マイは、気を失っていました。
いつのまにか、夜になっていました。
木宇戸家では、サキが学校から帰ってきていました。
舞美も仕事を終え、家にいました。
そしてチサトと3人で、内職のひとつである『妖怪おまじないカード』の袋詰めをしているところでした。
恒例の、ホチキスで留める前にやる『買ったつもり引き』は、今日はサキの番でした。
「えい、これにしようっ」
サキの引いたカードには、こう書かれていました。
-鱗蛇(りんだ)
呪縛妖怪。
蛇の妖怪で、人の動きを封じ込める魔力を持つ-
「なにこいつ、キモーい」
サキはカードを元に戻すと、他のカードと一緒にホチキスで留めました。
「はーい、すみませんでしたぁ。わかりましたよ、もう来ませんよう」
愛理は無料求人誌を読んでいた店の親父から突然怒られ、ふてくされながら出てきました。
「べーっ、だ」
愛理はあてもなく、ただ歩きました。
そして時々、舞美の手料理を思い出しては、腹の虫が鳴いたのでした。
と、突然、頭のてっぺんがムズムズとし始めました。
「近くに……いるっ!」
愛理は空腹を我慢して、走り出しました。
500メートルほど走ると、一軒の家の前で立ち止まりました。
愛理の頭のムズムズは、その場所でピークを迎えていました。
家の前には、石像が置いてありました。
よく見ると、それはマイでした。
「マイちゃん、今助けてあげるからねっ」
愛理は、家の中へ入っていきました。
家の中では、長永井さんが入浴中でした。
「いやーん」
長永井さんが言いました。
「いやーん、じゃない!」
愛理が怒鳴ると、長永井さんはおびえた表情になりました。
「あなたは、姫様。
どうか命だけは。お許しくださいませー」
長永井さんは、蛇の妖怪、鱗蛇へと姿を変え、正体を表しました。
長永井さんは銭狸とは違い、すぐに愛理に従いました。
蛇は元々、水神の遠い親戚みたいなものですからね。
愛理は、さっき木宇戸家で火を消す時に食べたキュウリの感触を歯に感じました。
そして奥歯でそれを噛み、飲み込むと、変身して魔力を使い、長永井さん、いや鱗蛇を『妖怪おまじないカード』へと変えました。
人間の姿に戻ると、ポケットにカードを入れ、家を出ました。
マイは、意識を取り戻しました。
ゆっくり目を開けると、去っていく愛理の後ろ姿が見えました。
「きっと、あの子が助けてくれたんだ」
マイは、そうつぶやくと自分の家へと帰っていきました。
それからの話は、こんな感じです。
マイが、他の姉妹に、何だか知らないけど愛理が助けてくれたと報告しました。
チサトやサキは、愛理がボヤを起こしたことを怒っていましたが、マイの話で許すことに決めました。
4姉妹は、手分けして出ていった愛理を捜しました。
夜遅くに、舞美が噴水公園で愛理を発見しました。
そうです。
愛理は、また一緒に暮らすことになったのです。
よかったですね。
(つづく)
いつのまにか、夜になっていました。
木宇戸家では、サキが学校から帰ってきていました。
舞美も仕事を終え、家にいました。
そしてチサトと3人で、内職のひとつである『妖怪おまじないカード』の袋詰めをしているところでした。
恒例の、ホチキスで留める前にやる『買ったつもり引き』は、今日はサキの番でした。
「えい、これにしようっ」
サキの引いたカードには、こう書かれていました。
-鱗蛇(りんだ)
呪縛妖怪。
蛇の妖怪で、人の動きを封じ込める魔力を持つ-
「なにこいつ、キモーい」
サキはカードを元に戻すと、他のカードと一緒にホチキスで留めました。
「はーい、すみませんでしたぁ。わかりましたよ、もう来ませんよう」
愛理は無料求人誌を読んでいた店の親父から突然怒られ、ふてくされながら出てきました。
「べーっ、だ」
愛理はあてもなく、ただ歩きました。
そして時々、舞美の手料理を思い出しては、腹の虫が鳴いたのでした。
と、突然、頭のてっぺんがムズムズとし始めました。
「近くに……いるっ!」
愛理は空腹を我慢して、走り出しました。
500メートルほど走ると、一軒の家の前で立ち止まりました。
愛理の頭のムズムズは、その場所でピークを迎えていました。
家の前には、石像が置いてありました。
よく見ると、それはマイでした。
「マイちゃん、今助けてあげるからねっ」
愛理は、家の中へ入っていきました。
家の中では、長永井さんが入浴中でした。
「いやーん」
長永井さんが言いました。
「いやーん、じゃない!」
愛理が怒鳴ると、長永井さんはおびえた表情になりました。
「あなたは、姫様。
どうか命だけは。お許しくださいませー」
長永井さんは、蛇の妖怪、鱗蛇へと姿を変え、正体を表しました。
長永井さんは銭狸とは違い、すぐに愛理に従いました。
蛇は元々、水神の遠い親戚みたいなものですからね。
愛理は、さっき木宇戸家で火を消す時に食べたキュウリの感触を歯に感じました。
そして奥歯でそれを噛み、飲み込むと、変身して魔力を使い、長永井さん、いや鱗蛇を『妖怪おまじないカード』へと変えました。
人間の姿に戻ると、ポケットにカードを入れ、家を出ました。
マイは、意識を取り戻しました。
ゆっくり目を開けると、去っていく愛理の後ろ姿が見えました。
「きっと、あの子が助けてくれたんだ」
マイは、そうつぶやくと自分の家へと帰っていきました。
それからの話は、こんな感じです。
マイが、他の姉妹に、何だか知らないけど愛理が助けてくれたと報告しました。
チサトやサキは、愛理がボヤを起こしたことを怒っていましたが、マイの話で許すことに決めました。
4姉妹は、手分けして出ていった愛理を捜しました。
夜遅くに、舞美が噴水公園で愛理を発見しました。
そうです。
愛理は、また一緒に暮らすことになったのです。
よかったですね。
(つづく)