もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

タイタン事故に思う

2023年06月25日 | 軍事

 タイタニック見物ツアー潜水艇の事故が報じられた。

 ツアーは、米国の旅行会社「オーシャンゲート・エクスペディションズ」が保有する潜水艇「タイタン」で行うもので、費用は3,500万円とされている。
 事故は、タイタンの潜航直後に通信が途絶したものの「潜水艇内からの打撃音がする」との情報もあって各国は共同して捜索・救助活動をしていたが、結果的には、フランスの潜水調査船がタイタンの残骸を発見したことで、「潜水艇の圧壊によって乗員・乗客5人の死亡確認」という結末を迎えた。
 現在、潜水艇圧壊の原因は断定されないながら、「繰り返し応力による耐圧殻の金属疲労」が有力と推測されている。

 我々世代は、幼児期には「島国日本。海洋国家日本」、長じては「技術立国NIPPONN」と教えられてきたが、今回の事故報道などを観ると、それらは神話と化しているように思える。
 報道では、「タイタンは爆縮」と報じられたが、「爆縮」は密閉容器内で火薬等を爆発させて爆発力で容器内の圧力を高めることを言い、今回のように外部の圧力で容器(耐圧殻)がつぶされる現象は「圧壊」とされるべきと思う。秘密保持のために隊員と雖も潜水艦の詳細について教育されないために自分の潜水艦に関する知識は一般人と同程度であるので、潜水艦部隊ではこのような現象を何と呼ぶのかは知らないが、圧壊を爆縮とするのは、工学・海洋・海事知識の不足であるように思う。
 かの前川喜平氏が「タイタンの救援に日本も「しんかい調査船」を派遣しては」とツイートされたらしいが、事務次官まで勤められた前川氏ですら、大西洋カナダ沖と日本の位置関係、母船搭載「しんかい」の航海費消時など、海上輸送のイロハすら理解されていないもののようである。

 タイタンの残骸発見後、米海軍は「タイタンとの通信が途絶したとされた時刻に、付近海域で潜水艦(潜水艇)の圧壊音を聴知し、直ちに米・加の捜索・救援部隊と共有された」と明らかにしている。
おそらく、米海軍が世界中に敷設している「音響監視システムSOSUS(Sound Surveillance System)で聴知したものであろうが、このことについても、広報と秘密保全に関して学ぶべき点があるように思える。
 もし、この情報が日本に伝えられたら、どこからともなく漏れるであろうし、その場合には捜索・救難部隊の行動・意欲に微妙に影響した可能性がある。また、「そのような重大な情報を公にしなかったのは国民の知る権利を損なう」との論調が沸き起こるであろうが、情報管理と秘密保全の鉄則は「必要な部署には遅滞なく配布するが、不必要なところには配布しない」で、報道機関と国民は「不必要なところ」に該当するということを学ばなければならないのではないだろうか。


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