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水神少女あいりん(6)

2011-02-24 | 水神少女あいりん
愛理舞美サキチサトマイの四人はテーブルを囲んで食事を始めました。
食事は、大根の葉っぱのお味噌汁、大根とニンジンの煮物、白飯、でした。

質素でしたが、愛理にとってひとりぼっちではない食事は、大変おいしく感じました。


「ごちそうさま」
食べ終わって、皿洗いを手伝おうとする愛理に

「私やるから。くつろいでて」と舞美。


「ううん、やりたいの。私、こういうの好きだから」
嬉しそうに皿洗いを続ける愛理を見て、舞美はほほえみながら
「上手だね」と褒めました。


舞美と愛理が皿洗いをしている最中、他の三人は再び内職を始めていました。

皿洗いを終えた愛理がやってきて、じっとそれを見ています。


「なにか用?」
マイの問いかけに

「なにやってるのかなって」
興味津々な愛理です。


「なにって、内職だよ。
こうして、妖怪おまじないカードを袋に詰めてるの」

マイは、作業をしながら愛理に説明を始めます。


「妖怪? おまじないカード?」
愛理は、テーブルの上に並べられたカードの一枚を取り見てみました。


カードには『銭狸(せんり)』という狸の妖怪が描かれていました。


裏を見ると
『銭狸
お金大好き妖怪

人の金を奪ったり、術で葉っぱを物に変え、それを押し売りしたりする
手にした金は、たいてい酒を飲むことに使ってしまう

人に化けるのが大変上手で普段は黒い狸の格好をしている』

と妖怪についての説明書きがありました。


「おもしろい。これ、もらってもいい?」
愛理が言うと

「ダメに決まってるでしょう」
マイは怒ってそれを取り上げ、袋に入れてしまいました。


二人の横では、サキとチサトが内緒話をしています。

そこへ、舞美もやってきました。
「みんな、手伝ってくれるのは嬉しいけど、そろそろ寝る準備したら」

「あ、あの、そうだね」
舞美を見て、サキは慌てているようです。


「ほら、言いなって」
チサトがサキを無理矢理立たせながら、そうつぶやきました。


「あのね、みーたん」
サキは舞美に話し出そうとしますが、言葉が続きません。
「あの、ほら、ね」


「もういいヘタレ、チサトが言う」
チサト、サキを座らせて立ち上がります。
「さっきね、家に知らないおじさんが訪ねてきたの。

ほら最近、役所の人とか警察の人から押し売り注意って言われてるじゃん。
だからすぐ帰ってもらおうと思ったんだけどさ」



チサトがそこまで言うと、サキも続きを話し出しました。
「なんかその人、勤めていた会社が火事になっちゃったんだって。

お金も仕事も失って、奥さんも子供も食べさせなきゃいけないのにって、泣いてた
でも奇跡的に会社で作ってた万年筆は残ってて、それを買ってくれたら少しはどうにかなるって」



そういってサキは、足下に隠し置かれていた箱をテーブルの上に置きました。
中には万年筆が数十本入っていました。


「かわいそうだなと思って、マイ達、買ってあげたんだ。
おじさんすごく喜んでたよ。

でも生活するお金、なくなっちゃった。
今月と来月は、なにも食べられないかもしれない」

マイは涙目で言いました。


「黙って勝手なことしてごめんね、みーたん」
サキはそう言って舞美に抱きつきました。

チサトとマイも、舞美に抱きつきました。


舞美は3人の頭を撫でながら
「よくやった!」
と褒めました。
「じゃ、寝ようか」

4姉妹は立ち上がり、それぞれの寝室へ向かおうとしています。。


「ちょーっと待ったー」
愛理は、変なポーズで4人の前に立ちふさがりました。
「それって押し売りなんじゃない?」


「は? なに言ってるし」
愛理を睨みながら、サキが言いました。
変な言葉遣いです。


「正直、私もちょっとそうなのかなって疑ったけど」
舞美が困ったように話し出しました。
「でも本当のことかもしれないでしょ。
本当だったら、この子達とてもいいことしたと思うし。
嘘だとしたら、火事で困る人がいなくて良かったと思うし」



「違うの舞美ちゃん。
私のてっぺんが頭がムズムズしてね。感じるの、これは悪いことだって。
なんて言っていいのかわからないけど。
えっと」

愛理は一生懸命説明しようとしますが、なかなか伝わりません。

みんなを思って愛理も必死なのですが、不器用だし、言いたくても言えないこともあるのです。
でも結局その必死さが、姉妹を呆れさせる結果になってしまいました。


「おまえには関係ない。どうせ今晩だけなんだからね、この家に泊まるの」
とうとう、チサトが突き放すように言いました。
「明日、朝になったら出ていってね。
チサト達学校あるし、舞美お姉も早くから仕事だし」



愛理はなんだか寂しい気持ちになりました。
泣きそうになりましたが、そんな顔を見せてはいけないと思い、すぐに背中を向けました。
「わかった……おやすみなさい」


「おやすみ、愛理ちゃん」
舞美が声をかけると、4姉妹はそれぞれ寝室へと入っていきました。


しばらく愛理は動けませんでした。
悔しいような、寂しいような気持ちでいっぱいでした。

どうにか気持ちを落ち着かせ、与えられた部屋に入り布団をかぶりますが、なかなか寝付けません。

と、そこへ突然の雨音が。
(よかった)
(雨の音が心を癒してくれるはず)


しかしやがて、天井から水が落ちてきました。
雨漏りです。

水は、布団の上、愛理の顔、腕、そして、頭のてっぺんにも落ちました。
頭のてっぺんに雨が一粒、二粒……

すると、不思議なことに愛理の心が燃え上がりました。
勇気が涌いてきました。


不意に立ち上がると愛理は
「へっへっへっ、やってやるぜ!」
と不気味に笑い出しました。

そしてそのまま、万年筆の入っていた箱を蹴飛ばすと、家の外へと出て行ってしまいました。


箱の中の万年筆は消えていて、すべて落ち葉に変わっていました。

(つづく)


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