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水神少女あいりん(5)

2011-02-10 | 水神少女あいりん
再びQ区役所前公園へやってきた風呂敷少女は、眠れるところを探すことにしました。

人通りはほとんどありませんでしたが、ベンチに寝るとなるとまた、お巡りさんに見つかってしまうかも知れません。

と、隅っこにちょうど横にもなれるし木の陰になって人目に付かないスペースを発見しました。


(ここなら大丈夫ね)
女の子は横に置いてあった段ボールを敷き、風呂敷を枕にして横になりました。


目を閉じ眠ろうとしますが、なかなか寝付けません。
涙が溢れてくるのです。


(今は泣く時じゃないわ。しっかり、私)
(目的を果たすまでは泣かないって決めたのに)



自分を励まそうとしますが、どうしてもいろいろなことを思い出してしまうのです。

やがて、女の子は目を開けました。
人の気配を感じたからです。

目の前に人影がありました。
よく見るとそれは、男の人でした。


「あなたはだあれ?」


女の子が話しかけると。

「私は、ホームレスだ」
と男の人は、えばったように答えました。


「ホームレス、きいたことあるわ」
女の子は人差し指を立てながら言いました。
「名探偵、そう、名探偵ホームレスよ!」


「君みたいな若い女の子が、こんな時間にこんなところで何をしている」
ホームレスの男は、それを無視して話し続けます。
「ここは私がいつも寝ている場所なんだよ」


「ごめんなさい、知らなかったから」
女の子は素直に謝りました。
「でも、私も今夜は寝る場所がなくって」


二人が困っているとそこへ、もう一人現れました。
朝と昼に女の子を助けてくれた、舞美でした。


「師匠、どうしました?」
舞美は、ホームレスにそう話しかけました。そして、女の子を見て
「あら、あなただったの」
と言いました。


女の子は嬉しくなりました。
(また会えた!)

「知り合いかい?」
ホームレス男は舞美に尋ねました。


「ええ、今日友達になったの。ね」
舞美は女の子に笑いかけます。


女の子は、もっともっと嬉しくなりました。
(友達って言ってくれた!)


「この子は今夜泊まるところがないそうだ」
ホームレス男が言いました。


すると舞美は
「じゃあ、家に来る?」
と、女の子に言いました。


「いいの?」
女の子はおそるおそる尋ねます。

舞美がうなずきます。


「本当にいいの?」
と、再び女の子。

舞美が2回続けて、うなずきます。


「本当の本当?」
舞美の腕を掴みながら、女の子が潤んだ瞳でききました。

舞美は何度も何度も、うなずいてあげました。


女の子はもう嬉しさを隠せなくて舞美の手を取り踊り始めました。

ホームレスの男はそんな二人を、優しい目で見ていました。



家へと向かう途中で、舞美と女の子はいろいろと話をしました。

まずは、それぞれの名前について。
「私のことは舞美って呼んで。あなたは」
「私は、愛理」
「愛理ちゃんかぁ。かわいい名前」

そうです。
女の子の名前は愛理と言いました。


それから舞美は。
今から本日4つ目のアルバイトを終え、帰るところであること。

妹が3人いること。

ホームレス男は1年程前に偶然知り合い、自分に拳法を教えてくれるようになったということ。
でも、名前もどこの誰なのかも知らないということ。

などなど、いろいろと話しました。



「愛理ちゃんは、どこから来たの?」
舞美が尋ねると。

「えっと、私は」
愛理は言葉に詰まってしまいました。
(どうやって言えば……)


その時、木宇戸家の前でぶつかった黒ずくめのおっさんとすれ違いました。
おっさんは手にお金を持ちながら
「へへへ、うまくいった」
と独り言をつぶやいていました。


愛理の頭のてっぺんが、再びムズムズし始めました。
そして思わず、頭を掻きむしりました。


「大丈夫?」
そんな愛理の様子を見て、舞美が尋ねました。


「なんでもないの」
愛理は笑顔で言いました。


「そう……あ、ほら、あれが私の家」
と舞美が指差す方向を見ると、それはさっき訪ねていった木宇戸家でした。

(3人の妹って、あの子たちのことだったの?)
愛理は、あの3人が自分を受け入れてくれるのか少し不安になりました。


「ただいまー」
舞美が家の中へ入ると、サキ、チサト、マイが出迎えに来ました。


「舞美お姉、おかえりっ」
言いながらチサトは、舞美の後ろにいる愛理を見つけると、眉をひそめました。
「おや、あんたはさっきの」


「あら、知り合いだったの?」
舞美の問いかけに

「こんな子、知り合いじゃないけど」
チサトはそっぽを向いて、そう言いました。


「じゃあ紹介するね。今日、家に泊まってもらうことになった愛理ちゃん」
舞美が愛理の肩に手を置きながら言いました。


「えー泊まるの?」
チサトは相変わらず不満そうです。


「私はサキの部屋で寝かせてもらうから、よろしくね」
舞美がそう言うと
「なんで?」とサキが聞き返しました。
「仕方ないでしょ。愛理ちゃんはお客さんなんだから、ね」

木宇戸家には寝室が3つあり、普段は舞美とサキは一人部屋、チサトとマイが二人で寝ているのでした。


「ごめんなさい」
愛理が頭を下げるとサキは
「いいっていいって。サキも久しぶりにみーたんと一緒でちょっと嬉しいし」と言ってほほえみました。


「それじゃお腹減ったし、晩ご飯にしましょ。愛理ちゃんも食べるよね」
舞美がきくと、愛理は嬉しそうに大きくうなずきました。



(つづく)


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