玄文講

日記

完璧な空

2005-05-19 05:01:54 | 個人的記録
今日の午後四時頃、急な夕立ちをさけるため、私は図書館に逃げ込んだ。
そして生物学の簡単な本を2章ばかり読んでいる間に雨はあがった。

建物から外に出た瞬間、私は世界の雰囲気がいつもと違うような気がした。
外では生暖かく湿った風が吹いており、空からはまだわずかに水滴が降ってくる。
私はその場に立ち止まって周囲を観察してみた。
鉛色の雲に覆われていた空が、雨を降らすことでやや薄くなり、日の光はその空に濾過されて地上を薄暗くし、草木の色を深くしていた。

しだれ柳やオレンジ色のユリ科の植物が風に吹かれてせわしく回転しているように見えた。
木の幹の輪郭に沿って水墨画のような黒く荒い曲線が走っていた。
葉の色は光沢のまったくない一様な緑色になっていて、葉と葉の隙間から光を吸収して黄金色に輝いている空が見えた。

上を見上げると空の色とは思えないような黄金色が広がっていた。
とても驚いた。なんていう空なのだろうか。
地上が暗く、空が明るいという奇妙な光景だった。雲は光をよく反射する。とても眩しい。あれは鏡だ。
私はあの鏡に照らされた場所には必ず何かあるはずだと確信して、振り返って反対側の空を見上げてみた。

そこでは今まで見たこともないような巨大で鮮やかな七色の虹が半円を描いていた。
私はもう驚きはしなかった。
当然だ。あれだけの鏡に見合うのには、これだけ完璧な虹でなくてはいけない。
私はただそのあまりにも出来過ぎた美しさに呆れて、日が暮れて虹が見えなくなるまで、バカのように上を向いていた。