マイは半月ほど前、イエローマメファイターの塗装を手伝っていました。
しかし、その部品をどこかに無くしてしまいました。
責任を感じたマイは他の完成品とともに、商品チェック担当の長永井さんの家へ一人で持って行き、渡しました。
もちろん数百ある完成品の他に、一つだけ部品を無くしたものがあることを謝りながら。
すると長永井さんは、こういいました。
「部品を一個無くしたって?
じゃあ、報酬は払えないね、一円たりともだよっ。
さあ、お帰り」
「そんな、ひどいです」
マイは泣きそうな声でいいました。
姉妹が合計50時間くらいかけて作ったものが、すべて台無しになってしまうというのですから。
「お金を払ってほしけりゃ、あと一ヶ月以内に見つけておいで。
見つけたらちゃんと報酬をやろう。
しかし、見つけなければ逆に罰金を貰おうかねえ、ヒヒヒ」
長永井さんに睨まれると、誰も反論することはできませんでした。
長永井さんは、瞳の大きな、不気味なお婆さんでした。
一ヶ月ほど前までは、商品チェックの担当者は優しそうなお爺さんでした。
しかし、急にそのお爺さんが辞めることになり、かわりの担当者として現れたのが長永井さんでした。
「やったあ。これで働いた分のお金、貰えるよ」
マイはチサトの手を取り、喜びました。
「きっと、このタンスのどっかに入り込んでたんだね。
燃えなきゃ、絶対見つからなかったよ。
ひょっとして、愛理のお陰?」
するとチサトは、真顔になり
「それは、どうかな」とつぶやきました。
マイは、そんなチサトを気にせず、小躍りしながらイエローマメファイターの部品を握りしめると、長永井さんのところへと向かいました。
「ごめんください」
マイがノックし戸を開けると、すぐ目の前に長永井さんは立っていました。
「ひぇぇ」
相変わらず、迫力ある眼力の持ち主です。
「無くした部品、見つけました!」
マイは長永井さんに、イエローマメファイターを渡しました。
長永井さんは静かに
「ふん。確かに」
と言い、奥へと一旦引っ込んでいきました。
再び現れた長永井さんの手には、封筒が握られていました。
そして、その封筒をマイに投げるように渡すと、勢いよく戸を閉めてしまいました。
マイは急いで封筒の中を確認しました。
すると、約束のお金の十分の一くらいしか入っていませんでした。
マイは再び戸をノックし、長永井さんを呼びました。
「なにか用かね。私は忙しいんだよ」
しばらくして、怒った表情の長永井さんが現れました。
「あの、お金が足りないんですけど」
マイは、怖がりがならも勇気を出して訴えました。
「うるさい子だね。
私に迷惑をかけたんだ、当然だろう!」
長永井さんの目が光ると、マイは石のように硬くなり、動けなくなりました。
長永井さんは、それを見て口元だけで笑い、戸を閉めてしまいました。
(誰か、た、す、け、て)
本当に石の像のように固まってしまったマイは、声が出なくなっていました。
実際、そばを通った人がいたとしても、マイを見て「よくできた石像だな」と思ったことでしょう。
(つづく)
しかし、その部品をどこかに無くしてしまいました。
責任を感じたマイは他の完成品とともに、商品チェック担当の長永井さんの家へ一人で持って行き、渡しました。
もちろん数百ある完成品の他に、一つだけ部品を無くしたものがあることを謝りながら。
すると長永井さんは、こういいました。
「部品を一個無くしたって?
じゃあ、報酬は払えないね、一円たりともだよっ。
さあ、お帰り」
「そんな、ひどいです」
マイは泣きそうな声でいいました。
姉妹が合計50時間くらいかけて作ったものが、すべて台無しになってしまうというのですから。
「お金を払ってほしけりゃ、あと一ヶ月以内に見つけておいで。
見つけたらちゃんと報酬をやろう。
しかし、見つけなければ逆に罰金を貰おうかねえ、ヒヒヒ」
長永井さんに睨まれると、誰も反論することはできませんでした。
長永井さんは、瞳の大きな、不気味なお婆さんでした。
一ヶ月ほど前までは、商品チェックの担当者は優しそうなお爺さんでした。
しかし、急にそのお爺さんが辞めることになり、かわりの担当者として現れたのが長永井さんでした。
「やったあ。これで働いた分のお金、貰えるよ」
マイはチサトの手を取り、喜びました。
「きっと、このタンスのどっかに入り込んでたんだね。
燃えなきゃ、絶対見つからなかったよ。
ひょっとして、愛理のお陰?」
するとチサトは、真顔になり
「それは、どうかな」とつぶやきました。
マイは、そんなチサトを気にせず、小躍りしながらイエローマメファイターの部品を握りしめると、長永井さんのところへと向かいました。
「ごめんください」
マイがノックし戸を開けると、すぐ目の前に長永井さんは立っていました。
「ひぇぇ」
相変わらず、迫力ある眼力の持ち主です。
「無くした部品、見つけました!」
マイは長永井さんに、イエローマメファイターを渡しました。
長永井さんは静かに
「ふん。確かに」
と言い、奥へと一旦引っ込んでいきました。
再び現れた長永井さんの手には、封筒が握られていました。
そして、その封筒をマイに投げるように渡すと、勢いよく戸を閉めてしまいました。
マイは急いで封筒の中を確認しました。
すると、約束のお金の十分の一くらいしか入っていませんでした。
マイは再び戸をノックし、長永井さんを呼びました。
「なにか用かね。私は忙しいんだよ」
しばらくして、怒った表情の長永井さんが現れました。
「あの、お金が足りないんですけど」
マイは、怖がりがならも勇気を出して訴えました。
「うるさい子だね。
私に迷惑をかけたんだ、当然だろう!」
長永井さんの目が光ると、マイは石のように硬くなり、動けなくなりました。
長永井さんは、それを見て口元だけで笑い、戸を閉めてしまいました。
(誰か、た、す、け、て)
本当に石の像のように固まってしまったマイは、声が出なくなっていました。
実際、そばを通った人がいたとしても、マイを見て「よくできた石像だな」と思ったことでしょう。
(つづく)