防災ブログ Let's Design with Nature

北風より太陽 ソフトなブログを目指します。

明和の大津波

2008年04月15日 | 各地でのTOPICS
私用で石垣島に行ってきました。初夏の新緑と亜熱帯を思わせるハイビスカスのハーモニーに見とれていたら、不覚にも日焼けしてしまいました。

さて、美しいこの石垣島にも、実は大変な災害の歴史がありました。1771年明和の大津波です。
http://www.okinawa-jma.go.jp/ishigaki/school/200406/meiwa.htm

石垣島には空港やリゾートホテルの集中する南部に、人口の8割が集中しているそうです。観光資源、そして環境資源でもあるさんご礁や琉球石灰岩からなる鍾乳洞など、地殻変動を抜きにしては語れないわけです。個人的には、もう少し過去の悲劇を伝えることをしないと、2004年インドネシア津波災害が繰り返されないとは言い切れません。

「日本沈没」と「死都日本」

2008年04月13日 | 雑感

草 剛と柴崎コウの『日本沈没』の再放送を見ました。
地学に関わる仕事をしている人はどんな感想をもったでしょうか。
無邪気といえば、無邪気、、

地学がこれほど廃れている現在、こんな荒唐無稽に疑問の声が
あがらないというのは、、、まあ、どうでもええけどな

っとを

ここで、とてもレベルの高いクライシスノベルを紹介します。

画像でたどる死都日本
http://www.kazan-net.jp/shitoWWW/index.html

原本はとても分厚い本で挿絵もないので、読むのがしんどいので、
上記サイトを紹介しておきます。

なにしろ火山活動の描写が火山学に基づいた緻密でリアル。
実は地球上にはいくつか破局的噴火を経験した火山がいくつもあります。
日本では、九州に鬼界カルデラ、姶良カルデラ、阿蘇カルデラという、
九州から東北・北海道まで火山灰で覆い尽くすような噴火を経験した
火山があります。電子機器にも大敵ですね。
これを映画化したらいいのに。

ただ、阿蘇カルデラ最大の9万年前の噴火は、日本沈没のCGにあった
ような規模と迫力だっただろうなと思ったのでした。

 


筑後平野-西鉄沿線の宅地開発

2008年04月12日 | 各地でのTOPICS
久しぶりに実家に帰ってきました。
これまで、田舎はかわらないなあと思っていたのですが、今度ばかりは突如として景観全体が変わったのに驚きました。建物をそのままコピーペーストしたような団地開発が不規則にばらついているのです。そのなかには、大雨が降ると良く浸水していた土地も少なくないのです。

古い昔ながらの家と、突如現れた無味乾燥な家並み。景観はごちゃ混ぜでなにか異様、新しい家は決してよい地盤に建っているとはいえない。なにか、法規制はないもんか。ちょっと調べて見ました。

宅地とは、農地・採草放牧地、森林、公共施設(道路・公園・河川等)以外のすべての土地、意外なことに建物の敷地である必要はなく、ゴルフ場や駐車場も宅地に含まれるんですね。

宅地造成規正法
宅地造成に伴い災害(がけ崩れ、または土砂の流出による災害)を生じる恐れの大きい市街地で、工事を行おうとする場合、着手前に造成者が都道府県知事の許可をうけなければならない。そしてその条件とは

・ 2m以上の超える高さの崖を生じる切土
・ 1mを超える高さのがけを生じる盛土
・ 切土と盛土あわせて2m以上の崖を生じる場合
・ 500m2を超える盛土または切土

これだけかあ。崖がなければいいの?
筑後平野は集中豪雨が多いので、冠水しやすい水田や川の跡、ため池などがあることは、子供のころから知っていました。

都市計画法12条 防災街区整備地区
 火事や地震が発生したときに、延焼防止や避難のための機能を確保し、また、土地の合理的かつ健全な利用を図るための地区計画で、「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」に詳細に定められている。

なるほど、密集市街地じゃなければ法がないわけね。
開発許可申請の面積に、3大都市圏(東京・大阪・名古屋)という別枠がありますが、福岡と札幌はもはや5大都市圏といえるほど肥大化しています。

床上浸水してしまえば、もうその家は資産価値が著しく下がるので、借金と泥にまみれます。台地の間を縫うような浅い谷にはため池を埋め立てて宅地化されたところもあります。
なんらかの、対策を義務付ける法整備が急務かもしれません。

防災と防犯の共通点と相違点

2008年04月11日 | 防災・環境のコンセプト

GooGleのサービスのひとつに、Googleアラートといって、個人のメールアドレスに指定したキーワードを含むニュースを送信するサービスがあります。私は、「地形」「地質」「災害」「宅地」「防災」と、5種類のキーワードを指定しています。そのなかで、よく気になるのは「防災」のカテゴリーとして送信されてくるニュースのなかに、よく「防犯」といった方がよいような内容が含まれています

学校の安全確保、法律に明記へ……災害・犯罪対策も
http://benesse.jp/blog/20080410/p1.html

防災と防犯、まず共通点をあげてみましょう。

○共通点

・当然、災難であること
・未然に防いだ方がよいため、事前対策が本質であること

ここまでは、当然ですよね。が、以外に意識されていないのが

・発生しやすい場所があること

 犯罪はこの場所で起こる(光文社新書)
 
http://d.hatena.ne.jp/dacs/20070105/1167924895
 犯罪の発生を後押しする要素論は大きく分けて二つある。犯罪原因論と犯罪環境論である。(略)犯罪環境論とは、犯罪が起きそうな場所、犯罪を誘発する外的要因、即ち環境に着目するアプローチを取る。例えば、悪いことをしても見つからない、捕まらない、入り込み易く逃げ易い環境が提供されれば、そのリスクの低さが犯罪への後押しになるという捉え方だ。

大事なことは、その場所を見極める”眼力”を養うために、現場を足繁く通うことが必須だということです。一見カッコいい、数値シミュレーションなど、不確実な仮定を何重にも掛け合わせただけなので、ほとんど役に立ちません。

○相違点 ‥過去を振り返る意義
 犯罪が起こるたびに、犯人の生い立ち、ゲームの影響、家庭環境など振り返られ「普通の子がねえ」ととてもテキトーに振り返えられるだけで、いつのまにか忘れてしまいます。先日の北風より太陽の話に通じるところがあります。そして、そんなことをいくら調べたって、その犯罪につながった理由が明らかになっていくとはかぎりません。
 これに対し、災害のおこりやすい場所には、地質学(土木地質、応用地質、環境地質)的背景という明確な理由があり、調べるほど原因が明らかになっていく性格を持っています。そして、その論理構成をそのまま地図化することによって、ビジュアルに説明することができるようになります。
 今日、御伽噺の舞台であった、月でさえ、その基本となる地形図が作成されようとしています。

探査衛星「かぐや」、月全体の地形図を詳しく
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080410AT1G0902709042008.html

 月はなかなか歩くというわけにはいきませんけどね。


バイオスフィア Biosphere

2008年04月10日 | 防災・環境のコンセプト

花冷えも終わり、春の嵐も過ぎ去り、いちばんすごしやすい季節になってきました。

今日は、バイオスフィア Biosphereについて話します。

バイオスフィア Biosphereとは、アメリカ合衆国アリゾナ州オラクルに建設された、巨大な密閉空間の中の人工生態系である。建設の目的は人類が宇宙空間に移住する場合、閉鎖された狭い生態系で果たして生存することが出来るのか検証すること、あわせて地球の環境問題について研究することを目的として、設立された機関です(ウィキペディアより)

先日、日本の自然はとても繊細であるという話をしましたが、大地や大気圏、湖沼、川や海、そしてこれらを生活の基盤とする生態系に、さまざまな物質が複雑に循環していることまで理解して、はじめて"環境問題を語る”ことが出来ます。

まるで手塚治虫の漫画のような話ですが、アメリカのように人工施設を造らなくても、湿潤変動帯に位置する日本では、”ナチュラル”バイオスフィア???とも言うべき場所が、まだあるのではないかと思っています。

これから私用で何日か沖縄にいますが、もしかしたらバイオスフィア Biosphereがあるかも知れません。


北風と太陽-知識の連呼は逆効果-

2008年04月09日 | 防災・環境のコンセプト

さらにブログタイトルの解説が続きます。

1995(平成7)年以降、2004年新潟県中越地震、2007年新潟県中越沖地震など、住宅やライフラインの被害がクローズアップされるようになりました。一方で、”防災対策”として、非常時の持ち出し物リストや震災時帰宅マップなど、”いのちに関わるどうしようもない災難”の部分での情報量は、ずいぶんと増えてきました。

でも、その情報量のわりには、災難・災害を未然に防ぐための”心の準備”はできているでしょうか。いたずらの流布される実態のない不安感にさいなまれていないでしょうか。

昨年私は3回目の自動車免許更新に行ってきました。不覚にも違反者だったので、初心者の方と同じ講習を受けてきました。そこで流されるビデオは、必ずといって良いほど死亡事故のドキュメンタリーです。実話に基づいているから、みな現実感を持って聞いてくれるだろう、、その思惑は講習会場の”いびき”でかき消されています。

知識を連呼する防災教育には、あまり意味はありません。受け取る側だって、そんなこと十分分かっているんですから。でも、知識を連呼しても効かないから、今度は脅し始める……そうしたやり方はあまり有効ではないと思います。

 つまり、みんな「逃げなくてはいけない」ということは分かっています。百も承知なのですが、避難するという意志決定ができないだけ。けっし
防災意識が低いから逃げないわけではなく、高くない、ということなのです。危機に備えないというのは人のさがです。そこをどうやって乗り越えていくか――津波がきたそのときに「ああ、やっぱり逃げてよかった」と思える、その一回をどう勝ち取るかが勝負です。これは結局、人間の心との戦いです。いくら専門家といっても、対象はITではなく「人」です。
合理的な行動を取れない人、人のさがというものを前提に、どうするかを考えていかなければならないと思います。

いくら警告してもセキュリティ対策が進まない理由
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0704/24/news005.html
群馬大学工学部教授の片田敏孝氏


手っ取り早く乱暴に物事を片付けてしまおうとするよりも、ゆっくり着実に行なう方が、最終的に大きな効果を得ることができる。また、冷たく厳しい態度で人を動かそうとしても、かえって人は頑なになる。

これを読んだとき、我が意を得たり!!と、ポンとひざをたたきました。まさに、北風より太陽なのです。お酒を一気に飲み干すより、ロックアイスが溶け出し、"いい感じ”になって語り明かすお酒が一番おいしいことと一緒です。

でも、これは実はとても難しいのです。一昨年なくなった詩人、茨城のり子さんでさえ、相手の悪口はいくらでも出てくるが、ほめ言葉はなかなか出てこないとおっしゃっていましたから。


Design with Nature その2 レイヤーケーク

2008年04月08日 | Design with Nature
Design with Nature を理解するうえで重要な見方として、『レイヤーケーク』という考え方があります。この考え方については、以下のサイトに解説されています。

http://www.dbj.go.jp/japanese/download/pdf/review/rp04.pdf

レイヤーケーク(Layer Cake)というのは、いろんな「層(layer)」がケーキのように重なっていることから来ているのではないでしょうか。

森林植生や街並み、地形や地質の状況など、環境を構成する要素のうち地図に描ける要素を何層も重ねてみる。余談ですが、上の記事のよると、イアン・L・マクハーグ氏はかなりの親日家であったようです。

湿潤変動帯に位置する日本の自然は、多種多様かつ繊細です。ケーキのように簡単なレイヤー構造とはいかないとは思いますが、それでもそれぞれが理にかなった生息環境を構築してきたわけです。

さらに、湿潤変動帯であるということは、地震により山は高くなり、雨は洪水となって土砂を運び、その都度人間も含めいろんな生態系の生息環境が変わってきたということです。いろんなレイヤーケークができるなかで、100年に1度も変わらないもの、毎日変わるもの、ダイナミックに変わるもの、繊細な変化を繰り返すもの、そのなかに安住の地を見つけ出す努力の積み重ねは、防災と環境保全の両方に通じるテーマなのです。

Design with Nature 

2008年04月07日 | Design with Nature

環境論の古典としては、レイチェル・カーソンの『沈黙の春 原題:Silent Spring』が有名でしょう。1962年という、いまから46年前に出版されたこの本は、化学物質の負の側面として、生態系の破壊を鋭く指摘した本です。21世紀のなったばかりの2001年にリニューアルされ、いまだ多くの支持を受けています。現在なら中国全域で熟読されてほしい一冊ですね。
http://www.shinchosha.co.jp/shinkan/nami/shoseki/519703.html

さて、やや高度な専門書ですが、イアン・L・マークハーグ『Design with Nature』という本があります。1969年ですから、いまから40年近く前のことです。この本は、環境を”カンジョウ”的にではなく科学としてとらえ、人間と自然や環境とのさまざまな関わりあいから、理にかなった、また心地よい環境を読み取る方法を示したものです。でも、意外に知られておらず、大学の授業でも採用している例はあまり多くありません。

環境良心ーイアン・L・マクハーグの先人たち
http://www.xeriscape-jp.org/column/ld070409.html
http://www.xeriscape-jp.org/info/koidebook1.html

環境良心という言葉が素敵ですね。

自然環境は、オーケストラのように、多くの要因が重なりあって、関わりあってこそ機能するものです。そこから、私たちの安全なくらし、すなわち、防災についても手がかりが見えてくるのです。

少し長くなりました。でもとても重要な本なので、続きは次回にお話します。


ブログ開設にあたり

2008年04月06日 | Design with Nature

防災といえば、ほぼ大地震がイメージされ、想定被害に壮絶な数字が並びます。そんなシミュレーションは、実際のところ誰にも正解が分かるわけがないので、どうも防災は観念的に語られることが多いようです。

私は防災士という資格を持っていますが、講習の7割近くが地震後の救急体制や避難所での対応についてのガイドでした。でも、防災というのは事前対策がその本質です。

このブログは、肩の力を抜いて防災を語りながら、すこしでも防災に貢献し、自分自身もあらためて勉強になるようなサイトを目指します。 このブログのタイトルの意味については、後の機会に。