出勤の地下鉄はもとより、帰りの地下鉄の中も、ほぼ同じような顔ぶれと一緒になる。同じような時間に乗るからだけれど、赤の他人でありながら何故か親近感が湧いてくる。
こんな思いで一番の思い出は、もう20年以上前に市バスで出勤していた時の事だ。
真新しい制服に身を包んだ女子高生といつも一緒だった。初めはお父さんと一緒に登校していたが、そのうち一人になった。登校に慣れたのか、「お父さんと一緒はいや」だったのか。
見ている間に彼女は大学生になった。今度は私服に身を包み、少し化粧もし出した。かわいい女性の誕生だ。
大学生になって1年ほどした時に、僕の方が転勤で3年間市バスを乗らなくなった。
3年後に市バスに乗ると、彼女は会社勤めをしていた。もう立派なキャリアウーマンになっていた。そして驚いたのはお父さんと一緒に出勤している。会話しながら仲良く楽しそうだ。
同じ所に勤めたのかは分からないが・・・
それもしばらくでお父さんはおられなくなった。おそらくは定年退職されたのだろう。そんな年齢であった。
そして、さらに数年が経って、彼女もバスに乗らなくなった。転勤になったのか。
何故か結婚したように思った。
それから数年後、街中で偶然、彼女を見かけた。かわいい子供と一緒だった。
全く赤の他人の女性を、10年以上観察するなどはスト―カーみたいだが・・・・
僕も誰かに長く見られていたのだろうか。少し期待もするけれど、「あのおっさん、長い間見ているけれど、最低や」と思われるのもねえ・・・・・