得できる案をつくる知恵を出せば必ずできるというふうに私は確信しております。今、それをするためには、今後、沖縄県民のみなさん、それから外交関係として、アメリカ政府と話をしなければなりませんので、今、自分の頭にあることをこういう席で申し上げるわけにはいきませんけれども、十分両者と話し合いをして、解決を見い出すことができると。今のままではいくらやろうとしても沖縄県民がみんな反対する以上はできないわけでありますので、そういう意味で、沖縄の県民のみなさんも納得できる、アメリカ政府も納得できる、そういう案を見い出さなければならないし、私は必ずできると、そう思っております」
菅「この普天間を巡る経緯、昨年の9月、鳩山政権が誕生して6月に至るまで、まあ、ある意味で最大のテーマであったわけであります。当時私はどちらかと言えば、内政に、内政と言っても、財政とか雇用の方をやっておりましたので、直接には携わっておりませんけれども、非常に苦労され、苦労された中で、最終的には5月の28日の日米合意ということに鳩山政権でなり、私もそれにサインをいたしました。当時の幹事長は小沢先生、小沢幹事長でありました。
私は今、話を聞いてですね、勿論沖縄のみなさんに納得され、アメリカに、アメリカ政府も納得するあり方が最も望ましいことは当然のことであります。それを目指して鳩山前総理が苦労に苦労を重ねられた中で、5月28日の一つは日米合意を苦渋の選択であったと思いますけども、なされたわけであります。
私はそれを引き継ぐに当たりまして、この間のこの問題に関連した、色々な国内ばかりではなくて、日米合意を含めたある種の混乱なり、場合によっては不信感というものを考えたときにある意味で職を賭してですね、この日米合意をなされて、逆に言えば、その責任を取って辞職をされるという形でありましたので、先ずその鳩山前総理のそうした苦渋の選択の日米合意から、やはりスタートしなければ、これ以上ですね、方向性の定まらない状況を継続することは、やはりいろんな意味での悪影響が国内にも国際関係にも出ると、このように考えたわけでございます。
そういった意味で私は総理に就任したときから、日米合意を踏まえると、しかし、同時に沖縄の負担を軽減するために全力を尽くしていくと、このことも併せて申し上げ、私なりにですね、色々な努力を現在行っております。そういった意味で、勿論沖縄のみなさんが日米合意そのものに対してかなり厳しい見方をされていることは承知をし、それだけにこれからの誠意ある対応が益々必要だと思っておりますけれども、それをもう一回ですね、白紙に戻した中で議論をスタートするということになりますと、この約1年近く続いたこの問題の混迷を改めて招くことになるのではないのか。
この11月にはAPECがあって、オバマ大統領が来日される予定になっておりますけれども、そういった、私は日米合意というものを踏まえながら、もっと幅広いですね、世界の平和という視点でどう日米が協力できるか、そういう大きな次元での日米同盟の進化というものを目指しているところでありまして、そういった意味ではですね、これを白紙に戻して議論するということは、幹事長という立場ではありますけれども鳩山政権下で合意されたことについてですね、やはり責任を持った態度で臨んでいただきたい。
それが国益にも適うこと、そして国民の利益にも適うこと、私はそのように確信しております」
小沢「ちょっとすみません(と手を挙げる)。(笑いながら)誤解されるといけませんが、私は白紙に戻すというようなことを言っているわけではありません。そこは是非誤解ないようにしていただきたいと思います。
また幹事長時代と言うことを強調されておりますが、あの時はきちんと政府の政策決定と党のことは分けておりまして、私は政府の政策決定に全く関与しておりません」
――(以上)――
小沢前幹事長の「沖縄もアメリカ政府も、両者共、納得できる案」がどのような案か明かしていないが、沖縄県民が納得していない案である辺野古案でないことだけは確かである。
菅首相の日米合意経過論は盗人猛々しい詭弁としか言いようがない。
先ず第一に、「当時私はどちらかと言えば、内政に、内政と言っても、財政とか雇用の方をやっておりました」とさも沖縄の基地問題に一切関わっていないかのように言っているが、政策上は関係ない場所に立っていたとしても、副総理として鳩山首相に準じた地位で内閣全般の運営に責任を負っていたはずである。責任を負っていなかったとしたら、何のための副総理だったのだろうか。
沖縄の基地問題が鳩山首相内閣自体の主要な命取りとなった。当然、副総理としても運営自体の責任を負っていたはずであるが、蛙のツラにショウベンで何ら責任を感じていないらしい。
しかもわざわざ内政問題専門だと言って基地移設問題に関係ないようなことを言うのは、自身の主張としてかつて国外・県外を主張していたことからしても、二重・三重の意味で責任感のない首相だと言わざるを得ない。
第二に日米合意を錦の御旗としているが、鳩山内閣は当初約束していた日米合意と沖縄地元合意、三党連立合意の併行した三者合意を裏切って日米合意のみを以って辺野古への移設を決定、その決定を全てだとする、その不完全な決定内容と矛盾した決定経緯を無視している。
いわば沖縄に約束したあるいは連立政党に約束した手続きを踏まずに結論づけた日米合意を振り回しているに過ぎない。不完全さや矛盾を無視して、「鳩山政権下で合意されたことについてですね、やはり責任を持った態度で臨んでいただきたい」との口実で、日米合意の網を沖縄県民にまでかぶせようとしている。
最後に、「勿論沖縄のみなさんに納得され、アメリカに、アメリカ政府も納得するあり方が最も望ましいことは当然のことであります」と言いながら、「鳩山前総理が苦労に苦労を重ねられた」「苦渋の選択」を沖縄県民の意思、「選択」よりも優先させて、そのことの方を大事だとして、それを絶対前提に辺野古移設で完結させようとしている。
だから、「鳩山前総理のそうした苦渋の選択の日米合意から、やはりスタートしなければ」ならないといったことが言える。沖縄県民の「苦渋」は一切頭にない。
これは沖縄県民の気持などどうでもいいということであろう。
このことは「11月にはAPECがあって、オバマ大統領が来日される予定になっております」の発言にも現れている。沖縄県民の意思よりも「APEC」や「オバマ大統領の来日」の方が大切だと言っている。このような態度を、市民運動家出身だと言っているが、国家主義の態度と言うはずだ。
こういった国家優先を取り繕うために、「もっと幅広いですね、世界の平和という視点でどう日米が協力できるか、そういう大きな次元での日米同盟の進化というものを目指しているところでありまして」とさも立派なことを言っているが、単なる口実に過ぎないのは沖縄県民の意思を蔑ろにする国家主義の態度そのものが証明している。
また、小沢前幹事長が言う「沖縄もアメリカ政府も、両者共、納得できる案」にしても、世界平和の視点や日米同盟の進化の視点を欠いた提案ではあるまい。これらの視点を欠いていたなら、アメリカ政府自体が賛成はしないはずだからだ。
当然、「沖縄もアメリカ政府も、両者共、納得できる案」で、尚且つ世界平和と日米同盟に貢献できる案という可能性は否定できない。
このことに気づかずに自分ひとりの専売特許のように世界平和を持ち出したのは合理的判断能力を欠いていると言うだけではなく、国家主義の態度を隠す必要からの口実に過ぎないからだろう。
また、沖縄県民の大方の反対を押し切った日米合意を以っての決着を、「国益にも適うこと、そして国民の利益にも適うこと、私はそのように確信しております」と言うことができることも、沖縄県民の気持を一切考えていないからだろうが、「沖縄もアメリカ政府も、両者共、納得できる案」が実現可能性ある案なら、現行の日米合意以上に、「国益にも適うこと、そして国民の利益にも適うこと、私はそのように確信しております」と言うことができるはずである。
小沢案が例え、「この約1年近く続いたこの問題の混迷を改めて招くことにな」ったとしても、沖縄県民とアメリカが納得する案であるなら、それに越したことはないはずだ。
菅首相は確かに口達者で、長々と喋るが、言っていることの矛盾、責任感の欠如、合理的判断の不在は如何ともし難い。