あ!
っという間にお昼過ぎになりました。
Q区役所前公園も、休憩中の会社員や公務員、散歩をするお年寄りなど、たくさんの人が集まってきました。
そんな人達が驚きの表情をし見つめる先には……一人の女の子がいました。
それは、あの子です。
溺れているところを舞美に助けてもらった、風呂敷担いだ、あの女の子です。
女の子は噴水の中へ、釣り糸を垂らしてました。
そこへ、舞美が走りながらやってきました。
「こんにちは」
舞美が笑顔で話しかけます。
「また会ったね。なにしてるの?」
「あなたは、今朝私を助けてくれた人……」
女の子は、舞美を見て嬉しそうな顔になりました。
「お魚を釣ってるのです。捕れたらあなたにも差し上げますね」
「ありがとう」
舞美も笑顔でこたえます。
「でも私、次のバイト行かなきゃ。釣りがんばってね」
そして手を振り、歩き出しました。
女の子も手を振り、釣りを再開させます。
舞美はしばらくして立ち止まり、首をかしげながら、女の子の元へと戻っていきました。
「ねえ、大変」
舞美が笑顔で女の子に声を掛けます。
「そこ噴水だから、きっと魚いないよ」
「え……」
女の子の表情が固まります。
「本当に? 本当にお魚、いない?」
笑顔のまま、舞美はうなずきます。
「そう、ですか」
女の子は泣きそうな顔で、釣り竿を持ち上げました。
と同時に、お腹の虫が鳴り響きます。
「お腹、すいてるの?」
舞美が心配そうに尋ねます。
黙ってうなずく女の子。
舞美は、笑顔で鞄から弁当箱を取り出し、女の子に差し出しました。
「これ、もしよかったら」
「いいんですか?」
弁当を受け取り、すでにその蓋を開けながら女の子は聞きました。
「わあ、おいしそう」
「お口にあうかどうかわからないけど……」
舞美が言い終わるまえに……
「ごちそうさま!」
女の子はお弁当をすべて食べ終わっていました。
「とてもおいしかったです。ありがとう」
女の子の笑顔を見て、舞美も嬉しくなりました。
「それじゃ私、もう行くね」
女の子が手を振ります。
やがて、お腹一杯になった女の子は、ベンチで寝てしまいました。
舞美は
(あんなに素敵な笑顔で食べてくれたら私までハッピーだわ)
と思いました。
そして。
公園を出ると同時に、女の子に負けないくらいの大きさで、お腹が
ぐうううううううううううううっ
と、音を立てました。
公園のベンチで女の子が再び目を覚ますと、夕方になっていました。
女の子は一瞬
(ここはどこかしら。私はなにしてるのかしら)
と思いましたが、すぐに自分のやるべきことを思い出しました。
風呂敷を身体から外し、ベンチへ置くと中からメモ帳を取り出しました。
メモ帳を開くと、1ページ目にこう書いてありました。
『まず、住むところをさがすべし』
それはそれは汚い字でした。
名誉の為に言っておきます。
女の子が書いたわけではありません。
『すなわち、住み込みで働けるところをさがすのだ!』
「住むところ、か」
女の子は不安そうに立ち上がると、公園を後にしました。
(つづく)
っという間にお昼過ぎになりました。
Q区役所前公園も、休憩中の会社員や公務員、散歩をするお年寄りなど、たくさんの人が集まってきました。
そんな人達が驚きの表情をし見つめる先には……一人の女の子がいました。
それは、あの子です。
溺れているところを舞美に助けてもらった、風呂敷担いだ、あの女の子です。
女の子は噴水の中へ、釣り糸を垂らしてました。
そこへ、舞美が走りながらやってきました。
「こんにちは」
舞美が笑顔で話しかけます。
「また会ったね。なにしてるの?」
「あなたは、今朝私を助けてくれた人……」
女の子は、舞美を見て嬉しそうな顔になりました。
「お魚を釣ってるのです。捕れたらあなたにも差し上げますね」
「ありがとう」
舞美も笑顔でこたえます。
「でも私、次のバイト行かなきゃ。釣りがんばってね」
そして手を振り、歩き出しました。
女の子も手を振り、釣りを再開させます。
舞美はしばらくして立ち止まり、首をかしげながら、女の子の元へと戻っていきました。
「ねえ、大変」
舞美が笑顔で女の子に声を掛けます。
「そこ噴水だから、きっと魚いないよ」
「え……」
女の子の表情が固まります。
「本当に? 本当にお魚、いない?」
笑顔のまま、舞美はうなずきます。
「そう、ですか」
女の子は泣きそうな顔で、釣り竿を持ち上げました。
と同時に、お腹の虫が鳴り響きます。
「お腹、すいてるの?」
舞美が心配そうに尋ねます。
黙ってうなずく女の子。
舞美は、笑顔で鞄から弁当箱を取り出し、女の子に差し出しました。
「これ、もしよかったら」
「いいんですか?」
弁当を受け取り、すでにその蓋を開けながら女の子は聞きました。
「わあ、おいしそう」
「お口にあうかどうかわからないけど……」
舞美が言い終わるまえに……
「ごちそうさま!」
女の子はお弁当をすべて食べ終わっていました。
「とてもおいしかったです。ありがとう」
女の子の笑顔を見て、舞美も嬉しくなりました。
「それじゃ私、もう行くね」
女の子が手を振ります。
やがて、お腹一杯になった女の子は、ベンチで寝てしまいました。
舞美は
(あんなに素敵な笑顔で食べてくれたら私までハッピーだわ)
と思いました。
そして。
公園を出ると同時に、女の子に負けないくらいの大きさで、お腹が
ぐうううううううううううううっ
と、音を立てました。
公園のベンチで女の子が再び目を覚ますと、夕方になっていました。
女の子は一瞬
(ここはどこかしら。私はなにしてるのかしら)
と思いましたが、すぐに自分のやるべきことを思い出しました。
風呂敷を身体から外し、ベンチへ置くと中からメモ帳を取り出しました。
メモ帳を開くと、1ページ目にこう書いてありました。
『まず、住むところをさがすべし』
それはそれは汚い字でした。
名誉の為に言っておきます。
女の子が書いたわけではありません。
『すなわち、住み込みで働けるところをさがすのだ!』
「住むところ、か」
女の子は不安そうに立ち上がると、公園を後にしました。
(つづく)