芸能人女子フットサル応援団!(つんくさん、ハロプロ関連)

つんくさん、ハロー!プロジェクト関連

研女!第6話。

2017-01-09 | 研女!
(フィクション!)



ハロプロ研修生への加入お誘いの電話から一週間。


事務所で保護者への説明会兼、手続きがあった。

母親は、やけにウキウキした様子で出かけていった。




「ただいまーーー。ねえねえ聞いてよ、聞いてよ」

えええ。
なんだそのテンション。

帰宅した母親は、興奮した様子で私にいろいろと話をしてくれた。



「まず事務所に入る時、こぶしファクトリーのれいれい・たぐっちとすれ違ったのよ」


おいおい知ってたのかよ、こぶしファクトリー。
しかも公式ニックネーム。

あんたハロプロ大好きじゃねえか。


「でもKAN見かけなかったよ、KAN。
いたら一緒に歌ってほしかったのに。
愛は勝つの替え歌、『心肺内科だねー』って」


くっだらねーな。
絶対にやめてくれ。



他に。
ちゃんとした情報も。


同期の研修生は私を含めて3人、ということとか。

レッスンは東京と名古屋の2か所で行われていて、東京は私ともう一人、残りの一人は名古屋で受けるらしいってこととか。


初レッスンは今度の土曜からスタート、とか。


なんだか話を聞いているだけで緊張してきてしまった。


同期の研修生とも初顔合わせ、か。

仲良くできるかな。
学校のことがあっただけに、考えるとお腹が痛くなってきた。



あ!

という間に当日。



用意するものを再チェック。

動きやすい服装オッケー。
(スウェットにTシャツなど)

室内シューズオッケー。

調理用ラップの芯オッケー。


最後が謎だけど、とりあえず忘れ物なし!



午後2時に事務所前に集合。
研修生のマネージャーさんが待っていてくれているらしい。


でも1時間前に到着してしまった。
当然、マネージャーさんもいなかった。



時間を潰そうにも、事務所の周りには児童公園くらいしかないし。
ここで1時間はキツイな。



その時、目線の先には東京タワーが!


初めて来たかもしれない、東京タワー。

サーティワンのストロベリーチーズケーキをカップで注文、フードコートに座った。



「あれぇー!」


はて。

後方から、握ると音の鳴るアヒルのおもちゃのような高い声が。

こんなところでおもちゃに話しかけられるわけないし。

私ったら、疲れてるのかしら。
まだ中2なのに、やだわ。



「あれれぇー!」


空耳ではないらしい。

困った。
これから世にも奇妙な物語が始まるのかしら。

今のところ、タモリはいないわ。



勇気をもって振り返ると。

巻き巻きツインテール。

ウサギのキャラクターが前面に大きく描かれた黄色のTシャツ。
その上に、レース素材のジャケット。

ピンクのフリフリスカート。

『火の用心』の刺しゅう入りスポーツバッグ。

バッグには栃木のゆるキャラ『しもつかれくん』ストラップ。

推定、身長143センチ。



ヤバい。

無視するしかない。

目を見たら、宇宙とか異次元とかに連れてかれちゃうやつだ。



「あれれれぇー!」



どうしよう。

肩に手を置かれた。

もうこれは逃げようがない。

パパ、ママ、さようなら。



ゆっくりと振り返り、顔を見た。


ん?

どこかで見たような。




「久しぶり」


うーん、誰だっけ?


「ほら、言った通りでしょ」


なにを言ってるんだ、この子は。


「絶対また会えるって、キセキ言ったじゃん」


あーあ。

思い出した。

貴石と書いてキセキ。

この前のオーディションで話しかけてきた子だ。



「これから研修生のレッスンでしょ? キセキもなの!」



ということは。

あなたも受かったんですね、ハロプロ研修生に。

それは意外ですぅ!

どちらかというと、ハロプロ研修生より『いちごミルキッス』とかいう怪しい地下アイドルのほうに行くかと思いましたよ私は!



「よろしくね」

「よろしく、お願いします」

「やだな。敬語なんてやめてよ、他人みたい」


やだな。他人ですよ。

完全なる、他人ですよ。

まじりっけのない、他人ですよ。



「いくつ?」

「今、14歳。中2です」

「じゃあキセキのいっこ下だね」


と。
ととと。
年上ですか?

年上でその服装ですか。

そうですか。

ははは。


「あれ、話の途中でどこ行くの?」



キセキに腕をつかまれた。

うーん。

無意識に、この場から立ち去ろうとしていたらしい。



「年上だけど、遠慮は無しだからね。キセキって呼んで」


遠慮なんてしませんよ。

ははは。


そもそも私は部活も入ってないし、上下関係が苦手だ。


クラスメイトのゲロミズはソフトテニス部に入ってて。

ピンクのヘアゴムを付けて行っただけで、3年生から1時間説教をくらったらしい。


ピンクや赤・青・黄色を付けていいのは3年だけで、1、2年は黒か茶色しかダメだそうで。
それがうちの学校の絶対的ルールだそうで。

そんなこと、生徒手帳のどっこ見ても書いてないんだけどね。


話を聞いて、帰宅部で良かったと心底思った。



「じゃ、そういうことで。キセキさんさよなら」

「待ってよ、帰るの? これからレッスンだよ」



ああ、そうだった。

どうもさっきから頭が回りませんで。


「しっかりしてよー」


ムカ。


「ところで、あなたの名前は?」

「へへ、名乗るほどのものでは。つまらねえ普通の女子中学生でして」


笑顔をキープしたまま、待っているキセキ。

ちっ。
こいつは回避不可な状況だ。



「ヤ、ヤエです」


おっと、ついに名前公表しちまったぜ。


「これからよろしくね、ヤエちゃん」


うわー。

ここでハグしてきますか?

ストレートに言います。
キモイっす。



この時にたった鳥肌は、レッスンが始まるまで消えることはなかった。



(つづく)

研女!第5話。

2016-12-21 | 研女!
(フィクション!)


7日目の夜7時がやってきた。

オーディション事務局からの電話は、なかった。

良かったんだよね、これで。




用が済んだので、母親にスマホ(ゲームアプリ専用機)を返しに行った。

なにをやってるのかと思ったら、居間でプレステしてた。

結局ゲームか、あんたは。




『あなたのことが、ずっと前から好きでした』

オバサンが恋愛ゲームですか。

しかも男性向けの。



「芽留変、僕もだよ」

わざわざ主人公の声を当てるな、いい歳こいて。

ヒロインの名前、芽留変と書いてメルヘンかよそして。

えらいキラキラネームだな!

「変」の字は他に当てる字なかったのか!




私の冷たい視線に気が付いたのか、母親が振り返った。



「なによ」

「これ、ありがとう」


母親は黙ってスマホを受け取り、すぐまたゲームを始めた。




「じゃ、そういうことで」

立ち去ろうとした時、母親に声をかけられた。

「で、どうだったの?」

「へ? なななな、なにが?」



一瞬、すべてお見通しなのかと思った。

が。

ただの誤解だった。



「なにがって、黒鷲高校からの電話よ」


ああ、そっちか。



「ダメだった。そうウマい話はないよ」

「あらそう。残念」



その時!

母親のスマホに電話がかかってきた。



まさか今頃?

冷や汗が出た。



電話に出る母親。

立ちすくむしかできない私。



「もしもし、え? あ、はい」



いぶかしげな表情だ。



「うっそ、マジでじま? ぶっとび!」


いきなりの死語連発。

良かった。

オーディション事務局からの電話ではなかったようだ。




「わかった。そんじゃね、シクヨロー」


学生時代の友人、ってところかな。


電話を切り、私に指をさす母親。



「おめでとう。今日からあなたはハロプロ研修生です」



なにがなんだか、わからなかった。



「黙ってないで言ってくれれば良かったのに」

「まさか今の電話って」

「モーニング娘。のオーディション事務局から」



おいおい、「マジでじま?」とか「ぶっとび」とか「シクヨロ」とか言ってたじゃねえか。

それって初対面のオーディション事務局の人へ向けての言葉だったの?

思っていた以上にヤバい人だったよ。我が母親。

いろんな意味で震えが止まらないよー。




「モーニング娘。は落ちたけど、研修生には合格しましたって。詳しいことはまた封書でお知らせしますって」

「勝手にオーケーしたの?」

「モーニング娘。になりたいからオーディション受けたんでしょ? だったら断る理由はないでしょ」

「でも」

「つべこべ言わないで。行ってみてイヤだったら辞めればいいじゃない」



この時の母親には、今までに感じたことのないような力強さがあった。

なにも反論できなかった。



「実はわたくし」


なにか告白を始めるつもり?

怖えよ。

見ず知らずの人に死語連発するような奴の、思い切った告白。

想像しただけで怖えよ。



「結婚する前、モーニング娘。2期オーディションを受けてたのよ」

「えええっ」

「びっくりした?」


そりゃするでしょう。

私にとっては、あなたは天然で世間知らずな、普通の専業主婦なんだから。





「ま、ゆうても最初の書類で落とされたけどね」



で、でしょうね。

だと思いましたけど?



「まあだから、あなたがハロプロの研修生に合格したことは嬉しいのよ。私の分まで夢を叶えてくれたようで」



別にそういうつもりは。



「応援するから、がんばって」



そして母親はゲームに熱中したので、それ以上話しかけることもできなかった。




私はこうして、ハロプロ研修生になった。




(つづく)

研女!第4話。

2016-12-18 | 研女!
(フィクション!)


作戦勝ちで見事、母親のスマホを預かることに成功した。



天然で世間知らずな専業主婦のウチの母親は、実は、天然で世間知らずなだけではなかった。


正確には。
友達のいない、天然で世間知らずな専業主婦だったのだ。

(あ、あとチョイ下品も付け足しておこうか)



なので、他から電話がかかってくることもほとんどないのだ。

(私は密かに、母親のスマホをゲームアプリ専用機と呼んでいる)



あとはオーディション事務局から万が一、ハロプロ研修生へお誘いの電話がかかってきたら母親のふりをして断るだけである。

ミッション遂行まであと一歩!



一日目。
連絡なし。

二日目。
連絡なし。

三日目。
連絡なし。

四日目。
連絡なし


なんだ。

やっぱり電話なんかかかってこないじゃん。

自意識過剰だった。

恥ずかしい。

と思っているところへ!


電話がかかってきた。




「もしもし」

「あの、今、大丈夫でしょうか?」

「あ、はい。なんでしょうか」


断るためのシミュレーションを何度も頭の中で繰り返したはずなのに、緊張で声が震えていた。



「えっとじゃあ、イタリアーナミックスのMサイズとカマンベールミックスのMサイズをお願いします」



うわ。

ベタな間違い電話来た。

ベタすぎて、ちょっと嬉しい。

バナナの皮で本当に転んでしまった時以来のやつ!

昭和のアニメなんか観てるとよくあるやつだ! という感動!

ラーメンや蕎麦じゃなく、ピッツァてところが平成っぽくはあるが。


ここはひとつ、のってさしあげるのが礼儀であろう。



「かしこまりました。お客様お名前よろしいでしょうか」

「三丁目の大槻です」

「大槻様、申し訳ないのですが只今大変混雑しておりまして、一時間近く到着までかかってしまうかもしれないのですが」

「そうなんですか、困ったな。でもいいです、お願いします」

「ご注文ありがとうございました」



ふう。

なんだか大きな仕事をひとつ、やり終えた気分だ。


ごめんよ、大槻さん。

今後もし知り合うようなことがあったら、お詫びにピッツァおごるから許してね。



五日目。
連絡なし。
ただし、間違い電話あり。


六日目。
連絡なし。



さすがに一週間経って連絡なしだったらもう、それ以降もないだろう。

夜7時まで待ったら、母親にスマホを返そうと思った。



(つづく)

研女!第3話。

2016-12-13 | 研女!
(フィクション!)


モーニング娘。オーディションの結果。


連絡が。


まったく来ない!



自分でもすっかり忘れかけてた二ヶ月後、公式サイトでこんな発表があった。

オーディションでの該当者はなし。新メンバーはハロプロ研修生から選抜



なんだか、ほっとした。

もし合格なんてしてしまったら、生活がガラっと変わってしまうだろうし。

なにより、今回のことを親に説明するのが面倒くさいなと思っていた。




公式サイトでの発表から二日後、自宅に事務所から封筒が届いた。


あ、そうそう。

ウチでは郵便物の仕分けは私が担当なので、親を介さずともこういった手紙を受け取ることができたのだ。
そうじゃなければオーディション自体、受けていなかったであろう。

年賀状の時期以外は比較的楽な仕事である。



事務所からの手紙に書いてあった内容は、公式サイトの発表とほぼ一緒だった。

違ったのは、最後の1行。

なお、今回のオーディションにご参加いただいた方の中から弊社よりご連絡を差し上げる場合がございます



いや待って。
電話されるのは困る。

連絡先、親のスマホ番号書いちゃったし。



連絡ってなんのため?

そういえば、落選者からハロプロ研修生に推薦されることもあるって2次オーディションの前に説明されたっけ?



ハロプロ研修生か。

なんだか大変そう。

そもそも人間関係のゴタゴタから逃げたくてオーデイション受けたのに、わざわざ今から女子の集団に入るのってしんどいでしょ。



断るにしても。

オーディションを受けたことを親に知られるのは嫌だ。



私は、しばらく母親のスマホを預かる手を考えることにした。

ウチの母親は天然で世間知らずな専業主婦である。

私でも知恵を絞ればどうにかなるはずだ。
たぶん。




「ねえお母さん」

「あら、そっちから話しかけてくるなんて珍しい」

「なんで財布を取り出してるの?」

「どうせお金をせびりに来たんでしょ、フン」


ここで怒りを出してしまっては一巻の終わりである。



「違うの」

「じゃあなに」

「しばらくスマホ貸してくれないかな」

「自分の使えばいいでしょ」

「私のは壊れちゃって」



ここで母親の、修理に無駄な出費がかかるという愚痴から始まり、学校の成績へのダメ出し、普段の私の態度など説教タイムが小一時間続いた。


それでも。
がまん、がまん。



「それで、スマホのことなんだけど」

「だめよ。お母さんだって大事な用事があるんだから」



彼女の言うスマホを使う大事な用事とは、パズルゲームのアプリのことである。

がまん、がまん。



「お母さんが使いたい時には返すから」

「なんでそんなに使いたいの。どうせ友達とくだらない話するためでしょ。今日のオナラは臭かった、とかさ」



はい。発表します。
ウチの母親、チョイ下品オバチャンでした。

がまん、がまん。


いや、もうがまんも限界。

これは、最終手段を使うしかない。

この手だけは使いたくなかったけど、下品オバチャン、アンタのせいだよ。




「実は、黒鷲高校から電話がくるかもしれなくって」

「黒鷲ってあの、偏差値高いとこ?」

「そう。あの偏差値の高いとこ」

「偏差値低いアンタと、偏差値高い黒鷲高校になんの関係があるの」



うわぁぁぁぁ。
いちいち腹立つわー。



「今、黒鷲高校が秘密のキャンペーンをやってて」

「はぁ?」

「全国の中2にランダムに電話をかけて、3コール以内に出られれば来年の入試をパスできるんですって」




母親の表情が固まった。

さすがにこんなわかりやすい嘘、ばれるか。

有名進学校が地方でやってるお昼の情報番組みたいなサービスして、なんのメリットがあるというのだ。




「マジ?」

「う、うん。マジ。間違ってお母さんの番号で登録しちゃったんだよね」




いとも簡単にスマホを貸してくれた。

さすが天然で世間知らずな専業主婦であるウチの母親、ちょろいもんだ。





(つづく)

研女!第2話。

2016-12-12 | 研女!
(フィクション!)


オーディションが終わって、赤羽橋の駅へ向かう途中で知らない人から声をかけられた。


年齢は40代くらい。
曇り空だというのにちっちゃい丸サングラスをかけた、上下白スーツ姿の見るからに怪しいオッチャンである。



「ヘイ、ジョノカー」
「ジョノカー?」


しまった。
ジョノカーというキャッチーな響きに、つい相手をしてしまった。



「ジョノカーは彼女ってことだよ。モー娘。のションオーデーの帰り?」



モーニング娘。オーディションの帰りですか、ということだろうね怪しいオッチャン。
それくらいはわかる。


ジョノカーはキャッチーだったのに。
ションオーデーって言葉のニュアンスが気持ち悪すぎて、口からトミカが50台くらい出てきちゃいそうです。



ふと。
その時。


反抗期の私だが、日ごろ親から言われていたことを思い出した。


変な人に声をかけられたら、すぐ110番
うん、わかったよママ! パパ!



携帯から通報しようとした私の手を、あわてて押しとどめた怪しいオッチャン。
けっ。
気安く触るな、こんにゃろ。



「違う違う、そういうんじゃないから。はいこれ」
オッチャンは私に名詞を差し出してきた。


『有限会社 苺ウイッチウエイ』


一期一会とかけてるんだね、怪しいオッチャン。
ウザいよ、会社名が。とても。



『取締役社長兼アイドルプロデューサー ストロベリー啓次』


オッチャンがストロベリーはキツイっすよ、さすがに。
せめて、豆大福啓次にしときなよ。



「きみならきっと合格すると思う。でも万が一、万が一だよ。残念な結果だとしたらうちに連絡して」


怪しいオッチャンはそう言いながら、すぐに後ろからやってきた別の子にも話しかけに行った。

前衛舞踏家の麿赤児さんが女装したような顔の子だ。
思わず「息子の大森南朋さんによろしく!」って話しかけちゃいそうな雰囲気の子。



「きみならきっと合格すると思う。でも万が一、万が一だよ。残念な結果だとしたらうちに連絡して」

女性版赤児さん相手に、私の時と一語一句同じじゃねえか、オイ。
あんた風にいうなら苺一句か、オイ。


オッチャンあんた、ロボットみたいにまるっきり同じ言葉使うし。
丸サングラスに全身白だし。

ストロベリーというより、豆大福より、Pepperくんだよ。
Pepper啓次だよ。
ペッパー警部みたいだよ。



その後、苺ウイッチウエイを調べてみた。
いちごミルキッスという地下アイドルが所属しているグループらしい。


アイドルオタクの人がネットでまとめていた、いちごミルキッスの主な特徴。

ファンとアイドルが10センチの距離で見つめ合いながら1分間会話する、お見合い会を開催。
1回1000円。

ファンとアイドルが互いに肩や二の腕をマッサージしながら1分間会話する、揉み合い会を開催。
1回1000円。


ドン引きー。
背負い投げー。

口からトミカ100台出ちゃいそうです。
全部違う車種のやつ。




(つづく)

研女!第1話。

2016-12-10 | 研女!
(フィクション!)


私。
中2の夏。


同じクラスの女子。
担任の先生。
親。


うまくいかないな、と思うことが多かった。



このモヤモヤした気持ちを、どうにかしてやりてぇと思った。

よくわからないけど。
いろんな人を見返してやりたかった。



そこで私は。

モーニング娘。オーディションに応募した!


しかし。
待っても待ってもなかなか連絡が来ず。


これは。
例のあれじゃん!
オーディション落ちた、日本シネ。じゃん!



なんて思ってるところへ、書類審査通過のお知らせが来た。
嬉しいというよりか。
ふーん、て思った。

とにかく、実感ゼロだった。




嬉しかったのは、東京へ行けるということ。


生まれ育った千葉県松戸市からほぼ出たことのない私が、赤羽橋っていうところにある事務所で面接とパフォーマンス審査を受けることになったのだ。


これまでも東京くらい行こうと思えば行けたんだけど、きっかけがなかったのだ。



当日。
駅に到着。


周辺はSEIYUとかダイエーとかあって、六本木の近くっつったってウチの地元とそう変わらなかった。
びびって損した。


こんなことなら、渋谷とか原宿とかもジャンジャン行くしかないでしょ。

なーんてこと考えながら歩いてるけど、駅のすぐ隣にあるはずの事務所がなかなか見つからない。



不安になったので交番に訊いたら。
「それってもしかしたら赤羽橋じゃないっすか。ここ赤羽だよ」と言われた。

ややこしい。
駅に似た名前を付けるな、鉄道会社よ。




ちなみに私の叔父さんは以前、酒を飲みながら
「昔、氷室京介っていう人のライブを観に有明コロシアムまで行くことになったんだけど、間違って有明海のほうまで行ってしまったよ」
と言っていた。

本当かどうか怪しい話だけど。
話しながら顔、ニヤけてたし。




まあ、そんなこんなで。

慌ててJRで新宿まで行って、そこから都営地下鉄に乗り換えて、なんとか遅刻ギリギリで事務所に到着することができた。




事務所前には思った以上にたくさんの人が来ていた。
この中から一人選ばれるって大変だなと思った。


たいていの子は、親と一緒に来ていた。


私は一人だった。

親とは絶賛「気まずい」中だし。




オーディション用紙の保護者同意のサインも、同じクラスの「ゲロミズ」っていう渾名の子にかわりに書いてもらった。

ゲロミズって名前はひどいけど、顔は広瀬すずみたいに可愛い子だ。
私とは中1の時から同じクラスだ。


ゲロミズの由来は、本名が「みすず」で。
顔が可愛くてモテる雰囲気なのに、初めての遠足でひどくバス酔いして。

まー、この話はやっぱいいか。




面接と審査のことはほとんど覚えてない。
緊張で頭が真っ白になってしまった。



オーディションは。
同じく書類審査受かった子と5人1チームになって、歌とダンスの披露。
あと、面接官の質問に答える感じ。



本当は、目立つために面接室に側転しながら入ってやろうかしらと思ったんだけど、そんな空気じゃなかった。



私の隣にいた子は、歌でミスって泣いていた。


終わってから、その子にやたらと話しかけられた。

「あなた可愛いから絶対受かると思うよ」とか。
「私とあなたはたぶん最終の合宿審査へ行ける」とか。
「せっかくだから連絡先交換しない?」とか。


私は、キモ! うざ! って思って
「どうせ合宿で会えるし、その時にしよう。連絡先交換」
と言って逃げようとした。



そんな私の背中へ向かって、その子は
「あたし、キセキ。貴重な石と書いて、貴石! 絶対、また会おうね」
と、安っいドラマのように名前を告げ、去っていった。



私、この子苦手だ。
初対面で悟った。




(つづく)