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RWB魔法学園物語外伝Ⅲ・不死身の海賊(10)。

2017-08-23 | RWB魔法学園物語
眼流から逃げのびたモエと使い魔を乗せたボートは、漂流を続けました。

備えてあった水や食料もとっくに無くなり、魔法で空をとぶこともできないモエにとって、できることといえば眠ることくらいでした。


その日もウトウトし始めたモエでしたが、突然の豪雨でそれどころではなくなってしまいました。


「もう、最悪!」
モエがつぶやきました。

「でもモエちゃん、上を向いて口を開ければ水分不足は補えるよ、あーん」
使い魔のオス猫、うーろんがのんきに言いました。


「モエ船長、何か見えた!」
真面目に周囲を観察していたせいらが叫びました。
「船じゃない? おーい、おーい、ここよー」


モエは備え付けの簡易望遠鏡を取り出し、せいらの示す方向を見ました。
「あれは!」

たっぷりと時間を使ってから、モエはボソっと言いました。
「誰がどう見ても、ただの岩だね」



どんどん激しくなる雨。
3匹はモエの身体の下に身を寄せてじっとすることにしました。
使い魔といっても、やっぱり猫は水に濡れることが苦手なのです。


「風邪ひいちゃうね」
モエが弱々しく言いました。


「モエちゃん、あっちのほう晴れてるよ」
使い魔のメス猫、はなの目線の先には、確かに一部だけ晴れているところがありました。


「本当だ、不思議。雨雲のなかにポッカリと穴が開いてるみたい!」
モエがしばらく見ていると、その穴がゆっくりとこちらに近づいているように感じました。
「ちょっと待って。晴れ間の下に、誰かいる!」
モエは再び簡易望遠鏡を取り出し、覗いてみました。
「ホウキに乗ってる! あの人、魔法使いだ!」



(つづく)

RWB魔法学園物語外伝Ⅲ・不死身の海賊(9)。

2017-08-19 | RWB魔法学園物語
「こいつがまず最初の仕返しだ」
眼流はそうつぶやくと、乗組員を一人一人、刀で切っていきました。


それを見た玄信は顔を歪ませながら眼流に立ち向かっていきましたが、すぐに倒されてしまいました。

「約束が違うぞ眼流!」
「誰がおまえとの約束など守るか」


気が付くと、モエと使い魔のはな、せいら、うーろん以外の乗組員は、すべて眼流によって殺されてしまいました。


「約束を守らない海賊は死刑よ」
モエは涙声で、思わず叫びました。

それを聞いた眼流は、モエに近づいていきました。


「こんなところに女の乗組員がいたとは。小さくてわからなかった」
「そいつは違うんだ、乗組員じゃない」
玄信は立ち上がると、眼流モエの間に割って入っていきました。

「じゃあなんだ、こいつは」
「知らない。何かの事故で遭難しているところをこの船が助けたとか、そんなところだろう」
「へえ」
「だから逃がしてやってくれ。俺の知らない子なんだから」


眼流はゆっくりとモエに顔を近づけました。

「玄信の言ってることは本当か。おまえは何者だ?」
「あたしは、あたしは」

玄信は祈るような気持ちで、モエを見ました。


「あたしは、この船の海賊です!」
「何を言ってるんだ、モエ」

モエの使い魔も、呆れたように溜息をつきました。



「短い間だったかもしれないけど、一緒にこの船で過ごしてきたんだから、あたしたちもう友達でしょ」
「友達か。久々に聞いた言葉だ」
玄信は目を潤ませているように見えました。



「ということは両方とも、乗組員と認めたわけだ。覚悟はできているな、女」
眼流は刀を振り上げました。



「モエ、悪い」
玄信はいきなりモエに体当たりしました。

モエは吹っ飛びながら甲板に備え付けてあった小型ボートの中で倒れました。
心配した使い魔も、慌てて小型ボートに飛び乗りました。


玄信は、つないであったロープを切ると小型ボートを海の中へと落としました。

「なにしてるんですかっ」
「賭け事な」
「はあ?」
「おまえが賭け事に負けた約束。俺の嫁になれっつうのは撤回だ、残念だけどな」
「何の話ですか。今はそれどころじゃないでしょ」
「賭けの約束を変更する。おまえは絶対、ここから生きて逃げのびろ。それが新しい約束だ」
「そんな。玄信さんを残して自分だけ逃げるなんて」
「黙れ、約束だと言っただろう。海賊の約束を破るやつは?」
「死刑。でも」
「おまえは生きて、立派な魔法使いになれ。俺みたいにはなるなよ。じゃあな」
「玄信さーん」


モエを乗せたボートは、ゆっくりと玄信の船から離れていきました。
眼流は慌ててボートにとびかかろうとしました。

玄信は妨害しながら、眼流に言いました。
「かつて天才魔法使いと言われた俺のラスト1回分の魔法、見せてやる」
「何をいうか、もう攻撃魔法など使う力も残ってないだろう」
「確かにそれはできないかもしれないな。でもこれくらいなら」

玄信が念じると、辺りを霧が覆いはじめました。

モエを乗せたボートは、霧の中ですっかり見えなくなってしまいました。


「おまえの最後の魔法が、これか」
「ああ」
「こんなんでいいのか」
「なんの後悔もない。今までで一番、有意義なことに魔法を使えたと思っている」
「そうか。それはそれは」
「さあ、やってくれ。こんな気持ちで死ねるなら俺は幸せだ」

眼流は、最大の憎しみを込めた表情で玄信を睨みました。


モエは離れていくボートに乗りながら、玄信の名前を呼び続けました。


(つづく)

RWB魔法学園物語外伝Ⅲ・不死身の海賊(8)。

2017-08-19 | RWB魔法学園物語
玄信は自分の過去についてモエに語っていました。

すると大きな音とともに、船が大きく揺れました。


そこに現れたのは。


「おまえは、眼流……」
玄信が驚いた表情でつぶやきました。


眼流は3メートル近くはあろうかという巨体で、博物館にあるミイラのような形相をしていました。

「久しぶりだな玄信。本当はもっと早く会いたかったんだが、おまえの呪いの力が強力でなかなか動けなかったのさ」
眼流は地底から聞こえるような声で言いました。


「何の用だ。俺に仕返しに来たのか?」
「まあそれもあるが、おまえ最近、宝を手に入れたそうじゃないか」


玄信は手に持っていた呪いを解く玉を、そっと上着のポケットの中に隠しました。


「隠しても無駄だ。俺のペットがずっとおまえのことを見張っていたのだからな」
眼流が高笑いしながら言うと、どこからかコウモリが飛んできて、眼流の肩の上で止まりました。


「こいつが全部俺に報告してくれたよ。玉のことも、呪いを解く方法のことも」
「そのコウモリは……」
「おや、顔見知りだったか?」
「いや、別に」
「そんなことはどうでもいい。その玉を渡してもらおうか」


玄信はゆっくりとポケットから玉を取り出しました。

「渡してもいいが、条件がある」
玄信眼流の目を見ながら言いました。

「条件? ほう、なんだ」
「乗組員には手を出すな」
「カッコイイねえ。さすが元魔法使いだ」


モエはその言葉を聞くと我に返りました。
周りには玄信眼流を囲んで、すべての乗組員が集まっていました。


「よし、わかった。約束は守ろう」


玄信は安心して、眼流に玉を手渡しました。


「これで元の人間に戻れるってわけか」


眼流は左手に玉を持ち、右手で刀を抜きました。


「俺をやるならさっさとやれ!」
玄信が叫びました。


「それはちょっともったいないな。何十年もお前の呪いに苦しめられ続けてきたんだからな」
眼流は笑いながら、船の上を歩き回り始めました。



(つづく)

RWB魔法学園物語外伝Ⅲ・不死身の海賊(7)。

2017-08-08 | RWB魔法学園物語
それは、昔の話。


当時、青年だった玄信は天才魔法使いと呼ばれ、数々の難事件を解決していました。


英雄現れし時、決まって悪も存在するのが世の理であります。


西の海に強奪、殺戮を繰り返す海賊がいました。

真の名はわかりませんが、その男は眼流と呼ばれていました。
眼流は魔法使いではありませんでしたが、怪しい術を使い、別名を『不死身の海賊』といいました。



そこで玄信はRWB魔法学園より眼流退治の依頼を受けることとなりました。

玄信は魔法により、たやすく眼流の居場所を発見し、二人は眼流の船上でにらみ合いました。


眼流にとって海は我が家のようなもの。
波を操り幻覚を見せるなどして、玄信はいつものような活躍ができずにいました。


天才と呼ばれていた玄信は大変プライドが傷つきました。
「この俺が海賊風情に劣勢に追い込まれるとは」。


そしてとうとう、玄信は禁じ手とされていた呪いの力を借りることになるのです。
玄信に呪いをかけられた眼流は、人ではなくなってしまい、どこかへ逃走していきました。



一方、強力な呪いの力は、かけた本人である玄信にも影響を及ぼしていきました。

心に闇が広がっていき、眼竜から奪った船や宝を手にし、今度は玄信が二代目眼流とでも呼ぶべき海賊になっていったのです。

魔法の力も徐々に失われていき、1回分使えるかどうかの魔力を所持するのみとなりました。

玄信はかつて魔法使いだったという自分のことを忘れないためにも、その魔法力を使わずにいることを決心しました。



自分自身に絶望しながらどうすることもできずにいた玄信ですが、とある話を耳にしました。
『どんな呪いも解いてしまう不思議な玉がある』と。



『その玉は九州の西にあるX島のほこらに飾られているが、普通に見つけることは困難である』
『魔法の地図を使えばあるいは見つけられるかもしれない』
『玉を見つけただけでは駄目で、その玉を今度は北海道の東にあるZ島に持っていき、そこに飾られている竜の像の手に持たせることによって呪いは解かれるであろう』

十年以上かけ、玄信はこれらの情報を手に入れました。
これは自分が魔法使いに戻れる唯一の機会となるだろう、と玄信は考えたのです。


さらに五年後、ついに玄信は魔法の地図を手に入れることとなりました。

「あとは間抜けな魔法使いをX島へ連れていけば玉を見つけることができるぞ!」


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「ちょっと待って。その間抜けな魔法使いってあたしのこと?」

玄信の話をさえぎり、モエが尋ねました。

「他に誰がいる?」
「失礼ね!」


と、その時。


大きな音とともに、船が大きく揺れました。




(つづく)

RWB魔法学園物語外伝Ⅲ・不死身の海賊(6)。

2017-08-04 | RWB魔法学園物語
玄信の船はモエとの約束を果たすべく、熊本港へ向けて出発しました。



船内で玄信は常に宝の玉を大事そうに持ち歩いていました。


甲板で玄信と鉢合わせした時、モエは思い切って尋ねました。


「その玉、売ってお金にするんですか?」
「こいつか。売ってもたいした金にはならんだろうな」
「じゃあ、なんで欲しいと思ったんですか」


玄信は黙っていましたが、しばらくして口を開きました。

「おまえは俺の嫁になる女だし、教えてやってもいいか」
「まだ覚えてたんですか、あのインチキ賭け事のこと」
「覚えてるに決まってるだろう。海賊の約束を破るやつは死刑だぞ」
「それで、なんなんですか。その玉」


モエは結婚のことから話をそらすように、玄信に訊きました。


「俺は今でこそ海賊と呼ばれているが、昔は魔法使いだったんだ」


「嘘でしょ」
モエは驚きを隠せず、そうつぶやきました。


「信じられないのも仕方ない。この通り、すっかり海賊に染まっちまったからな」
玄信は悲しげな眼をして、言いました。


「本当のことなんですね」
「ああ。RWB魔法学園で講師をしながら、魔法使いとして世界を見守っていた」
「RWB魔法学園って、あたしが受験したところです。落ちちゃったけど」
「そうだったのか。不思議な縁だな」
「それで、なんで今は海賊に?」


「魔法が使えなくなったからさ」
玄信は小刻みに震えながら、言いました。
「正確には、あと1回しか使えない。そういう呪いをかけられてしまったのさ」
「呪い?」


玄信は急に頭を抱えました。

「ミイラとりがミイラになっちまったのさ」
「一体、何があったんですか」
「訊きたいか?こんなジジイの昔話を」
「はい、訊かせてください」


「わかった」
玄信は、ゆっくりとうなずきました。



(つづく)

RWB魔法学園物語外伝Ⅲ・不死身の海賊(5)。

2017-08-04 | RWB魔法学園物語
「もうおまえに用はない。船に戻っていいぞ」

モエに向かって、玄信が言いました。

「あたし、ついていきます。その宝、本当に誰かから無理矢理奪うんじゃないですよね」
「勝手にしろ」


玄信と乗組員を追って、モエと使い魔も歩き出しました。


一行は島の中央にある森を抜け、崖のある場所へとやってきました。

崖の周りをしばらく歩いていくと、ほこらが見えてきました。



「あれだな。ついに見つけた」
「あんな小さいほこら、地図がなきゃ絶対に見つけられませんでしたね」
玄信と乗組員は、ほこらに向かって駆け出しました。


ほこらには光る玉が飾ってありました。

玄信は玉を手にとると勝ち誇ったように雄叫びをあげました。


すると。

モエの使い魔、オス猫のうーろんが隙を狙って玄信にとびかかりました。

驚いた玄信は、玉を落としてしまいました。

その玉をはなが拾い、モエに渡しました。



「そいつを返せ、小娘」
玄信は怒りに震える声で言いました。

「嫌です」
「空もろくに飛べないおまえが、その玉を持って逃げ切れるとでも思ってるのか?」
「いざとなったら海でも森の中でも、投げ捨てます」
「その後、おまえがどうなるか、わかるよな」
「あなたも、これがなくなったら困るんでしょ」

しばらく、にらみ合いが続きました。


「わかった。なにが望みだ」

「あたしと、この子たちを無事に家へ帰してください」
使い魔を見ながら、モエは言いました。

「オッケー。約束しよう」
「本当ですか。絶対ですよ」
「本当だとも。約束を守らない海賊は?」


「死刑!」
乗組員が声をそろえて言いました。


モエはおそるおそる、玄信に玉を渡しました。

内心、渡した途端に襲われるんじゃないかと思いましたが、玄信は何もしませんでした。


「見た目と違って気の強い女だな、おまえは。さあ、船に帰るぞ」


玄信と乗組員、モエと使い魔は、船へと戻っていきました。



(つづく)

RWB魔法学園物語外伝Ⅲ・不死身の海賊(4)。

2017-07-31 | RWB魔法学園物語
賭けゲームから二日後、船はとある島にたどり着きました。


眠っていたモエは乗組員に突然起こされ、無理矢理、担がれながら島に上陸させられました。

モエを追って、使い魔のはな、せいら、うーろんも船を降りてきました。



モエの目の前には、玄信が立っていました。
いつもは穏やかな雰囲気の玄信ですが、今日は違っていました。
笑顔もなく、無表情でモエを見つめていました。


「魔法使いよ、目が覚めたかね?」
「あ、おはようございます。ここはどこですか」
「ここはおまえが仕事をするための島だ」
「仕事って魚釣りですか? あたし、ちゃんとした魚釣りやったことないんですけど」


玄信はこの時やっと、少し笑いました。


「そういえば、おまえには俺の船が漁船だと説明していたな」
「違うんですか」
「まあ、建前上は漁船だな」
「というと?」
「本当はお宝を探しているんだが、漁船としておいたほうが政府から航海許可が取りやすいもんでね」
「お宝探し? 探検家ですか?」
「時に探検家、そして時に」
「???」
「人は我々を、海賊と呼ぶな」
「海賊!?」


玄信を取り囲んでいた乗組員が、下品に笑いました。
玄信は乗組員を静かにさせ、モエに話しかけました。


「安心しろ、今回は違う。誰とも抗争などせん。おまえさんの魔力でこの島に眠る宝を探し出してほしい、それだけだ」
「あたし、どんなことだろうと海賊なんかに協力できません」
「この前の賭けを忘れたのか? 俺のために魔法を使うと約束したろう」
「あれは、だって」
「俺たちにとって、賭けの約束を守らない奴がどうなるか知ってるか?」


乗組員たちはいっせいに「死刑!」と叫びました。


「でもあたし、そんな魔法使ったことないですもん」
「だろうな、そこで、だ」


玄信はポケットから島の地図を取り出すと、モエに渡しました。


「そいつは魔法道具だ。おまえさんの魔力を地図に使うだけで、俺の探している宝のありかが示されるようにできている」
「やりたくないと言ったら?」
「ここで死んでもらう。そいつらと一緒にな。墓くらい作ってやろう」

玄信モエはな・せいら・うーろんを交互に見ながら言いました。

「わかりました。やってみます」


モエは地図に魔力を集中しました。
すると地図のある1点が焦げ出し、黒いシミとなって残りました。



「おお、よくやった!」
魔法の地図を受け取りながら、玄信が嬉しそうに言いました。



(つづく)

RWB魔法学園物語外伝Ⅲ・不死身の海賊(3)。

2017-07-18 | RWB魔法学園物語
モエは休憩室のドアを開けました。

中では、船長の玄信を中心に、賭博が行われていました。


玄信はドア付近に立っているモエに話しかけてきました。


「どうだ、船の生活にも慣れたかな?」
「ええ、まあ」
「それは良かった」

「なにをしてるんですか?」
「カードの遊びだよ。おまえもやるかい?」


玄信は他の船員をどかして、モエを向かい側に座らせました。


「ただ遊ぶのでは仕方がない。何かを賭けようじゃないか」
「ギャンブルですか? ダメですよ。法律違反です」


玄信は大きな声で笑いました。


「ここじゃ、ゲームをする時ゃ賭けるのが法律だ」
「でも」
「もし俺が勝ったら、俺のために一度、魔法を使ってくれないか?」
「そんなことですか? お金じゃなくて?」
「おまえから金を取ってもしょうがない。どうせそんなに持ってないだろう」
「それはそうですけど」
「おまえの望みは?」
「そうだなあ」


モエは斜め上を見ながら、しばらく考えました。

「毎日、お風呂に入りたいです」
「わかった。1部屋をおまえ専用のバスルームにして、お湯も使えるようにしてやろう」
「やった!」


ゲームの内容は、カードに描かれた絵柄を当てるというものでした。
お互いに8枚ずつカードを配り、順番に当てていくのです。


「おまえから、どうぞ」
「えっと、ドクロ」
「ハズレ。星だ。次は俺の番だ。花かな」
「正解。どうしてわかるんですか?」


それぞれ8枚言い終わると、結果は玄信の圧勝でした。


「悔しい。もう1回!」
「だったら、また何か賭けなきゃダメだ」
「えーでもあたし、なんにも持ってない」
「よし。じゃあ俺の嫁になるか?」
「え?」



モエの返事を待たず、玄信はカードを配り始めました。

今度も玄信の圧勝でした。


「どういうことですか、嫁になるって」
「詳しいことは船を降りてから考えようじゃないか」

玄信は笑いながら答えました。

「嫁もそうだが、魔法のこと、忘れんなよ。さて、今日はもう終わりにしよう」


モエは悔しさと不安な気持ちのまま、部屋を出ました。

出る瞬間、船乗りの1人がモエの耳元でボソっとささやきました。


「バカだねえ。あんなゲーム、インチキに決まってるじゃないか」



(つづく)

RWB魔法学園物語外伝Ⅲ・不死身の海賊(2)。

2017-07-02 | RWB魔法学園物語
モエと3匹の使い魔を乗せた漁船は、熊本港を出帆しました。


モエと3匹の使い魔には、6畳ほどの個室が与えられました。

出港してまる二日経過しましたが、特に仕事はありませんでした。



モエは悟りました。
船旅とはすなわち退屈とのたたかいである、と。



甲板に出ると、乗組員が掃除をしていました。

「邪魔だ、そこをどけ子供」
「子供じゃありません。この船専属の魔法使いです」
「魔法使い?」

モエは笑顔でうなずきました。

「今、暇なのか」
「うん。わりと」
「だったらよう、魔法で掃除を終わらせてくれないかな」
「あたしが?」
「うまくいったら、こいつをやる」

乗組員はポケットからルービックキューブを取り出しました。
これがあれば、退屈しのぎになりそうです。

「わかった。やってみる」

モエは魔法を使って、水の入った桶とブラシを操ろうとしました。

ところが。

ブラシは海のはるか彼方へと猛スピード飛んでいき、消えてしまいました。
水の入った桶はというと、乗組員の頭にかぶさっていました。


「あっちいけ、インチキ魔女め!」

乗組員に怒鳴りつけられてしまいました。



今度は調理室の前へやってきました。

料理長の助手が、じゃがいもの皮をむいていました。

モエが見つめていると、助手は照れて顔をそむけました。

「やめてくれ。ガキとはいえ女の人に見つめられると気が散る」
「ガキじゃないってば。この船の専属魔法使いなんだから」
「魔法使い?」
「そう、すごいでしょ」


助手は、山ほどのじゃがいもを持ってきて、モエに言いました。
「魔法使いならこれ全部、剥いてくれないか。できたらお礼にケーキをあげるから」
「オッケー。まかせて」
「30分くらいしたら戻ってくるから、それまでに頼むよ」


助手が戻ってくると、モエは泣いていました。
そこにはボロボロになったじゃがいもの破片が大量に置いてありました。

「最初はうまくいってたのよ。でも、よそ見したら包丁が暴走しちゃって」


助手は、調理長からこっぴどく叱られることとなりました。

それからしばらく、船の食事にはやたら小さなフライドポテトが出され続けることとなりました。




泣き止んだモエは、今度は船員の休憩室へとやってきました。

そこでは船長の玄信を中心に、賭博が行われていました。




(つづく)

RWB魔法学園物語外伝Ⅲ・不死身の海賊(1)。

2017-07-01 | RWB魔法学園物語
熊本港の近く。

崖状になった公園の一部でモエはホウキにまたがり、空を飛ぶ練習をしていました。



モエはRWB魔法学園入学の推薦をもらい、試験を受けたのですが最後の面接で落ちてしまいました。
今は見習い魔法使いの身分です。



RWB魔法学園の生徒の誰よりも高く空を飛んでやる。
そして、見返してやる。


学園の卒業生じゃなくても、立派な魔法使いはたくさんいる。
私もいつか、そういう魔法使いになってやる。



モエの『空を飛びたいという熱意』の燃料は、そんな『気持ち』でした。



しかし、ホウキは思うように扱うことができませんでした。


モエちゃん、落ち込まないで」
「毎日練習すれば、きっと飛べるよ」

使い魔のせいら、はな、うーろんモエは励まされました。


普通、使い魔といえば1匹なのですがモエには3匹いました。

せいらはメスのトラネコ。
はなはメスのクロネコ。
うーろんはオスのクロネコです。


落ち込んだモエが海を眺めていると、一人の男がやってきました。
男はボロをまとい、酒を飲みながら歩いていましたが、モエと目があうと話しかけてきました。


「おまえさん、魔法使いか」
「まあ、一応」
「魔法学校の学生か?」
「ではないです」

男はなにやら考えていましたが、しばらくするとまた口を開きました。


「俺は漁船の船長をやっている玄信っつうものだ。暇なら俺の船に乗らないか?」



学園を卒業していない国家非公認の魔法使いにとって、仕事は限られます。

船に同乗し、航海補助として働くのもそんな魔法使いの仕事でした。

魔法を使い、安全な航路を見つけたり、風を操ったり、天気を変えたりするのです。


モエが使い魔として猫3匹を飼っているのも玄信にとっては魅力でした。
船にとってネズミは退治すべき動物ですから。


「特に仕事がない日でも一日一万円やる。どうだ?」
「でも」
「暇してたって仕方ないだろう。経験を積めば、魔法使いとしての仕事も広がっていくぞ」


玄信のその言葉は、モエのRWB魔法学園を見返してやりたいという気持ちに火をつけました。


「わかりました。よろしくお願いします」


こうしてモエは、玄信の船に乗ることになりました。



(つづく)

RWB魔法学園物語外伝Ⅱ・サイコーのプレゼント(7)

2017-03-30 | RWB魔法学園物語
学園の講堂では、目を覚ました道重さんの歓迎パーティーの真っ最中でした。

生徒や教師が、道重さんに次々とプレゼントを渡していきます。



「これ、ママが道重さんをイメージして作ったドレスなんです」
マイちゃんが、照れながら道重さんにドレスを渡しました。

ピンク色のフリルのついたドレスでした。

「私、まだこれ似合うかな。あれから3歳近く年齢上がっちゃったけど」

「大丈夫です。道重さんは眠っている間も可愛さを更新してましたから!」

「フフフ、ありがとう!」



続いてナナミちゃんはウサギのマスコットを、チィちゃんはケーキを渡しました。
他の生徒も、次々とプレゼントを渡していきました。



「全員、プレゼントを渡しきったかな。道重も目覚めたばかりで疲れてしまうし、そろそろパーティーもお開きにしようか」
パーティーの幹事である、『予言』の先生が切り出しました。


そこへ。

扉を開けて、リサちゃんが登場しました。


「リサちゃん、どこへ行ってたの?」
傷だらけ、泥だらけのリサちゃんを見て、チィちゃんが心配そうに声をかけました。


「みなさん心配かけてごめんなさい、ただいま戻りました」
リサちゃんは、頭を深く下げながら言いました。



「今、道重にみんなでプレゼントを渡していたところだ」
『予言』の先生の言葉に、リサちゃんはうつむいてしまいました。

「ごめんなさい、私、なにも渡せるようなもの持ってません」

「いいのよ、気にしないで」
泣きそうな顔のリサちゃんに、道重さんが声をかけました。

「すみません。すみません」


誰も、リサちゃんに声をかけられませんでした。


すると突然、道重さんが、リサちゃんをハグしました。
驚いて顔を赤くする、リサちゃん。


「私だって一応、魔法使いですからね。
今、山木ちゃんのここ2、3日の行動が、映像として頭に伝わってきたよ。
私のために、ものすごくがんばってくれたんだね。
大変だったね。
でも山木ちゃん、それこそがサイコーのプレゼントだよ。
ありがとう!」


リサちゃんは道重さんのその言葉を聞いた途端、子供のように大泣きしてしまいました。

もちろん、嬉し泣きですよ!


道重さん!おかえりなさい!






(おしまい)

RWB魔法学園物語外伝Ⅱ・サイコーのプレゼント(6)

2017-03-30 | RWB魔法学園物語
暗闇の中に光る点が現れました。

光る点はだんだんと大きくなり、ひび割れのようになりました。

その、光のひび割れを押し開けるように、外からシャルフィが入ってきました。

シャルフィが闇の中へ入ると同時に、ひび割れも閉じてしまい、再び真っ暗になってしまいました。




「シャルフィ、来てくれたの?」

シャルフィはなかなか戻って来ないリサちゃんを心配して、ここまでやってきたのでした。
さすがのユニコーンも、こんな異空間まで来るのが大変だったらしく、体中が傷だらけになっていました。

リサちゃんはシャルフィを抱きしめました。


「シャルフィ、どうしたの?」
シャルフィはずっと、ユーギィの花を手にしたリサちゃんの左手を、鼻でつついていました。

「花がどうかした? こんなの持ってても元の世界に戻れなきゃ、道重さんにも渡せないのよ」


リサちゃんが何を言っても、シャルフィは左手をつつくのをやめません。


「なにかあなたに伝えたいのね。ユニコーンも言葉をしゃべれればよかったのにね」
ケロミンがつぶやきました。

「花をどうにかしろってことなのかしら?」

その言葉に、シャルフィがいななきました。

「そうだっ、て言いたいのね。でも、こんな状況でどうすればいいのシャルフィ」


「あ!」
ケロミンが大声で叫びました。

「びっくりした? どうしたの」

「ユーギィの花について図鑑に書いてあったことを思い出しなさいよ」

「1000年に一度、一年間だけ開花し、その花に願いを込めると魔法に頼らずとも誰でも一度だけ望みが叶うと言われている。
なお、実や茎、根などは異常に臭い」

「ね!」

「ね! じゃないって。教えてよ、どういうこと?」

「魔法に頼らずとも誰でも一度だけ望みが叶う、ということは?」

「だから道重さんにプレゼントしようと思ったの。目覚めてすぐじゃ、魔法もちゃんと使えるかどうかわからないでしょ。
それで、花に本当に欲しいものをお願いしてもらえれば、それが一番のプレゼントになるでしょ」

「そういうことだったのね。泣けるわ」

「うん」

「じゃなくて!」

「もう、なんなのよ。いいかげん説明して!」

「魔法に頼らずとも誰でも一度だけ望みが叶うってことは、魔法の使えないこんな場所でも使えるっていうことよ」

「うーん、つまり?」

「まだわかんないの? あなたが今、ここで言う言葉はひとつだけよ」

「えーっと? なに?」

「全部ヒキガエルに教えてもらう気? 人間としてのプライドはないわけ?」

「ないない。いいから早く」

「あなたが花にお願いするのよ、元の世界に戻してくれって」

「ああ! なるほど」

「理解した?」

「した。けど、そんなことしたら道重さんへのプレゼントはどうなるのよ!
私が花に願い事しちゃったら、一度しか使えないのに!」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。元の世界に戻って会えなければ、プレゼントだってどうせ一生渡せないじゃないの!」

「それもそうね」


リサちゃんはユーギィの花に向かって祈りました。
そして願い事を口にしました。


「私たちを、元の世界に戻してください」

するとユーギィの花が輝き出し、リサちゃんたちの身体ごと、光で包み込んだのでした。





(つづく)

RWB魔法学園物語外伝Ⅱ・サイコーのプレゼント(5)

2017-03-30 | RWB魔法学園物語
道重さんというのは、リサちゃんの先輩の大魔法使い、道重サユミさんのことです。

リサちゃんが世界で一番憧れ、一番好きな人でした。



3年ほど前、リサちゃんは道重さんに憧れ、RWB魔法学園に入ってきました。

しばらくして、RWB魔法学園存続に関わるような危機的状況が訪れました。
(このへんの詳しい話は、また別の機会に)

道重さんは献身的な心で、持っている魔法力をすべて使い、RWB魔法学園を救ったのでした。

学園は救われましたが、引き換えに道重さんは意識と魔法の力を失ってしまいました。

そのために道重さんは眠り姫のように眠り続けながら、気力と魔法力を復活させていかなければならなくなったのです。
実に、2年以上の月日が必要でした。




2年半経ったある日、RWB魔法学園の『予言』の教師が宣言しました。
「もうすぐ、道重さんが目を覚ましますよ」と。

リサちゃんも、泣いて喜びました。


目覚めの日には、盛大にパーティーを開催しようということになりました。

このところ、学園を装飾していたのはそのためでした。


プレゼントも、道重さんのためでした。

「誰よりも道重さんのことが好きな私が、誰よりも素晴らしいプレゼントを渡したい」とリサちゃんは思ったのでした。



でも、もう。

道重さんに会うどころか、元の世界に戻ることもできなくなってしまいました。


どれくらいの時間が過ぎたのでしょうか。

道重さん復活のパーティーは、もう始まってしまったのでしょうか。



『ヤマキサン』『ドコニイルノ』


RWB魔法学園の誰かが、なにか力を使ってメッセージを送ってくれているようです。


『ヤマキサン』『ドコ』


でもここは、魔法を使えない場所。
こちらからは何も送ることができません。


『ミチシゲサン』『メヲサマシタ』『パーティー』『ハジマルヨ』


リサちゃんは、道重さんが復活して良かったなと心から思いました。
同時に、もう会えない悲しさで心が押しつぶされそうになりました。


その時です。



(つづく)

RWB魔法学園物語外伝Ⅱ・サイコーのプレゼント(4)

2017-03-30 | RWB魔法学園物語
リサちゃん、あれ見て!」

ケロミンの目線の先には、スカージョ山の頂上がありました。
そして、そこにはあの、図鑑で見たのと同じユーギィの花が咲いていたのです。


「行きましょう、シャルフィ」

スカージョ山の中腹まではシャルフィに乗って行くことができましたが、それより先は道が狭く、歩いていくしか方法がありませんでした。

「ここで待っててね、シャルフィ」


リサちゃんはシャルフィから降りると、自分の力で歩き出しました。
ここでは魔法も使えません。
一歩一歩、自分の力で進むしかないのです。



本当に、ここからが大変でした。

靴底を通して足の裏に痛みが伝わるような、硬い草の一面生える道があったり。

そこらじゅう虫だらけの道を、泳ぐように渡ったり。

寒くて凍えそうなだと思ったら、反対に暑くて死にそうになったり。

猛獣に追いかけられたり。

転がる岩に追いかけられたり。

刺されたらものすごくかゆくなる、大量の蚊に追いかけられたり。


やっと頂上にたどり着くぞ、と思ったら。

地形がまるで生きているかのように変化し、気が付いたら元の場所に戻ってたり。



「ただいま、シャルフィ。でも、またこれから行かなくちゃいけないの」

シャルフィも、不思議そうに首をかしげています。

「私、絶対に、あきらめない。絶対に、世界一のプレゼントを手にいれなくちゃ」



リサちゃんは、強い心で再スタートしました。

硬い草原を抜け、虫の原を泳ぎ、極寒地獄と灼熱地獄を抜け、猛獣や岩や蚊からも逃げ切りました。



スカージョ山も根負けしたのか、今度はちゃんと、頂上へとたどり着くことができました。

麓に到着してからここまで、丸二日間が経過してしまいました。

それでもリサちゃんは、最高のプレゼントを手に入れられる喜びで爽やかな表情でした。



目の前には念願のユーギィの花が咲いています。

リサちゃんが手を伸ばし、花を摘んだその時。

まわりは闇に包まれ、自分の身体さえ見ることができなくなってしまいました。



「え、どうなってるの?」

リサちゃん、大変なことになったわね」
暗闇の中でケロミンの声が聞こえました。

「ユーギィの花のように魔力の強いものに触れる時は、もっと用心しなきゃいけなかったのよ」

「ちゃんと説明してよ。どういうことよ」

「ミミズがパソコンを操作してインターネットショッピングができるかってこと」

「はあ? 意味わかんない」

「宇宙の仕組みもわからずに宇宙旅行に来ちゃったアリクイみたいなものとでも言えばいいかしら。
もっと簡単に言えば、ユーギィの花は私たちの手におえるような代物じゃなかったってことよ。
そんな訳のわからない力の強いものに触っちゃったから、私たちはこの世のコトワリの外に強制退出させられちゃったってこと」

「どうすれば元に戻れるの?」

「諦めなさい。どうやっても無理よ」

「そんなぁ」


リサちゃんの目に、涙があふれてきました。


「冷たいっ。これは涙? あなた泣いてるの?」

「そりゃ泣くでしょ。せっかく道重さんにまた会えると思ったのに!」

「そうよね」

二人は、無言になってしまいました。



(つづく)

RWB魔法学園物語外伝Ⅱ・サイコーのプレゼント(3)

2017-03-30 | RWB魔法学園物語
リサちゃんが魔法のホウキで降り立ったのは、実家の前でした。

山木家邸宅は東京ドーム10個分の敷地内にあります。
山木家は表の顔としては財閥として知られていますが、裏の顔としては代々続く魔法一族なのでした。

江戸時代までは陰陽師として活躍。
明治以降は西洋魔術をいち早く取り入れ、日本政府の方針を決定する要人であるとも噂されています。



家の中へ入ると、リサちゃんはまっすぐ、父親のいる部屋へと向かいました。

「パパお願い、シャルフィを貸して!」

リサ、帰宅早々なんだ。行儀が悪いぞ」

「時間がないのよ。ねえ、お願い!」


リサパパは、娘の真剣なまなざしに驚きながら、うなずきました。


「なにか大切な用事があるみたいだな。よし、貸そう」

「ありがとう、パパ」


リサちゃんはパパから、厩の鍵を受けとりました。


屋敷の奥に、黄金で装飾された厩がありました。

リサちゃんが鍵を開けると、中にユニコーンのシャルフィがいました。

シャルフィリサちゃんの祖先が魔術を使って、A国のB国への武力侵攻を阻止した時にB国の偉い人からお礼に譲り受けたと言われています。



「久しぶりね、シャルフィ!」

リサちゃんが首をなでてやると、シャルフィも嬉しそうにいななきました。



「お願い、私に力を貸してちょうだい」

シャルフィは、うなずきました。

「ありがとう、シャルフィ。あなたなら反魔法地区へも行けるわね」


リサちゃんは、シャルフィにまたがりました。

すると、まわりの空間がねじれたように見え始めました。


シャルフィは、リサちゃんの合図とともに、すばらしい速さで駆け出していきました。


気が付くと、そこはもう、スカージョ山の麓でした。



(つづく)