もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

入管法改正案の見送りに思う

2021年05月24日 | 社会・政治問題

 政府が入管法改正案の今国会成立を断念し、次期国会での成立を目指すことにした。

 ある人は「入管法」と呼び、ある人は「難民法」と呼ぶが、正式には「出入国管理及び難民認定法」であるらしい。
 政府が目指す主要改正点は、送還忌避者への対応と収容期間の短縮とされ、その2点を改善するために「難民申請回数を実質2回に制限」と「送還忌避者に対する罰則の強化」であると理解している。
 確かに日本の難民認定率は先進国では最低水準とされており、2018年統計ではアメリカ30%、ドイツ26%に比べ日本は0.4%となっている。また現在日本の不法滞在者は約8万人と推定されているが、難民申請中は強制送還されないことから、その大多数者が複数回の難民申請を繰り返し、強制送還拒否者のうち310人が懲役3年以上の罪を犯して収監中であるとされている。出入国在留管理庁では、日本の難民認定率が低い理由として、難民申請理由が物的根拠を伴わない本人の言い分だけであることや、出身国への照会にも回答がないことを挙げている。
 政府の改正案や反対意見の双方に頷ける要素があるが、日本の労働力不足、なにより日本人が就労をためらう一次産業や単純労働の労働力解消としての外国人労働者の必要性を考えれば、前向きな受入れと厳正な入国・在留管理は車の両輪と考えてバランスを図る必要があるように考えるものの、自分の乏しい脳みそでは入管法改正の賛否何れが是か決めかねる問題である。
 一方、欧米諸国で移民(難民)の受け入れを制限する国が相次いでいることも考慮すべきではないだろうか。ドイツの一地域では住民の殆どがイスラムに置き換わった結果、地域のキリスト教文化は荒廃するとともに原理主義の拠点と化したケースもある。日本でも既に○○タウンと称される人種コミュニティによって出身国の風習に色濃く染められて地域の文化・伝統と軋轢を生じていることも報じられている。異郷の地で生きていくためには、言語・習慣を共にする人が助け合って・群れて生活することは当然であろうが、受け入れ国は彼等が完全に自国民に同化することは無理としても、出自の特色を薄める若しくは同化の努力をすることは期待しているだろう。しかしながら移民(難民)にとっては風習・習慣を棄てることは民族のアイデンティティを棄てるとの意識が強く働く結果として、各所に小さな人種対立・人種差が生じているように感じられる。

 名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人女性が死亡した。医療過誤が原因であろうとは衆目の一致するところであるが、メディアや野党は「長期収容の悪例」として攻撃し、このことが入管法改正案の提出延期の大きな原因ともなったと思える。確かに痛ましい事案ではあるが、彼女は何故に不法滞在に至ったかについては不明である。死亡後には遺族が日本に駆けつけることができたこと等を観る限り、彼女や一家が難民に該当する境遇ではないように思えるので、彼女に同情することや収容施設での待遇改善は必要であろうものの、単なるウエットを棄てて、不法滞在者が後を絶たない現状や難民申請の現状を明らかにすることも重要であるように感じる。


駆逐艦「菊月」、菊月会、護衛艦きくづき

2021年05月23日 | 自衛隊

 帝国海軍の1等駆逐艦「菊月」と「菊月会」について報じられた。

 「菊月」は、横須賀港に保存・係留されている記念艦「三笠」と並んで目にすることができる帝国海軍艦艇として有名であるが、残念なことには海に浮かぶ雄姿ではなく、ガダルカナル諸島のガブツ島近海に着底し僅かに上部構造物が露出した状態である。
 菊月の艦名は3代にわたって継承されている。
 初代菊月は1907(明治40)年に就役、1930(昭和5)年に除籍した神風型駆逐艦(2代菊月就役後に艦名を譲り第12号掃海艇)で、主要要目は
  排水量/450t、全長/69.2m、全幅/6.6m、主機/レシプロ機関6,000hp、速力/29kt
 2代菊月は、一等駆逐艦睦月型の9番艦で1926(大正15)年11月に「第31号駆逐艦」として就役、1928(昭和3)年8月1日附で「菊月」と改名された。主要要目は
  排水量/1,445t、全長/103m、全幅/9.2m、主機/艦本式タービン38,500Ps、速力/37.25kt
  2代菊月は、開戦劈頭のグアム島攻略作戦に参加の後、1942(昭和17)年4月30日、ツラギ攻略部隊の一艦としてツラギ泊地で旗艦「沖島」に横付けして燃料搭載中に空襲を受け、魚雷1本が「菊月」機関室右舷に命中、12名戦死・22名負傷の被害を受けた。菊月は特設駆潜艇(通称:駆特)「第三利丸」に曳航されてガブツ島の海岸に擱座したとされている。
 3代「きくづき」は1968(昭和43)年3月27日に「たかつき型」2番艦として就役、2003(平成15)年11月除籍、海上自衛隊で初めてのFRAM(艦艇近代化工事)を受けたために除籍時の艦齢は当時では稀有の35年であった。主要要目は
 基準排水量/3,250t(FRAM改装後)、全長/135.5m、最大幅/13.4m、主機/三菱EW型衝動式蒸気タービン60,000PS、最大速力31kt(FRAM改装後)である。
同艦は3度の遠洋航海(うち2回は世界一周)、派米訓練等に従事し、総航海時数は67,678時間、総航程は79万1,213.4浬(地球36.5周)に達したとされていた。

 私事で恐縮であるが、入隊後8年間は1940年代に建造された米軍貸与のフリゲート艦とフレッチャー型駆逐艦に乗艦していたために、最新鋭国産艦「きくづき」への転属・・乗艦は30年間の技術進歩を一足飛びに体感した出来事であった。夏季には室温が50℃を超えることもある艦から全艦冷暖房艦への転属は、将に別世界への移住であった。
 「菊月」を語り継ぐために「菊月会」が結成され、2017年から第四砲身の揚収や修復整備を行い、2020年6月27日に第四砲身は舞鶴市の大森神社に奉納されたことを知った。
 菊月乗員の奮闘と菊月会の活動に敬意を表するとともに、自分に浦島太郎の高揚感を与えてくれた「きくづき」に感謝の念を込めて。合掌。

2代「菊月」

3代「きくづき」

 


ダイアナ妃と朝毎報道

2021年05月22日 | 報道

 1995年にBBCが放映したダイアナ妃のインタビューにおける不正取材の顛末が報じられた。

 放映された内容は隠された真実であったが、取材交渉の過程でBBC記者が偽造した銀行明細書によってダイアナ妃周辺を信用させたものである。当初BBCは内部調査によって不正は無かったとしていたが、昨年になって篭絡されたダイアナ妃の弟(スペンサー伯爵)からの告発を受けて「真の第三者」による調査で取材交渉は不正と結論され、BBCは「全面的に、無条件で謝罪する」事態となった。
 秘密警察や密告制度で「有無を言わさず」「罪状の開示もしない」強権国家を除いて、日本を含む民主国家では不正な手段で採取された証拠や脅迫による証言は法廷に於いて効力を持たないとされていることを考えれば、BBCの報道は法的には真実であってもフェイクと扱われるのかも知れない。
 今回の一連を考えると、取材手段についての正邪判断基準が「BBCの内部調査」と「真の第三者調査」で異なることが重要であると思う。閑話休題。
 取材手段に対する報道機関と良識の乖離について些かの小物感は拭えないが、自衛隊の大規模接種予約が偽の接種番号でも可能であることを、朝・毎新聞社が実証的に行ったことに対して防衛大臣が不快感を表明したことにも見て取れる。
 自衛隊が行う大規模接種予約システムについては、当初から自治体の住民管理システムとリンクされていないために偽番号が通用することは予め指摘されていたもので、実証しなくても周辺取材で明らかにできるものであった。自衛隊予約システムが自治体とリンクしていないことについては、システム構築の技術的・時間的な制約よりも「一時的であっても自衛隊が個人情報にアクセス(共有)することに対する朝野の反対・忌避感の回避を優先」した結果であると思う。もし、自衛隊と自治体がリンクしたシステムを構築した場合の反応は「マイナンバーを徴兵法と呼んだ勢力がいた」ことを思えば、現状の比ではないだろう。それとも、時代の進展とコロナ対応の前には「徴兵法の急先鋒」であった朝・毎新聞社はマイ・ナンバー制度に対する姿勢を転換させたのだろうか。さらには、立民の安住淳国対委員長は「防衛相もシステムの不備を明らかにしてもらったと感謝すべき」と新聞社の違法取材(威力業務妨害罪)を擁護しているが《全ての反日行動は手段を問わずに許される》とする韓国世情を彷彿されるもので、法治国選良としての品性を著しく欠くものと思える。

 ダイアナ妃の取材に不正があったと結論した「真の第三者」と完全謝罪した「BBCトップ」についても英断を評価するものである。日本では、朝日新聞の慰安婦報道や日大ラグビー部問題を始めとする第三者委員会、自治体の100条委員会ではトップに弁護士を置くことが一般的であるが、選任された弁護士の多くが調査される側と何らかの利害を共有するとの疑惑が取り沙汰されることも一般的である。そのためもあってか、疑惑の解明や是正も徹底を欠き、朝日新聞は以前のままに「教科書検定での連行・強制」を主張し続け、日大ラグビー部監督は何食わぬ体で復権している。
 朝・毎新聞は、今回のダイアナ妃に関する一連をどのように報じたのであろうか。よもや「編集の自由」や「報道しない自由」で没にしているとは思いたくないが。


ミャンマー外交官の悲劇と鳩山由紀夫氏

2021年05月20日 | 野党

 ミャンマー外交官の相次ぐ悲劇が報じられている。

 先には、国軍の政権掌握(注)を非難した国連大使や駐英大使が解任され、本日の報道では同様の理由で駐日大使館の1・2等書記官が解任(解雇)・パスポート無効とされて大使館に戻れずに立ち往生しているらしい。現在1・2等書記官は、日本の外務省が発行した「外交官身分証明書(7月まで有効)」で滞在しているが、両人は「引き続き外交官として扱われること」を求めており、政府も「ミャンマー情勢を見守って判断する」としているものの、難しい選択を迫られるように思える。
 素人考えでは、本国が外交官としての資格を剥奪した場合は、駐在国も彼等に与えた外交官特権を解消して本国に送還することになるのだろうが、国が自国民と証明・保証するパスポートを無効とした状態では送還すべき本国が無いことになり、不法滞在する無国籍者となってしまうのだろうと思っている。
 諸般の事情を考慮すれば両名は明らかな難民に該当するので、最後には政府が難民認定して日本に留まるか、両名の希望する国に受け入れて貰うことになるのだろうと思うが、一夜にして外交官特権はおろか国籍まで剥奪された両書記官の心中と今後には深く同情するところである。ほぼ難民認定しないことで名を馳せている日本であっても、今回は二の足を踏むべきではないと考える。

 IS妻の国籍剥奪(2019.02.22)で、日本にはパスポートを失効(返納命令)させて他国への入国を阻止・日本に強制送還させる手続きはあるものの、出国している日本人のパスポートを無効にすることで国籍を剥奪する制度は無いことを学んだ。そのため、テルアビブ空港銃乱射事件の岡本公三氏も刑期満了後には国籍国である日本に帰国し、よど号ハイジャック犯の子弟も日本国籍者として受け入れられている。
 また、旅券返納命令は旅券所有者の生命保護を重視してなされるので、国事犯について出されることないようである。
 鳩山由紀夫元総理は、韓国で土下座し、日本が参加出資を拒否しているAIIBの要職に就任し、政府や立憲民主党の制止を振り切ってウクライナ訪問を強行ロシアのクリミヤ併合を是認と、国辱の限りを尽くしているが、上記の理由から旅券返納命令は出されていない。諸外国であれば、鳩山氏のようなケースではパスポートの発給停止や出国禁止も当然で、国情によっては国籍も失いかねないのではないだろうか。旅券法では返納命令の事由として「外務大臣において、著しく、かつ、直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合」を挙げているが、日本の温情過ぎる法運用によって度重なる国辱行脚が許されている。

(注) 憲法規定に基づく政権移管であり、通常使用されている「クーデター」ではないと考えることによる。


脱中偽装者の台湾上陸

2021年05月19日 | 中国

 中国人の秘密裏の台湾上陸が報じられた。

 台湾への偽装上陸は2件と報じられているが、いずれもネットで購入したと云う新品のゴムボートが使用されていること、航海に必要な水や食料を所持していないこと、発航地などの供述にあいまいな点が多いこと、何よりも、中国が脱出等に対して厳しい監視体制を敷いていることから、自発的な脱中ではなく中国当局が密航を偽装して台湾側の監視体制を探る意図のもとに行われたものと見られている。
 これまでも、祖国の急激な体制変革に不満を持つ守旧人や新体制の圧迫・戦禍を逃れるため等の理由から海路脱出する事例があった。
 古くはキューバ革命や南ベトナムの崩壊で、近年ではチュニジアやリビアから、いずれも装備が十分でない船に大勢の人が乗るもので、所謂ボートピープルと称されていた。また、ボートピープルの大半は本国の黙認(奨励)の下に行われるのが一般的で、国は海上監視を緩める期間を公表したり、中には海軍艦艇が難民船を沖合まで曳航して放逐したケースもある。
 今回の台湾上陸に使用されたボートは、台湾近海まで大型船で運ばれた可能性が指摘されているので、台湾の海軍・公安関係者にとっては新たな監視対象や監視要領を余儀なくされることになる。
 日本でも日本海側に漂着する木造漁船の一部は北朝鮮の工作船とされており、船内で発見される遺体が少ないことから工作員自体は日本潜入に成功したともされていることを考えれば、台湾が今回の密航偽装事案を日本以上に警戒するのは当然であろう。さらに、日本に潜入した北工作員には朝鮮総連や在日の支援があるとされるが、台湾に潜入する中国工作員には本省人のネットワークや国民党中国統一派による日本以上に強力な支援が予想されることから、台湾政府内には今回の偽装上陸を台湾着上陸の前哨戦と捉える向きもあるとも伝えられている。

 自国の主張に沿って既成事実を積み上げるというのは中国の常套手段であり、尖閣に対しても①何らかの手段で中国人を上陸させる。→➁中国人の救助・保護として海警部員が上陸。→③海警部の活動のためにヘリポートや桟橋を仮設。→④仮設物を補強して恒常施設に強化。などは既に中国のシナリオ・作戦計画として習近平主席の机上に乗っているものと思える。
 日本は、環境省の衛星画像による動植物の生態調査や沖合からの視認調査で、実効支配のお茶を濁しているが一日も早く、上陸調査するとともに観測拠点の仮小屋程度は設置して真の実効支配を形で示す時期にあるように思える。イイスラエル・ハマス・イランはバイデン大統領に中東政策の踏み絵を迫っているが、日米同盟の本気度を示す意味からも尖閣諸島問題に攻勢を仕掛ける絶好の時期ではないだろうか。