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防災ブログ Let's Design with Nature

北風より太陽 ソフトなブログを目指します。

こんなディべロッパーにご用心

2008年06月07日 | 技術動向
今日は大阪で地すべり学会関西支部シンポジウム『地震時の盛土地盤の地すべり』に参加してきました。http://japan.landslide-soc.org/branch/kansai/index.html

我々調査業者や研究者のほか、熱心な住民の方も参加しておられました。
少し年配の女性がこんな話をされていました。

「この間、近所の宅地開発でディべロッパーがやってきた。手際よくボーリングの櫓を組み立て調査を始めた。そして、

 コアが濡れてへんから地下水ないですわ

 ちょっとまて、ここは盛土される前は沢でぬかるみもあった。以前きたディべロッパーは、地盤の表情はさまざまやから言うて、地下水があったことを確認した。地下水が上昇すると地震や豪雨がきたとき崩れやすい。もう少し詳しく調べてくれませんか

 そしたら、もうひとこと 

 コアが濡れてへんから地下水ないですわ

 地盤の声を聞けない業者よ、、、恐るべし

現地調査の基本は変わらない‥されど‥

2008年06月05日 | 技術動向

先日ポケットブックが手に入らないという話をしていたら、
http://blog.goo.ne.jp/geo1024/e/a88e5283c0169ceda9b3d66e86236550

上司が『じゃあおれのをあげるよ、古いけど現地の見方や地すべりの主犯である地下水排除なんかの基本は変わらないよ』と言って

『現場技術者のための砂防・地すべり防止工事・急傾斜地崩壊防止ポケットブック 昭和58年版

たしかにポケットサイズです。でも、この時代はパソコンをマイコンと呼んでいた(っけ?)時代で、ワープロでなく『タイプライター』でした。

その意味でちょっと不安なのは、斜面安定解析で3次元の説明がないこと、GPS測量の説明がないことです。そのころCADなんてのももちろんなかったので、地図はデータという感覚ではなく「絵図の延長 ‥
 ジアゾの香りなんて言い出すと”世代だねえ”なんて。」

時は移り、本来(特に現場の)情報は自分の五感で稼ぐものというコンセプトが色あせ、ネットからコピペするものという頭の運動不足のおこりやすい状態になってしまいました。

もう、現場服のポケットに入る教科書はでないのでしょうか。


地面の聴診器?-地下流水音探査技術

2008年06月04日 | 技術動向

○山崩れ探知機:森林総合研究所が開発 地下水の音から予測
http://ss.ffpri.affrc.go.jp/labs/kouho/Press-release/2008/yamakuzure20080529.html#1
独立行政法人森林総合研究所

森林総合研究所では地下水が流れるときに発生する曝気音の強弱を測定する技術を開発し、山崩れの起きる危険性が高い地下水の集中する場所を探知することに成功しました。

曝気音:地下水が流れる際に、岩盤の亀裂や土粒子の間隙にあった空気と水が交換される。このとき泡が発生し、これが割れる際に「コロコロ」・「ボコボコ」・「ゴー」という音が発生する。

先日竹内先生の水ミチの話をしましたが、これも水ミチ発見の試みのひとつだと思いまます。崖をちょっと上ってみると、樹木の根っこが露出している下に水が抜けた穴(パイピングホール)が存在し、そこで山崩れが発生したことを物語っているのですが、その主犯である地下水のアジトを探る方法です。

ただし、地質によって、あるいはほかのノイズ(雑音)とどう区別するのか、かなり興味があるので実際やってみたいと思ってきました。


ポケットブックが手に入らない-出版不況のなかで-

2008年06月01日 | 技術動向

ITや医療をはじめとした科学技術は日進月歩で進んでいきます。

しかし、防災や環境保全に必要な経験値(知ともいうべきか)は、団塊世代の技術伝承論ではありませんが、現場の見方は昭和40年代、50年代の大規模な開発に伴って見えた地質の露頭・岩盤の性状が明らかにされ、その時の知見はとても価値のあるものになっています。

そのころは、現場の見方、それに伴う防災工事のノウハウに関する書籍も多く出版されました。
そのうち私が座右においているのが、次の2冊です。

①『現場技術者のための砂防・地すべり・がけ崩れ・雪崩防止工事ポケットブック』
 初版は昭和58(1983)年に出版されました。
②『建設工事の地質診断と処方』土木工学社
 これも同様です。

特に①の初版本は、本当にポケットサイズでした。今でこそ緑化工など、環境や生態系に配慮した技術が取りざたされていますが、基本は変わりません。ところが出版もとの山海堂が昨年倒産してしまったため、最新版でも書店やwebで買えなくなってしまいました。

最近はネットの普及により、出版業界は軒並み不況のようですが、現場に携帯できる教科書ともいうべき本が手に入らなくなったのは、残念であるとともに、技術の後退をもたらすのではないかと心配でなりません。


竹内先生のホームページ

2008年05月31日 | 技術動向

○竹内の自然地下水研究所 http://homepage1.nifty.com/takeu-a/index.htm

今日、京都大学防災研究所の竹内篤雄先生の貴重なお話を伺うことができました。竹内先生は、地下水の通り道(水ミチと表現されています)を長年研究されてこられました。

地下水といえば、地理の時間に帯水層や被圧地下水といったように、面的に分布するものだというイメージが強かったのですが、竹内先生のお話を伺って、地下水には通りやすいミチがあることがわかりました。

例えば、地すべりの対策工としての集水井に設置した排水パイプには、地下水がとうとうと流れ出ているパイプとまったくでていないパイプがあることからも、水のとおりやすいミチが確実に存在するという話でした。

ホームページの言葉を引用すると、地すべり・山崩れなどの山地地盤災害あるいは近年大きな社会問題となっている地下水汚染など、地下水が大きく関与している現象を正しく解明するためには、地下水のあるがままの姿を明らかにし、それが各種災害とどのように関係しているかを解明する必要があります。ここに「自然地下水調査法」の必要性があると考えます。とのこと。

あらゆる地盤災害に水は関与します。常に現場の経験の積み重ねあるのみですが、ブログをよんで9万キロ走破としってびっくり。

頭が下がります。


プロは圧倒してナンボ

2008年05月27日 | 技術動向
確か今年の正月番組だったと思いますが、シアトルマリナーズのイチロー選手のインタビューで印象に残ったことがあります。

打つのは当たり前。プロならお客さんを満足させるのは当たり前、技術でお客さんを圧倒できるがどうかそれができてナンボだと思う。

。。。圧倒されたのは自分でした。

地質や防災に関わる技術者の中にも、そのような方々はおられます。個人的にすごい思うのは、ロッククライミング調査のきぃすとんという会社です。特にすごいのは、

ひと目でぱぁっとわかる成果図面
http://www.rope-access.co.jp/j-seika.html

なみの業者は、いわゆる『ポンチ絵』から脱却することはできません。それどころか、ポンチ絵を短い時間で大量生産できることを売りにしている会社も多いのです。

しかし、エンドユーザーたる住民、また、本当に真剣な発注者は量より質にこだわります。○場○兆は”使い回し”が発覚して廃業に追い込まれましたが、実はこの業界、前例と基準書の使い回し(まあ、コピペってやつです)がとても多い。

しかし、真の防災・環境保全は、徹底した現場の描写からすべてが始まります。このブログのタイトルの『Design with Nature』です。

ハードな現場をソフトタッチに描く。私の求めるところでもあります。

※それにしてもすごい描写だなあ。イラストレータなんでしょうか。手書きのド迫力も感じてしまいます。

楽観的ハザードマップ

2008年05月18日 | 技術動向

今日は、阪神・淡路断震災で、大きく被災した住宅地の巡検でした。関西の地質コンサルタントの方や、釜井先生(京大防災研究所)に詳しいご案内をして頂いて、大変勉強になりました。

さて、阪神・淡路大震災から13年が経過し、世代がひとまわり以上もしてしまうと、今はだいぶ復旧が進み(いや、化粧と言うべきか)、言われなければ何事もなかったかのようです。

でも、よくよく見れば、傾いた電柱、ずれた道路、ひび割れたままのコンクリート壁、爪あとは深く残っています。

ひるがえって、いや(この現場を見てしまったあとというべきか)川崎や横浜の街並みを思い出してみると、来るべき地震災害に対する安全性はどうか、、、ちょっと悲観的な気分になりました。

でも、悲観ばかりでは精神的にも産業的にもマイナスです。”こうすればプラス”ですという方向でないと、フィギュアスケートじゃありませんがテクニカルコンポーネントとプレゼンテーションのあわせ技で高得点は取れませんから。


活断層の『天王山』-中央防災会議の被害想定-

2008年05月16日 | 技術動向

このブログによくコメントを下さるhappymanさんのブログで、中央防災会議の被害想定が発表されたことを知りました。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080514-OYT1T00557.htm 読売新聞記事
http://happy-man.jp/engineer/archives/2008/05/post-203.html 上町断層は活動するか?

これらの記事によると、大阪府の上町断層帯の地震では経済的被害が最大74兆円。。。一般会計が全部消えますねえ。。

関西では、上町断層や生駒断層などの南北方向の活断層と、有馬-高槻構造線といった東西方向の活断層が密集しています。これらの活断層がクロスするところが、有名な天王山です。天下分け目とは、まったくの文字通りなのです。

また、京都大学防災研究所では地盤の振動特性の解析から、活断層沿いと淀川沿いの軟弱地盤が厚く存在する地域が、強振動が起こるとしています。

http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/dat/nenpo/no50/ronbunB/a50b0p13.pdf

しかし、しかし、、、もっと散発的に振動による大被害が生じる可能性のある地盤が存在するとおもっています。なんどか取り上げた谷埋め盛土による住宅造成地です。生駒山地、京阪奈丘陵には無数にありそうです。

明日から谷埋め盛土の危険性・安全性の現地検討会で、阪神・淡路大震災で被災した地域に行ってきます。

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NHKのニュースを見ていたら、地すべりにより川がせき止められているとか。もう、いよいよオリンピックどころではありません


南極の氷床下で2000年前に大規模噴火

2008年04月16日 | 技術動向
南極といえば氷の大地、その氷が海へ崩落する様子が地球温暖化の象徴的映像として用いられることがあります。

意外に思えるかも知れませんが、南極には富士山より高い火山があります。
そして、最近の研究で、南極の地殻変動に関することが明らかになってきました。


南極の氷床下で2000年前に大規模噴火、海面上昇に影響か
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2339496/2541191
南極大陸西部の氷床下で約2000年前に大規模な噴火を起こした火山が現在も活動中で、海面上昇の要因となっている南極の氷の融解に影響している可能性があるとの研究が20日、英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)」(電子版)に発表された。


南極 大陸の衝突示す鉱物発見
http://www3.nhk.or.jp/news/t10015552361000.html
この鉱物は地球上ではこれまでにアフリカのケニアでも見つかっていて、観測隊では当時、南極を含む大陸とアフリカを含む大陸が衝突したことを示す貴重な資料だとしています。

このような、地道で着実な地質学的成果を踏まえて、地球の気候変動を語らねばなりません。マスコミの環境論ならぬ”カンジョウロン”にながされちゃあだめなんですよ。