ガヴァドンなボログ

ウルトラ指人形のことやら、仮面ライダーの感想やら、大河ドラマについてやら

没後10年黒澤明特集 ~酔いどれ天使~

2008年06月09日 | 映画鑑賞
酔いどれ天使<普及版>

東宝

このアイテムの詳細を見る

 NHK・BS2で『酔いどれ天使』を鑑賞しました。概要等はウィキペディアでご確認下さい。

 昨日は、日本の犯罪史上に残る大事件のあった1日でした。歩行者天国でにぎわう秋葉原を狙っての通り魔事件とは!17人を殺傷しなくてはやまなかった、その犯人の心の闇を、我々はきちんと検証しなくてはならないと思います。政府は銃刀法の改正も視野に入れて検討に入るようですが、罰則の強化等だけでは抑止にならない「底無し沼」の恐ろしさを感じます。ごく普通の生活を送っていたはずの人物が、ある日突然に暴走を始めることが、映画やテレビドラマの中だけの「お話」ではなくなった恐怖と言いましょうか・・・

 この『酔いどれ天使』には、昭和20年代の混乱する風俗と不衛生な環境を象徴する舞台装置として、ゴミ捨て場と化した『池』が出てきます。そんな中で自暴自棄になって暮らすやくざ・松永(三船敏郎)は、そんな環境に身も心も毒された男ではありますが、はい出ようともがく人間性を持っていました。結核に冒され、周囲の人間に裏切られ、自暴自棄の沼に引きずり込まれながらも、彼なりの「正しさ」を追求した結果が、兄貴分・岡田への殴り込みだったと思います。決して個人的な恨み辛みだけでない「人間的な優しさ」が、あの殴り込みには、あったと思います。故に、主人公・真田や飲み屋の女将・ぎんは、その死を悼み悲しむのでしょう。

 さて、今回の通り魔事件の犯人は「ワイドショーの独占」、ヒーロー視されることを狙って犯行に及んだとのことです。そんな方法で自分を輝かせることができると、本当に考えていたのでしょうか?その心理も異常ですが、「自分のことしか考えない」神経にもやりきれないものを感じます。他者を思いやることのできなくなった社会が産んだモンスター・・・ 松永の対極にある「非人情」を感じ、ぞっとしました。