もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

シェルター-2

2020年08月22日 | 防衛

 昨日の核シェルターに引き続き、軍事施設の防護についての考察である。

 全ての国で軍事施設の防護は機密扱いであり、外国人の立ち入りを制限している国も多く、外国人に開放された地域でも写真撮影が禁じられている場合が多い。中国で拘束される刑事犯以外の多くがスパイ容疑とされるのは、写真撮影に起因すると観ている。軍事施設の防護については、経空脅威(航空機やミサイル等に依る空からの攻撃を指す)に対する防護が主で、主として司令部機能を防護する目的で大東亜戦争で地下に構築された沖縄・硫黄島の地下司令部や松本大本営、冷戦時代のNORAD(旧北米戦略空軍司令部)の地下司令部が挙げられる。正面兵器を直接防護するものとしてはナチス・ドイツ軍のUボート・ブンカー、震洋特攻の洞穴基地が有名であるが航空基地に設けられた飛行機の掩体壕なども含まれるかもしれない。また、大東亜戦争では戦略物資を防護するために燃料タンクや弾薬庫の大部分を地下に整備した。かっては軍事目標を目視で確認して攻撃するということが一般的であったために、戦略物資を含む軍事施設や兵器さえ防護できれば反撃・報復等の継戦能力を維持できると考えての防護であったが、現在では長射程の撃っ放し兵器やテロによる無差別攻撃から軍民ともに防護する必要に迫られたために、攻撃の早期探知やミサイル防衛に注力することにシフトチェンジされ、政府機能や軍事施設を重点的に守る拠点防護の考えは希薄になったように思う。戦前の施設を使用している場合は別にして、新たに整備される物資保管施設は初期費用や爾後のメンテナンスを考えて、燃料は裸状態の地上自立式で・弾薬は地上覆土式の簡易防護で整備されることが多い。20年前の米海軍基地での経験であるが、大戦前に建設された燃料施設でタンク上部の覆土は目視で6~8mもあり、5基のタンク中2基が放棄されて別の場所に建設すると話していたことを思い出す。横須賀にあるアメリカ第7艦隊の陸上司令部が地下にあることは知られているが、自衛隊の司令部はどうなっているのだろうか。まさか、所在が公表されている建物の中に無防備で置かれているとは思いたくないが。さらには政府の危機管理センターは首相官邸内の地下1階に置かれおり、経空脅威はおろか中程度のテロ活動にすら脆弱過ぎるように思えるが、一国の指導者も我々国民と同程度の防護で苦難を共にしようという姿勢を示したものであろうか(笑)。

 昨日、北京近郊にあるとされる大規模地下壕の噂を書いたが、現在は休止保管状態に置かれているアメリカのシャイアン・マウンテン空軍基地整備の経緯と規模を併せ考えると、中国がソ連に代わってアメリカと対峙して勝利しようとする世界制覇の戦略が窺い知れるようである。シャイアン・マウンテン基地は、対ソ核戦争において報復攻撃能力を維持するために花崗岩の山体中に作られた地下施設で、数Mt級の核爆発が数キロ以内で発生しても耐えられ、戦略ミサイルでの反撃を指揮するとともに、核シェルターとしてVIPが生き延びるための食堂、医療施設、運動施設、売店まで整備されていた。しかしながら、2006年に対テロ戦争の時代には非効率と判断されて主要機能は移転し、施設は短時間で稼動状態に復帰できるように維持されている。このことから中国(共産党)が大規模地下壕を築いた真意は、アメリカとの全面対決すら辞さない、最終戦争にすら共産党が勝利するという決意を示していると考えるのは穿ち過ぎだろうか。


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